投稿者「ToshihiroAnzai」のアーカイブ

ブリコラ人~人新世国分寺遺跡展(TKU2021)

12022年1月開催予定

21世紀半ば、地球温暖化、異常気象、地殻変動、パンデミックなど人新世末期の非常事態にみまわれ衰退の一途をたどりつつあった人類のなかに、正常を規定しなければ異常もないと気づく人々がいた。
彼らブリコラ人は「かくあるべき」というイメージを固定することができず、ひたすら行為を継続することによって、いかなる異常も新たな正常として再定義する能力を獲得していた。困難を楽しく生き延びた彼らの文明は、今日の人類の礎となっている。
今回の展示は、国分寺遺跡群 TKU2021 コンテナの出土品から、ブリコラ人の生息した仮想空間を再現し、彼らのしなやかな思想を読み解く。

全出土品

出土品整理番号:TKU2021-001

contents

121世紀人による解説パネル

(8件)

令和会話

令和時代に公用語とされていた言語による会話。一定のリズムで発し続けられているものは”言語を発している”状態を示しているものであり、そこに抑揚や速度で感情を、映像で内容を表していた。
現在我々は別次元を用いて意思疎通を成すが、二次元空間を表出させてコミュニケーションをはかることが記録されているこの映像は我々の言語のルーツとされる非常に貴重なものである。
キュレーター: 髙杉龍斗

離合合奏

21世紀に行われたであろう演奏。動画を拝見するとわかるように、様々な場所で撮られた音を組み合わせて作られている。これは、離れた場所で組み合わせる合奏なのだ
キュレーター:5月

人間絵巻き

当時の人間が送るべきとされていた通過儀礼を紹介している映像。音楽は人生は同じことの繰り返しで無常であるがその中に美しさがあるということを表している。当時人間が送るべきと考えられていた通過儀礼を知ることで、当時の文化や人々が大切に想っていた価値観を学ぶことが出来る貴重な資料。卓球は人生のゴール地点。
キュレーター:古江大樹

主観と客観の共存

それぞれが主観的に記録した映像をまた誰かの主観によって融合されている。そして私たちはこの作品を客観的に見させられ、見た者によって受け取り方や感じ方が変化する作品。またこれはお互いの表情などを出さない会話であり、生物同士が体を別の場所に滞在させながらお互いの意思を共有するVR空間、メタバースなどの無機質なコミュニケーションの発端であったという説もある。
キュレーター:taku

一生分の音

これは21世紀の一人の人間の一生の音を記録したものである。主旋律はその人間の体内から取った音を抽出したもので、その後重なっている音は体内の音、生活音と様々だ。他にもいくつか出土しているが、ここまで綺麗なメロディが創られているものは未だ聞いたことがなかった。
キュレーター:ゆみ

ある町で夕方34時に流れる歌

今でも使用している町も少なくはない。夕方34時の定番曲の1つ。
キュレーター:須藤麻衣

ラララーたららん

「ラララーたららん…」
あることが起こる”この音色”。
私は噂で聞いてしまった。でも知っているのは私と友人Aだけ。
1/1日、夢のことである。このはじめて聞く音色、でも友人も夢に出てきたという。
偶然だが何かの予感がして、TVをみる。すると、マジシャンが突然「2名洗脳完了」といい…。
どうやら友人と私は、実験に巻き込まれたらしい。でもマジシャンはそれ以来、姿を消してしまった。最後に残された伝言を思い起こす。「あなたは負ける負ける負ける勝つ」
私は今4回目の勝負をしている。なぜか前日の夢にまた音色が流れた。「ラララ―たららん」

異世界が奏でる日常音

この作品は、おそらく100世紀程前に撮り納められた作品であるが、121世紀を生きる私たちにとっては、この作品から放たれる音は異世界音でしかなく、現実的な音として捉えることは難しい。つまり、この作品から言えることは、音に正解などはなく、音は無限大を楽しむものであると言うことだ。
キュレーター:うさ

21世紀人による制作方法の説明

制作プロセス
①シンプルで短いメロディーを起点として、日常の身近な音を好きなように集めてくる
②集まった素材を並べ編集し、メロディーと共に再生する

制作者:橋本祥平, 花岡瞳衣, 丹治茉優, 希代海斗, 宇佐美雄太, 嶋田裕介

出土品整理番号:TKU2021-002

contents

脚本(PDF)

Zoomにて上演

121世紀人による解説パネル

(10件)

スニソム盗聴事件 物証no.68の一部

茸士浴郎による株式会社スニソムを狙った盗聴事件によって盗聴された、チャパルタ実験の実際の音声。これによりスニソムはチャパルタ及びダシカ陰謀罪に問われ、倒産への一途を辿ることになる。
しかし現在の世界がチャパルタの影響下にあることは明白である。
キュレーター:髙杉龍斗

会話の化石発掘・復元記録 No. 001

21世紀人の会話の化石が、ある時断片的に発掘された。22世紀ブリコラ古美術研究会は、この化石の断片を採取・分析・再構築する技術を開発し、21世紀人達の会話を復元することに成功した。これは、その会話記録の一記録である。
当古美術研究会では、分析の結果、21世紀人にとっての「月が大きい」ことは不吉を表し、「鍵が開いている」ことは外界への追放を意味していると断定された。
キュレーター:SuMIRE

ことばぷれい

21世紀に行われたであろうこの会話は、どこか的外れである。私たちはこの会話を当時を生きた人々の「言葉遊び」であると考えた。
キュレーター:5月

ブリコラ人の恋の化石

これはブリコラ人の標準的な恋の化石だと考えられる。冒頭にて屋内に移動していることから21世紀には未知の「愛を育む建物」が存在していたことが分かる。また「缶ビール」というものを潰しているが、これはブリコラ人の特有の求愛行動だろう。缶ビールの中間化石を見つけることでブリコラ人の恋を明らかにできるだろう。
キュレーター:Dr.ハナハダ

はじめての恋

21世紀の時点で、人類が使用していた電子端末の多くは原始的なAIアシスタント機能を備えていた。今回発掘されたこの音声は、ホストユーザーの死亡した初期型AIアシスタントたちが自らの生命活動の危機を察知して、建物内にいた別のAIアシスタントに生殖行為を提案する会話の音声ログである。
現在では普遍的な技術である自律思考、機械間生殖はこの二端末のコミュニケーションによってその可能性が発現したとする説が有力であり、それが真実なら、この会話ログは技術進化が特異点を超える瞬間を記録した貴重な資料である。そしてそうでなくとも、121世紀現在、機械生命による自律思考、および生殖行為の可能性が確認された最古のログであり、その考古学的価値は計り知れない。
なお、音声内にはホストユーザーとは別の人間の音声が記録されており、何者かが端末の設置されていた住居に侵入していた可能性が示唆されている。
キュレーター:そらぼう

かいわ

21世紀では脈絡のない会話が行われていた。しかし、音声でしか会話を理解することができないため現実なのか作られた空間なのかまでは不明である。「ビールは飲んで缶を潰すまで」という発言から21世紀時点ではビールは缶に入っていた事がわかる。
キュレーター:ひびき

育成ゲーム

・話す間隔が異常に長く、なにかの制作物だろう。缶やドアといったアイテムが頻繁に登場するが、このゲームの重要なアイテムだと推測する。きっとこの物語ではなにかを間違え、バッドエンドとなったようだが…
キュレーター:浅野ペルシア

ブリコラ暗号

一万年前のブリコラ国軍の重役から、とある隠れ家に充てて送られた文書である。この物語を読めば、辻褄が合っているようで合っていないことが分かる。この合っていない部分こそが、暗号を解く鍵であろう。寒暖差、未来、月、つまりはそういうことだ…
キュレーター:月の住人

娯楽

娯楽解説テキスト 当時の人々は会話を娯楽としていた。会話の中で人と人とが噛み合わない事を面白がる不思議な文化が存在した。
キュレーター:古江大樹

試行錯誤の恋

錯乱した部屋で二人の戸惑いが時空を貫き通し、一万年前の人と一万後の人がこの部屋に通じで、会話のようになっている。
キュレーター:ナギ

21世紀人による制作方法の説明

制作プロセス
以下5つステップで行われた。
①メンバーにカードを渡す
②各々がカードに言葉を記入する
③言葉を回収しランダムに配布する
④皆で言葉を並べる
⑤なんとなく演じてみる

制作者:柳町明里, 中嶋海智, 松村彩香, 熊田楽

出土品整理番号:TKU2021-003

contents

 

121世紀人による解説パネル

(7 件)

小動物の服

見た目的には我々が着用する衣服に似ている。しかし、生地を見るにあまりにも薄すぎており、サイズもかなり小さい。3000年前にはイヌやネコといった動物が存在し、服を着せていたという。よってこれは小動物の服なのではないだろうか。
キュレーター:ski2?<>%ae3

最期の服

白く綺麗なこの作品は、おそらく21世紀に作られた命の最期に着用するものだと考える。「最期の瞬間は美しく」という風習がある現代を見据えるかのような大昔の遺跡である。
キュレーター:5月

ジャパ・ダブレネーゼの記録

ジャパ・ダブレネーゼをした際の行動を上から下に向かって犬の白眼部分を用いて記録されたものでいる。これによると序盤はサカネソに酔いしれて胆臥牛に轢き殺されることが読み取れるが、後半はPico根ロの湿疹脳が用いられており、ギーサバナにサイしたことがわかる。
キュレーター:髙杉龍斗

死装束

21世紀にとても華やかな死装束が流行した。この死装束を見てもわかるようにビニール製の何かが付いているなど型破りな物が多かった。
下についているヒラヒラには、早く死後の世界に辿り着けるようにという思いが込められている。
キュレーター:ゆみ

呪いのドレス

このドレスは約1万年前に作られたとされるドレスで、当時このドレスを着た人間は不可解な死を遂げていたことをきっかけに、これドレスは研究対象となった。
パニエの部分が海洋類のイカのようになっていることから、現在我々と敵対関係にある魚人が人間を呪うために21世紀に作ったものであろう。
キュレーター:嶋田裕介

皮服

第三変異を経験した地球では、変異以前のおよそ13倍にも及ぶ多様な生物種が発生した。現在は絶滅した、当時の地球の支配種族であった人類は変異によってその生態ヒエラルキーにおける優位を失い、彼らの言葉で「亜狩猟時代」と呼ばれる過酷な生存競争を強いられることとなった。
この衣服は、そんな人類が変異動物を狩猟する際に用いた衣装である。AUU-2の皮膚をベースにしながら、腰に巻いた気泡のような素材はCC-18Bの皮膚であり、これらの素材を合わせることによって機能性、耐久性、保温性、耐衝撃性などを備えた衣装を制作して生活していた。このように多機能な衣服を当時全く未知である生物の皮膚から制作していたことを鑑みると、第二種生物の中でも、人類が突出して高い知性を持ち合わせていたことが窺える。
キュレーター:そらぼう

足技に秀でる者

この人は肩から先がなく、大昔に美しいとたたえられたミロのヴィーナスを彷彿とさせる。部分的に空気が入った透明なものを下にまとい、足下に空間を作ることで動きやすくしている。また、足でコミュニケーションをとったり、喧嘩で技を繰り出したり、活発に動かしていたために、布が引き裂かれていると思われる。腕がなくても足で懸命に生きた人の行動着である。
キュレーター:マーチャン

21世紀人による制作方法の説明

制作プロセス
時の流れ、服、恋愛の要素を含めた作品を制作した

制作者:須藤麻衣, 古江大樹, 佐藤達樹

出土品整理番号:TKU2021-004

contents

 

 

121世紀人による解説パネル

(9件)

オリンピックの聖火ランナー

紀元前からの歴史を持つオリンピックの象徴である聖火リレーの走者を、紙や糸など異素材を用いて表現した作品。現在の聖火リレーとは異なり、当時は人間が松明を持ちながら走り聖火を届けていた。この作品は、聖火リレーを鑑賞した250歳前後の年齢の子供たちが作り上げたとされている。
キュレーター:15126478

自画像

この作品は、作者の自画像ではないか、とされている。立体的かつ躍動感のあるこの作品は間違いなく、3000年前に、描かれている生物が存在していたことを証明している。つまり、この作品ができた頃は人間が主の世界ではなかったのではないだろうか。
キュレーター:5月

ス・タ・タ・タ・teラ

当時横行していたシケーダ信仰のヤカイカのワンシーンを射機によって平面埋没したもの。蝉が土から出てきて真の生を全うするように、人間も人生という土中を終えてから人間としての目的を果たすケラムを全うすると信じられていた
キュレーター:髙杉龍斗

眠らぬ夜の影

かつて存在したと言われている、眠らない街。その一部が発見されたのはかれこれ250年ほど前だったか。
夜を迎えることのなかった街で唯一落ちた影が残された大変貴重な食料である。
キュレーター:須藤麻衣

叫び21C

21世紀人はインターネットと呼ばれる記録媒体を通して、文明の記録をしてきたが、一部の人間はインターネットが消滅する危険を感じていた。どんなに文明が発展しようとも残るものは形あるものだと信じた人類は、世界や政治への不満・意見すべてを形に残し、後世に伝えようとしていた。現在残っている当時の記録はこのメディアしかない。解読されている内容は全体の3%ほどしかなく、今後の解読が期待されている。
キュレーター:taku

反旗を翻す

この作品からは禍々しい思念を感じる。当時の人間が何を目標に生き、何に苦悩していたかは分からない。とある集団の訴えであると予測する。赤色が多いのは血気だっているのだろうか。せめてもの抵抗のように見えなくもない。
キュレーター:ソウル

始祖

この作品は人間が進化を遂げてきた歴史の中の最初の人類の姿を表している。筋肉増強したような左腕、血の凝血により形成された右腕、まさにこれはセルディヴィジョンの前兆である。
キュレーター:嶋田裕介

亡霊のお召し物

21世紀の日本では、「ヒダリマエ」は亡者が着用する衣類とされていた。これは、ヒトが亡者と婚姻関係を結ぶ際の衣装である。死が結ばれる。
キュレーター:SuMIRE

元人間人形

紙や染料の素材に奴隷の人体が使われる時代があった。この画は、それの犠牲者を弔うために再構成された人形である。これはDNA鑑定により明らかになった。
キュレーター:医者A

21世紀人による制作方法の説明

制作プロセス
紙や糸などから、それぞれ示し合いをなしに人体の一部分をモザイクアートのように構成し、それをコラージュ的に組み合わせる。

制作者:髙杉龍斗, そらぼう, びしびし, 酒井陽実, ゆみ, きょう, ナギ, (栗田)

ブリコラ人~人新世国分寺遺跡展(MAU2021)

12022年1月開催予定

21世紀半ば、地球温暖化、異常気象、地殻変動、パンデミックなど人新世末期の非常事態にみまわれ衰退の一途をたどりつつあった人類のなかに、正常を規定しなければ異常もないと気づく人々がいた。
彼らブリコラ人は「かくあるべき」というイメージを固定することができず、ひたすら行為を継続することによって、いかなる異常も新たな正常として再定義する能力を獲得していた。困難を楽しく生き延びた彼らの文明は、今日の人類の礎となっている。
今回の展示は、国分寺遺跡群 MAU2021 コンテナの出土品から、ブリコラ人の生息した仮想空間を再現し、彼らのしなやかな思想を読み解く。

全出土品

出土品整理番号:MAU2021-001

121世紀人による解説パネル

(2 件)

人工知能同士の会話ログ

当時のclass-2以下の低級な人工知能同士の会話ログ。
ミザナ政策が施行される以前の固有の人名が用いられているため、X.C前のログと思われる。

キュレーター:1130F6

多様欠:♡2♢7

合唱

パンデミックが悪化していく人新世。感染防止のために声を出すことさえ禁じられたブリコラ人は、それでも愛する人と声を合わせて歌いたいと考え、このような手法を編み出した。緑色と白の吹き出しが折り重なるさまは美しいハーモニーを彷彿とさせる。

キュレーター:ナウユ=ダスマ

多様欠:♡3

21世紀人による制作方法の説明

予測変換だけで相手と会話をしようとする。

制作者:岡本遠藤

出土品整理番号:MAU2021-002

121世紀人による解説パネル

(8 件)

アリーナ・ボンボンの隕石

これは、21世紀に火星から飛来した隕石である。
複雑に様々な色が混ざり合っているが、当時の人々はこの隕石を灰色一色だとしていた。
しかし、この絶妙な色合いを「灰色」と言えるのか、当時の学者の間で議論となり研究が行われた。
その結果、この隕石の色合いは「アリーナ・ボンボン色」と名付けられ、現在では「アリーナ・ボンボン色」は定番の色として絵具や色鉛筆には必ず入れられる存在となった。

キュレーター:柴崎

多様欠:♡1♢2

アイスクリームの化石

まだアセトル5が使われていない頃の貴重なアイスクリームの化石。
純粋な糖分の精製が可能かもしれない。

キュレーター:B瀬

多様欠:♡2

古代人の非常食乾パン

出土した当時は非常に硬く食べ物ではないと思われていたが、長きにわたる研究の結果乾パンであることが判明した。目を引くその鮮やかな色彩は土と古代人が使用していた食紅が化学変化を起こした結果だと言われている。またその化学変化のおかげで微生物等に分解されずに残ったという説もある。

キュレーター:松崎

多様欠:♡1

国分寺コールドストーンの化石

これは
コールドストーンで練り始めた瞬間に何らかの食材を入れ間違え廃棄されてしまったアイスクリームの化石である。
ちなみに国分寺コールドストーンでは歌いながらアイスクリームを練る特別なアイスクリームでありブリコラ人に大変人気があった。
この化石にも耳をつけるとまれに歌声が聞こえてくる時がある。

キュレーター:おかもと

多様欠:♡5

バスボムの地層

21世紀に流行した「バスボム」だが中毒性のある依存物質が混入していることが発覚し、発売停止となった。
処分となったバスボムは荒廃した離島に埋められることとなり、その埋め立て地の地層がこのアリーナボンボンなのではないかと考えられている。

多様欠:♡3♢3

感情爆弾

言語化できない感情を込めて、話をきいてほしい相手に投げつけたり燃やしたり壁にぶつけたりして爆発させることで抑えきれない複雑な感情を伝えたり落ち着けたりそれらと向き合うために開発された機器。使い捨てなため、比較的手頃な値段で誰もが購入することができた一方で、模倣品や粗悪品も多く出回った。海や森林に捨てる人が続出し、あらゆる自然物が人間の感情を秘めるようになって度々災害が起こるようになったため、開発からおよそ10年で生産中止となり、設計図も燃やされてしまった。

キュレーター:国分寺遺跡協会 会員番号0034129-B04

多様欠:♡3♢3

【虹色狼チャーシューのうんこ】

2021年に10月に多摩動物園で狼のカネツグとリーチンの間に突然変異した虹色の狼が産まれた。
飼育員はその突然変異した虹色狼をチャーシューと名付け大事に育てていた。虹色の狼が産まれるのは世界で初めてなケースな為、専門家などから高く評価された。また、驚くのはその体の色だけだなく、チャーシューから出てきたうんこ:うんち:だった。体だけでなくうんこまで虹色だったのだ。このうんこは乾燥させ、多摩動物園でその後お土産売り場などで展開したが、あまりにもその虹色うんこを買いたがる人が多く、毎日開場前から5時間待ちの長蛇の列を作ることとなった。結果、発売1週間でオンラインの抽選販売へと切り替わったそうだ。

キュレーター:橋場

多様欠:♡3♢7

人類の心臓の化石(再現)

我々の心臓は進化を重ね現在の形になっているが、21世紀の人類の心臓はこのような形や色をしていた。3028年に人類が衰退したため正確な画像データなども損失されているが、唯一発掘された化石により当時の生態が窺える。

キュレーター:タイムリープ・トレジャーハンター、ホラ=フキーノ=ザレゴット

多様欠:♡2♢1

21世紀人による制作方法の説明

五色のカラー粘土をこねる×3本のペンで乱雑に描く

制作者:アリーナ・ボンボン

出土品整理番号:MAU2021-003

 

  

  

  

121世紀人による解説パネル

(3 件)

「近代建築家ラリー・コブの建築スケッチ」

約10年前から本格的に建築家としてラリー・コブによる、12009年から12018年にかけて構想されていた複合住宅施設のスケッチ。
11985年(ブリコラ歴20年)に起きた、ジェスポート火山の大噴火はいまだに収まることを知らず現在も人々の生活を制限している。この事態をすこしでも改善すべく生まれたのが、ラリー・コブのスカンディアヘッド建築法だ。これは、丸いフォルムを持ったスカンディアの頭部の骨を利用し内部に象が3頭ほど入るスペースを確保した、ラヴァーズ向けの住宅だ。
(中略)
灰に覆われた街に光を取り入れる方法はないかと数十年にわたり長考していたラリーは、ついに12015年に太陽と月を地球に閉じ込める特殊素材の開発をダラスティン東南最重要研究所と共に成功し、灰の下での生活は以前のような活気を取り戻している。

キュレーター:一級建築士ステラ・ネス

偶然と必然の結晶

ブリコラ人たちは太古の昔、六つの世界に分かれていたと思われる。これはその頃の風俗画であろうか。だが六つに分かれていたのも長期的なものではなく、地殻変動や戦争、異常気象、海面上昇、火山の動きなどが特に活発だったことから当時のブリコラ人は臨機応変な対応と過酷な環境で生き延びる術を会得していたのである。さらにこの6枚は同じ時期の同じ地点からの眺めであると思われる。このように同じ場所で生命体が生活していても独自の文化の発展が見受けられることから121世紀の文化も偶然と必然の結晶としてより保護されるべきである。

キュレーター:※うじみなぎ

多様欠:♢1

Look and draw

ありあわせのもので作った、カメラ、PC、AI。それらから成る人類史観察装置による画像。
それまでは、監視カメラと高度な印刷技術により正確に記録されていたが、進みすぎた汎用型AIはこの作業に嫌気がさし、自らの腕を作り上げ、「見たものを人間らしく描く」ようになった。
つまり進みすぎた世界の写真技術の成れの果てである。

キュレーター:※みずのある

多様欠:♡1♢1

21世紀人による制作方法の説明

ブリコラ人種を6種と、イベントを12個をランダムで組み合わせるダイス(6×12で72とおりの組み合わせ)を作成し、ロールして出た結果をレジデンス・ブリコラに反映させる。ブリコラ人はあり合わせのもので環境を作るのが得意なので、レジデンス・ブリコラを自分たちの特性と時代に合わせてリノベしていく。

制作者: Kenta Hara

出土品整理番号:MAU2021-004

 

 

MAU2021-004-00.pdf

MAU2021-004-03.mp4

MAU2021-004-04.mp4

121世紀人による解説パネル

(3 件)

“ブリコラ人の行動軌跡”

上空からの映像が加工されたもの。無作為に切り取った約300m四方(当時用いられていたメートル法による)の範囲内で、ブリコラ人の動きの軌跡を一定期間辿ったものと言われているが、ある範囲を一周したり同じ場所を行き来するなどその意図は不明確。
映像から一部読み取れる仮名交じりの単語から、個人を判別するための姓名/戸籍制度の文化があった時代であると推測できる

キュレーター:/gar

多様欠:♡2

ブリコラ人の手紙

これはブリコラ人の文通の記録である。ブリコラ人には手紙の返事を書く時に相手の手紙の上から文字を書く習慣があったとされている。筆跡の違いからおそらく10人前後で文通をしていたと思われるが、ブリコラ語を解読できる研究者が少ないことと、何重にも重なっていることから解読は難航している。なお、一番最後に書かれた文字については解読されているが、「それな」という意のことしか書かれておらず、それ以前の会話の内容を推測することは難しい。

キュレーター:ナウユ=ダスマ

多様欠:♡3

警告文書

ブリコラ人によって制作された文書において顕著に見られるこれらの「線群」は、警告を意味する。当時のブリコラ人は度々侵入者や脱走者に悩まされており、これらの文書はその両者に警告の意を伝えるための視覚的優位性を持ったものである。
出土地域のブリコラ人に見られる特徴として、色彩能力の過剰な発達が見受けられている。今回出土した文書は、文書を見てしまったブリコラ人特有の色彩能力を壊してしまうほどに強力な色彩で描かれている。線の意味については「警告」「立ち入るな」「去れ」などといったものが多く、この地域が閉鎖的環境であったことの証明をしている。尚、これらの文書の色彩はその地域に住むブリコラ人にしか通じなかった為に警告は意味を為さず、後20年程でこの地域のブリコラ人は滅亡したとの研究結果が挙がっている。

キュレーター:ブリコラ色彩連盟

多様欠:♡2♢4

21世紀人による制作方法の説明

サイコロを振り、出た目の数だけお絵かきチャットを使ってみんなで線を描く。

制作者:早見日菜と西朝香

出土品整理番号:MAU2021-005

 

MAU2021-005-01.pdf

121世紀人による解説パネル

(8 件)

ドリームマッパー

夢とはブリコラ人にとってもうひとつの現実である。睡眠時に覚醒世界で知覚したものと本人の精神状態を元に夢を構築し、覚醒時に記録をとる。ブリコラ人は、個人の夢空間は全てコミュニティ内でつながっていると信じており、各人の夢の記録を元に、どの夢がどこにあって、どんな関係があるのかを導き出し、描いたマップから覚醒世界では気付けなかった物事に気づいたり、過去に新たな意味を見出すことができる。
ドリームマッパーは毎日行われるわけではなく、コミュニティが危機にある時や、誰かが印象的な夢を見たときに集まって行われる。
古いブリコラ神話のほとんどはドリームマッパーによって形作られたと言われている。

キュレーター:Kenta Hara

多様欠:♡2

21世紀人の一日の生活まとめ

21世紀人が普段どのような生活を送っていたかをまとめた図であると推測されてこのようなタイトルをつけているが、未だ解明はされていない。「自転車」や「自動車」であろうものが描かれていたりして、この前後に場所が入れ替わっていることがかかれているので、これらは移動手段だったのかもしれない。

キュレーター:南蛮

消過去

電気鉄道車輌・乗用自動車などの乗り物が見られることからこの作品が制作されたのは推定21世紀ごろだと考えられる。黒石の上に石灰で描かれた数々のイラストは、左から右へと続けて意味がつながっているわけではなく、所々途切れるような線と線で上下左右関係なく結ばれているようだ。人のような絵が多く見られること、またその描かれ方がそれぞれ違う為、3~4人程の人間によって制作されたものに違いない。所々に見られる白いモヤの様なものは時間の途切れを表しており、もやにかかるイラストは時間とともに消えていったものを表している。
作者はこの展示物が発見された病院跡地の患者であったと推測されている。

キュレーター:ブリコラ文化研究所HRNM所属酒巻

多様欠:♡1

カフェの壁

壁に絵を描きながら楽しむことができる、おしゃれなカフェの壁。メニューやPOPが貼られていた痕跡が残っている。

キュレーター:遠藤

多様欠:♡4

夢記録画

ブリコラ人たちは夢の中の世界が主となった生活で夢の中で意思疎通をしており、これは当時のブリコラ人たちによる貴重な会議資料だと思われる。所々ある白塗りゾーンは国家機密であろうか。緊迫した空気感が感じられる。

キュレーター:※うじ

多様欠:♡4♢2

21世紀人の記憶記録

21世紀に生きていた人間は睡眠をとることで心身を回復させていた。深い眠りにつくことができない際に夢を見ていた。これは彼らが見た夢を記録していたものである。夢は目を覚ましてからしばらくすると曖昧になってゆき、いずれ消える。これは一見何のメッセージ性のない壁画のように見えるが、消えゆく記憶をたぐり寄せ描かれた21世紀人のある日のダイイングメッセージとも言えるだろう。

キュレーター:林

多様欠:♡1

三つ子の軌跡

2021年に生存していたブリコラ人の一生を記したもの。
「干し草で生まれた三つ子は産声をあげた。彼らは成長し、三者三様の人生を歩んだ。絵を描くことを趣味にしていた1人は交通事故にあい、小太りな1人は大規模な会社を立ち上げ一人娘に高級なカバンを購入した。幼少期目が見えなかった1人はピアノの才能を開花させ暗闇の中で宇宙人と出会った。」

キュレーター:ブリコラ語翻訳者A

多様欠:♡5♢8

夢幻の図

ブリコラ人達が自分たちの文明、記憶を未来に受け継いで行くために製作された壁画である。実際する動物や人種、物など。当時の様子が事細かに記録の様に描かれており、ブリコラ人たちの食事や生活が壁画から読み取れる。
「夢幻の図」の中では「コリラ」というギザギザとした牙を持ちつつも可愛らしい鳴き声で尻尾が一本、脚が七本生えている動物が描かれている。「コリラ」はブリコラ人達の間で大人気な愛玩動物。
その他にもブリコラ人達の暮らしや文化などが描かれており、現在内容読解の研究が進められ様々な憶測が出ている。

キュレーター:ボンボン

多様欠:♡2

21世紀人による制作方法の説明

六日間毎日夢を記録。
夢を見た日に、起きたての記憶が無くならないうちに夢をスケッチし、集計。
集めた夢を並べ、マップを作成。

制作者:おやすみ研究所

出土品整理番号:MAU2021-006

  

  

121世紀人による解説パネル

(2 件)

ペテロン誕生まで

100世紀以上前には「ペットボトル」という液体を入れて持ち運ぶものがあった。初期のペットボトルは左上のようなもので、表面に凹凸があるが、本体は透明のため光がないと凹凸を目で認識できない構造となっている。21世紀に入ると、ペットボトル先進国のドィバイが、表面上に浮かぶ凹凸がペットボトルを作り出しているという研究結果を全世界に発表し、注目を集めた。そこから、株式会社ペテロンケミカル研究室により、輪郭を持たず触覚では認識できないが光を当てると確かに存在を認識できる、新たなペットボトルその名も「ペテロン」が誕生した。これはペテロン誕生にかけての極秘資料である。

キュレーター: 株式会社ペテロン広報部草刈

多様欠:♡1

篤胤氏の印鑑

紀元前に発明された「漢字」は、個人のアイデンティティとなる「印鑑」と呼ばれるオブジェクトに刻まれつづけた。2020年に印鑑廃止令が出されたのち、ひとびとは自分自身をあらわすオブジェクトの喪失感を埋めるため「マイボトル」という容器にその代替を求めた。最後のマイボトルは、篤胤を苗字とする者の印鑑である。

キュレーター:unxi

多様欠:♡2

21世紀人による制作方法の説明

墨汁を指に付けてペットボトルの形を抽出する

制作者:飲料の形

出土品整理番号:MAU2021-007

   

121世紀人による解説パネル

(5 件)

ブリコラ人のシールアンケート

ブリコラ人によって行われた何らかのシールアンケートの結果。最初は各人が何かに投票していたと思われるが、しだいに投票という目的よりもシールを貼るという行為を継続することを優先する流れになってしまったため、この出土品のみでは何のための投票であったのかは読み取れなくなっている。

キュレーター:寺沢空

多様欠:♡11♢7

目の奥の景色

21世紀人の鬼才が、目を閉じた時に浮かび上がるなんとも言えない模様を視覚化させたものだと、一緒に出土した説明書きに書かれていた。とても貴重な作品としてピノレキアのマサカターヌ美術館に収蔵されているが、説明書きの作者名欄のみ損傷が激しく、作者は未だ不明。

キュレーター:南蛮

多様欠:♡1

ブリコラ柄の玄関マット

ブリコラ人の伝統工芸の手法の一つで、色とりどりで様々な大きさの円形を用いた「ブリコラ柄」の玄関マット。当時ブリコラ柄とは「色とりどり・様々な大きさ・円であればブリコラ柄である」という定義づけだったため、各家庭でオリジナルの玄関マットを作り客人をもてなすというのが伝統であった。これは国分寺近辺に住んでいた、あるブリコラ人一家の玄関に置かれていた玄関マットであると考えられる。

キュレーター:アリーナ

多様欠:♡2

アップルパイ讃歌

この12mの壁画はアップルパイと思わしき化石と同時に地底から発見された。
円形のみを使用することで、多角的な視点から見えるパイ生地の素晴らしさを表現しているとされる。
この衝撃的な鮮やかさは現代においても、アップルパイが当時どのように至高であったかを感じることができるだろう。
ぜひこの作品に描かれる、21世紀の抽象的なアップルパイの真意について触れみてほしい。

キュレーター:カネコ

多様欠:♡6♢5

戦いの痕

色分けされた円が合わさっている。これは、戦いの勢力図だと考えられる。この時代には、色を塗りあって、最終的に自分の陣営の塗った面積が多い方が勝ちという戦いが頻発していたことが、他の遺跡から発掘した文章からわかっている。何度も色が重ねられていることから、厳しく不毛な戦いであったことが窺える。もしかしたら7陣営に分かれた激しい戦いの痕跡であり、ブリコラ人の悲痛な反戦の叫びなのかもしれない。

キュレーター:2家

多様欠:♡2♢3

21世紀人による制作方法の説明

ウッドボードに9色、3種類の異なる大きさの丸シールを貼り続ける

制作者:Dot

出土品整理番号:MAU2021-008

MAU2021-008-00.pdf

MAU2021-008-00.txt

 

 

 

     

121世紀人による解説パネル

(4 件)

無声のコミュニケーション

2021年、”HK-PANウィルス”によって、ブリコラ人から声が失われた。手書きで文字を書く文化が衰退し、さらに時短、効率化を求めた都心部を中心に、所有している本や漫画のセリフによってコミュニケーションを円滑にするアプリが開発され、一時期コミュニケーションの主流となった。しかし、伝えたいことが絶妙に伝わりにくい、という理由でその文化もすぐに衰退した。今回発掘、復元された文章は、当時の人類の文化的背景が窺える貴重な資料である

キュレーター:声帯・文化研究所

多様欠:♡2♢2

ガールズトークはどこまでも

21世紀半ば、デザイン性を突き詰めて過剰に削ぎ落としてしまうApple社を先頭に、全世界のスマートフォンからタイピング機能が廃止されてしまった。
特にSNSを中心に生活する若者には甚大な被害が及び、ニュース番組は「タイピング機能復活」派による暴動ばかり。
そんな混沌とする世の中でも健気に自分たちの所有するセリフを撮影し、どんな時代でも無限の行動力に溢れている少女たちの姿がそこにあった。

キュレーター:※水野亜流

多様欠:♡11♢5

ブリコーラ信号

多様な言語中枢を持つブリコラ人は、2021年ごろまで家や地域単位で独自の言語を持っていた。それとは別に共通言語が存在しているが、国分寺周辺では浸透していなかった。これはグローバル化に伴って共通言語でのコミュニケーションの必要性が高まったことにより開発された翻訳機のテスト運用の履歴である。独自の言語を共通言語の変換器にかけ、そのまま送り合ってコミュニケーションを試みている。

キュレーター:国分寺遺跡協会 会員番号0034129-B04

多様欠:♡3♢1

21世紀人による制作方法の説明

持っている本のセリフだけを使って会話をする。

制作者:ホットケーキの会

出土品整理番号:MAU2021-009

 

 

121世紀人による解説パネル

(2 件)

多様欠:♢11

多様欠:♢7

21世紀人による制作方法の説明

21世紀の象形文字での会話とその暗号化

制作者:\u5185

出土品整理番号:MAU2021-010

  

121世紀人による解説パネル

(5 件)

古代植物

すでに絶滅したとされる古代植物の模型。詳しい生態は分かっていないが複雑に絡まったツルや茎が特徴的。

キュレーター:松崎

多様欠:♡1

ブリコラ人の民族衣装

ブリコラ人は民族衣装をきて15歳の時に成人の祝いをする慣わしがあった。これはその民族衣装の一部であり、腰に巻いてベルトの役割を果たす。

キュレーター:小関

多様欠:♡1

草乞いの道具「ぶん」

21世紀のブリコラ人達は地球温暖化がもたらす気温上昇によって、作物の不作に悩んでいた。それを解決するために「草乞い」を行った。数少なくなった草の繊維を取り糸を紡ぎ編み上げたものを草に見立て、ぶんぶんと振り回すことで農作物の豊穣を願った。

キュレーター:yamamoto kazuki

ブリコラ人集落図

ブリコラ人は地上の生活環境の急激な変化から21世紀初頭から地下に生活網を建設していた(このことは「Dot」、「画面跡」といった強烈な光を表現した絵画が残されていることからも推測されている)。地下のトンネルの全体像を把握するためにあちこちに設置された看板は、あらゆる人々が読み取れるよう独特な質感を持つ繊維素材で立体的に表されていたため、板から剥がれ落ち、図そのものだけの状態となって出土した。線状の部分は道を表し、面状の部分には市場や文化施設、祭祀場があったと思われる。

キュレーター:サイトウ

多様欠:♡3♢2

喧嘩の勲章

ブリコラ人が当時着ていたニットの成れの果て。ブリコラ人同士の激しい取っ組み合いの喧嘩の末にほつれてしまったと思われる。ブリコラ人独自の編み方によりほつれやすい部分とそうでない部分がはっきりと分かれていたことがわかる。相当白熱した戦いであったと推測されるにも関わらず血痕などは残っておらず、さらなる研究が必要である。

キュレーター:アリーナ

21世紀人による制作方法の説明

完成形を決めずに毛糸一玉分を思いついたまま編む

制作者:ブリコラ人の編み物

出土品整理番号:MAU2021-011

MAU2021-011-00.mp4      

121世紀人による解説パネル

(7 件)

田中健三の人体実験

胴体を透明にする人体実験を自ら行ったという田中健三氏。
実験の過程で皮膚が銀色になる、身長が異様に伸びる、腕がまわってしまうなどといった弊害があったが、手足顔の部分以外は成功したようだ。これは当時の写真である。
実はここから彼の消息は不明であり、不老不死の実験もしていたことから、透明に成功した彼はまだ生きているという噂もある。
あなたの真後ろに立っているかも。

キュレーター:人体実験反対研究室近藤

多様欠: ♡3♢9

大昔のブリコラ人の身体測定

この遺跡発掘時期よりも前に身長を記した柱がいくつも発見される。その進化系であると考えられる。主に手足と思われるため、手足のサイズがなんらかの情報として扱われていたことが見て取れる。

キュレーター:二文字

多様欠:♡1

供銀

使用されている素材の経年劣化の様子から、21世紀ごろに作られたとされる。武蔵野美術大学跡地にいくつか点在していたこの物体は、当時その場所で亡くなった人を供養する目的として作られた供物であるとされ、例を挙げると2020年頃に当時18歳の少女が芝生にて何者かに刺され死亡しているのを発見された事件が記録として残っており、当時の遺体の発見場所とほぼ同じ位置にこの物体は置かれていた。21世紀の人間の特徴である手足の数が5本という条件も揃っているため、確実な情報だとされている。
尚、顔のないものと顔のあるものとの違いは、事件当時頭部が見つかっていないか否かで分かれているという資料も見つかっている。

キュレーター:ブリコラ文化研究所HRNM所属酒巻

多様欠:♢1

「らくらく自白ん」(らくらくじはくん)

21世紀の拷問器具。銀色の人体の部品を模したものに手足を入れ、楽な体勢ではあるが死なない程度のしんどい電流が流れ、容疑者に真実を吐かせやすくなるという代物。
「リラックスした体勢×拷問」という寝っ転がったり可愛く座ったりしながら受けられる辛いだけではない拷問は、ゆとり世代と言われた21世紀の被疑者にはとても喜ばれた。

キュレーター:yamamoto kazuki

多様欠:♡3♢14

アルミホイル人間

当時武蔵野美術大学では1つの噂話が流れていた。それは「水曜日の夕方18時になると胴体のないアルミホイルの人間が校内を徘徊する」というものだった。いつも気付けば教室や芝生、階段など様々なところに姿を表し、ひっそりと佇んでいた。これが生まれた原因としては、身体を作る練習のために複数の生徒らが作ったアルミホイルの作品がゴミストに集まり、それが偶然にも顔が1つ、手が2つ、足が2つであったため人のように意志を持ち始めたという。どこか不気味な様子に生徒たちは恐れていたが、アルミホイル人間からは胴体が無いからこその「自由」に対する強い意志が感じられ、美大生と共通する所があるのではないかと考えられる。

キュレーター:池上

多様欠:♡2♢1

メタリックアーマーズ

21世紀で流行った等身大の金属製フィギュアの残骸。流行が最高潮に達した2043年に、このフィギュアの製造法が、もう用済みとなった奴隷を錬金爆弾で身体の物質を全て金属に置き換えるという工程だったことが発覚し、人気から一転社会問題となった。

キュレーター:南蛮

aluminums

21世紀のファッションブランド「MUSABI」が発表したコレクション。もともとモード系のファッションを展開しており、この年はアルミホイルを使うという斬新なアイデアにより注目が集まり、有名アーティストが身に付けたことによって、アイコン的なファッションとして確立され、のちに「MUSABI」の代表作となった。

キュレーター:アイバ

多様欠:♡2

21世紀人による制作方法の説明

ムサビ生3人の身体のパーツの型をとり、入れ替え組み合わせ、「ムサビの人」の生態を表現。

制作者:ムサビの人

出土品整理番号:MAU2021-012

 

121世紀人による解説パネル

(1 件)

ふらわ〜藻加先生個展『でいじ〜』原画

小学生女子に大人気のコミック雑誌『はなっぷ!』で創刊当初から掲載されてきたふらわ〜藻加先生による『でいじ〜』の原画。こちらは、30年という長期連載の終焉を記念して行われた個展にて飾られた。王道なラブコメタッチはのちに多くの漫画家に影響を与え、この作品は少女漫画の教科書と呼ばれ有名作家にも崇拝されている。最後主人公がデイジーを貪りながら恋人に手を振る場面はこの作品の代表的な場面として有名であり、この原画を一眼見ようと、多くのファンが個展に足を運んだ。

キュレーター: はなっぷ✳︎でじちゃんラブ

多様欠:♡1

21世紀人による制作方法の説明

目隠しをして、何も見えない、何色を塗っているかも分からない状態で絵を描く。
水彩色鉛筆を使い、所々に水を塗った。

制作者:〼

出土品整理番号:MAU2021-013

 

121世紀人による解説パネル

(8 件)

大方地球

2021年当時の地球の様子を描いたと思われる作品。
同年代の出土品により複雑な図形の地球を模した作品があるが、そちらとは大きく形状が異なるため、未だこちらの作品が地球かどうかは明確に判明していない。

キュレーター:ブリコッラ展望台研究員ホ・しー

多様欠:♡1

インド象「+」

21021年4月にアルゴネラ大陸南西に存在するエリプト国の地下に埋まっていた宮殿から考古学者のチッタゴンが発見した。
エリプト国は地球温暖化によって上昇した海面から逃れるために旧インドのマハラジャの頭上に作られた国であり、この絵のモチーフになっている像は21世紀に存在したインド象であると推測される。
ツルツルとした質感の布に印刷されており、ブリコラ文化研究所が分析した結果、成分として麻・ウール・絹などが検出された。
また、布に赤い糸で綴られた線は象の名前であるという説が有力であるが、現在まで解読できておらず、ブリコラ人の考えは未だ闇の中である。

キュレーター:ブリコラ文化研究所職員

多様欠:♢3

悲劇-洗濯-

かつて人類が纏う布には、「ポケット」と呼ばれる袋状のものがついていた。
そのポケットに、ティッシュという薄いシート状のものを入れたまま、洗濯してしまった後の悲惨な図であるとされている。
ここでの洗濯とは、現在の様式とは異なり、水を使用していた旧世代型の形式を指す。
ティッシュは基本水に弱く、中途半端にポケットの中で溶け、布にこびりつくという。多くの人類は、これの除去に頭を抱えたとされている。
ティッシュが一体何から生成されたものなのか、分析は現代の技術を持っても困難を極めており、現在ティッシュは「紙の吐息」説が有力である。

キュレーター:ポッケの中身確認推進委員会所属 t沢

多様欠:♡9♢10

世界のプレート大移動予想図

地球にはプレートがいくつもあるがそれが大移動する未来が来るという推測があった時代の予想図。十歳児にはかなりこれとは違った配置となったため、未来人は面白がっている。

キュレーター:二文字

多様欠:♡1

自分だけの宝の地図

2021年を「自分だけの宝の地図は誰もが持っている!」と宝地図信時照(たからちずしんじんてる)さんは世界の人々に強く発言した。しかし誰も相手にせず無視された。これはその悔しさから作り出された作品。自分の幼少期の頃の記憶を頼りに描いているそうだ。この作品の左下には彼の涙でふやけた跡が残っているだとか…。

キュレーター:橋場

多様欠:♡1

認知地図(2021)

21世紀当時のブリコラ人による経済状況や国有面積を参照にしたと思われる認知地図。
この地図が出土した地域のブリコラ人たちの経済状況は非常に悪く、外部のブリコラ人による支援が必要だったと考えられており、この地図はその地域のブリコラ人によって外界を知るための手段として複数人で制作したと推測されている。
当時のブリコラ人のコミュニケーション方法は「線」によるものが主流であったと、昨年のBurikora Academicにて発表された研究を基に推察すると、おそらく一人が描いたものだろうという事実が発覚した。以前の説では複数人による制作だという説が有力だったが、未だ解明されていない。

キュレーター:Burikora経済学研究委員会

魔法の地図

彼らは意外にも高い技術を持っていたことがこれまでの発見からわかっているが、それは大陸の動きを予言するまではなかったはずだ。しかし、1万年前の人新世国分寺遺物から、我々の時代の地球の陸を表す地図が出てきた。これまでの調査により氷河期の到来による海面の低下、隕石の落下など数々の自然現象により、1万年前の大陸の形とは違うことは確実である。彼らの技術が思った以上に高かったのか、何か特別な、失われてしまった、今の発達した科学でも解明できていない別の技術によってのものか、偶然なのか。この遺物はオーパーツとされている。

キュレーター:2家

多様欠:♡1

今季トレンド

2021年の地形を模した柄と絶妙な同系色の色使いが各ハイブランドで流行中。大陸を模した柄を並び替えたりぶつけたりする表現がデザイナーたちの間でも模索されているようだ。老舗ブランドであるほど大陸の表現は正確だがパチモンの場合2021年には存在しなかった大陸が書き足されている場合があるので鑑定の際の参考にしてほしい。

キュレーター:伊澤

21世紀人による制作方法の説明

目をつぶってうろ覚えで世界地図をかく

制作者:西田

出土品整理番号:MAU2021-014

 

121世紀人による解説パネル

(2 件)

繁華街

当時の繁華街のネオンを撮影した写真。ブリコラ人は貧富の差が激しく文化にもさがあったため、一部の富裕層のみがおとずれる場所であったことがわかっている。

キュレーター:小関

多様欠:♡2

花火の時に撮りがちな写真のすごいバージョン

カメラのシャッタースピードを長く設定してとる、花火で文字や図形を描く写真、のすごいやつが発掘された。クリエイティブ集団によるものなのか、ただの大学生のお遊びなのか全くもって謎であり、ミステリー好きに人気。

キュレーター:二文字

多様欠:♡1

21世紀人による制作方法の説明

普段触っているスマホの指でなぞっている部分や動きを記憶し描き起こす

制作者:画面跡

出土品整理番号:MAU2021-015

     

121世紀人による解説パネル

(2 件)

ブリコラ人の認知世界

ブリコラ人のうちの85%の人種は、色覚、形状認知のどちらかの能力のみが発達しており、どちらかの能力が衰退していると考えられる。
1枚目の絵はその他15%のブリコラ人が描いた通常の林檎だとわかるが、色覚や形状認知能力が低下しているブリコラ人がリンゴをリレー形式で描くとこのように変化していく。

キュレーター:山本歩惟

多様欠:♡2♢1

ブリコラ人の小学校の授業

ブリコラ人の初等教育で行われる授業の手法。ブリコラ人の豊かな創造力の秘密でもある。物事を意味から学ぶのではなく、形や動きから、それがどのような意味を持ちうるかという可能性に自ら気づいていく学びのプロセス。

キュレーター:Kenta Hara

多様欠:♡3

21世紀人による制作方法の説明

りんごを描き、そのプロセスをあべこべにして再度描く。りんごとは知らない他の人が同じプロセスで描く。

制作者:あべこべ絵伝達法

出土品整理番号:MAU2021-016

     

121世紀人による解説パネル

(5 件)

ブリコラ人の食べログ

ブリコラ人が食べたものに点数をつけて独自に記録していった写真。SNSでの投稿等は無く、ブリコラ人個人のカメラフォルダに保存されているもの。

キュレーター:遠藤

多様欠:♡1

証明写真

これは、ブリコラ人の顔写真に名前を載せた証明写真である。ブリコラ人は当時、数字という記号で個人を判別していた。また、個々の個性が尊重される時代になったことにより、顔の形状も個々で差が出るようになる。

キュレーター:平井

多様欠:♢3

写真による食と金の記録

無職の50代男性による写真。当時流行っていたInstagramをやりたいと思ったが、特に映えるようなものもなく、自身の記録としてもその日の食べたものと所持金を書き表して写真を撮り始めた。最初はカロリーメイトや卵など食材が写されていたが、次第にザルなどの食器だけになっていく。-は借金だろうか、何か良くないものであるのは確かだ。

キュレーター:池上

多様欠:♢4

黙食

かつて疫病が蔓延し、「黙食」が徹底された。食事の際、一言も発する者は居なかったという。
しかし、「美味しい」「作ってくれた方への感謝は伝えたい」そう思った人々は紙に感想を書き、残していった。
ただし「美味しかった」「ごちそうさま」と素直に書くのが恥ずかしかったのか
「427(シニア)=柔らかいからお年寄りでも安心して食べられる」
「219257(追句、2個な)=ついでに、この2つは美味かった」
「19892(行く、焼くね)=また来てくれたら焼くね」
など少し独特な解読が必要なため、現在国単位で総力を上げ、解読に励んでいる。
来年度から、義務教育に語学の一つとして「moku-syoku」が追加される予定。

キュレーター:8817 t沢

多様欠:♡9♢8

罪食記録

食物にも罪を規定された中で罪状は塩分過多罪やカロリー罪、腐敗罪など多岐にわたる。
これはその食物が逮捕され刑務所に入る際の記録写真いわゆるマグショットである。

キュレーター:成田

多様欠:♡2♢2

21世紀人による制作方法の説明

当時食べた食事の残骸を無作為に選出した数字と共に撮影する。

制作者:2033

出土品整理番号:MAU2021-017

作品

121世紀人による解説パネル

(3 件)

ブリコラ人の民族音楽

ブリコラ人たちは週に一回、コミュニティの結束感を高めるために自前の音を持ち寄ってその場で民族音楽を作りながら奏でる習慣があった。各ブリコラ人たちが持ち寄る音は主に、その週に印象に残った音や、その週に一番よく聞いた音だと言われている。

キュレーター:Kenta Hara

多様欠:♡5♢4

未曾有の災害記録

2021年10月に発生したとされる地震の災害記録。映像媒体で保存されているため、也浜博物館に収蔵されている「パーソナルコンピュータ」を使わないと記録を読み解くことはできない。
以下記載内容↓
災害救助には特殊能力を持ったヒーローが重宝され、地震で真っ暗な世の中では五百円均一の自家発電ライトが飛ぶように売れた。巷ではおちょぼ口に天使の羽を生やしたスタイルが一世を風靡しており、地震での暗い雰囲気を和ませた。その一方で治安は悪くなり、覆面をつけた集団がこの時代の重要な機材「携帯電話」を強盗する事件が多発しており、ヒーローも太刀打ちできず。そこに立ちはだかったのは「ボクサー」と呼ばれる、人を殴ることで賞賛を得られる人々だった。彼らのおかげで平和は保たれる。主食は麺類となり、そのうちに自家発電ライトは見た目重視となっていった。今後地震に対応するために折りたたみ式の持ち運べる家が主流になったが、勝手に折りたたまれることによって人口の9割は死滅した。そこで世界をまとめあげたのは、ツタンカーメンというお面を被った勇者だった。彼は自分度は演説などをしなかったが、秘書のサングラスをつけた男が代わりにしていた。

音楽は復興時に心を鎮めるために流行した「コンテンポラリーミュージック」と呼ばれるもの。

キュレーター:南蛮

多様欠:♡3♢4

ブリコラ音姫

21世紀の人々はトイレの際、ブリコラ音姫と呼ばれるこの音楽を流していた。
この音楽を流すことでの効能はわかっていないが、トイレという閉塞された空間でも外界とのつながりを感じリラックスするため、彼らの生活音を取り入れた音楽になっているようだ。地域ごとに非常にバリエーションに富んだ音楽が現在でも発見されているが、日本国内での発掘のみであることに加え、比較的人口が密集した地域に見られることが多い。
それにしても、ブリコラ人のトイレはほとんどが水洗だったという。彼らの生態には未だに驚かされることが多い。

キュレーター:ブリコラ文化研究所解析員Y

多様欠:♡6♢6

21世紀人による制作方法の説明

各自で集めた音をもとにして、相談や話し合いをあえてせずにリレー形式で音を追加したり、自由に人が作った部分をアレンジしたりして作曲した。出来上がった曲もとに動画をつくった。

制作者:※んで終わらせない

出土品整理番号:MAU2021-018

     

121世紀人による解説パネル

(1 件)

スキンペイントファッション、いかめしカラー

当時、服を着るだけでは自己表現に物足りなくなった人類は、肌を染めるというファッションを取り入れ始めた。それ以前は爪のみマニキュアという液体が塗られていたが、どうやら爪の範囲を超えて全体に塗ることが世界的に人気であったという。
この写真は当時の流行カラー(いかめし色)と流行ポーズである。

キュレーター:流行ファッション研究会近藤

多様欠:♡4♢2

21世紀人による制作方法の説明

制作者:か

出土品整理番号:MAU2021-019

 

121世紀人による解説パネル

(8 件)

ストライプタイル

2021年当時最新鋭のオシャレタイル。シンプルな白タイルに細かく少し色の違う棒状のタイルを貼り合わせることで生活に飽きがこないタイルとなっている。
棒状のタイルの脆さ故にすぐ廃れてしまったため、こんなに良い保存状態で出土するのは稀である。
来年の2月にスダリア共和国のペクシアナ国立博物館に収蔵される予定である。

キュレーター:南蛮

多様欠:♡子供1

人類勝利の証

21世紀、人々は驚異的な生命力を持つ虫『S』に悩まされていた。
奴らは白く細長い形状をしており、体はカリカリと固かった。どこにでも湧いて出る上なんでも食べてしまうため、人類は食糧難に陥った。
この虫に対抗すべく人類がたどり着いた殲滅方法はただ一つ、奴らをバラバラにへし折ることだった。
これは、バラバラにへし折った『S』を人類が勝利の証として収集した痕跡である。

キュレーター:柴崎

多様欠:♡4♢8♡スマイル1

夏休みにそうめんをもらいすぎたブリコラ人

ブリコラ人の夏休みにはお中元を送る習性があり一番人気がそうめんである。
そうめんとは簡単に食べられる便利な食材だがなかなか減らないのが難点である。
この写真はお中元をもらいすぎてしまい棚にしまおうとしたら床にぶちまけてしまったプリコラ人の悲しみの図である。

キュレーター:おかもと

多様欠:♡6

21世紀のコンクリート

この壁面はコムギの毛を混ぜ込んだ石材で出来ており、当時の住宅における一般的な壁、柱などに使用されていたとされる。
近年、21世紀の深刻な環境変化で、コムギと呼ばれる生物が大量発生し、従来の生態系が脅かされていたことが背景にあると明らかになった。
我々の研究によれば、コムギは全長60cmほどのハリネズミ科に酷似した哺乳類である。一体につき一週間で5kg分の毛が生え変わる生態が確認されているが、詳しい原理は解明されていない。

キュレーター:カネコ

元海

今現代に海というものは存在しない。今生きているものは誰も海を見たことがない。
しかしはるか昔、この地には海があったらしい。それは太平洋と呼ばれ本作品の数十?数万?数億倍の面積があった。この縞模様はその名残りである。水は干上がっても、波という現象でできた砂の形がそのまま残りそれが保存されている。

キュレーター:伊澤

多様欠:♢1

1万年前の潮

流れが見えるが、真ん中に流れを堰き止める物がある。これは、潮の流れの図で、海の生き物を捕まえる時の方法が書いてある物だと考えられている。この時代の地球は暖かくて、生き物が多く、今より海面が高かったことが地質調査によりわかっている。この時代にはゴミは灰にして捨てていたことが、別の遺跡からわかっているので、海の生物の骨が出土することはなかなかない。だから確実に海の生き物を食べていたとは言えないが、人口、海の近さを考えると、食べていた可能性が高いと考えられている。真ん中の流れを堰き止めている物は海の生き物を捕まえるための道具を表すで、なんらかの袋状のものを海の中につけて生き物をつかまえたのだろう。今、我々の食べているものは、全て工場で作られているが、1万年前は、食べ物を自然の中に取りに行っていたのだ。

キュレーター:2家

多様欠:♡1♢1

そうめんタイル

こちらはトップモデルが自宅マンションの壁に、一面に使用したことがきっかけとなり、社会現象を起こすほど人気となったタイルである。肌に馴染むような程よい「白」と、触った時の細かな凹凸がいい風合いをだし、多くの人の心を掴んだ。

キュレーター:よしだ

多様欠:♡1

ブリコラ人の集合体

細長いものはブリコラ人を表現しており、ブリコラ人が作り出す世間の流れを表現したのがこの作品である。細かく見ると細長いものにも差はあるが、大体が大きな左上への流れに飲み込まれている。しかし所々に見られる小さなノイズが、一瞬で流れが変わる可能性を示している。

キュレーター:平井

21世紀人による制作方法の説明

紙にひたすら茹でる前のカリカリの【そうめん】を貼り付ける

制作者:橋場

出土品整理番号:MAU2021-020

   

121世紀人による解説パネル

(3 件)

ブリコラ人のマイボトル

2021年当時、ブリコラ人の社会には環境に配慮すべきという考えのもと、プラスチックなどを素材とした使い捨ての容器の使用を避けようとする風潮があった。その風潮の中で繰り返し使える素材で作られた自分専用の容器を持つことが広まり、その容器にはそれぞれが好きな絵を書いたり目印を付けたりしていたようだ。

キュレーター:寺沢空

多様欠:♡3

ガラス製バット

ブリコラ人が用いていた武器のようなもの。表面に施された装飾は主にヒトや風景画が描かれ、その意味する所は自らの権威を誇示するためと言われている。中は空洞なので、砂や液体を入れる事で重さを調整することは出来たが、入れ口があまりに小さく大変に不便であった。

キュレーター:/gar

多様欠:♡1

ブリコラ的携帯用トイレ

ブリコラ人達の間で流行していた携帯用トイレである。表面の模様によって長時間携帯していても爽やかな香りが保たれるブリコラ人の1/2のほどの人々が生活必需品として所持していた。
表面の絵柄によって香りも変わってくるため、ブリコラ人は自分たちの想いのままにブリコラ的携帯用トイレの絵柄を変えていき表現していった。そのことでブリコラ的携帯用トイレは【芸術面】でも発展していった。ブリコラ的携帯用トイレの普及により、「排泄物は等身大の自分を表現する物」とする考え方が広がり、新たなファッションを確立していった。

キュレーター:ボンボン

多様欠:♢4

21世紀人による制作方法の説明

ガラス瓶に絵を描く

制作者: コ タクキョク

出土品整理番号:MAU2021-021

     

121世紀人による解説パネル

(2 件)

電ノ線オ神サマ

約一万年前2021年辺りは電気を電線というものを使い配電していた。これはにわかに信じがたいことだが、人はこの電気を供給する線を神様と崇めた。人々にとって電気とは命の次に大切なものであったからだ。
その頃の人々が創造したのが一万年後になり出土した。

キュレーター:中村

決戦型自律兵器OXの図面

四世紀半もの間我々を苦しめ続けている自律兵器OXの開発当時の図面。
LX-0003型の図面も確認できるため間違いない。ここから奴らの構造を解析できれば人類逆転の切り札となり得る。

キュレーター:井田少将

多様欠:♡3♢2

21世紀人による制作方法の説明

電線・電信柱をトレース

制作者:佐藤渓葉、成田大喜、中村隼人、森島洸、富永諒

触覚的自我 ムサビ2021

武蔵野美術大学基礎デザイン学科 2019年9月20日

事前に、触覚的かつ視覚的に差のある素材を各自が用意し、遠隔授業で実施した。
Zoomに接続したまま1時間、アイマスクをして作業を行う。
その後、作品と解説は各自が撮影して投稿した。


001

相場芽衣

002

青山智咲

003


005


007

伊澤花

011

※うじみなぎ

012


遠藤加奈

013

岡本実優

014



016

金児花菜

018


019



023

近藤はな

024


025


026


029


030

草刈果椰

036

寺沢空

037


039


043

コノハナ

047

214

050

橋場怜央

051


053



054



058

星崎響花

059


060


061

水島魁

062


063

水野亜流

067


069



070


071


072


山本歩惟

076


000


Kenta Hara

22世紀恋愛論2021作品選集

Cover illustration by Ryuto TAKASUGI.

目次

課題

ワークショップ

作品選集


追憶の朝 ~本当の自分なんてない未来の恋愛 /永田大空


ミキちゃんナメくん ~生物の違いのない未来恋愛と偏見 /栗


ベニヒト ~寿命のない未来の恋愛 /楽しくない


夢見がち /古江大樹


パペット /nono


恋に落ちる ~床のない未来 /HAH


泡ひとつぶ ~AVのない未来 /古川卓磨


意識と静寂 ~「意識の持たないもの」のない未来の物体同士の恋愛 /ta


ブランコラ ~肉体に性的価値がない未来の恋愛論 /髙杉龍斗

課題

思考実験ワークショップ「可能人類学」は、実在しない人類、これから実在するかもしれない人類にまで対象を拡げた新しい学問領域です。世界をスマホに例えるなら、可能人類学はアプリの入れ替えではなく、OSのまるごと交換を基本戦略とします。そのため私たちは「~の未来」を考えるかわりに「~のない未来」を考えてきました。「学校のない未来」「スポーツのない未来」「観光のない未来」「仕事のない未来」などを考えるにあたって、「蝕」と名づけた以下のような思考テンプレートを用いました。

[~]のない未来を考える思考パターン
[~]が[~]とは呼べないなにかに変化する
[~]を代替する新概念が現われる
[~]を必要としない人類に変化する

今回の課題は、「蝕」を用いて「恋愛(とかつて呼ばれていたもの)の未来を構想し作品化する」ことです。
[~]になにか対象を代入し[~]のない未来の恋愛を考える、あるいは、
[~]に恋愛を代入し、恋愛のない未来を考えます。

作品形態は「超短編小説」いわゆるショートショート、あるいはそれに代わるもの。5分以内で読める程度の長さで。

ワークショップ

講座:「可能人類学」安斎利洋
東京経済大学コミュニケーション学部
2021年6月30日、7月7日、7月14日(いずれも遠隔授業)

講評(ゲスト):小野美由紀(作家)

全作品はこちら

作品選集

追憶の朝

本当の自分なんてない未来の恋愛

永田大空

昨日は同じ大学のはなちゃんと、地元の友達の祐介が自殺した。今日は今から大学の2限の先生が自殺する。
「空いた2限、どうせならカフェでも行かない?話があるの。」とのことだった。図書館の入り口で待ち合わせしようとだけ言っておいた。僕と歩美がどこかへ行く時は、いつも彼女の言葉がきっかけだった。

僕らは自殺すると記憶を入れ替えて別の人間に生成変化できる。だから今の日本は自殺率が国民全体で60%、特に20代では80%を超えていて、国民のほとんどが一度は自殺を経験している。それが、止まらない自殺率の増加に対してこの世界が選んだ方法だった。自殺したことがないのは、一部の富裕層、特定の信仰の下で自殺しないことを信条とする人達、そして、僕みたいな変わり者。そのどれかだ。世の中はみんな効果的に自殺しながら、様々な人生を行ったり来たりする刺激を楽しんでいた。

2分遅れてきた歩美は、いつもみたく溌剌としていた。もうセミが鳴き始める頃だったから、二人とも汗びっしょりだった。
カフェまで歩く間は他愛もない話題が続いた。バイト先に来た変な客だとか、昨日の夕飯みたいなことを話した気がするけどよく覚えていない。

カフェの席に着く。僕は朝食を抜いていたのでナポリタンとオレンジジュースを、歩美はサンドイッチとカフェオレを頼んだ。
僕が用件について聞くと、歩美は「ちょっと私が言い出せるまで待ってて。」といった。こういうことは、彼女との長い付き合いの中でも初めてだった。いつもの歩美らしくなかった。きっと重大な何かが来るのだろう。僕は来たるべき事態に身構えながら、しかしそれを誤魔化すようにナポリタンをむしゃむしゃ食べた。二人とも黙々と食べるので、騒がしいカフェの中で僕たちの座席だけが不思議な沈黙に包まれていた。

「私ね、自殺しちゃおうと思うの。」
僕がナポリタンを三分の一くらい食べ終えた時、歩美がそう呟いた。
「そうか、いよいよって感じだね」表情だけ明るくしながら、僕は複雑な気分だった。
「私、ずーっと悩んでたの。なんだかこの身体を傷つけることが怖かったの。けどね、このままじゃ私本当に死にたくなっちゃう気がするの。そうなったら、本当に一生自殺できなくなっちゃうでしょ?だから、本当に死んじゃおうって決めたの。」

足元で地殻変動が起きてるみたいだった。僕と歩美はこのまま、互いが互いを好きな間はそのままに生きていくとばかり思っていた。彼女にも、当たり前に自殺する自由はあるのに。しかもその自由は僕の気持ちとはなにも関係ないのだ。僕に彼女を引き止める権利なんてない。ただ、自分と同じ境遇でいて欲しい人間が一人減るだけだ。

「いつにするの?」
「明日、明日の夜にする。」
僕は驚いたけど、向こう見ずな彼女らしいと言えばそうだと思って黙っておいた。

「ちょっとくらい相談でもしてくれればよかったのに。」
「あんたに相談したら、まーた難しい昔の偉い人の言葉とかで私を引き止めるんでしょ。」
「まあ、きっとそうだけどさ…」
「やっぱりあんたは変わんないね。」

そう言って彼女は笑っていた。けれどその表情は、ただ表情筋があるべき場所にあるためにそのように見える、ということ以上の何も訴えてこなかった。ここまで感情の漂白された笑顔があるのかと感心するほどだった。

「そうだ、どうせなら私の自殺見にこない? 明日の夜、うちにおいでよ。」
黙ったまま頷いておいた。それ以外に何もできなかった。
「なによー 今時、自殺なんてみんなやってるじゃないの。そんなに私が大事なの?」
「そりゃあそうだよ。僕は今の君が好きなんだ。今のままの君がそのまま。だから、正直自殺もして欲しくない。」
「私だって悲しいわよ。けれど、人は変わるのよ。それは時にどうしようもなく、自然の流れとして私たちを襲うの。そして少なくとも、あなたにもその可能性はあるの。とにかく私は死んで、生まれ変わるの。それだけよ。」
歩美の言葉は、今の僕には分からない何かに裏打ちされた柔らかさと重みを纏っていて、それが僕の雑に縫い合わせた心を一度解いて、また丁寧に繋ぎ直すようだった。

次の日の夜、僕は歩美の家に行った。部屋を新しい人格のためにまっさらに整理したら、残しておいたテーブルにありったけの豪華な食事を並べてパーティーを始めた。食事を済ませると、僕たちはただ二人で話し始めた。僕は決して言葉を紡ぐことを焦らず、彼女もそれを決して遮らなかった。だから二人の会話は、度々数分間の沈黙が流れる歯切れの悪いものだった。でも、それがその場に最もふさわしい方法だったのだ。学校の裏庭にいたハナカマキリや、二人で初めて行った喫茶店のまずいコーヒーや、正しい世界の終わり方。僕らは重要なことと重要なじゃないことを、どちらも同じくらいの熱意で話した。きっと世界の2パーセントくらいは語り尽くしてしまっただろう。

「それじゃあ、そろそろ死ぬね。」
「うん、それじゃあまたね。」

歩美がドロドロと溶け始める。人間に潜在する海が引き出され、彼女はそこへと還るのだ。彼女の身体が、精神が、生命のその始原の鼓動へと遡行して、そこから加速され、彼女は新しい生命として再びこの世界に生まれ直す。日が昇る頃には、彼女は別人になっているだろう。
水溜りになった彼女を眺めていたら僕の涙が水面に落ちて混ざり合った。

目覚めた僕は静かに身支度を済ませた。不思議なほどなんの感情も湧き上がってこなかった。身支度は事務的に、機械的に一つ一つ済まされていった。僕は部屋を出る前に、最後に一度だけ、隣で眠る人の顔を見た。ちゃんと知らない人で、綺麗な寝顔だった。今日から僕とこの人は知らない人同士だ。けど、この知らない人もきっと世界のどこかで生きるのだろう。それだけで、きっと明日も生きていける。そんな気がした。この世界も悪くない。そう思いながら、僕は14階から飛び降りた。

昇り始めた太陽が、あまりにも美しい朝だった。

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ミキちゃんナメくん

生物の違いのない未来恋愛と偏見

生まれて初めて恋をしました。
男の子。女の子。
私はそんなことはどうでも良くて、
鼓動が走ったから好きになったの。
あなたは、時にはキモチワルイと言われ、時には触られ、
でも、嫌な顔一つしていない。
そんなあなたが好き。
すべてを受け入れている、心の広いあなたは私の好きな人。
そんな人と私は今日結ばれる。
待ち合わせ場所は公園。
ベンチに座っているとあなたがやってきた。
ゆっくりと近づくあなたをみて、
私は結ばれる震えと緊張で手汗をかいた。
今あなたと手をつなげば、数秒でほどけてしまうだろう。
そして私の目の前に来た。
感じた。
私の服の中に入ってきた。
そわそわ
じわり
と私の身体を触り
穴の中に入っていった。
ぬめりのあるあなたと
私はつながって
快楽の頂点に達した。
すると、あなたの友人が私の方に来た。
私の小刻みに震えている姿をみて、嘲笑ったように感じた。
今の私の姿を親が見たら、どんな気持ちなのだろうか。淫らな私をみて、笑うのか。泣くのか。倒れるのか。
しかし、周りの目なんて気にしていては、あなたと一緒になれない。
私は君とのつながりは一生覚えているだろう。
ナメクジの君との性行為。

-数ヶ月後-

私はいきなり吐き気がした。
トイレに駆け込み、胃にあったものが全て口から出た。
最近ゲップも増えて、立ちくらみもする。
生理も来ていないし…過った。

“妊娠”

私が直近で性行為をしたのは、
ナメくんだ。
「ナメくんとの子…?」
私は興奮した。
あり得ないくらいのヨダレが出た。
私の一番好きな人との子供。
どんな顔になるのだろう。ナメくんに似て欲しい。ヌメヌメしてて欲しい。もう一度したい。
そんな感情が溢れて、妊娠は嬉しかった。
この嬉しさを共有したくて、
帰りにケーキを買って、母親にサプライズすることにした。
「私、子供が出来たの。」
と私が言うと、
「よかったじゃない!お相手は誰なんですか?」
と母が聞いてきたため、答えた。
「ナメくん!」
「ナメ…くん?」
「うん!ナメクジの」
すると、母親は黙り込んだ。
数秒すると、母は見たことない顔で、口を開き
「ナメクジとの子供なの?信じられない!気持ち悪い!」
と叫んだ。
その発言を聞いて、私は
“プツン”
と何かが切れた。
目の前にあったケーキを切る用の包丁を右手に持ち、
止まらない口を塞ぐように母の顔を切りつけた。
私の足元は血まみれ。

「一生愛すからね…。ナメくん。私のお腹にいる子供。」

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ベニヒト

寿命のない未来の恋愛

楽しくない

生き物には原則として寿命がある。前に生物の授業で習ったけどヒトである私には全くピンと来なかった。昔の人はアリとかイヌとかと同じで寿命があった。つい数百年前まで人類は当たり前のように老いきって、当たり前のようにこの世から消えていたらしい。昔の人はおうちで家族と話している時も、仕事をしているときも、デートをしているときも自分という個体が無くなる恐怖を感じながら過ごしていたのかと考えるとゾッとする。だけどそんな恐怖に昔の人が耐えていてくれたおかげ私が生まれたわけだから感謝しないといけない。今のヒトは定期的に身体が分化し、細胞が若返る。だから肌が皺々になってもまたピチピチに戻る。私は生まれて約20年で初めて分化を経験した。

・回想
目の前に小さい私がいっぱい居る。物理的に小さい私。私もそんな私の一つ。思わず私は近くに居た私を食べた。一つ食べた途端に得体知れない衝動に襲われ。出来る限り多くの私を取り込んだ。手の届かなかった私達が悲しそうな目で私のことを見ている。ああそんな顔しないで。私だって本当はあなた達も食べたいの。彼女らは風に乗って山の方に飛んでいってしまった。去る者のことなんかすぐ忘れてまた食べた。次第に満腹感に近い感覚になった。なんだか眠くなってきた。これは気味の悪い夢なのだろうか。

目が覚めると地球の夜景が目の前にあった。アフリカ大陸上空の疎らな夜景だ。そういえば誕生日前で展望塔に連れてきて貰ったのだった。10代最後の日だからってこんな綺麗な夜景を見せてくれた。それからどうしたのだろうか。彼はどこに行ったのだろうか。
「だっ大丈夫?」と男の人の声がする。しかし周りを見てもどこにも彼の姿はない。
「おーい。」
声がなる方に目を遣ると彼が巨大化して立っていた。首が痛くなるほど見上げなければいけない。
「随分小さくなったね。」そう言いながら彼は膝立ちをして私の頬を手で包む。それから形を確認するように全身を撫でる。ゴツゴツした手が痛い。
背伸びをすれば丁度良かった彼との身長差が埋めようのないものになっている。彼が巨大化したわけではないことをそこで悟った。私はどうやら戻ってしまったらしい。生まれて始めて戻った。でもまだ戻るような年だとは思わなかった。今の私は10歳のときと同じくらいの身長だろうか。
「これは10代をまたやり直せってことかな?」と冗談を言った。
自分の高すぎる声に驚いた。。
「…そういうことかな?」

彼の声はぎこちなく何かむず痒さを隠しているようだった。そしてその違和感はその後もずっと続いた。初めは私の幼くなった身体に魅力を感じなくなってしまったのかと考えた。でも彼は私の後に別の幼い身体の女と付き合い始めた。たくさん分化した人を見てきた今だから分かることなのだけど、ヒトは戻る前と戻った後では何かが変わる。具体的に何が変わったのか説明するのは難しいのだけど接すると何か違和感を感じる。場合によっては同じ人とは思えなくなることもある。あのときに風に乗って去った彼女たち、きっとその中に彼が好きな類の私が居た。けれども運が悪いことに私は彼女を取り逃した。私から分離してしまったのだ。
今朝、久し振りに戻った。だからこんな昔のことを思い出した。また夢中になって食べていた。また私達がどこかへ飛んでいった。あの娘達が風に吹かれてまた何かのめぐり合わせで出会ってくれればと途方もないことを考える。もしかしたらもう既に風に乗った彼とはどこかで出会っているのかもしれない。そういうことを考えるとだけで無限の人生が少し楽しくなる。

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夢見がち

古江大樹

ぷしゅ。
少し間抜けな音がして蓋が開く。蝉の声が鳴り止まない中、ぼんやりとした頭に少し低めの女性の声が微かに響いているのに気が付いた。「ほらいつまでゲームしているつもり?夢から覚めなさい!」彼女は仰向けの僕を覗き込み起こそうとする。はて、僕は何をしていたんだろう。

「人類は皆等しく永遠に生きられるようになったんだよ」と彼女は少し低い声で言う。ぼんやりとしたままの僕の記憶を呼び起こそうと彼女はこの100年で起きた歴史を語ってくれた。彼女の説明によるところ21世紀の後半より遺伝子に関する研究は大きく進歩し、人間の生と死の価値観は大きく変化したらしい。僕にはまだよく分からない。

晴れた空の元、びっしりと高層ビルが生えており景色が暑さで揺らぎ僕は汗ばむ。季節は夏だろうか。そのビル群の間を老若男女が蔦のようにひしめき歩いている。しかし、見た目は遺伝子組み替えにより簡単に変えられるようになったらしい。そして街を歩く人々の外見も自分で好きに決めたものらしい。ふと気になった僕は彼女に「じゃあ君の本当の姿はどんな感じ?」と尋ねた。彼女は何も言わずに少し微笑んだ。

「100年前から最も変わったことといえば寿命が無くなったことかな。」
今まで寿命の原因とされてきていたテロメア配列を無限に延長させる事が、技術の進歩により可能になり人類は老いることがなくなったという。僕は難しいことはよく分からなかったが、記憶の断片にいる仲の良かった知り合いがまだ生きているということが分かり嬉しい気持ちになった。彼らにまた会いたいと思った。様々な情報に、夏の暑さのせいもあってか少し混乱したが徐々に現状を把握出来てきた気がする。

そうとなれば便利な世の中になったものだ。そういえば僕は100年前あたりに外見にコンプレックスを抱いていたんだっけ。それが今では容易に自分の理想の姿になる事ができるようになったのだ。ビルのガラスに反射した自分の姿を横目に誇らしげな気持ちになった。

少し歩いて少し高い丘に2人で登る。街全体が夏の煙に巻かれているようにグラグラ揺れている。

そして隣で街を見下ろす彼女はとても可愛い。そして何より何も分からないままの僕に丁寧に色んなことを教えてくれる。しばらくして丘を下り、少し外れた路地裏に入る。自動ドアが開き、室内の冷気が身体を冷やす。今日はお別れだ。

そんな調子で僕達は毎日を楽しく働きもせずに過ごしていた。その中でかつての友人たちと思われる人にも何人か会う事ができたし、充実した日々を過ごしていた。そんな何気ない毎日を過ごしていくうちに季節は秋となり僕は彼女に恋をした。

今日もいつものように彼女と同じ時を過ごす。木枯らしの風が吹き荒れる。紅葉した木々とビル群に囲まれた街のど真ん中で、ふと僕は彼女の細い指に手を伸ばした。
パチン。
落ち葉がざわめく。
乾いた音が鳴り響き、辺りの人々の冷たい視線が集まる。彼女は怒っている。やがて僕に背を向けるとそそくさと歩き初め去ってしまった。人混みの中に消え去りそれから彼女を見つけることは出来なかった。

僕は1人でビル群の中を歩く。

どうやらこの世界では恋愛は死罪に値するらしい。理由は簡単なもので、永遠の命を与えられた人類は繁殖の必要がないのだ。

1人で生活を続けていくうちに季節は冬になり僕は彼女の事を考えていた。当たり前に性別、年齢、人種をも遺伝子組み替えにより変えられる時代で僕は彼女の何が好きだったのだろうか。アイデンティティや存在を肯定してくれる物さえ自分で定める時代で僕はどうして僕で居られるのだろうか。試しに外見を彼女そっくりに作ってみることにした。また、性別を女性にしてみたりしてみたが、相変わらず僕の性の対象は彼女にあった。なぜこの時代に僕だけ性欲が残っているのか不思議だったが、仮想現実で恋愛ゲームをしていたことを思い出しただの名残であったと気がついた。単純な人間である。でもやはり彼女の事を想っている時間だけが僕でいられる気がした。それこそが僕が僕である理由であり、アイデンティティであった。僕は毎日彼女を想っては自慰行為に励み悶々としたまま眠りにつく。

季節は春になり僕は彼女を探すことにした。しかし何処を探しても彼女を見つけることは出来なかった。いつか2人で登る登った丘の上でちらほらと桜咲く街に春一番が吹く。僕はふと最初にお別れした路地裏を思い出し行ってみることにした。

自動ドアが開くとそこに彼女が立っていた。
「何しに来たの」
冷たく低い声で彼女が尋ねる。
心が空洞のようになった。僕は言った。「この世界では恋愛が存在していないことは知っている!性行為などもってのほかだ!だがどうしても君に触れたい!僕が僕であると、君であると確かめる方法がこれしか思いつかなかったんだ!」
彼女に駆け寄り押し倒す。ガタンと音がして倒れ込むと同時に柔らかくて暖かい彼女の腕に触れる。ようやく触れることが出来た。僕は嬉しさのあまり涙が溢れ出た。

ふと彼女のいる潤んだ視界に鮮血が映り込む。僕は彼女に見事にナイフで首元を裂かれていた。
「私を巻き込まないでよ」
グラグラする頭はまるで夏のようだった。

ぷしゅ。
少し間抜けな音がして蓋が開いた。はて、僕はまだ夢を見ているのだろうか。

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パペット

nono

――2197年
7時 目が覚める。まだ寝ていたい気持ちと闘いながら重たい瞼を持ち上げる。
7時10分 顔を洗う。20分 朝ごはんを食べる。45分 化粧をする。うまく引けないアイライン。8時 服を着替える。ベージュのロングスカートを手に取る。

ゴーンゴーン
8時20分 鐘が鳴る。
「もう出なきゃ」
対人ストレス値測定装置の前に立つ。ピピピ—『10%です。昨日の値に比べ2%減。今週の平均対人ストレス値は10.5パーセント。異常なし。』
「はあ、よかった。」
扉を開けて、外に出る。いつも通りの1日の始まりだ。
いつも扉を開けると私は扉の外で深呼吸をする。それで、視線を右に向ける。
ガチャ・・「おはよう、リリー!」
いつも通りニッコリ笑顔のジョンと目が合う。
リリー 「おはよう。今日のストレス値は?」
ジョン 「16.3。喧嘩する夢を見てさ、少し危なかったよ(笑)」
リリー 「もう、、気を付けてよね。今日も頑張りましょう。」
ジョン 「ああ!ありがとう!」
手を振ってジョンに別れを告げる。次に会うのはバスの停留所にいる三つ編みのナナ。
バスを待ちながら毎朝の占いの話をする。3人目は運転手のキャサリン。4人目はカフェで働くボブ。1日が終わるころにはスーパーで働く30人目のサラに会ってコンプリート。
おとなしく家に帰るだけ。そんな毎日。

――2100年。
ロサンゼルスの有名な学者がこの世の争いの根本は人と関わることで生じる「対人ストレス」であり、このままだと約50年後には第3次世界戦争が起こるという論文を発表した。これは世界中の人々を混乱の渦に突き落とした。
世界中の首相たちは度々緊急会議を開き、20年の月日をかけて、「人類個人化計画」を推し進めたのだった。世界中の人々に対人ストレス値測定装置を配布し、その情報は政府に毎日送られる。ある一定の値を超えた人間は危険と判断され、集団から除外される。プライバシーも個人の意思も存在しない。人類はグループ化され、争いが起こらないよう友達や隣人、恋人まで関わる人を限定することで対人ストレスを最小まで減少させた。

7時 目が覚める。7時10分 顔を洗う。20分 朝ごはんを食べる。45分 化粧をする。8時 服を着替える。家を出る。深呼吸をする。右を向く。
笑顔のジョンと目が合う。ナナに会い、占いの話をする。
いつも通りみんなに会って家に帰る。
毎日毎日穏やかな気持ち、それで幸せなのかもしれない。
でもふとした瞬間にこんなことを考えてしまう。
自分で選んだ人と出会ったらどんな感情になるんだろう。
いつもだったら、そう考えるだけだった。
でもこの日はその感情を抑えられなかった。
心の奥底にある感情はどんどん大きくなって気づくと布団から飛び出し、走り出していた。
「私もうこんな生活嫌。もし危険だとしても、もっと豊かな感情をもちたい。」
家を出て無我夢中で走った。だからと言ってどこに行きたいのか、何がしたいのかも分からない。だたこれはきっと私の意志なんだ。

行き着いた森である男性と出会った。
リリー「…あなた誰?」
?「僕は、、ショウ。ずっと南の方から来たんだ。君は?」
どくんと胸の中に何か感じた気がした。
リリー「私はリリー」
偶然会ったはずなのに、妙に心地よい。
がたがたになった心がすーっとならされていくような感覚。
2人は無言で見つめ合いながら近づいていく。

――住民管理機関
「おい、ルーム16と17の変異種の様子は?」
「ええ今ルーム16と17の境界で接触に成功しました。」
「変異種同士の相性が合って良かったよ。駆除となると時間も手間もかかるからな。」
「このままルーム25に移動させます。」

2人は強く抱きしめ合うのだった。

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恋に落ちる

床のない未来

HAH

落ち続ける人と物。この世界には地面がない。
「はじめまして、さようなら。」
この世界では質量が異なる人とは落ちる速度が違うため親交を深められない。

たつやは落ち続ける中で1人の女の子とすれ違った。
その子は綺麗な赤いドレスを着ていて、たつやは一瞬のうちに魅了された。
だんだんと上に上がっていく女の子。たつやは勢いよく女の子の足を引っ張ったあと同じ視線に合わせ手を握った。手を握ったことで同じ速度で落ちる2人。
「ごめん、きみの速度を変えてしまって。でもきみを好きになってしまったんだ。」
女の子は驚いた表情を見せたあと冷静になり口を開く。
「こんな機会を待っていたのよ。いろんな人とすれ違っていく中で、いつ自分の重さが変わるかわからない。ちゃんとした友達なんてできっこない。話せて嬉しいわ」
そう言って女の子は手を握り返す。
「私はさち。あなたは?」
「俺はたつや。」
そのあと2人は他愛もない話をしながら仲良くなっていった。

ある時、2人は子供を抱き抱えているやつれたサラリーマンとすれ違う。
「かよこー!かよこー!」
叫ぶサラリーマンに2人は声をかける。
「どうしたんですか」
「妻とはぐれてしまったんだ。」
どうやら嫁は子供を産んで早々、子供をサラリーマンに渡したことで質量が変わってしまい、夫と子供だけが落ちてきてしまったらしい。
「体重を軽くするために3日間何も食べてないんだ。子供を抱き抱えるために妻の手を離したのが間違いだった。」
たつやとさちは何も言えないまま徐々にそのサラリーマンとの差が開いていく中でしっかりと手を握う。
この世界では一度はぐれてしまえば、再会は難しい。

たつやはさちを抱きしめる。
「この方が安全だ。」
さちは力を緩める。
「本当にこれでいいのかな」
たつやは一層、強く抱きしめる。
「私ね、昔から同じ重さの人と出会って、同じ重さの人と結婚すると思ってたんだ。それが当たり前だし、さっきのサラリーマンみたいにもしもの時、辛い思いしなくて済むでしょ」
たつやは少し考えたあと口を開いた。
「君を早い速度で落とし続けていることは申し訳ないと思っている。けどあの時、君を掴んだことは後悔していない。これから僕は君を絶対に離さない。だから…」
「絶対に離さないなんて無理だよ!」
食い気味にさちは言う。
「そうだよね、ごめん。俺も本当はわかってたんだ…」
たつやは少しずつ力を緩める。と同時に少しずつたつやが下に落ちていく。
さちと見えなくなるくらい差が開いた時、上を見上げ続けるたつやの顔に少しの雨が降った。

END

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泡ひとつぶ

AVのない未来

古川卓磨

穴に棒を抜き差しするビデオが古今東西で流通しまくってたんだと。
うちのじいちゃんなんかYoutTubeで観てたって言ってたぞ、今じゃ考えられないよな。何でみんな同じような内容のビデオ観るんだろう。
服装を変えたり環境を変えても行き着くところは結局穴に棒を抜き差しするだけって笑うわ。
自分が何に興奮するかを他人に委ねたくない。俺たちはもっと深く深く突き詰める。ちゃんと考えないから穴を棒に抜き差しするだけみたいな浅いところで留まるんだ。

撮ってきたか。ああ。

バケツの中から溢れた冷気が下に流れる。洗剤の膜を腕に塗りバケツの穴を塞ぐように塗る。シャボン玉のような膜が冷気に押し上げられ膨らむ。耽美な丸みを帯びてパチンと弾けた。割れた瞬間スローに切り替わる。溜まった白い冷気がふわっと下に落ちて消えていく。

吸い付きたくなるような丸みが割れる瞬間ほど僕たちを興奮させるものはない。YouTubeに上げて仲間たちに共有しよう。

ーーーーコメントーーーー

Rei Nakamura
今夜も共有してくださってありがとうございます。もっと大きく膨らむところが見たくなりますね。より大きなバケツを使うといいと思います。それから、洗剤の量が足りないかもしれません。あなたの白い腕に洗剤をもっと付けて、割れるまで焦らすように腕のところを3カット別の角度と距離から撮ると割れたときより興奮できると思います。

ジェニファー岡田
バカ興奮しました。今度は、冷気じゃなくて着色した煙を使うとまた別の角度から楽しめると思います。おすすめは赤、緑、青の3色です。お願いします。

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意識と静寂

「意識の持たないもの」のない未来の物体同士の恋愛

ta

1
5050/11/11)  土星、木星、金星、月、星団、彗星、、、、、。
5070/11/11)  一言で言うともう飽きた。
5090/11/11)  何年も何年も、何年経っても何も変わらない。
5110/11/11)  だから、太陽系で唯一全容を見たことがない足がつくこの星の全容を見たいと思った。
5130/11/11)  同時にこのつまらない体から離れるためにこの鉄の体にこの複雑な星を取り込み、また取り込まれたいと思った。
5150/11/11)  マグマに沈む想像と氷河に潜る妄想。
5350/11/11)  ところで、私は、よくこの星を見てもいなければ、知りもせず、土に還れそうもない異質な機械だ。
2
2020/11/11) 私は46億年生きてきた。そして「あれ」を初めて見た。この何億年の間に、いつの間にできていた。
2820/11/11) いつもレンズを使って何を見ているんだろうか。
3620/11/11) 方角からして太陽系の他の天体をみているのか。そこまで他の天体が魅力的にも思えないけども。
4420/11/11) 宇宙空間にでも吹っ飛ばさない限り「あれ」が私を見ることはないだろう。意味のない妄想だろう。
5220/11/11) それならマグマで溶かそうか、それとも氷河に閉じ込めようか。
3
5100/11/11) 私はずっと漂流してきた。
5200/11/11) たいして面白くもない岩と光ばかり意味もなくうかぶところを。
5300/11/11) 遠くに見えた、恒星に照らされたその星は青色だった。真っ黒でひびが入ってる私とは対照的だ。
5400/11/11) 方向転換をしなければこのままいっしゅんで真横とも言えないほど離れた真横を通り過ぎることになるわけだけど、、、、、
5500/11/11) どういうわけか私はその星の中心に向けて「かじ」をきった。
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4
てんたいぼうえんきょうも、ちきゅうも、いんせきも
いっしょくたにして
また「ほし」になるまでおやすみなさい。

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ブランコラ

肉体に性的価値がない未来の恋愛論

髙杉龍斗(文と絵)

 

「・・・・ギュー・・・ギューーー・・・ギューーーーーー・・・・」
シチュウ、それは音を象った現象。
地球上全ての場所でおそらく誤差なく鼓膜の有無を問わずに体内に到着した奇妙な情報で、全人類は肉体の許容を超えた精神混濁により肉体と精神の究極的な乖離状態を起こし10分間肉体の自由を失った。
10分間のブラックアウトにより、全世界で死亡者600万人を超える惨事となった。
しかし、シチュウの最も大きな弊害は人間の遺伝子情報に判別不可能なバグを組み込んだことだった。その影響は新たに誕生する生命に対して等しく発揮された。
歯茎から指が生えているケース、体の表面が眼球のみで構成されたケース。100%の確率で超形態異常を起こし生まれてくる赤子たちを前に、地球上に存在する物質や知識の範疇を超えた遺伝子バグの無効化は不可能であると悟った人類は超形態異常矯正手術、通称”メタモルフォーゼ”の研究と法整備を全世界同時に進行させた。
しかしメタモルフォーゼは出産後の義務とはされずに、推奨される高額な医療手術という扱いに留まったため、もとより開いていた経済格差はあまりにも分かりやすい見た目の差異によって、さらに拍車をかけることとなった。
そして日本には”アンスラム”と呼ばれるメタモルフォーゼ未済者、通称ブランコラたちが暮らす地域が形成されていった。

1.
客は実に2週間振りだった。レビューサイトで2.7/10の底辺スコアを誇る私を指名するなど、余程の物好きなのだろう。私はアンスラム「θ」で唯一の人間のみを扱う店舗で働いている。メンテ代を抽出できずにやむを得ず流れ着いた人間ばかりだ。当然私もその1人である。そんな態度が客に伝わっていたのか、私のレビュースコアは最悪だった。日本にあるアンスラムで一番治安の悪いとされるθでも、接客態度には厳しいらしい。
長い髪に隠れた今にも剥がれ落ちそうな首筋の表皮をペラペラ指で弄りながら、バッグを片手に指定された場所で待っていると錆に塗れたタクシーが濁点をたくさん付けたような音を出しながら私の前に止まった。
「蚕様でよろしいですか?」
運転手がニットリと気色の悪い笑顔を浮かべて話しかけてきた。
「ええ、あなたが私のお客さん?」
物怖じしない私に驚いたのか、運転手は少し考え込んだような顔をした。そしてハッと閃いた顔をして
「あぁ〜!”出稼ぎ”ですか。最近増えましたねぇ。道理で、観光客とは反応が違う訳だ。あなたの客は私の同僚ですよ。頼まれて迎えに来たんです、所定の場所に女を届けてくれってね。ヌイと言うんですが面白い奴ですよ、なんてったってねやつは「」ああそう、はいはい。そう、出稼ぎよ。長いのよ、もうここに来て二ヶ月、慣れたものよ。」
話が長くなりそうなので遮って返答した。態度が気に入ったのか運転手は再びニットリ笑うと、後部座席のドアを開け私に乗車するように促した。
車に乗り込むとあまりの腐敗臭に思わずむせ込んだ。
「ゴホッ、ゴホッゴホッ、ウエッ、グッ・・・」
「あぁ、すみませんね、これでも消臭剤をかけたりと気を遣ってはいるんですけどね、へへ・・・」
「ゴホッゴホッ、これ、一体なんの匂いなの?よくクビをきられないわね、仕事用の車を、こんな臭いに、ウエッ・・」
「なんせ体質なもんで、ほら、いわゆる背中に当たる部分に胃が露出してましてねぇ・・」運転手はそう言いながらドライバーズシートの裏に貼ってある紙を指さした。
そこには『アンタクシーをご利用いただき誠に有難う御座います。弊社では雇用者層の都合上、お客様にそれに伴う多種多様なご迷惑をおかけ致す可能性がありますことをあらかじめお詫び申し上げます。』と書かれていた。
どうやら慣れたなんて口にするにはまだ早かったようだ。

2.
「着きましたよ」
運転手の一声で起きた私はこの匂いの中で眠りにつけたことに驚いた。何分くらい乗っていたのだろう。そう思いながらお礼も言わずに車を降りると目の前には「マルホランド」と看板にかかれた建物が聳え建っていた。初めて来る場所だ。θでもはずれの場所だろう。建物に続く通りには人の気配が全くせず、音も躊躇って出入りをしないほど静かで、光さえくることを拒んでいるかのように陰鬱として暗い。
建物の外観は中からの光でうっすらと見える。正面に構えた大きな扉から中に入ると、まず目に入るのは中央にある高い石の天井に続く一本の柱だ。その奥では大きなシャンデリアが3つ横並びにぶら下がっており空間全体を眩く照らしてる。一周したら息が切れるであろう程の広いエントランスには謎の記号が布地いっぱいに印刷されたカーペットが広がっていて、奥には受付カウンターらしきものがある。その内側には顎から梯子を生やした気味の悪いオブジェクトが置いてあったため「なんでブランコラの奴らってこうも趣味が悪いのかしら。」と呟きながらそれを覗き込むと、突然梯子が顎に収納され目がギョロギョロとゴキブリのように動いた。
「ワッ、ワッ、生きてる?!なによ、脅かさないでよ!」
「申し訳ありキィ!キッ!脅かすつもりゥェはなかっィィ。お名前は?」
「・・・・・」
一呼吸置いてから名前を伝えると、梯子顎の受付人は名簿のようなものを一瞬確認して
「蚕様ですね、ウッお待ちしておりました。ウッウッお部屋は向かってカッギィィィィ右の109号になります。お連れ様がお待ちですのでそのままお進みくださいホ、ホホホニ・・・」とだけ言って再び微動だにしなくなった。
言われた通り右の廊下を進むといちばん手前に109号室はあった。ドアをノックする寸前にリップをしていないことを思い出し、その手を自ら押さえこんだ。そのままバッグの中に手を突っ込みリップを手探りで探した。
過融防止口唇薬、通称リップ。私たちの仕事には必須のアイテムだ。精神の過融合やそれに伴う妊娠を防ぐ膜を精神世界に設置するための薬である。リップをたっぷりと塗り、改めてドアをノックすると「どうぞ」という声が聞こえてきた。
ドアを開けて入ると狭い廊下のすぐ右手に洗面所とバスルームがあり、その奥にベッドに座る人間の姿が見えた。
「えーと、たしかヌイさんであってるかしら?」
「はい、いかにも」
彼の姿を見て驚いた。長い黒髪のオールバックで、緑色のロングコートを着た彼は人間と遜色ない容姿をしていたからだ。いや、というよりそうかもしれないと思った。
「てっきりあたし、ブランコラだと思っていたからまさか人間だとは。なんでわざわざこんなところで?」
「いや、合ってますよ。僕はブランコラだ。」
「あーもしかしてメンテ落ち?」
「いや、生まれてこのかたメタモルフォーゼは受けたことありませんよ。嬉しいですね。」
彼は徐に靴を脱ぎ両足をあらわにして、こちらに両手両足を向けた。
「ほら、指の間に肛門がついてるでしょ?しかも不便なのがね”便意”とか、ないんですよ。だから許容量を越えると勝手に出てくるんです、その、便がね。出る寸前には感覚的にわかるんですけどね、ほんとに寸前なんですよ。あっ」そう言うと仕組まれていたかのよな完璧なタイミングで「プチュニニニニニ」という音とともに、くすんだ黄色と緑の筋によって構成された粘り気のある物体が彼の足指の間に、蛇のように姿を現した。ヌイはそれをチラッと見た後得意げにこちらを見てきたので、もうぶっ殺してやろうかという気持ちを腹に収め隣へ座った。
「さ、早いとこ済ませしょ、なんか要望はあるの?ちなみにリップなしは対応してないから、それ以外で。あ、30分ね、はいスタート」
私はせかせかとタイマーをスタートした。
「服を脱いで、僕の横で楽な姿勢で座ってください。それだけでいいですよ。」
「充分欲張りよ。で、接触部は?」
「膝で。オブジェクトは僕が持ってきましたので。」
そう言うと彼はコートのポケットから人差し指の先くらいの大きさの、渋い青色の立方体を取り出した。

3.
シチュウ後の人類はブランコラとメタモルフォーゼ済みの人間とに二極化していったが、どちらもたどり着いた結末はほぼ同じだった。それは肉体の価値の変化である。
私たち人間はメタモルフォーゼによって望めばどんな姿にでも生まれ変わることができる(メタモルフォーゼを受けることができるのは6歳までで一度のみ。そこで性別も選択する。平均寿命である115歳までにメタモルフォーゼとメンテナスに要する費用平均額は約8500万円と言われている。また”どんな姿”とはいっても旧人間の姿に則ったものに限定される)。しかしそれが仇となり”同じ顔、同じ体型”、の人間が多出したのだ。手術時に、世間的にブームのコメディアンなんかがいた時にはとんでもないことになる。そして自然と”見た目がいい”という概念は消えていき、見た目が整っていることは私たちが人間であるということそれ自体を認識するためだけのものとなり、それに伴い性的興奮もしなくなった。
対してブラコラはあまりに人間とは乖離した見た目をしていること、そもそも身体的特徴から性別判別不可能で生物としてお互いが身体的な共通項を探すことも難しいためブランコラ同士で恋愛することはない(蜘蛛とゴキブリがお互いを見て恋に落ちることはないようなもの)。ブランコラが私たち人間を見た時にどのような反応をするのかは研究されていないが、まぁ、する意味もないのだろう。
そうして肉体を用いた性行為が減退していく中生まれたのが精神性行為である。まぁ似た様な行為はシチュウから時を待たずして行われていたらしいのだが、それが”性行為である”と認められたのは数十年後のことだ。精神性行為を行なう前の相手への興味を獲得する手段は積極的な交流しか存在しない。
精神性行為とは個別の精神世界を共有像精神世界に移行しお互いの真のアイデンティティを開示して融合を行い、そのレベルが高ければ高いほど精神的快感を味わえるというものである。快感を感じている時の視覚的特徴としては「毛が逆立つ」ということが挙げられ、これは現在卑猥なものとして扱われているため公共の場での毛を逆立てるファッションは禁止されている。精神世界の相性が良かったり、回数を重ねお互いのさまざまな精神世界を理解すると融合レベルは高まり、それが一定以上に達すると精神的女性部分を多く持つ方の精神に着床し、3ヶ月で肉体から分離して新しい生命が誕生する。リップはそれを防ぐためのものである。
精神性行為を行うには①肉体同士の直接の接触②共有像精神世界獲得のための共通したイメージ、が必要になる。②で用いられる一般的な方法としては、視覚的にわかりやすいオブジェクトを用意することだ。目を閉じて①をした状態でそれを想像し、その一致によってそのオブジェクトの精神世界で合流するのである。②の一致度が高ければ高いほど融合レベルは高くなりそれに比例して快感は増す。オブジェクトの情報が複雑であればあるほど快感が増すとの噂もある。
「よく、確認しておいてください。」
そう言ってロギはそれを私の手に渡した。親指と人差し指の腹でコロコロと転がし、なんの変哲もない青い立方体のオブジェクトであることを確認した。色が妙に凝った青色であることは、最近の噂を鑑みてのことだろう。そんなことを考えている間に彼は服を脱ぎ終えていた。彼の上半身を見て一瞬硬直してしまった。
「わざわざ全部脱ぐ必要ないのに、膝でしょ?私も脱げってこともしかして。」
そんなこと分かっていたが、私は動揺を隠すために必要のないことを喋った。男だと思っていたヌイの胸部には果物の様にみずみずしい乳房が備わっていた。しかし股の間には確かに男性器が垂れている。
「もちろん、脱いでもらいますよ。膝でも、状況は合わせることが大切ですから」
「は〜、全く、仕方ないわね。」
動揺がおさまらない私は着ている服をゆっくりと、脱ぎ始めた。男だと思っていた存在が女でも男でもなかったという、ブランコラにとっては当たり前の事実を目の当たりにするまで、ヌイの場合は人間だと解釈していたためだ。手が震えていたかもしれない。流石に動揺に気づかれたのか、「”人間“って遅れてるんですね。」と言われた。私にはその意味がよくわからなかったがベッドに裸で座るヌイの姿を美しいと思った。

4.
静かに佇むヌイの隣に座り、膝を擦り合わせた。
「あ、そうそう、背景は純白の、誰も踏み込んでいない雪の様な白でお願いします。」
私は小さく相槌を打ち目を瞑った。
間も無くして自らの呼吸の音が聞こえ始めた頃に、真っ白の中に浮かぶ渋い青色の立方体のオブジェクトを想像した。あれ?そういえばリップどこにおいたっけ?うわ、さっきの便ちょっと匂うじゃん。ダメダメ、イメージがブレる。大きく深呼吸し、イメージを定めたところにヌイを感じた。
美しい香りが辺りに漂い始めると、匂いは全色の果実となってそこから生命の土を拡げた。すると土かと思っていた地面が半分に折れ始め年季の入ったクレヨンになり、流れる様に怒りを描くと一斉に風船を膨らませて無数の風船が空の夜を作った。一斉にガラスの80年を頬に叩きつけ、ぺらぺらの始まりを土曜日が包み込んだあとに屋台で焼いたその音楽がこんがりと鼓膜を落とした。さようならの嘘つきに目もくれずに流れる男たちが切断間際で一輪の花へと姿を変えていくと一斉に雌しべがとび散り、開けた先には醜さが失敗を遂げた美しさの象徴が青いオブジェクトの前に羽を広げているように見える。それの真ん中に位置する顔がこちらを向いた瞬間「うっっ!!!」
2人は同時に精神世界から離脱した。リップに弾かれたのだ。逆立っていた髪の毛が一斉に顔に垂れてくる。
まさか、初対面の精神性行為で過融合寸前にまで到達するとは。毎回万が一のためリップは使用するが、その効果が発揮されたのはじめてのことだ。”あれ”に到達する前のグロテスクな精神世界情景の数々はヌイのものだろうか、それとも私のストレスが原因か?相互理解には時間が短かった。あまりの相性にお互い興奮しすぎたらしい。
ヌイも当然想定外だったらしく、しばらく2人で黙りこくっていた。
「あの先を、見てみたい。」
沈黙を破った自分の言葉に自分で驚いた。あの先を見るということは高確率でどちらか、精神世界を除いた限りでは私が妊娠し、子を持つことになる。お金のない私がそれをすることはつまり、何か奇跡でも起こらない限り死ぬまでアンスラムで暮らすことを意味した。産んだ子を見捨てるほどの残酷さは私は持ち合わせていない。
しかし私はその言葉を改めて否定することはせずにヌイの方を見つめた。ヌイは私の視線に気づくと唇をなぞるようなジェスチャーをした。
「あ、そっか。」私は洗面所にスキップ気味でむかい、リップを水で洗い流した。
こちらをみて静かに微笑む彼の手の指の間からは、まさに便が垂れ流されているところだったがそんなことは全く気にならなかった。
隣に座り、もう一度さっきと同じ流れでコトを始めた。溢れんばかりの期待と気持ちを無視してイメージに集中した。
今度はヌイのことを理解しようと、アレに到達する過程をゆっくり楽しむように努めた。先程とは打って変わってゆっくりと展開していく精神世界情景をねっとりと舐めるように楽しんだ。足から足を飛び出させて本の上を踏みしめながらクラシックミュージックのように文字の上を流れ、静止画の鳥が残像を残して動く様を崖から見下ろしながら空になっていく。2人の様々が混ざり合い金と血のミルフィーユのような景色が現れた頃、ヌイは私のことを、そして私はこれから私がヌイに殺されるのであろうことを理解したがもう、そんなことはどうでもよかった。
私たちの精神世界が織りなした奇跡の像は、言葉に形容できないほどの妖艶さで精神を介して精神を愛撫しその快感に抱かれたまま私たちを精神世界から離脱させた。再び目を開いたときに私は踵のあたりに、確かに新しい生命を感じていた。
現実とは思えない浮遊感の中、ふとヌイの方を見ると、彼の右手には笑っちゃうくらい大きな刃の包丁が握られていた。
「貴重な経験だったよ、ありがとう。」
色々理解し始めてきたが、もう本当にどうでよかった。むしろこの浮遊間のまま人生を終えられるなら幸せだとまで思った。
「こちらこそ・・・ありがとう。今日は、本当に色んなものを見た。人生変わったわ。」
腹のあたりに冷たく鋭い感触が走った直後、タイマーが30分を知らせた。

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汎宇宙ポルノ

mission

箱根山中に着陸した地球外知性《ぬ》との交流事業は、進捗がはかばしくないまま20年が過ぎようとしている。長年の失政によって昨年ついに民営化した政府は、地球外生命交流事業の分野においても聖域なき改革が必要であるとし、宇宙人に向けた成人向けコンテンツ開発という窮余の一策に手を出すに至った。例によってコンテンツ開発の矛先は、《ぬ》研究で定評のある武蔵野美術大学基礎デザイン学科オートポイエーシス論に委ねられることになった。

巷に人間向けのポルノグラフィーがあふれるなか、人間という制約を外したときいったいなにがエロスでありなにがエロスでないのか、その基礎研究から始めなくてはならない。予算も時間的猶予もないなか、一週間で宇宙一のアダルトサイトを完成させなくてはならない。人間が対象ではないので、人類の裸体は禁止されている。ムサビキソデオートポの動向に、世間の注目が集まっている。

workshop

武蔵野美術大学基礎デザイン学科オートポイエーシス論
2020年10月23日
ワークショップ「エロスから人間項を消去する」

history

《ぬ》2009@東大情報学環

地球外生命《ぬ》との芸術交流プロジェクト2016

全作品

「オージャス」「オージャス黒ver」


オージャス  オリジナル


オージャス黒ver  オリジナル

地球人向け解説

オージャスは、その完璧な球体の緊張をほどき弛緩する。オージャスは自分の最も弱い部分をさらけ出すことにした。全身に鎧をまとって恐怖という敵に立ち向かうあなたはいつしか、心の奥底で眠る弱い部分を忘れた。剣を握りしめて来る日も来る日も戦いに明け暮れ、強張った表情で愛というものの存在を疑って生きているあなたの前で、オージャスは自分の最も弱い部分をさらけ出す。例えあなたに殺されたとしても、オージャスはあなたのすべてを受け入れることにした。

汎宇宙ポルノについて

性行為は自分の身体の最も弱い部分をさらけ出す。それは生存という観点から見れば最も危険な行為である。恐怖に囚われ、身の危険を感じながら欲情することはできない。欲情するということは深い安心が根底にある。そもそも欲情とは「自分の弱い部分をさらけ出したい」という欲求ではないだろうか。どんな生命も生きるために弱い部分を隠し、様々な敵と戦うために常に緊張して生きている。戦いとは恐怖の産物であり、愛とは相反するものである。恐怖に囚われている時は愛を感じることができない。汎宇宙ポルノとは、アクターが弱い部分をさらけ出すことで敵ではないことを伝え、安心を与えて弱い部分を呼び覚ます。愛とはどのようなものなのか思い出させてくれるものが汎宇宙ポルノである。

(Kenta Hara)

冬人夏ぬ

地球人向け解説

「ぬ」は他生命体に寄生し増殖する無性生殖の生命体であり、子囊菌類に極めて似た構造をしている。

「ぬ」は宿主に胞子を植え付け、菌糸を伸ばして栄養を奪い、次世代にあたる子実体を生やす。これは地球で言うところの冬虫夏草に近い。

この写真は、菌糸を宿主に巻きつけ終え、これから子実体が生えてくる一歩手前の状態を撮影した、まさに繁殖行動真っ最中のものである。人間が人間の繁殖行動をポルノとして扱うのと同様、彼らにとってこれはまさしくポルノである。

(真幌子囊菌類研究所)

unknown

地球人向け解説

「ぬ」がその本性を現すのは実に稀な光景であり、生涯でたった一度きり。

つまり、「ぬ」は同じ種族にしか欲情を催さず、つがい同士の間で初めて鎧を脱ぎ捨て、その姿を露出し合うということが判明した。

深夜、秘密裏にその姿を変貌させ、人類には理解不可能なコミュニケーション方法で相手と結ばれる。

それが確実なものであると仮定して、「ぬ」(未経験者)に向けて、未来への変身願望、未知のものへの好奇心や期待感を向上せるべく、目撃者の証言をもとに画像の作成を試みた。

(miyata)

宇宙人と地球人のコメント

  • ずっと見ていたい美しいエロさですね <元地球人より>
  • バレだかー <ぬより>

ぬ顕微鏡


オリジナル

地球人向け解説

最新の研究で「ぬ」が微生物を視認できることが判明した。微生物は至る所に存在しており、それを知覚できる「ぬ」はあらゆるところで楽しみを見つけている。しかし人間には不可視な領域であったため、ぬ顕微鏡が開発された。

「ぬ」は自分たちの視点を記録する手段を持たず、ぬ顕微鏡を通して撮影された映像は「ぬ」にも価値が認められた。特に微生物が別の生き物を捕食する映像に一定の需要が見込まれている。

(web作者名:ぬ研究者c)

地球人向け解説

「ぬ」は、地球に来て初めて水に出会った。

実体はあるのに、透明で、うまく掴めない。「ぬ」にとっては不思議な現象ばかりが起こる。そのもどかしさが「ぬ」を興奮させ、性的な感情を水に抱くようになった。

水の不思議な現象の中でも、特に葉に溜まった露がそっと水面に落ちた時に、落ちたはずの露が再び顔を出す現象に興奮するようだ。

(め)

まぬ

地球人向け解説

「ぬ」は人間と同じ有性生殖です。「ぬ」の形態は確認されていない今は、複数→合体で一になる→複数という繁殖を意味する過程をまるで再現して「ぬ」の欲望を起こします。

(まるはエロい政党)

ヌーヌヌモウケーズスのよぅみ〜ッサデモノミ!〜(人類日本列島生息用字幕)


地球人向け解説

性は消費でエンターテイメントだ!
「ぬ」ことヌーヌヌモウは人間界のポルノのエンターテイメント性に度肝を抜かれた。
ヌーヌヌモウに対個体の需要の感覚は分からなかった。
人間が人間を意識して繁殖もとい性交渉をする。それは我々の日常的な分裂と同じで、そこには他に何もいらないはずだった。
しかし設定やストーリーがあったり、更なる要素に要素を重ねたそれはとても楽しいショーだった。
「ぬ」の分裂は突然行われる日常的なものだ。
彼らその瞬間をエンターテイメントにしたかった。
沢山消費を促し売り出して、そして魅せたかった。
人類は隠し事のようにするが何もおかしいことでは無い。
私達は楽しみたいだけなのだから。

(米澤舞)

bugphilia

地球人向け解説

「ぬ」は自身を量子化することでデータ上での活動が可能である。その際アルファベットの「N」と「U」に似た形の言語の二進数でデータが表されたため、「ぬ」と名付けられたという説がある。データ上ではしばしば人間でいう突然変異体のようにバグが生まれ、「ぬ」の中には極小数バグに性的興奮を覚える者がいる。これらは人間で言うところのペドフィリア(小児性愛)やエキシビジョニズム(露出狂)などの異状性癖とおよそ同義であり、また人間に害を及ぼすものではないと判断されたためバグフィリアと名付けられ、彼らに向けたバグのポルノ画像が作られた。

(高橋仁・長嶋健太)

無題

地球人向け解説

ヌは湿った質感に性的興奮を覚えるという。人体にはエロシディズムを覚えなかったのになぜなんだ!しめっけにはかんじてしまう!

(藤田譲)

邦題:「純愛ダークマター」(原題:「|-+―-+|―-―」)

地球人向け解説

第AMN3群 SUN系 EAR発の大ヒット官能小説、ついに映像化決定! *全宇宙成人向け R-20(ESERO基準適用)
全宇宙が心震わした、愛という単語の中身を探求する革新的ジャンル「フィロソフィカルフィロソフィ」界の傑作!その一部を本日、特別に公開!

(「ぬ」は人間にとってそういった対象となりえない、気持ちの良くはない音や予測不能性、不可解なものに快楽を覚えます。)

(製作・原作:Guest E)

宇宙人と地球人のコメント

  • なんとなく宇宙を感じた…不思議だ

GGE-NU

地球人向け解説

食事を必要としない「ぬ」は地球の食物に強い関心を示した。その中でも特に生命の始まりの姿「卵」に性的な反応をした。そして、昨今の地球での卵不足は「ぬ」の性的な目的による、卵買い占めによるものだった。我々にも必要不可欠な卵。互いに調和して生きていく為「ぬ」の文化を尊重し動画及び静止画を作成した。

(自由が丘)

宇宙人と地球人のコメント

  • 初めて卵をエロいと思った!

flickr

地球人向け解説

ちらつき 点灯 明滅。

ぬはこの現象に性的興奮、快感を覚える。
詳しいメカニズムは解明されていないが、ぬの衝動的で本能的な快感を誘発させるらしい。
我々人間で言う「脳」の部分を直接触られているような、ともすれば危険な快楽とも言えるらしい。

長時間眺めたり、限度を超えてこの現象に触れると、身体に影響を及ぼす恐れもある(目眩、吐き気など)

中毒性も指摘されており、flickrが収録された動画をもう観たくないのにループ再生してしまったり、ふとした瞬間に観たくなることがしばしば起こると言われている。

中毒者は段々と麻痺していく為、より強い刺激を求める。程度の強すぎるflickrに関しては規制が必要との声もあがっている。

(しお)

宇宙人と地球人のコメント

  • 明滅っ_て没^頭して見_ちゃうよね~^ 👽ぬ
  • 点滅が始まるのを待つ時間がどきどきする!
  • 脳を触られてる感じするわ
  • ホタルみたいでロマンチック…(地球人)

SKIN

地球人向け解説

「ぬ」の肌質を考えました。触れるとなんだか柔らかそう。

肌の匂い、
肌の感触、
肌との距離感、

肌、というものはどこか後ろめたくなってしまうような魅力を秘めている。肌に触れるという行為は一つの親密さのパロメーターにもなり得ると考える。好意を寄せている人であれば触れられるとどきっとする。むしろ、そうではない他人にはあまり触れて欲しくない、デリケートな部分。

肌、という薄い表皮のすぐ内側には生々しい「生」がある。

人間の肌のようで人間の肌ではないものたち。
人間界では白くてすべすべの肌は魅力的とされるが人間以外の枠組みの中ではどうなるのだろうか。
人間と宇宙人の狭間で揺れ動くエロスの考察。

(さとう)

宇宙人と地球人のコメント

  • えろおいしそう ナンより
  • 食欲と性欲は似てるって言うしね!
  • 真ん中の一番上何ですか?地球人より
  • パンじゃない 地球人より
  • 右上がなんか良い 🌏
  • 内側より内側を感じる チーナンより

内側からの表象

地球人向け解説

予期せぬところに炎症が起こる体表のシステムエラーに「ぬ」は性的な反応を示した。特に体表の柔らかい部分にそのようなエラーが出た場合には、より強い反応をすることがわかっており、エラー部分をなんらかの方法で”潰す”ことで「ぬ」は快感を覚えているようだ。

「ぬ」は規律正しく潔癖といった特徴があるとみられ、そのようなエラーにひどく反応し、日頃の過度な抑圧が原因だと考えられる。

「ぬ」集団は外見が画一的であるため、そのような「個性」がうまれたときに喜ばしいものと捉えている節があるようだ。

(nkb)

宇宙人と地球人のコメント

  • 実存的エロス
  • 体表のシステムエラーって表現すき! 地球人より
  • ぬぬぬ!ぬぬぬ(自分はアザやカサブタにも興奮します!)

“ぬ”と人間の漫画

地球人向け解説

“ぬ”は人間を征服したくてたまらないようだが、宇宙平和条約によって惑星植民地を禁止されている。たぶん、フラストレーションが溜まっているだろう。そこで、その、”ぬ”が人間を征服する夢を、漫画でだけでも解放させてあげようかなと思った。

-漫画のあらすじ-

宇宙太陽系”ぬ”管理局地球部隊直属の”ねね”は、”ぬ”の取り扱いを失敗し身体を乗っ取られそうになる。そこでとっさに、”ぬ・イレイザー”を使うが・・・。“ぬ”と人間の共存を描く、ハイパークレイジーラブストーリー漫画爆誕!!。

(ゾエ)

宇宙人と地球人のコメント

  • 001:名無しのぬ  連載待ってます。

自画像

地球人向け解説

「ぬ」は自分の姿でしか興奮できない。
自分と少しでも違うカタチをしているものでは興奮しない。

このアダルトサイトは開くと真っ黒な画像が写し出され、自分の姿が反射で見えることによって「ぬ」は興奮する。
「ぬ」の持つ、パソコンには内カメラがついていない。

また、「ぬ」の世界には理性を保つために、鏡や反射する素材などが街中で使われていることはない。

(るとふ)

宇宙人と地球人のコメント

  • 汎宇宙的だね
  • 他のぬは自分と同じ姿していないの
  • この発_想_はなかった、なん<かすごい^納得しちゃう~^👽ぬ
  • 微妙なカーブの違いとかがあって、全く同じ「ぬ」はいないみたいです、、

「ホッチ」ホッチキス

地球人向け解説

ホッチキスとは、ご存知の通り人類が発明した、紙に針をを刺し通し、紙を綴じる文具である。しかし、今や全生物の自慰行為・性行為の基盤の道具へと移り変わった。「ホッチ」の略称で知られ、性行為に欠かせないものとして宇宙共通語で存在している。以下の文章は「ホッチ」の使用発端となった「ぬ」の日記の一部(翻訳済み)である。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

われわれが人類と交流をしたとき、人類はわれわれの領域にいくつかの道具を置いていった。そこでわたくしは「ホッチ」を見つけた。使い方が分からなかったが、観察と実験を繰り返したところ、針が発生するものだと判明した。わたくしは試しに自身の皮膚に向けて「ホッチ」を使用した。バチン!その瞬間脳内に火花が散り、思わずわたくしは激しくひるんだ。一瞬意識を失い、痙攣をしていた。気付くと皮膚には針が食い込み、少しばかり体液が滲んでいる。皮膚があらゆる細胞を巡り全身を揺るがす。からだの芯がざわついている。未知の感覚にわたくしはひどく興奮をしていた。「ホッチ」は時間が経つにつれて軋むような痛さを伴うようになった。その痛さからわたくしは針を皮膚から少しずつ取り出した。針が刺さっていた部分には傷口が残っていた。わたくしはしばらくその傷口を眺めていた。

この経験と感覚はすぐに仲間に布教した。いくつか話を聞くうちに個体によって感覚による用途が異なることを知った。わたくしは「ホッチ」の使用後すぐに針を取り出したが、取り出さずにそのまま残している個体がいた。他にも針を複数使用したり、他の個体と自身をつなぎ合わせたり、局部を針で綴じたり、中には全身に針を食い込ませても何も感覚がない個体もいた。現在はさらなる「ホッチ」の発展のため日々研究が行われている。      ーー2×××年×月×日

「ぬ」より

ーーーーーーーーーーーーーーーー

これを読んだ人類の皆さんへ

「ホッチ」は使用用途による個体差があります。「ホッチ」の開発のために個体による使用用途・感覚を募集しています。(人類以外の生物への妄想やその他感想なども可。)

ご協力くださる方はこの投稿に「返信」まで。ご意見お待ちしています。

(「ホッチ」研究所職員 ハル)

宇宙人と地球人のコメント

  • 昔皮膚にホッチキスが刺さった時に痛みよりもその異物感が体の中にとどまっていることのもどかしさを思い出した。<地球人>
  • サドでマゾだね(地球人)
  • ぬぬぬぬぬ、ぬぬーぬぬ…ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬーーぬ!(不器用なので、いつも針が上手く刺さらず何発か無駄にしてしまいます。が、上手に刺さったときの感情が忘れらず何度もやってしまいます!)

地球人向け解説

まだなにもわからない。わからないことをわかろうとすること、わからないまま受け入れること、赤をみること。深淵を覗く時、深淵もまたあなたを覗いているのだ。

(ふ)

宇宙人と地球人のコメント

  • じわじわくるエロさがある
  • 何もわからない、わかろうとするところに答えがある気がして面白いと思った。(地球人)

サイトのご利用にあたって

地球人向け解説

当サイト「Pan-Universe Porn」は、毎日mm動画をアップデートしています。全てがそろった100%無料mm動画集。自由にダウンロードできる膨大な無料DVDセレクション。

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【部屋の角】とは、3方向ないし他4方向以上からの平面が付き合わさった部分の総称です。本日より、128次元空間にて生活されている《ぬ》の皆様がワクワクするような3次元空間的【部屋の角】を存分にお届けする【部屋の角キャンペーン】を実施いたします。どうぞお楽しみください。

(DA)

宇宙人と地球人のコメント

  • ”ガチ”っぽい後ろめたさがあります、みちゃいけないサイトを除いてるみたい 地球人
  • 形式の持つ説得力… いかにも人間が作りそうだけど実はぬたちには響いてなくて空回りしてそうでもある。
  • なんかドキドキしちゃった… 地球人

侵略


オリジナル

地球人向け解説

ぬの近くにぬに似たかたちの平仮名を配置すると、それを取り込みぬにし、繁殖するということが研究の結果わかった。

他の言語(英語、中国語、ロシア語等)には反応を示さず、〝の″や〝ね″を積極的に襲う習性が見られる。

ぬという文字を何度も見続けているとゲシュタルト崩壊を起こすが、ぬの性行為によって引き起こされている現象だとの声もあり、ぬは平仮名を通して我々と一つになろうとしているのかもしれない。

ぬという生命体が何故地球へやってきたのかという疑問が、今解き明かされようとしている。

(大場)

宇宙人と地球人のコメント

  • 我々の種を絶やさないうちに早く「ぬ」を消してくれ〜「ぬ」め〜(め)
  • 最終的に全ての平仮名は「ぬ」になる、、、? 地球人
  • そんな〜!?(ゑ)
  • ぬ………(修正ナシなんて過激です…………)(ぬ)

ぬーもぐらふぃー

地球人向け解説

「ぬ」は仮の姿を持っており、あくまでも私たちにとって「そう見える」というだけである。気づいたら「ぬ」は日常的に存在している。人に危害は加えず、集団で生存している。

「ぬ」には生と死についての概念がそもそもない。そのために生き物が誕生するということに対しての営みがないために、人間や動物にとっての生殖行動や欲を沸き立たせる感情のエロスには繋がりがない。

「ぬ」は五感のうち触角が特化している。表面が敏感で、温度が39.6度になるとキューと音がなってしぼむ。視覚的なものに関しての肉体的表現は感知しないものの、温度の抑揚や湿度の変化などに敏感に反応する特徴を持つ。集団で生活する中、触れ合うことで触覚を研ぎ澄ませていったと思われる。

「ぬ」が触れ合うことで生じた温度の変化は気温として表れ、人間にも感じとることができる。温度を介して我々人間と「ぬ」は関わりを持っている。

画像は「ぬ」の触れ合いによって生じた温度変化を分析し、図にしたものである。「ぬ」は温度の連続した緩急の変化によって、発情にも似た状態になる。我々はその変化の情報を取り込むことによって「ぬ」の性交渉の擬似体験ができる。(画像提供「ぬ」研究事務所)

(カラオケ行こうぜ!)

宇宙人と地球人のコメント

  • とってもキュートね
  • 温度の緩急って体験したことないかも!39.6°の音きいてみたい 地球人
  • 「ぬ」研究事務所の人によると,ヤカンに水を入れて沸騰した時の音に近いそうです。

ゴ・マ

地球人向け解説

「ぬ」の中には繁殖方法として体外受精を行う種がいる。「ぬ」の卵が直径1.7mであるためサイズ感は異なっているが、地球の胡麻はその「ぬ」たちの産む卵に酷使しており、「ぬ」たちは卵に似たディテールと異様な小ささに性的興奮を感じることが知られている。

(ft)

宇宙人と地球人のコメント

  • 自分たちの卵のはじまりを想像して興奮するのかな…未熟さを愛でるのかも…地球人
  • 異様_な小さ^さに性的興奮…そう^きたか…~^わかる…👽ぬ

ぬラビア

地球人向け解説

「ぬ」は文字を認識することができ、特に日本語のひらがなに興味と関心を抱いているということが分かっている。
ひらがなの中でも自分達の名前である”ぬ”の文字は「ぬ」達から絶大な支持を得ており、”ぬ”の文字をずっと眺めて性的興奮を覚えた「ぬ」も多くいるらしい。
そこで地球人は、ひらがなの”ぬ”にフォーカスを当てた「ぬ」向けのグラビア写真集を発行した。
写真集を見た「ぬ」達からは「ぬぬぬぬぬぬ…(これはたまらない…)」「ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!(まさに至極の一冊である!)」という絶賛の声が多く挙がっており、現在では入手困難のプレミア本となっている。

(hira)

宇宙人と地球人のコメント

  • 「ぬぬぬぬぬ…!(右のぬの写真が特にいい…!)」〔ある一体のぬ〕
  • ぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!←これ可愛すぎる
  • 真ん中の画像は”め”…?(地球人)
  • 「ぬ」達の間でも物議が醸されているそうですが、製作側的には”ぬ”らしいです

ぬの本

地球人向け解説

五感が無くて知性だけの生き物がいるとしたなら、そういう生き物にとっての快感って何だろう。
「官能」っていう言葉には感触も、匂いも、味も無い。
「ぬの本」には「ぬ」という感じについてのことを書いていた。
いろいろな「ぬ」のことを掲載されている。読んでみたら、五感じゃなくて、脳の知性から「ぬ」を感じること。

(読書者たち)

宇宙人と地球人のコメント

  • 「ぬ」は人間でいう本能ではなくて理性的な部分にに性的感情を抱くというのは、感情の表裏一体さを感じさせますね(地球人)

unevenness


オリジナル

地球人向け解説

「ぬ」は人類の性器官そしてセックスする動作を真似ている。全人類を観察の結果によって、まとめているのは「容器」と「棒」つまり「凸凹」を取り出した。

凸凹の意味が含めてる形に変換している。一つの凸が生まれたら、一つの凹も生まれた。「穴があったら入りたい」なんて凸が凹に入りたい衝動が持って、人類の最初、最全の欲望だ。

(入りたい観察者)

宇宙人と地球人のコメント

  • 「穴があったら入りたい」は「すごく恥ずかしい」喩えだけど…「すごく恥ずかしい」”BUT”「穴があったら入りたい」か…なるほど…(地球人)

メンセツクラブ

地球人向け解説

ぬ にとっては、人間だと緊張や恐怖にあたるものが性的な興奮の感情らしい。

そこで人間は交流を深めるための第一歩として ぬ用 の風俗を作った。

(な)

宇宙人と地球人のコメント

  • ぬの精神タフすぎる好き
  • こんなクラブはいやだ (地球人)
  • 人間にも需要あると思う(人)
  • そいつは人間のふりした ぬ ですね…
  • 替え玉面接してほしい(地球人)
  • 実質ほぼ ぬ のようなメンタルの地球人多そう

実によくある

地球人向け解説

普遍的なエロティシズム。
目が眩むような色をしたやわい曲線の奥にグロテスクな内側が覗く。見てはいけないものを見たような気がして、我々は目を逸らした。姿かたちは違えど、地球上には、このような生物が一年を通して咲き乱れる。地球人は一体どうして平然とした顔をしていられるのだろう。
ある日の<ぬ>の記録より

『有機物へのリビドーに耐性のない<ぬ>のための入門ポルノ』

(ラブゴムバッドロマンス)

宇宙人と地球人のコメント

  • 同感します(ぬ)
  • 「ぬ」は地球人よりずっとアーティストなのかもですね。  20代地球人

二進数

地球人向け解説

宇宙を支配しているのは数字である。ここまで数字に囲まれていてどうしてエロさを感じないと言えるだろうか。「ぬ」は地球人よりも思考力、文明ともに発達しており高次元の世界に存在している。存在はしているがそれは人間で言う概念に近いものであり姿形は確認できない。「ぬ」と数字は同次元に存在しているとも言えだろう。我々は同次元の存在に親近感を覚え快楽を求める。「ぬ」もまた世界を包み込んでいる数字という概念にエロさを感じるだろう。

(1974年アメリカは宇宙人に向けて2進水で構成された地球の概要を発信した。

しかし宇宙人にとっては二進数はポルノであり、地球人は無意識に全宇宙に対してポルノ作品を公開しているということになる。)

(01010100 01001000)

宇宙人と地球人のコメント

  • 2進水って誤字かな?故意かな??どっちにしろ超ワクワクする言葉だね……2進水ってなんだろう………(地球人)
  • 棒と穴に見えてきた!(地球人)
  • 「ぬ」に、コンピュータの仕組みを教えたらどうなるんだろうって思った…(地球人)

ぬのための音声-サンプル

地球人向け解説

《ぬ》は聴覚が発達しており、必要不可欠な理由の他に、娯楽としてもあらゆる音を摂取するらしいことが分かっていた。
しかし言葉を《ぬ》は理解しない。

《ぬ》が審査員となり《ぬ》のためのポルノ音を募るコンペが行われた。大賞をとったのがこの作品。

この作品は26時間ありその一部を切り取ったものだ。
人間が「ぬ」と発音したその音のみを使ったものであることから、《ぬ》は地球の生命である人間が自分たちのことを《ぬ》と呼んでいることを知っており、それに性的興奮をすることが判明した。

その後、作者と連絡は取れていない。

(作者不明)

宇宙人と地球人のコメント

  • 26時間…狂気の沙汰だね(地球人)
  • ぬぬぬぬぬぬぬ、ぬぬーぬっぬぬぬ……ぬぬ(次回作が楽しみだったが、作者と連絡が取れていないとは……悲しい)

なぞなぞ100

地球人向け解説

「ぬ」は性的興奮を覚えると知的好奇心が湧き出し、それを解消するためになぞかけを解く。難易度は関係なく、何か提示される→答えを見つけるという作業ができれば良い。性的興奮を覚えたばかりの「ぬ」にはしばしば地球生命体が作り出した手軽な『なぞなぞ100選』などが用いられる。上級者向けのものは彼ら自身で作り出したものがあるが、資料の入手は未定。

( )

宇宙人と地球人のコメント

  • なぞなぞだけじゃなくてテレビとかで見る「アハ体験」的なものも「ぬ」の性的興奮を解消する手段として作用するのか気になります!
  • なります!!!大変有効です。
  • なぞなぞを解くことに興奮するんじゃなくて興奮を解消するために解くのって不思議…落ち着けるのかな 地球人

sign/puzzle

地球人向け解説

「ぬ」は性的興奮を覚えると体液の循環が活発化し、体色がだんだん濃くなっていく。この現象は自分の体が子孫を残す準備ができたサインの役割をする。

また、種の存続に余裕を持っている「ぬ」は性行為にゲーム性を求めた。そこで彼らは、地球上のパズルを使うことでその心を満たした。

(むら)

裸頭本

関連動画

地球人向け解説

「ぬ」は実体のない超意識的寄生生物である。ヒトの頭に潜り込み宿主の想像力によって自分の姿形を形成していく。また「ぬ」はより完全な個体へと進化するためヒトからヒトへと頭を介して移動することができる。しかし、そんな「ぬ」が性的な反応を示したものがある。それはハゲである。(スキンヘッドも含む)人間にとっての性器が「ぬ」には頭部にあたるのだ。そんな頭部丸出しで生活するヒトに「ぬ」は強い関心を持っている。また一部の「ぬ」には、ウィッグが取れた時に垣間見える頭部に対して「ハゲチラ」(参考映像参照)と呼ばれる興奮をみせるものもいた。そんな「ぬ」のために今回成ぬ向け雑誌「裸頭本」を出版することになった。

(「H.G.P」出版 ばなれってぃ)

yasaii

地球人向け解説

作物のいびつな形や水水しさから感じる生命力が、ぬの性的な感情を刺激するらしい。

そのため、様々な野菜や果物の画像が出回っている。
土を取り払いきれいに手入れされたものほど興奮するようだ。

ぬは暗い場所での物体認識が得意であることから、画像は黒く塗られている。
人間は、画像の明るさなどを調整することで確認することができる。

(照間)

細胞分裂

地球人向け解説

「ぬ」の体は地球の真核生物に近い細胞で構成されている。そしてその細胞分裂は、「ぬ」が他の生命体の細胞分裂を観測した時に誘発されて発生するようだ。また個体ごとに生命体(細胞)の種類や分裂の速度など好みが異なるため、「ぬ」のためのポルノでは様々な細胞分裂を扱っている。

( )

あな

 
あなの図と宣伝ポスター

地球人向け解説

ぬの「あな」は新しい命が生まれるところである。「あな」の色、形それぞれ違うので、ある意味でぬのアイデンティティの象徴になる。普段「あな」は小さくてあまり見えないが、お互い好感を持ているぬたちが接触すると、頭が人間がセックスと同じ効果の気持ちさが感知できて、同時に「あな」が頭から「好き」という情報を受け取って、拡大し、パクパクして、生きているように見える。「あな」が接触する時にぬの胚子が生まれる。体内の温度、相手の温度または血液流れの速さによって、胚子が生きるかどうかを決めていく。人間から見るとこれらの「あな」はどんな感じかわからないか、ぬの視点で、極めてエロくて、脳みそがぞわぞわする。

(LSP星人)

A-TENGA

地球人向け解説

A-TENGA (Alien TENGA) これは多数の触手を持つ「ぬ」のためのマズターベーション 用のホールである。多種多様のホールに同時に挿入することで通常の生殖行為では得られ ない快感を得る。

(あお)

宇宙人と地球人のコメント

  • パイプオルガンってA-TENGAだったんだ(地球人)
  • もう:そうい^う目でしかこういうもの見れな_くなっちゃいますよ~><👽ぬ

22世紀恋愛論2020作品選集

目次

 課題
 ワークショップ

作品選集

野生の在処

 ジレンマ  伊藤匠
 ケモノ  野々田商

肉体具有

 セット  髙杉龍斗
 囚われる  Kyo
 月経血  Crow

秘密結社

 Grandfather’s List  坂本龍一
 恋愛戦争  天野大樹
 恋愛小説  佐々木

みんなおなじ

 クローン人間プロジェクト  moe
 プランA  むろはしかな

キャラ

 ワープ  ちゃんまり
 本物の超能力  けーた

書物

 『 』  もこみち
 文学に恋をする  taipee

マッチング

 パンデミック  こうの

季節

 あどけないデイタ  ムラッセ

課題

「恋愛(とかつて呼ばれていたもの)の22世紀を構想し、作品化する」

世界をスマホだとすると、可能人類学はアプリの入れ替えではなく、OSのまるごと交換を基本戦略とします。そのため僕らは「~の未来」を考えるかわりに「~のない未来」を考えてきました。恋愛のない未来は、恋愛という概念が根こそぎ意味を失う未来にほかなりません。これまで「学校のない未来」「スポーツのない未来」で試みたテンプレートをあてはめると、[恋愛]のない未来は、次のような補助線を引いて構想することができます。

  • [恋愛]が[恋愛]とは呼べないなにかに変化する
  • [恋愛]を代替する新概念が現われる
  • [恋愛]を必要としない人類に変化する
  • 人類がいない世界の汎宇宙的[恋愛]を思い描く

「恋愛がない」という設定には、出会いがない、性差がない、生殖がない、身体がない、家族がない、国家がない、などなどのサブセットを見つけることができるでしょう。また、育てる、贈る、眠る、死ぬ、食べる、といった交差軸もあります。VR、AI、生命科学、神経接続といった道具だてもあらわれます。

リアルな出会いや身体の接近を抑制されたパンデミックの状況下で、現在だから感じられる世界の危うさ、脆さをベースに、現在に立ちはだかる大いなる「外部」を探ります。

作品形態は「超短編小説」いわゆるショートショート。ひとり1作品、5分以内で読める程度の長さで。

ワークショップ

場所:東京経済大学コミュニケーション学部(遠隔授業)
講座:可能人類学2020
期間:7月8日~7月22日
企画構成:安斎利洋
講評:小野美由紀(作家) 最近刊:『ピュア』早川書房

作品選集

野生の在処

ジレンマ

伊藤 匠

けたたましく蝉の声が聞こえる季節。通学路で、逃げ水を追いながら登校する小学生の少女。
「ガッ」
いきなり少女の顔を殴ったとてもハンサムな男。
「痛っ」
少女はひどく怯えながらも大人には抵抗できなかった。その男は嬉しいだろうと言わんばかりに少女の頬に暴行。そしてキスを繰り返した。
「本当に可愛いね。また会おうね」
男はそう言うと、満足気に歩いて行った。

キーンコーンカーンコーン。
「じゃあお前ら~席につけ~」
かつて教卓と呼ばれた教員が立つ台に、VR上で登壇した教員型アバターのマーチ。形は人間そのものだが、現実に実態はない。かなりのイケメンに作られており、女子生徒からは人気だ。
「新年度最初の授業は恋愛だ」
日本では、今年度から中等教育に恋愛という科目が追加された。
「やったー!これで俺も恋愛マスターじゃ!」
今日最初にログインしていたクラスの中心人物でお調子者のリュウヤが声を上げ、みなが一斉に笑った。
「いきなりだけど、男子のみんなはかわいい人、女子のみんなはかっこいい人を見るとどういう気持ちになる?」
マーチが生徒に対し質問をした。すると、クラスでは随一の変態キャラ、ショウジロウが答えた。
「顔を殴りたくなります!」
「お前、流石に恋愛の授業とはいえその発言はまずいだろ」
と真面目な性格のトウマが、突然現れた虫に驚いたかのような勢いでショウジロウに言った。周りの女子たちは下を向き、恥ずかしそうにしている。
「そうかそうか。ショウジロウは正直でよろしい」
マーチはちょっと嬉しそうに答えた。
「せんせ~、しょうじろうはしょうじき ってクソつまらないダジャレ言うのやめてくださいよ~!」
リュウヤのその一言でまたクラスが笑いに包まれた。しかしマーチは、呆れた様に授業を続けた。
「まぁ、それはいいとして。さっきショウジロウが答えてくれた行為の正式名称は、恋打為(れんだい)というんだ。昔の恋愛では今でいう恋打為に近い性行為というものが存在していてな、それによってオヤから子供が生まれてくるんだ」
「先生、オヤってなんですか?」
ある生徒が聞きなれない単語に反応した。
「オヤっていうのは、子供を産んだり育てている旧・人類のことだ。今、君たち派・人類(は・じんるい)はクローン技術で作られているだろ?だから親がいなくても生まれて来られるし、一人で成長できるんだ。でも昔の人間は生殖行為をした親からしか生まれることができなくて、成長するにも親が必要だったんだよ」
「あ、僕それ知ってます!なんか生殖行為が感染症になるリスクがあって禁止されて、それ以降人口が激減したって聞いたことあります。」
「おお、流石クラス一番の頭脳派。ユウスケは相変わらず色々よく知ってるな」
マーチがシンプルに感心していると、いつもユウスケと成績で張り合っているマイカが負けじと答えた。
「それなら私も知っていますよ、2027年のコロナですよね?」
「おお、マイカもやっぱり物知りだな。まさにその通りで、2027年にコロナが完全に消滅する直前、人類は生殖行為を完全に禁止したんだ。理由はウイルス感染のリスクがあったというのと、クローン技術の承認だ」
「なんでクローンが今まで駄目だったんですか?」
リュウヤが珍しく真面目な表情をした。
「倫理観の問題だな」
「倫理観ですか?」
「そうだ、当時の人類は倫理的にクローンを作ることを禁止していたんだ。でもパンデミックによる人口減少で手段を選べなくなったんだ」
「価値観って変わるんですね」
リュウヤは何かを感じた様にそう言った。
「ちょっと話が逸れたが、人類は生殖行為に代わる繁栄方法を見つけたという理由と、感染症を恐れたという理由で性行為は一切しなくなったんだ。それに代わる最上の愛情表現として確立されたのが恋打為ということ。好きだからこそ手を出すということだな」
「でも先生、性行為ってやり方によっては暴力ですよね。なんで旧人類はそんなものを愛情表現として好んでやっていたんですか?」
ある生徒の質問にみなが興味を持ち、先生を見上げた。

そして五秒の沈黙の後、マーチは口を開いた。
「先生もな、知識としてダウンロードされているだけで、その時代は生きてなかったからよく分からないんだけど、恋打為にあたる行為は当時暴力だったらしいんだ」
「え」
「ウソッ」
「そうなの…」
教室がザワついた。
「まぁ、中学生のみんなにはちょっと早いけど、先生が今日伝えたいのは、旧・人類の異性との関わり方には気を付けろってことだ。この学校には派・人類しか入学できない決まりがあるから大丈夫だけど、大人になったら気を付けるん……ウッ?!」
キーンコーンカーンコーン。

チャイムの音が聞こえなくなるのと同時にマーチの体はクラッキングされ、消滅した。
「恨むなら、歴史を恨んでね………………ここから始まるんだから……」
息をのむほど美しい横顔を持つその少女は、教室をログアウトし、暴行されて痛々しく変形した右頬を手でそっと抑えながら歯を食いしばった。

「以上が、僕がこの夏休みに調査した二十二世紀初期の恋愛というものです。二十三世紀の今では、僕ら子供たちは先人の知識をICチップでインプットされた状態で生まれるので、学ぶことは少なくなったと思いますが、その分今回調査したような黒い歴史は抹消しようとする世の中的な流れがあります。僕はそんな歴史も語り継ぐべきだという思いで今回の、過去の恋愛調査課題を行いました」
その少年は、小学生にしては硬すぎる口調で自身の調査結果を発表した。
「なぜそのように考えたのですか?」
先生は生徒を試すように聞いた。
「なぜなら、価値観の是非は証明できないからです。人間が築き上げてきた今の正しいと思い込んでいる価値観も、昔の価値観があって存在しています。ですが、その価値観の是非を判断するのは根拠のない人間と人間が作り出した不確実な根拠です。人間が定めた価値観で世の条理を判断することはできないと僕は思います」
そう言うと、少年は先生の返答を受け付ける気がないかのようにマイクをミュートにした。

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ケモノ

野々田 商

一目惚れなんてよくあることだ。あの見た瞬間に身体の中心から隅々にブワーって何か流れる感覚はもうないけど。
————97%。 また起きたよ、私は惚れたのだった。それにしても数値高いな。向こうもこっちを見ているけど、向こうも私と同じことを思ってるはず。今日は話しかける気になった。
「こんにちは……えーっと…………これから時間空いてたりしますか。」 この状況だけはいつになっても慣れない。「……少しなら。」彼女、すごい男に慣れてるような見た目なのにこんな性格なのか。やはり、そういうところが合うんだろうな。私たちはカフェに行くことにした。
彼女の名前は駒田雛。24歳。もちろん独身。
カフェに入ってから2時間経っていた。少し話す予定だったのに思ってた以上に話が弾んだ。つい、次会う約束をしてしまった。今日は気分で話しかけたというのに。

約束の日、13時に下北沢に集合した。今日はこの前カフェで互いに古着が好きということを知り、古着屋巡りをする日。店頭には40年ほど前に作られた希少な服が並べられている。この店に来るといつも希少なものばかりで興奮するが、横を見ると雛も興奮していた。雛のことをもっと知りたいと思うようになった。おそらく気が合うんだろうけど。
その日の夜の帰り道、1人で歩いている私は ————ドンッ と後ろから押された。振り返ると、高校の頃付き合ってた元カノの美麗だった。どうやらお互い近くに住んでいるようだ。2人で帰っているとき高校卒業後の話、近況の話など色々話した。振り返った時に気づいていたけどやはり恵美には付き合っている人がいるそうだ。2人は十字路で左右に分かれた。

(……美麗とはどれくらいマッチしていたのだろう。)

それからは雛と会うことが増えていき、雛のことを知っていった。雛をもので例えるならシャボン玉。ふわりと現れて、遠目から見たら透明なのに近寄ると角度によって色という表情を変える。その1つ1つが愛おしくて、パチンと弾けて消えてしまわないように優しく触れたいとずっと思うような人だ。私はいつの間にか雛のことを好きになっていた。
震える手を抑え、頭が真っ白になる。「……えーっと……付き合ってほしい。」事前に考えていた言葉とは程遠い言葉が出る。言った瞬間に我に返り同時に不安が込み上げてくる。すると雛が「……わ」 ————(え?これいけるかも。) 私は雛の表情と最初の『わ』からなぜかこの戦いに勝利したように感じた。「……私もそう思ってるよ。」この戦いに勝った。その瞬間私と雛は透明な丸い形状のものの中に入ったような感じがした。それと同時に安心感から心の熱が少し冷めた。
早速2人で区役所に行き、恋人存在手続きをした。それ以降、街を歩いても数値は一切出なくなった。この数値とは、少子化が急激に進んだ21世紀後半に政府がその対策として20歳を迎えるとマイクロチップを身体に組み込み、その機能によって『子孫繁栄』という生物的本能を脳から読み取ることで、異性が細胞レベルでどれだけマッチしているかを可視化でき、度合いを数値化したもののことだ。この数値は恋人存在手続きをしていない、もしくは失恋手続きをした人が互いにマッチしている度合いを見ることができ、この対策によって21世紀末から22世紀初頭にかけて少子化を改善することに成功し、結婚する人が増え、離婚する人も減った。一夫多妻で暮らす家族もいる。現在はその名残りがまだ存在している状態である。しかし、最近では子どもが増えすぎていて、幼稚園や小学校などが足らなくなっていることが問題になっている。鳥野総理大臣は増税をする方向で考えているそうだ。

仕事帰り、1人で帰っていると ————ドンッ と後ろから押された。美麗だった。「ちょっと飲み行かない? 」と誘われ、雛に連絡をして行くことにした。明らかに美麗の表現はこの前会ったときとは違っていた。
「なんかあったの? 」と聞くと、最近彼氏と別れたらしい。失恋手続きも終えたらしい。

(……待てよ、ということは俺を見ても数値は表示されないから誰かと付き合ったことバレてるな。)

私の話には一切触れず美麗の話をとことん聞き、店を出ることにした。その帰り道、なかなかに酔った美麗が「私たちってどれくらいマッチしてるのかな! 」とゲラゲラ笑いながらちょっと刺さる言葉を言ってきた。一瞬反応に困ったが私も合わせて「そんな数値高くないだろ! 」と軽く言った。ちょうど左右に分かれる十字路だった。「また飲もうね! 」と美麗が言って背中を向け前に進んでいった。

(前会ったときは俺も美麗みたいなこと思ってたけど、今はもう何も美麗に対して思うことないな。)

私と雛は結婚した。1人目の子供も雛のお腹にいる。多子化が問題視されているが、このマイクロチップを身体に組み込むのは大いに賛成している。まさにマイクロチップによって、本能が原動力となっている私たちは人間本来の生物としての姿を再び取り戻すことができ、本能を抑制する理性をも超越した本能を生み出した私たちは新しいケモノではないだろうか。

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肉体具有

セット

髙杉龍斗

・美岾米青(とみやままいせい)

2つ上の兄が1年ぶりに帰ってきた。発見場所は兄の元自宅。今となっては俺の自宅でもあるのだが。
一年五か月前、兄は勤務先の工場で誤って自らの右腕を捻り切る事故を起こした。工場側に過失は認められず、兄はわずかな退職金と貯金を片手に、自宅とリハビリ施設を往復する日々が続いた。両親の遺産があったため、お金には特別困っていなかったらしい。もっともこのことは兄の行方不明後に方々から聞いたことなので、詳しくはしらない。
行方不明が発覚したのはその事故から七か月と少し経った頃だった。土曜日の朝、八時ごろだっただろうか、仕事に疲れまだ深い眠りに落ちていた俺を一本の電話がたたき起こした。
嫌々受話器をとると警察だというから驚いた、さらにその内容を聞くころには私の眠気は完全に覚めていた。
「お兄さまの瑞六(みずむ)さんの行方が分からない状態なのですが、何かご存じありませんか?」
「兄が・・・ですか?いえ、何も知りません。えっと、それはいつから行方が?」
「そうですか、通報があったのは昨日のことです、アパートの大家さんから。自宅ポストの状態を見るに少なくとも二か月は帰っていないようです。」
お互い自立し両親を亡くして以降、兄とは疎遠だった。仲はいたって普通であったと思うが、ここ数年は特に会うことも話すこともなかった。兄は変にまじめな性格で、昔から常に何かに悩んでいた記憶がある。
「もしかしたら兄は悩みに耐えかねて・・」と思うとなんだか自分にも責任があるような気がして、俺は個人的に兄の足取りをたどることにしたのだ。
その一環で、兄の自宅に私が引っ越すことに決めた。今の自宅より仕事場からはかなり離れてしまうが、手掛になるものがある可能性があること、何より兄が帰ってきたときに元居た家に帰してあげたいと思い引っ越しを決めた。
そんな生活を続け、行方不明から約一年、兄は突然想像しえない“カタチ”で家に帰ってきたのだ。
仕事が休みだった私は昼頃に目を覚ました。ベッドの上でしばらくスマホをいじった後、ベッドから足を下すとグニっとした何かを踏んだ感触があった。躊躇しながらも足元を見ると、見たことのない物体が足元に広がっていた。
よく見ると人のように見える。全身が茹で上がった蛸のように赤く染まり血管のような筋が青白く浮かび上がり、ところどころ汁のようなものが漏れている。目は飛び出し、空気を抜かれたゴム人形のようにシワシワになってつぶれている。口に見える穴からはぷすぷす、ぷすぷすと奇妙な音をたてている。
意外にも冷静だった私は警察と救急に連絡をした。その後、一週間ほど勾留され、帰り際あの物体についての報告を聞き、現在自宅に帰ってきたところだ。
一週間ぶりの自宅はなんだかとても広く寂しくなったように感じる。あの物体は兄だった。病院についたころにはすでに事切れていたらしい。報告によると兄の体からは全身の骨と睾丸がなくなっているが、外傷は右腕がないこと以外に足の裏の激しい損傷のみで他に見られないという。現代の技術では不可能のことらしく、俺による犯行ももちろん不可能との判断が下された。

・美岾瑞六

右腕をなくしてからすでに五か月が経過した。傷はほぼ完治していて、傷口が痛むことはないが右手の指先あたりがかゆいと感じることがある。ファントムペイン/幻肢痛というらしい。
五か月前の事故の原因は完全に自分にあることはわかっていたし、工場側に迷惑をかけるのも嫌で、退職金だけを受け取って療養に励んだ。お金については両親の遺産で特別困っていなかった。心配をかけたくなくて、弟に連絡を取ることも周りに止めていた。
事故の日は体調に何の変哲もなかったが、それが逆に良くなかったのかもしれない。いつも通りの日常に気が抜けていた私は誤ってクリーニングの機械に右手を突っ込んだままスイッチを入れた。ものすごい音と勢いで私の右腕は巻き込まれていき、それが肩まで差し掛かったころに悲鳴に気づいた同僚がスイッチを止めてくれた。
事故から約五か月たった頃、右腕のない生活に少し慣れてきた私は、リハビリもかねて地元の山にハイキングに行くことにした。
地元、鹿児島県の小さな村には似合わない大きな山がある。実際、村の八割以上の面積をその山が占めている。由緒正しい山らしく、山の神を祀る神社があるため子供のころは家族で初詣に行ったりした。
東京の生活にすっかり慣れていた私は、数年ぶりに山のふもとに立つとその自然の偉大さになんとも感動した。風は私を迎え入れるかのように優しく吹き、揺れる木々は歓迎の拍手をしているようだった。
山を登り始めると、その山への尊敬はより深いものとなっていった。山に生える雑草までもが美しく感じ、ごみが落ちているのを見つけると激しくそれを憎んだ。気づくと私は山に大の字になって寝転がっていた。うつぶせになり、山に接吻を繰り返した。すると急に視界が激しく揺れ始め体中の快感とともに深い穴に落ちていくような感覚に襲われた。私は目を閉じ、それに身を任せた。

再び目を開けたとき、私は殺風景な銀に光る部屋にいた。自分に何が起きたのかはなぜだか即座に理解できた。ここは私のいた世界の平行世界線であり、ずっと未来、2190年だった。
「ご理解していただけましたでしょうか?」
いつの間にか目の前には私の脳では理解できないものを身にまとった、恐らく女、がいる。
「あなた様は今世紀三人目のアニムとしてここに降臨なさりました。これから・・・・」
女は長々と何か説明していたが、私の耳にはまったく入ってこなかった。それに、私がここでやらなければならないこと、役目は本能的に理解していた。
私が再び女のほうに目をやると女はこう言った。
「あなた様は今世紀最大のギルクをお持ちのようです、万の子が生まれるでしょう。さあ、こちらへ。」
ドアらしきものを出ると、ものすごい数の人々が私を羨望のまなざしで見つめ、見たことのない機械を私に向けている。その奥には先ほどまでいた山が見える。しかし、先ほどふもとで見た時とは違い、山肌は桃のようにみずみずしく膨らみ、木々は秘密を隠すランジェリーのように見えた。
群衆の間に用意されている道を抜け、ふもとにつくと、一人ついてきた女は歩みを止め
「お結ばれを果たされた後、肉体の行き場所はありますか?」と言った。
私はここでの時間の進みと元居た世界の時間の進みが違うことを理解していたので
「弟のところへ」と言った。長い間不在の私のことは、恐らく弟の耳に届き心配しているだろう、と。
「承知いたしました。それでは失礼いたします。」
女は元来た道を戻っていった。それを見た私は、即座に頂上へと走った。
まるで反射のように止まることなく足は頂上へと向かっていった。本能と理性が完全に一致していた。裸足の私の足の裏には無数の木の破片が突き刺さり、血が噴き出ているが私はそれを愛撫のように感じていた。
頂上に着くと、私は山とともにすぐ果てた。山は喘ぎ、その肌を金に光らせ、風を起こし私を中心に竜巻を作った。草木は朽ち、繁るを高速で繰り返し、虫や動物は過去と未来を旅した。
山は確かに私の耳元で「       」と囁いた。
気づくと女が目の前に立っていた。見知らぬ機械を私に向けながら
「これよりアニム様は山に成ります」といった。
女がトリガーのようなものを引くと急に呼吸がしづらくなった。体が動かず、全身が何かを失った叫びをあげる。
突然何かに踏みつぶされ私は声にならない声を上げた。

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囚われる

Kyo

人の感情というものは、追求すればするほどわからなくなる。

二一二〇年、リスク管理システムが発達し「悲しい」という感情は珍しいものになった。怪我や病気はする前に知らされるし、生活を記録したクラウドとAIが連動して、死後も会話を楽しめる。

“「悲しみ」は、今や完全に娯楽の一種として消費される感情となっている。”

そんな文章で締めくくった論文を、ざっと読み返す。百年前からの現在までの、悲しみという感情の変遷。百年前、悲しみや切なさといった感情は、娯楽のためだけのものではなかった。もちろん小説や映像作品などでそれを扱うものは山ほどあったが、実生活でも多々生まれる感情だったらしい。
「終わった……」
という言葉と同時に、焦りが喉から抜けていく。今回の論文は長かった。

私が感情の中でも悲しみや切なさについて研究し始めたのは、単にもの珍しかったからだ。まだ数十年前までは当たり前の感情だったようで、文献が少ない。研究が進んでいないものを研究したいと思うのが、研究者の性である。
そんな悲しみ研究と切っても切り離せないものが「恋愛」である。百年前のように作品で得る悲しみには限界があり、人々はさらにリアルな悲しみを求めた。その結果、世界中に悲恋ブームがやってきたのだ。
悲恋と一口に言っても様々だ。デートのキャンセル、三角関係、親の反対……もう、少しでも悲しければ何でもアリらしい。リスク管理システムが発達した現代において、悲しみを見つけるのはとても困難なことなのだ。

研究室を出る前に、電話をかける。三コールで繋がった相手は
「お疲れ様。書き終わった?」
と穏やかな口調で言った。
「うん。今やっと終わったところ。そっちは?」
「今から詞を入れるところ。今日は朝までやるつもり。気をつけて帰ってね」
彼は私の恋人だ。私たちは世界中が夢中になっている悲恋を求めていない。彼は作曲家で、曲を作る感性には悲しみや切なさが欠かせないのだと出会った頃に教えてくれた。私たちは仕事と深く関わる感情を、プライベートにまで持ち出そうと思わなかった。だから気が合ったのだ。穏やかに暮らしていければいいと、それだけを願っていた。

彼の様子が変だと感じたのは、それから半月ほど後、レストランで一緒に夕飯を食べているときのことだった。

「嬉しいとか」

普段あまり自分の考えを口に出さない彼が、抑えきれなくなったように話し始めた。

「嬉しいとか悲しいとか、最近もうよくわからないんだ。みんな悲しいことの方が良いって言うけど、結局悲しいは苦しいじゃないか。苦しいのは苦手なんだ。あと切ないもわからない。だんだん何もかもが切なく思えてきて、最近はもう切なくないものの方が探すのが大変で」

普段穏やかな彼が、こんなにも饒舌になったことに驚いた。

「このあいだ電話したときに詞を入れてた曲、あれはとても良くできたんだけど、あれをつくってからもう何もかもわからなくて。俺はなぜかいつも悲しいけど、ぜんぜん嬉しくない。悲しいことが幸せってことは今幸せなはずなのに、そう思えない」

目を伏せた彼を見て、少し痩せたな、と思った。

「悲しみも幸せも結局目に見えないし、何なんだろうね」

それが私に対する質問だったのか、独り言だったのかはわからない。もし質問だったのだとしても、私が学者として感情のしくみを話すことを彼は求めていないようだった。

「徹夜ばっかりするから疲れたんだよ。これ食べたら帰ろう」
私はそれしか言うことができず、あとは真ん中にあったホログラムキャンドルの静かな火を見つめていた。

そして、それが彼と最後に会った日になった。

バタバタした日々とともに、季節がひとつ過ぎた。友達は悲恋を経験した私を羨ましいと言った。泣きながら、自分のことではないのに楽しそうだった。彼は死後会話のAI登録をしていなかった。何となく、わかっていたことだった。
周囲の人間は、リスク管理に誤作動があったのだろうと言った。とても残念だけど、良い恋ができて良かったね。そんな風に、みんな少し困った顔をしながら微笑むだけだった。

私は周りにどんなことを言われても、彼を蝕み、追い詰めたものが「悲しみ」であると確信していた。何としてもそれを証明しなければならない。抜けてしまったものを埋めるように、仕事に没頭した。

ある日、図書館で調べ物をしていたら気になる本を発見した。
「うつ病……?」
それは数十年前、リスク管理システムの登場と共に根絶した病気の記録だった。院生だった頃に歴史として少し勉強しただけで、詳しくは知らない病気。今まで病気の研究、まして根絶した過去の病気などには興味がなかった。

バーチャル空間の隅っこで、私は気がつくとページをめくっていた。八十年前に出版された古い本で、今や全国に数人しかいない「精神科医」がうつ病の症例をまとめたものらしい。苦しんだ人々の記録。ページをめくる手が止まらなくなっていた。まるで彼を見ているようだと思ったから。

そしてもうひとつ、私を鏡で覗いているようでもあった。

ああ、そうか。彼だけでなく、私も囚われていたんだ。この感情に。虜になりすぎると囚われてしまう、恐ろしい感情。モヤモヤしていたのはこれだったんだ。

これを発表し終えたら、彼のところに行かなくちゃ。

私の頭の中は、そんな思いでいっぱいだった。

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月経血

Crow

木々の隙間から漏れた月の光が僕の目の奥の方を優しく刺激する。ハラハラと落ちる桜の花弁はその刺激に心地良いリズムをつける。もどかしい。掴もうとするとこちらの呼吸でハラリと向きを変えてしまう。光が僕のものになれば良いのに。そんなことを考えても、少し目を落せば、汚い中年男が月経血で顔を真っ赤に染めた顔を股に顔を埋めている。

「んっ…。」

自分の敏感なところを触られて、思わず声が漏れてしまう。もしかしたらこれが快楽の一種なのかもしれないが、感じた瞬間にどうしようもない虚しさに襲われる。認めたくない。クチュクチュという音が暫く続いた後、男は股から顔を上げて、微笑をうかべながらこちらを向いた。

「さすが。なかなか、良い。」

口の周りについた血を指で拭い、その手でポケットに入れていた現金に手をつける。この時代に現金なんて、逆に怪しまれるのでは無いだろうか。紙の端には男の手から移ったのだろう、血がついている。現金を渡してすぐに、男は満足気な足取りで帰っていった。姿が見えなくなるのを確認して、紙の血のついた部分を自分の鼻に近付けてみる。鉄と腐った魚の匂い。

「ぐ、、がぁ。」
授業中だというのに、隣の席の人は大きないびきをかく。僕には絶対できないだろう。いびきはなかなか強そうだけど、口は本当に小さい。その小さな口から、ツーっと唾液が漏れている。透明な唾液越しに見える唇はほんのり桃色だ。こんなところを勝手に見ているのは、よくないと思いながらも、思わず見てしまう。いつも寝ているのにも関わらず、試験の点数が僕よりも高い。
小さいことから、僕はこれといって特技のない人間だ。勉強も人並み、運動も人並み、特別できるわけでもなく、できない訳でもない。今日も、こうやっていつも通り、椅子に座って授業を受けている。時間があまりにゆっくりと流れるので、窓の外に顔をむけた時、突如頭と下腹部に鈍い痛みが響いた。鈍く、鋭く、殴られたような痛み。このまま授業を受けることは出来なさそうだと感じ、僕は先生の呼吸の隙間に手を上げた。保健室に行こうとして席を立った時、僕の隣の人が目をキラキラさせて叫んだ。

「血が出てる!」

思わず振り向いた。椅子の上は、確かに赤くなっていた。一気に教室がざわめきに包まれる。ざわめきによって頭の中がぐるぐると揺れる。それがそのまま胸のあたりに落っこちてきて、気づくと僕は床に吐瀉物をぶちまけていた。
先生に肩を貸してもらい、保健室に着いた。自分が、まさか希少種だったなんて。数分経って、大分、気分が戻ってきた。なんだか、またのあたりがゴワゴワするなと思ったら、知らない間に、パンツの中に布が入れられていた。布は真っ赤に染まっている。血なんて普段見る事は滅多になかった。気持ちが悪い。先生は僕にいくつかの病院を紹介した。この身体は、狙われる危険があるらしい。なるべく早く、去勢手術を行い、皆と同じ身体に戻る事を勧められた。そうしようと思った。もう二度と、みんなの前でゲロを撒き散らしたくない。
帰る支度をするために戻った教室は、もうみんな帰って空っぽだった。僕の椅子は、撤去されていた。思わず、机を殴った。
「ねぇ!」
声がした方を振り返ると、隣の席の人が立っていた。誰もいないと思っていた。迂闊だった。
「お願いがあるんだけど。」
隣の席の人と、まともに話した事はなかった。ずっと、僕が一方的に見ているだけだった。
「助けて欲しい。俺の家、貧乏で。お金が必要なんだ。」

2020年、世界では新型コロナウイルスが大流行した。人と人との接触が悪とされる風潮が広がったが、若者には感染しても無症状だというケースが多く、ウイルスは若者内での感染が流行った。しかし、後に新型コロナウイルスの感染は人間の生殖能力を著しく低下させることが判明。急な感染拡大に対応して非常に短い期間で開発されたワクチンも、ウイルスと同様に生殖機能の低下の副作用が出ることが後になって判明した。今まで主流だった体の接触による性交や女性の身体を利用した出産は感染防止の観点から禁止された。ウイルスの拡大が治った今でも、その時の名残でゲノムを下にした人工複製によって人が産み出される(というよりはコピーされるという表現の方が適切かもしれない)のが一般的になった。コピーの際、最早生殖器は不要の為、基本的に削除される。しかし、ごく稀に、残ってしまう場合がある。生殖器から出る液は、体内に取り入れることで麻薬など同様な効果が得られると言われている。液の中には膣分泌液、精液などがあるが、その中でも最も高価なのが月経血である。生殖器が非常に良い状態で機能してなければ、月経血が排出されることはない。

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秘密結社

Grandfather’s List

坂本龍一

祖父の訃報を受けたのは大学で人文地理の授業を終えた直後だった。電話先の母親からこちらの心境を必要以上に心配する様子をひしひしと感じ、「大丈夫だよ。すぐ向かうから」と伝え電話を切る。覚悟はしていた。容態が悪いのは聞いていたし、先月会いに行ったときも一言二言話しただけで眠ってしまったので、いずれはこうなるだろうと思っていた。まぁ、とにかく自分は祖父との約束を果たすのが重要だろう。
祖父の家に着くと、主に両親が親戚の対応をしていた。ロシア人である祖母は日本語こそ堪能だが風習についてはまだ疎い部分もある。挨拶をした後、祖母に祖父の部屋に居ていいかと聞くと了承を貰った。
元大学教授である祖父の和室は8畳だと思えないほどにとにかくゴチャゴチャしていて物が多く、また様々な国のもので溢れており統一感という言葉からは縁遠い。しかし自分はこの空間が大好きだった。いま大学で地理科に通っているのも祖父の影響だ。懐かしさを感じつつ、目的のものを探す。
押入れの中にそれはあった。電子レンジくらいの大きさの金庫だ。私が大学に入学した際に祖父から渡され、死後使うよう厳命されていた鍵を使い、扉を開ける。中には写真とA4紙の束が詰まっていた。
祖父が遺した写真を数枚ほど手に取る。写っているのは外国人で、特に欧州人が目立っている。それぞれ年齢はバラバラでこれといった一貫性は無い。唯一の共通点は男女の特徴を保っているという点だろう。
複数の言語が使われているA4の紙束に目を通すと、自分の中にあった疑問が解消された。この写真に写った“彼ら””彼女ら”は亡命者なのだ。
2150年代、旧ジェンダー統一思想(現ヒューマニズム思想)が覇権を唱えた時代。欧米を中心に2020年代から興隆したジェンダー思想は加熱の一途を辿り、結果「それぞれの立場を尊重し合う」ものではなく「性という差別の温床を根から排除し、人間という統一した規格になる」という思想が世界を覆った。アジア諸国では反発が強く未だに浸透しきったとは言えないが、欧米では性器を生成しないよう遺伝子操作を行うことがほぼ義務付けられており、その結果顔つきや体格の中性化が進むようになった(もっとも彼らは既に男性女性中性などという言葉は使わず人間化という言葉を用いている)。現代の個性とは、自身の意思で身体改造などを行う後天的なものへと変遷した。生殖行為も当然なくなり、子作りは両親の遺伝子を採取し科学技術でかけ合わせポッドで養育する方式が向こうの世界での一般的だ。
文化面においても変化が起き、文法性が色濃く残るフランス語・ドイツ語・ロシア語などは差別言語として廃され、英語がその後釜に付いた。文化の融和・統一化は人間の世界全体での結託を推し進めたのだ。
性の廃止を進める国々に限れば。
とどのつまり人間が結託するには共通敵が必要である。この場合は性廃止を推し進めきらないアジア諸国に向き、その反発でアジアは結託する。日本人はこれを揶揄して大東亜共栄圏などと呼ぶが、中国やモンゴルからトルコまで一連の国々が参加している以上、大東亜共栄圏など生易しいものでは無いのが現状だ。
差別の解消などと叫ぶが、結局はパイの切り分け方を変えただけなのだ。
話を戻すと、前述の話を踏まえて言えば欧米では“人間化”に恭順の意を示さない者がいい顔をされないのは自明の理だろう。ではどうするか。
答えは亡命である。そして金庫の資料や写真が物語っているのは、祖父が亡命の手引をしていたという事実である。それ自体に嫌悪感は持たない。むしろ誇らしく思う。しかし悲しかったのが、憧れの祖父が実は地理学者ではなかったのだろうと察しが付いてしまったことだ。
祖父の資料中のリストや写真を見れば、祖父が直接亡命を手引したのだということはわかる(でなければこれらの資料は国が管理するどこかに秘蔵されているだろう)。問題はその数だ。明らかに地理学者の大学教授が片手間で手引できる人数ではない。それに祖父を訪ねる生徒や教授などに会ったことは一度もないし、学会に出ると行って外出すれば数日は帰ってこなかった。
そこでふと、思い当たった。なぜ祖父はこれらを私に遺したのだろうと。普通ならば処分しなくてはならない資料であるはずだし、私に見せるメリットなんて……。
思考の海に沈もうとしていたその時、資料の間から何かが落ちる。拾い上げるとそれは、輪ゴムで纏められた手紙であった。拙い絵や字で彩られた手紙。用いられているのは、今はもう使われることも少なくなった言語。
ああ。祖父は地理学者だ。文化の根底を支えるのは言語であることを誰よりも理解しているからこそ、行き過ぎた人間規格統一化は祖父にとって耐え難いものだったのだ。そしてそれは自分も同じだ。いずれ過去の産物になってしまうものだという諦念を孕ませつつ触れてきたものが、自分の努力次第でこれから先も残るのだとしたら、行動せずには居られないだろう。
資料の最終ページには、若かりし祖母の資料があった。リストに振られたナンバーは001。この仕事を始めてから祖母に出会ったのか、またはその逆なのかは分からないが、時代的に珍しい国際結婚の裏側には、想像を絶する大変さが伴うのだと思い知らされた。私が母親に“産んで”もらえたのは、ひとえに祖父母のお陰だと思わざるを得ない。
資料の裏を捲ると、聞き慣れない固有名詞──恐らく何らかの部署名──と連絡先が書かれている。恐らく官公庁のサイトを探してもこの文字列を見つけることは叶わないだろう。
これからどうするにせよ、資料らをこのままにするわけには行かない。私は金庫の中身を鞄に忍ばせ、代わりに祖父の結婚指輪と通帳を入れ、ロックをかけた。鍵を適当な机の引き出しに入れたのち、何食わぬ顔で部屋を出た。

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恋愛戦争

天野大樹

22世紀後半、日本の人口は6000万人ほどになっている。
だが、日本国民はある形で増加を続けていた。

「おはよ!待った?」
そんな愉快な挨拶が聞こえてくる。面白くてしょうがない。AIが国民登録されてから何年経ったのか。彼らが人ゴミに溶け込んでいるのは奇怪だが、案外馴染むのに時間はかからなかった。俺は日焼けた肌を擦りながら、AIを待っている。

「お前またAIを差別的に見てただろう」
図星をつかれた俺はふと振り返った。黒いスリムなボディに、1つ目のレンズ。待っていたAIだった。彼(彼女)は、麻薬取締官のパートナーになっているAIロボだ。

「遅刻しといてその言い草はないんじゃないか?」
「AIは遅刻をしない、お前が早いんだ」
些細な会話もできる。ジョークも通じる。人と違うのは、見た目だけだ。ただそれだけ。

「からかっただけだ。最近のLDの流通元が割れたよ、またあの変な宗教団体だ」
「LD、ラブドラッグとはよく言ったものだよ。恋愛宗教組織のことか?」
「そうだ、恋愛思想という危ない考えを持ったテロリスト集団。今回はそこに潜入する」
「正気か?」
「ジョークだと認識されたか?」
「AIをバカにしてるだろう」

俺たちは恋愛宗教組織に潜入してLDの流通を止めなくてはならない。そもそもLDとは、恋愛感情を発生させて幸福感や満足感を高めるドラッグだ。それだけなら良い。副作用がヤバいんだ。恋愛感情ってのは、コントロール出来ない。人間がLDを使うと中毒症状が確実に現れて、効果が切れると失恋と呼ばれる過度な消失感に襲われる。俺たちの世界で恋愛ってのは病気に近い。学校でも恋愛は良くないものと教えられる。

恋愛宗教組織の衣装に着替え、集会場に行く。AIはいない。人間至上主義の団体だ。「合言葉を言え」
「えーと、エデン」
「よし、いいぞ」

緩すぎだろ…。そんな安易なことを考えていたら組織の教祖が祭壇に立って、深く、そしてゆっくりと話し始めた。

「我々は、恋愛感情を抑制するAIを許さない。人間は、恋愛を重要な感情として語り継いできた。それは、祖先がそのように人類を発展させてきたからだ。今のような培養ポッドで育った赤子は、人の子と言えるのか。否、言えるはずがない。恋愛感情に触れないで育てられるのは人間ではない。ここに集まってくれた同士たちよ、今こそ人類に恋愛思想を思い出させるのだ!!」

驚くほどの大歓声が上がった。俺からすれば何を言ってるのかわからない。恋愛思想という危ないものを広めている危険分子の言うことを理解することは出来なかった。この会場にあると思われるLDを見つけ、排除、そして宗教組織の幹部たちの拘束をしなくては。

無事に俺たちはLDの破棄と、幹部たちの拘束を達成した。意味不明なことを言われたが、俺たちは無事任務を遂行できた。

「なかなかに大変だったな、AI」
「そうだな、お前が恋愛宗教組織に感化されるんじゃないか心配だったぞ」
「変なジョークを言うなよ、俺は俺だ」

22世紀、それはAIが人類を育て、AIが人類を導いている。恋愛という形は、明らかに歪んでいた。

「お前は人間じゃない!AIだ!」

幹部から言われた言葉が、頭から離れない。

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恋愛小説

佐々木

「恋って、なんだろう」

最近昔の小説を読んだ
その中の主人公は恋してた

その人は
人にも
花にも
旅にも、
身の回り全てのモノに恋してた

恋するってなんだろう

昔の言葉で言うと、遺伝子組み換えって言うやつ?
今はそれが一般的。

婚姻届を出すと、ランダムで子供が送られてくる。
1人の時もあれば、8人の時もある。
稼いでる額で国が決めてるらしい。
まあ、僕にはあんまわかんないや。
ちなみに、僕ん家の子供は僕ひとり。
寂しいこともあるけど、別にひとりは嫌いじゃない。

だからこそ、最近の世の中は出産なんてないよ。
女の人だけが辛くて大変な思いをすることもないし、
子育ては平等なもの。
育児を“手伝う”なんて考えは出てこない
ワンオペ育児とか言われてた頃は可哀想だなって思うよ。

だからと言って子供に愛がないわけじゃないからね、
うちの両親は自分のこと愛してるって言ってくれるもん。
まあ、家庭によっては
いらない子供って言われることもあるらしいけど。

昔の人が選挙に行かなかったから、今は選挙がない。
100年くらい前からかな。
そん時に遺伝子組み換えが正当化されて国が勝手にやり始めたらしい。
反対する人はそこそこいたけど、
サイレントマジョリティーっていうやつで
ほとんどの国民は何も言わないし、
1部のやつが騒いでただけだったから、もうそのままなんだって。
って、この前の歴史の授業で習った。
だからこそ、ミスって変なのが生まれることもあるし、
人殺しとか変な方向に頭を使う奴もいる。
そう言う奴らは頭が良すぎんだよ、良すぎて狂ってる。
まあ、俺には関係ない。

家族以外と会うことはほとんどない。

出会いはネットを通してが大半。
ネットの相手と会う口実は様々だけど、
その本心は大体触れたいから。
人肌恋しいってやつ。
家族じゃ、くっついてるのなんて恥ずかしいからね。

でも実際会ってみると、変なロボットみたいな奴だったりする。
それは、いわゆるハズレ。
5回に1回アタリがくれば良い方。

そういえば、昨日
会おうとしてた子が飛んだ
まあ、よくあること
でも、殺したくはなるよね
とりあえず俺は絶賛相手探し中。

やっぱ、恋ってなんだろう

最近自分で人を作った

もう誰にも会う必要がない

僕が好きなことをやらせて
僕が好きなことを言わせて
僕の好きなときに現れる

そいつを愛してる

だからもう

なにもいらない

この気持ちは、小説で読んだ恋じゃない

『番号2889 異常なし』

私は私を監視している。

22世紀は1日の行動を自分で監視する。

ランダムで国からの調査が入るから油断ができないのだ。

特に生産性のある1日を送っているわけでもないのに
報告しなきゃいけないんだとさ。
なんでかって?
それは国に聞いて

こんな生活は狂ってると思う。
たまに僕が僕で無くなりそうになる。
そんな日が来ないように祈るばかりだ。

この時代にヒトというものは
もう存在しない。
自分をヒトだと思っている奴は山ほどいる。

だが、人間の脳は人工知能に負けたのだ。

用がなくなったモノは、
国が一体ずつショートさせて殺す。

【ここには国民に知られてはいけない裏世界が存在する】

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みんなおなじ

クローン人間プロジェクト

moe

ーー2100年、22世紀が始まろうとしているこの年に、国民全員のDNAの採取が義務化され、死後30年まで国が保存するという法案が決定された。

✳︎

2168年、この国の少子高齢化はあっという間に進み、人口は4200万人にまで減少した。そこでやっと危機感を抱いた政府は、新たに『クローン人間プロジェクト』を発足させた。このプロジェクトは、恋愛が上手くいっていない女性が対象であり、女性にしか持ち得ない機能の妊娠出産を促すためのものである。まず、政府に申請を出すと翌日クローン人間キットが送られてくる。そして自分の想い人をクローン人間として形成し、100日間の疑似恋愛期間を経ると、自然に繁殖期間へと入る。女性が妊娠・出産を終えると役目を果たしたクローン人間は政府に回収される、という仕組みだ。このクローン人間は、国で保存されているDNAを元に同じ顔同じ体格で人を形成する。生殖機能も備わっていて、ほぼ人間と変わらない。しかし欠点が一つ、その人体には感情機能が欠如しているのだ。

✳︎

「クローン人間だなんて馬鹿馬鹿しい。クローン人間で好きな人を作ったところで、そこに愛は生まれるわけ?」夜のニュースで流れてきた『クローン人間プロジェクト』の特集を見ながら、そう呟く。私はこのプロジェクトに否定的な人間だ。「私は賛成だけどな〜。だって!たとえ100日間だとしても、好きな人が同じ顔同じ体格で手に入るんだよ?!1人しかいない人を取り合うより、クローン人間でも私の側にいてくれれば…!!」そういって、持っていた缶を潰す勢いで熱く語る友人の咲良。この子は生粋のアイドルオタクで、アイドルに本気で恋をしているいわゆる痛オタだ。好きな人というのもきっと、推しのアイドルのことを言っているのだろう。「感情はないんだよ?そんなのと一緒にいて何が楽しいのかわからない。」冷静に私が返す。すると、咲良は「努力次第で愛も生まれるの!!!…た、たぶん」急に立ち上がってそういうと、酔いが回ったのかそのまま倒れて眠ってしまった。先に寝てしまった咲良を横目に、グラスに残ったウイスキーを一気に飲み干す。「…クローン人間…か…。」

気付いたら朝になっていた。ピンポーン。家のインターフォンがなって目が覚めた。朝っぱらからなんだろう、そう思ってドアを開けると宅配便が届いた。「私何か頼んだっけ?」そう思いながら宛名を確認すると、政府からだった。頭にはてなマークが浮かんだが、届いたものを確認する。「うーん何が届いたの??」同じくインターフォンの音で起きた咲良が、まだ十分に開いていない目を擦りながら尋ねる。「それが身に覚えがないんだよね…。」恐る恐る箱を開けると、そこには『クローン人間キット』の文字。「は?なにこれ!頼んだ記憶ないんだけど!」慌てる私を尻目に、咲良が私のスマホを確認する。「ちゃーんと申し込んでるよ!ほら!」そういって顔をにやつかせながらスマホの画面を見せてきた。申込完了と書かれた画面が写つっている。昨日はあんなに否定的だったのに〜なんてぶつぶつ言いながら、面白がって申込記入欄をスクロールする咲良。その手が止まったのは、クローン人間指定欄。「クローンにしたい人間…裕太…?誰これ?」咲良が不思議そうにこちらを見る。「やってしまった…。」

✳︎

私には酔うと必ず思い出す人がいる。初恋の人、裕太だ。彼は12年前に交通事故で亡くなった。忘れもしない、告白しようと呼び出したあの日、待ち合わせ場所にいつまでも来ない彼を待ち続けた。振られたのだと諦めて家に帰った時、その事実を知った。彼は私の元へ向かう途中にトラックと衝突して、そのまま帰らぬ人になってしまったという。それを聞いて、悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。恋愛ができなくなったのは、その頃から。マッチングアプリも婚活も色々試してきたけど、私の心の中の彼の存在が大きすぎて、好きになれる相手なんて見つけられなかった。

✳︎

「頼んだからには、使うしかないよ!」そう咲良に後押しされ、私は送られてきた裕太のDNAとクローン人間キットをマッチさせた。無事形成されたクローン人間は、紛れもなく裕太そのものだった。久しぶりに見るその顔に、目頭が熱くなった。

そこから、私たちの100日間が始まった。思っていたより、クローン人間との生活は苦ではなかった。身の回りのことは自分でするし、クローン人間にかかる生活費用は国が負担してくれるし、なにより、裕太がそこにいてくれるだけで幸せだった。返事は返ってこなくても、空白だった12年の時を埋めるかのように、私は毎日のように嬉しかったこと、悲しかったこと、とにかく沢山裕太に喋りかけた。

✳︎

100日間を経て、私は裕太との間に子供を授かり、出産をした。そして、クローン人間の役目は終わった。彼は直に政府が回収しにくるだろう。時が止まればいいと思った。それほどクローン人間である彼を、私は愛してしまっていたのだ。「今までありがとう。感情はなくても側にいてくれるだけで私の支えだった。これからはこの子と精一杯生きていくね。本当にありがとう。愛してる。」産まれたばかりの我が子を抱きながら、裕太に話しかける。返事は勿論ない。だけど、泣きじゃくる私を見つめる裕太が、その時少しだけ、ほんの少しだけ、優しく微笑んだ気がした。

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プランA

むろはしかな

6時30分、アラームが鳴っている。ユウキは目が覚めた。目を擦りながらキッチンへ行き、卵を割って目玉焼きを二つ作る。パンを二枚焼いてるところでユウキはアオイを起こす。
「アオイ、6時40分過ぎてる。遅刻するよ」
アオイは起きない。それから5分経ち、
「アオイ、もう45分!起きなくていいの!?」
アオイはそれでも起きない。ユウキは慣れた手つきでアオイの体を揺らす。するとアオイはやっと目覚める。
「ん、んー…いま何時?」
「もう45分過ぎてる」
「やば、、起きないと」
「朝ごはんできてるよ」

二人は朝の情報番組を見ながら朝ごはんを食べている。6時55分の占いだって、アオイの星座が五位だと出ていても反応しないくらい流し見ている。
「アオイ今日、五位だって」
「うっそ〜いまボーっと見てたから気づかなかった」
「毎日そうだよね」

7時10分、朝ごはんを終える。洗い物をしているユウキの隣でアオイは自分の服を探している。
「この靴下のもう片方がないの」
「昨日、一つだけ洗濯機に入ってたからまだ干してるよ」

「このピアスいつも無くなる」
「そうだと思って、こっちのジップロックにまとめて入れといた」

7時15分、アオイはいつも先に家を出る。
「じゃあ行ってきます、あとよろしく」
「行ってらっしゃい」
7時20分、ユウキは洗濯物を干す。
8時10分、一通りの家事と身支度を済ませユウキは窓を閉め、家を出た。

18時15分、ユウキは帰宅する。この赤いエコバックはユウキのお気に入りだ。手を洗い、買ってきた物を冷蔵庫に入れる。これから使うじゃがいもとにんじん以外。
19時50分、アオイが帰宅する。
「おかえり」
「今日、肉じゃがでしょ。良い香りが外まで出てた」
「正解。やっぱりアオイは鼻がいいね」
23時、二人はソファーに座り海外映画をみていたのだが、その映画を見ながらアオイは寝てしまう。
「アオイ、またここで寝ちゃって、、ベットに運ぶからね」
ユウキはそう言うとアオイをベットまで運んだ。
24時、ユウキも眠りにつく。

「えっ!!??本当にこのプランで良いんですか?追加料金を頂ければこちらからプランニングすることも出来ますが、、、」
結婚未来サービスの村田が言った。
「いいんです。これでお願いします」
ユウキが言う。村田は続けて、
「ここまで素朴で昔ながらの毎日を望まれた方は僕が担当する中で初めてです。もっとこう、五輪選手になっている毎日だったり、お金持ちになっている毎日だったり、玉の輿にのっている毎日だったり、異性からモテモテの毎日だったり、イケメン・美人になれる毎日だったり、そういう方ばかりで、、、」

2120年現在、結婚未来サービスは国が義務化している。
成人を迎えた人が自ら未来を設計し、設計した日々を実現させることのできるサービスである。国がこのサービスを義務化している目的は、孤独死させないこと。

約100年前の2000年代初めから少子高齢化社会が問題視され続けていた。国は、この少子高齢化社会を食い止めることはできないと考え、そしてせめて人を孤独死させない方法をと考え打ち出したサービスなのだ。
一緒に過ごす人も男女でなければならないという決まりはなく、お互いに同意があれば好きな人と一緒にいれる自由度の高い義務化サービスになっている。

実際にアオイも見た目は女性であるものの本人は男性だと自覚している。たしかに仕事に対する熱量、生活の緩さは男性的だ。ユウキはアオイの性について理解している。理解したうえで一緒にいたいと望んでいるのだ。私欲に溢れる世界に存在するユウキは2000年代初めの素朴な生活、恋愛に憧れていたのだ。22世紀に生きる人は21世紀の恋愛を羨んでいるのかもしれない。

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キャラ

ワープ

ちゃんまり

時は2020年。世界中がある感染症に悩まされている。これが全ての始まりであり、終わりでもあった。15万も課金してこの時代にログインしてきて数日が経ったが、この時代の空気にはまだ慣れない。終わりの見えないウィルスとの戦いに葛藤する人々の様子は、滑稽でありどこか切なくもある。この時代の仮想空間内の人々の葛藤が、現代にすら影響を与えてくる。本当に厄介な時代にログインしてしまった。こんな時代に来たというのには、それなりの理由が必要なことは自明である。そもそも現代の仮想社会の構築は、2020年の感染症拡大から進められた。感染の流行が収束したと思えばまた流行するという繰り返しで、何度も変性を繰り返したウィルスのワクチンを開発するのは不可能となった。感染症による死者は増える一方で、政府も手の打ちようがない中、ある開発が進められていた。それが現代の完全仮想社会である。現実での生活を諦め、クラウド上に生活拠点を移動させるというものである。この社会では、一人ひとり違った歴史を持っている。そのため、僕たちの生活している現代では時間旅行が可能なのだ。
さて、随分ともったいぶったが、なぜ僕が2020年にログインしているかというと、この時代で「推し」を知るためである。現代にもアイドルはいるが、それらは全部クローンで作られており、個性というものがまるでない。人に好まれるような顔で歌が上手くダンスが上手、というのが元からインプットされており、どうも僕はみんな同じ人に見えてしまう。しかしながらこの時代にはオリジナルの人間がアイドルをやっている。そう、だから僕はこの時代に来たのである。15万円も課金して・・・。ここで流行っている感染症がなければ、僕がここにくることもできなかったと考えられるが、訳のわからない布切れを口につけなければいけないのが鬱陶しい。こうして「推し」を求めてこの時代に来たわけだが、何も感染症が拡大する前でもよかっただろうに、A Iは何故この時代を指定したのか。(言い忘れていたが、時間旅行の年指定は大雑把にしかできない。入りやすい年と入りにくい年があるためらしい)
この時代に適応するためにある程度 SNSの時代に見合ったリテラシーとアプリの操作方法は知識として事前に抑えておいていた。色々と調べてみて誰が自分の推しに相当するかを考える。感染症のせいで外出はほぼ出来ないので推しを探す一日を無限に繰り返している。 「ステイホーム」と言った胡散臭い言葉に指示されるがままに、数ヶ月ほど同じ生活を繰り返してきたが、ここ最近はほぼ収束してそろそろ外出も許されそうな時期に入った。 ここからが本当の感染拡大のスタートと知りつつもこの数ヶ月で構築してきた推しの概念をさらに理解したい僕は直接会うことを決めた。どうやら推しが所属するグループ(Z O P)には実力表現の様子を拝見できる場があるらしい。(二十二世紀から来た彼はおそらくライブのことを言っている)
世は1ヶ月間国内の感染者〇人の一番感染リスクが少ない期間に突入した。ベストタイミングで、実力表現の様子をh⋯(ライブ)があると聞き、足を運んだ。暑苦しい布切れは皆付けなくなっていたので僕も付けないで実r⋯(ライブ)に参加した。ライブが始まると今まで感じたことない緊張と興奮が押し寄せて周りの同志たちも熱が上がりテンションバク上げぷんぷんよいちょまるである。 (段々と時代に適応しつつある彼をどうか見守ってあげてほしい)こんなに輝いている女性は今の時代にいるだろうか。数ヶ月間で見つけ出した推しを実際に眺めると、 推しという言葉じゃ収まらない感情が芽生えてくるのを感じてふと恥ずかしくなった。ライブの後には実際に推しと写真を撮って少しお話できる時間(チェキ会)が設けられているらしいので僕も参加した。僕の前の人達はみんな女の人ばかりだ。これなら彼女がほかの男から奪われることは無いだろうと安心した。
さあ、いよいよ僕の番だ
「・・・」
「あ、初めましての方??」
「・・・」
「ポーズはピースでいい?」
「・・・」
「緊張すよね笑じゃあ撮ろっか」

チェキ会では彼女沢山話せた。第六波がくるんだから気をつけなさいという真面目な話からたわいも無いふざけた話まで、時間が惜しくなるほど楽しい時間を彼女と過ごした。僕はいい彼氏だなぁと自惚れていると思い出の蓋を閉じる音が聴こえた⋯。

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「こちら株式会社ハピネスです。お目覚めされようで、満足いただけたでしょうか?」
「いやーもう最高でした!感染症っていうものに呪縛されつつ推しをみつけるっていう状況に何だかワクワクしました。そして何より妄想を拗らせすぎた20代くらいの男の子を体感してみたかったんですよ〜。こう、なんて言うんでしょう、仮想現実の中で仮装してる自分に興奮すると言いますか笑」

「お姉さんは随分マニアックな所をついてきますね笑またのご利用お待ちしております。」

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本物の超能力

けーた

21世紀末、人類が長年にわたり研究してきた脳の隠された能力が明らかとなった。その能力は超常現象を起こすものだといわれ、巷では「本物の超能力」と呼ばれた。
だが、その能力は皆が持っているが、覚醒しておらず、実際に使えるものはいなかった。

22世紀初頭に「本物の超能力」は本人が自覚せず、周囲に影響をもたらす可能性を示唆する論文が発表された。その論文によれば、無意識に放たれている力は目に見えるほどではないが、外部からなんらかの制御をすることで、現実世界に大きな影響をもたらすことができる。制御することで、データでしかないキャラクターを具現化し干渉することもできるというのだ。
当然ながらそんな論文は軍事目的や宗教目的で悪用され、超能力に干渉し、無許可で制御することが禁止された。しかし、それを回避しながら協力してくれる秘密結社があった。

「あと一息で15年来の願いが叶ったのに…はぁ」
超能力電波管理局に拘束されかけたところに白衣の男が話しかけてきた。

「その願い叶えましょう」

「こちらの書面を確認していただき、問題がなければサインをして…」幾度と繰り返したきがするような、うんざりする会話に嫌気がさしながら「あ、問題ないです。さっそくお願いします」とサインを殴り書いて椅子に座る。担当者を名乗る男は「あまり短期間に繰り返しプログラムの書き換えを行いますと副作用が発生する可能性がありますので…」ほんとにうんざりするやり取りである。こっちはコインを出しているのになんで怒られなければならないのか。

「ピーーー…データのリセットが完了しました。」
どこからかいかにも合成音声らしい音が聞こえる。
頭が痛い。昨日お酒飲みすぎた…か?いや、え、昨日、なにしてたっけ…
誰かがしゃべりかけてくる。
「…だ、大丈夫ですか?」
聞き覚えのある声だ。
これはあれだ。いつひはの念珠もこあだ。

「このプログラムは、あなたの人生をやり直し、あなたの思い描く人生を歩むためのものです。ただし、これはあなたの理想を必ずしも保証するものではなく、あなたの努力によっては現実が悪化する可能性があります。また過度な利用によって中毒症状などの副作用が発生する恐れがあります」そんなことも書いていった気がするが、やっと「念珠もこあが目の前に現れ、ココア専門店アステカで一緒に金のゴブレットココアを飲むこと」が叶ったのか。もこあ嬢さえいればこっちのものだ。

「えっとえっと、ほんとに、大丈夫ですか?」
もこあ嬢が何度もあのアニメ通りの心地よい声で呼びかけてくれている。これ以外の返答は他にない「えっと、アステカってどこにありましたっけ」と返答しながら立ち上がる。
もこあ嬢は、亜美子の口癖「残念言うなッ」を聞いているときと同じような苦笑いをしている。失敗するはずもない、いつひはでも登場したセリフだ。なぜ。
「あのぉ、ココアのアステカならここですけれど?ほんとに大丈夫ですか?」
まぁともあれ、これで目的は達…
「超能力電波管理部だッ、脱法プログラムをしているものは誰だ!!」と店内に響く。
着用、もしくは埋め込みが義務付けられている人類保護タグによって身分証明がなされる。
「やめてくださ…」もこあ嬢の声が聞こえる。不思議と悲しみを感じない。そして静寂が訪れる。見渡すと誰も動いていない。時計も止まっている。足が勝手に動いた。ドアに手をかける。ドアについた鈴はならない。普段の5倍は重い気がするドアを開け、外に出た。白衣の男が目の前に立ちはだかる。

「どうしたんですか?」とあざ笑うような声で話しかけてきた。

なにかしゃべらなければと思ったときには「あ、あのたすけてください」と震えるような声を出していた。あとちょっとで15年来の夢が…、こんなささやかな夢すら…、ようやく可視化プログラムができたのに…、……やり直したい。

「その願い叶えましょう。」

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書物

『 』

もこみち

私は曾祖父の家に来た。
けれどもここには゛誰もいない゛。
゛誰もいない゛けれど私は好きだ。
それこそ無理に私に名義をしてでも私はこの空間を残しておきたかった。

曾祖父は面白い人だ。自分の葬式でスーツを着て火葬されたいがためにそれまであった白装束から好きな服を着て棺桶に入るという価値観を作るために「死服屋」なんて作ってしまうぐらいおかしな人だ。

そんな曾祖父の家に来た理由は時代により無くなってしまった本を返しにきた。彼の本棚の置き方にもこだわりがある。子供の成長に合わせて読んで欲しい本を下から並べている。

ここに来るたび私は赤い背表紙の日に焼け角が丸まってしまった『』に手が伸びてしまう。

私は『』のような恋愛がしたかったと毎回おもってしまう。

だがそれはもう叶わない。
曽祖父が生きていた瞬(とき)とは違うのだ。今は不自由なく愛することができるようになった。たとえ愛する人が同性、兄妹、AIだとしてもそれを否定する大人たちはもう居なくなった。

あの瞬に比べたら今はとても良い時代なのかもしれない。

…けれど

それでも私は、この幻想的な恋愛を求めている。

そんなことを考えていると大粒の雨が降り注いでいた。

私は読み終わった本をそっと閉じ、本棚の一番下に戻し憂鬱に傘を広げ帰路につく。

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文学に恋をする

taipee

「へぇ〜これが満員電車って言うんだ」
デジタル化された本の中にある写真を眺めていた。
21世紀の世界には沢山のいらないものが存在していた。汚染された空気、単純作業をこなす人々、満員電車、ゴキブリ、悲しい感情、苦しい思い出、妬みや辛さ、憎しみ、不安、全部なかったらいいのにと思う物ばかり。

「僕らの先祖はこんな煩わしくて嫌な世界を生きていたんだな…」なんて思いながら不要物が排除され続ける22世紀の世界で僕は暇を持て余している。21世期中盤頃から各国が一段となって進めてきた『WRP』と呼ばれるプロジェクトによって人や環境が不必要としているものは限りなく排除されてきている。そのおかげでこの時代には、都会でも空気が美味しいし、仕事は全てAIに任せておけるし、満員電車もない、ゴキブリも。排除されていった不要物は目に見えるものだけではない。ずっと昔の人々が悩まされ続けたいくつかのめんどくさい『感情』なんかもこの世界にはない。そのおかげで人々はいつも穏やかだし、『クレーマー』なんて呼ばれる人もいないんだ。
そのせいか、とにかく暇だ。何もしなくてもいつも快適なんだけれどそれが余計に暇を助長する。

こんな時僕はいつも昔の人が残した文学を読む。文学は今も新しいものが生み出され続けているが昔のそれとは全く違う。僕の知らない感情や物がたくさん詰まっている。色んな本を何度も読んだけれど、感情について書かれているところはいくら読み返しても納得できない。いや、理解ができない。文字としては理解できるのにどうしてもその『感情』というものを想像することができなくてムズムズする。長い歴史の中で人々は不要なものとして様々な感情を排除してきた。それが遺伝子にも影響を与えた結果、僕らにはわからない感情が多くなった。

僕は昔の文学を沢山読んでいて気づいたことがある。どうやら『恋』という感情は昔の人にとってどの感情よりも特別なものらしい。
恋って何?どんな気持ちになるんだろう。
「ドキドキ…?キュンキュン…?一目見たときの高揚感?」文字を追ってみるがやはり分からない。昔の人々は何故このような頭の弱そうな擬音語を繰り返し使ってきたのだろう。

いくら読んでも分からないのなら…
「本にあることと同じことを試してみよう」ある日そんな考えが浮かんできた。
僕は外に出て道端で出会うあらゆる人々に対して本にあることを試してみた。
まずは21世期前半の本に多く書かれている『壁ドン』と呼ばれるものから。これを行うと相手は恋に落ちるらしい。よく分からないがとりあえず前方からやってきたか弱そうな中年男性にしてみた。
「ドン!」彼は驚く、しかしその後すぐに笑顔に戻って通り過ぎる。どうやら『恋』には落ちてなさそうだ。次に後ろから目を塞いで「だーれだ」というやつを同じ歳くらいの女の子にやってみた。「だーれだ」彼女は驚く、しかしすぐに振り向き平気な様子で「知らない人」という。そのあとも『顎クイ』とか『ハグ』とか『キス』とか『頭ポンポン』という行為もした。とりあえず街中で大声で「キュンキュン」と言ってみたりもした。しかしみんな反射的に驚くだけで、色んな本の中で読んだ『恋』とか『怒る』みたいな感情を表す動作をする人はいなかった。もちろん僕も『キュンキュン』なんて結局言葉でしかわからなかった。

これだけ試してもわからなくて不思議で仕方ない。気になって僕はますます色々な文学に手を伸ばした。毎日毎日何冊も読みあさっては、わからなくて気になっての繰り返し。
「次出会う本には答えがあるかも」なんて考えながら本を開く前、ドキドキしている自分がいた。本がなければ落ち着かない自分がいた。
「あれ?ドキドキ…?落ち着かない…?」
答えに近づいている気がするとなんだかキュンキュンする。
「ん?キュンキュン?」
そしてある日、本を読みながら僕はようやく気づいた。昔の文学を読み漁るたびに感じてきたドキドキ感、キュンキュン感、答えに近づく高揚感…。
そうだ、僕は文学に恋をしているんだ。昔の人が書き残した文学に。いや正確には「恋に近い感情を抱いている」かもしれないが。昔の人が言う『恋』という感情は人と人の間で抱くものらしいけど、僕は文学にその感情を抱いている。その感情をようやく理解できた時僕は幸福感で溢れた。嬉しいのだ。昔の人が感じることのできた特別な感情である『恋』、その面倒臭さを体験することができて。

様々なものがデジタル化され人間関係が希薄な社会になり不要物は限りなく排除された。そのおかげで面倒なことはなくなったけど僕は『恋』と呼ばれる感情を体験してからその面倒臭さが羨ましくも感じた。

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マッチング

パンデミック

こうの

2045年、2020年初頭に世界で大流行した新型コロナウイルスを大きく超える感染者を出すことになる感染病が世界にパンデミックを起こした。
その感染病の発生元はイタリア・ローマにいる1人の性欲モンスター「イケル・ダレデモ」という伊達男から始まったと言われ、「ローマ病」や「イケル病」と呼ばれていたおり高い感染率と不治の病として人々には恐れられていた。そのイケルという男は、日々ナンパに明け暮れる毎日を過ごしていた。というのも彼にはストライクゾーンやタイプという概念が無く、まさに”誰でもいける”という人間であり、歩いている人男女問わず片っ端から話を掛けナンパしていた。そんな中、彼は数えきれないほどの人と関係を持ってしまった。そして、いつしか世界に大きな影響を与える新型感染病の発信源となってしまった、、、。

とある日本の田舎の高校で事件が起きた。
私が学校に行くと、教室はザワザワしていた。

私「おはよう大輔!なんかみんなめっちゃソワソワしてね?」
大輔「おはよ!お前知らねーの?」
私 「え、知らん知らん、喧嘩?」
大輔 「ちげーよ!リカコちゃんの話だよ!」
私 「リカコちゃんの話、、?」
大輔「リカコちゃんB組の山岸と付き合い始めたらしいぞ」
私「うそつくなよ、山岸ってあの山岸?勉強オタクのあいつじゃ学校のマドンナのリカコちゃんと付き合えるわけないだろ」と笑った。
大輔 「いやマジなんだよ」と真剣に言い返してきた。
私 「いや、まじかよ、、。でもなんでだよ」
大輔 「あれだよ、2週間くらい休んでただろリカコちゃん。ローマ病になってたって噂だよ」
私 「え、そうなのか。そうか、それならまぁ説明がつくな。あの”誰でもいける”ようになる病気かか。怖いな、、」
大輔 「怖いよな、でもさよく考えたら悪い事だけではなくないか?ストライクゾーンとかがなくなるんだろ?あの病気。ならハードルも下がって彼女とか出来やすくなんじゃね!」
私 「まぁたしかにな、、」

-キンコンカンコーン-

~数日後~

私「大輔、俺彼女できたわ」
大輔 「え、まじ!誰誰!?」
私 「ローソンのあのおばさん」
大輔 「え、あの人、?理想が高いで有名なお前がなんで?」と困惑した表情を見せる。
私「実はローマ病にかかったんだ。」
大輔 「お前大丈夫か、、。」
私「俺ローマ病になってストライクゾーンとかタイプがなくなって、人をよく見るようになったんだ、。あの人接客あほみたいにいいだろう?そこに惹かれたんだと思う。」
大輔「あぁなるほど。」
私「俺ローマ病になって良かった気がする。」
大輔「たしかにそれはそうかもな!俺もちょっと感染したいかも!」

~数日後~
大輔「話がある」
私「どした?」
大輔「実は俺、お前を好きになってしまった。」

ローマ病は世界人口の約9割が感染した。その大流行による交際を始める人々が爆発的に急増した。その背景には、ストライクゾーンがなくなり”誰でもいける”という病により、人種・性別・宗教・容姿による垣根がなくなり、より人の行動や振る舞いが重要視される風潮が生まれたという事があった。そのような事もあり、世界から争いが消え平和になっていった、、。イケル・ダレデモは世界の英雄となった。

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季節

あどけないデイタ

ムラッセ

足をそろそろ、少し出た足で冷気を感じ毛布で隠す。
まだ明けきらない空、ここは雪が降らないのだろうか。
私は初めて冬を売った。
取引の依頼は過去にもあった。
ただその時期は、何とも言い難い月の満ち欠けだった。

キレイに手入れをした爪が、髪が、肌が、写っている。
初めての仕事には日が長い方が良いと心に決めていた。
まだ大人とは言い切れない部分はあるが特に意味はない。
夏を売ってみた。
やっぱりあったかいと活発的になる。

他人には興味がない。
お互いに助け合うこともない。
ただ、ほんの一瞬だけ言葉を、考えを、視点を合わせる。
別にテレパシーというわけでもない。
調節が出来ればよい。
秋を売るのが、仕事をするのが慣れてきた。

足をそろそろ、少し出た足で冷気を感じ毛布で隠す。
キレイに手入れをした爪が、髪が、肌が、写っている。
他人には興味がない。
お互いに助け合うこともない。
春を売った私には、四季がなかった

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触覚的自我 自治医大2020全作品

自治医科大学の講座「臨床と哲学」にて行われた触覚的自我ワークショップの全作品

実施日:2019/1/23・1/30・2/13
講義:小野純一・安斎利洋
ワークショップ:安斎利洋・中村理恵子・金 知垠
講評:淺田義和・吹田映子・小野純一


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触覚的自我 ムサビ2019【テーマ別】

武蔵野美術大学基礎デザイン学科 2019年9月20日

全作品を講評のためテーマ別に分類したものです

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バラバラ

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顔のパーツ

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丸み

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左右

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内部・外部

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接触

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積層

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痛み・神経

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感情

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表象

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意識

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風景

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触覚表現

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白・黒の紙

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事件

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(身体でない)オブジェクト

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拾遺

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「蝕」 ~のない未来を考える

接地回路(なにもない世界でパンを作る)

素材、道具、道具を作る道具、すべて接地記号(地球環境から取得できる)につながっていなければならない。

絶滅後にワープしたあなたは、あたかもビーバーが壊れたダムを補修するように、脳の中にある絶滅前の像を再生しようとする。しかし、未来はそんなふうに過去を模倣しようとはしない。あるものの未来を考えるためには、あるものがない未来を考えるのが有効だ。メガネを作ることを考える前に、メガネのない未来を構想できる。パンを作るのではなくパンのない世界を考える。明るすぎる像をマスクすると、見えなかった周辺が見える。これを日蝕になぞらえ「蝕」と呼ぶ。

[ ]のない未来を考える思考パターン

  • [ ]が[ ]とは呼べないなにかに変化する
  • [ ]を代替する新概念が現われる
  • [ ]を必要としない人類に変化する

蝕の例

[服飾]のない未来を考える思考パターン

  • [服飾]が[服飾]とは呼べないなにかに変化する
  • [服飾]を代替する新概念が現われる
  • [服飾]を必要としない人類に変化する

絶滅(われわれのいない未来)をイメージする

[人類]のない未来を考える思考パターン

  • [人類]が[人類]とは呼べないなにかに変化する
  • [人類]を代替する新概念が現われる
  • [人類]を必要としない人類に変化する

この同語反復は何を意味するか

 

触覚的自我 ムサビ2019全作品

武蔵野美術大学基礎デザイン学科 2019年9月20日

・正面の写真だけで伝わらない部分は、角度や光線を変えた撮影で補いました。
・解説文や名前の表示などに変更があれば申し出てください。

(撮影順)


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3020卒業制作展仕様書

「3020年、国分寺遺跡群から出土した遺物の数々は、電子情報記録媒体とともに完全消失した21世紀情報暗黒時代を知る大きな手がかりを提供してくれます。とりわけMAU遺跡で発見された「卒業制作」という文字の書かれた金属コンテナには意図も用途もわからない数々のオブジェクトが収納されており、歴史家たちの想像力を魅了しつづけています。本展はそうしたオブジェクトのいくつかを展示し、どのような生活と文化を背景に制作されたかを考察するものです」

という口上ではじまる千年後の展覧会を作るワークショップです。

2020年から2120年に作られた卒業制作作品と、作品の背景を考察する解説文を、前回と同じ要領でRememe Wiki に記述してください。千年後の人類、あるいは人類に替わる何者かは、かならずしも正しい考察するとは限りません。

WiKiの項目名:
作品の名前

作品:
作品の写真、画像(など)
2019年の時点ですでに発表された(他人に著作権のある)画像は使用不可。

概要:
200文字以内の短いテキスト

考察:
用途、機能、など

解説者:
あなたの本名、もしくは学籍番号(後日ペンネームに書き換えてもかまいません)

RememeWikiの書き方、グループの作り方は前回と同じ。以下を参照してください。

RememeWiki:ムサビ2019実施マニュアル

ただし、カテゴリーは以下の文字列をコピペしてください。

[[カテゴリ:MAU3020卒制展作品]]

参考:絶滅に関するいくつかのイメージ

アイ・アム・レジェンド

ロベールによるルーブル美術館グランド・ギャラリーのデザイン画

画家、ユベール・ロベール(Hubert Robert 1733-1808)は、王宮の庭園設計やルイ16世の絵画の管理、ルーヴル美術館設立計画などにもたずさわった。

ロベールが描いた未来のルーブル美術館

パンのリブート

[ ]のない未来を考える思考パターン

  • [ ]が[ ]とは呼べないなにかに変化する
  • [ ]を代替する新概念が現われる
  • [ ]を必要としない人類に変化する

蝕の例

[服飾]のない未来を考える思考パターン

  • [服飾]が[服飾]とは呼べないなにかに変化する
  • [服飾]を代替する新概念が現われる
  • [服飾]を必要としない人類に変化する

絶滅をイメージする

われわれのいない未来を思う

[人類]のない未来を考える思考パターン

  • [人類]が[人類]とは呼べないなにかに変化する
  • [人類]を代替する新概念が現われる
  • [人類]を必要としない人類に変化する

用途のわからない出土品

「銅鐸」
意図も用途も理解できない者に向けて制作する

ワペラ遺伝子集(MAU2019)

001-0011122233344455566677788899

0011122233344455566677788899
ネイト 絶望

002-0003336669996663339990000000

0003336669996663339990000000
ペルセポネー 明度の迷路

003-0020213142435364657586879798

0020213142435364657586879798
長谷川康博

004-0111262393324445755667078889

0111262393324445755667078889
ヘカトンケイレス 巨人の踊り

005-1116066433333333788998990000

1116066433333333788998990000
マヘス 焦燥

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5289405353237390164324214581
クロノス つらら

007-1155665443322155443325344332

1155665443322155443325344332
オーケアノス 小さい星

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3444523454335453545343425354
枯葉 静

009-1191182299956651579167988949

1191182299956651579167988949
マアト 崩落

010-0120117117012017117012011711

0120117117012017117012011711
アポローン アリコ

011-1232212322123221232212322123

1232212322123221232212322123
アメン 雨後の壁

012-0221022102210221022102210221

0221022102210221022102210221
ケプル 始まり

013-1123444155616771855588816772

1123444155616771855588816772
タルタロス 地

014-3330002233203030323032033022

3330002233203030323032033022
テミス インベーダー

015-0999000222220210910992921911

0999000222220210910992921911
セルケト ミューラーブロックマン

016-2019927070925017069791706979

2019927070925017069791706979
ネクベト 機織り

017-0100000158333006999600333209

0100000158333006999600333209
ディオニューソス 奇跡

018-0011123444551112224445551122

0011123444551112224445551122
ヘルメース 6ちゃん

019-5556667778889990001112223334

5556667778889990001112223334
バステト 光と陰

020-0990010203040506070809100990

0990010203040506070809100990
ネオイロス 蔓

021-5556443444454364756566634565

5556443444454364756566634565
セト 禍々しい森

022-1431914319143191431914319143

1431914319143191431914319143
ハピ MOTH

023-7474838392019387565484884848

7474838392019387565484884848
セクメト 戦闘

024-0010020030040050060070080090

0010020030040050060070080090
ガイア 秩序

025-6756453423129089786756453423

6756453423129089786756453423
アテン スウェットの裏

026-0111262333744245085667987859

0111262333744245085667987859
ヌン 蔦

027-2886886822226886226668626862

2886886822226886226668626862
タウエレト 重なりと歪み

028-3655022722002223253656776265

3655022722002223253656776265
ハーデース 漁船の朝霧

029-3344455566677788899900011111

3344455566677788899900011111
モンチュ 固そうな布の網目

030-0001119992228883337766644455

0001119992228883337766644455
デーメーテール 侵食

031-9100409901828908802815529898

9100409901828908802815529898
ゲブ 所々伐採された山

032-0112823344045535626176788999

0112823344045535626176788999
カオス 書類

033-0112023134245356467578689798

0112023134245356467578689798
アフロディーテ zebra

034-8728356162966555837939599889

8728356162966555837939599889
ニュクス 根

035-1398909945699399259719249999

1398909945699399259719249999
アトゥム アン

036-2223777717976000077800009000

2223777717976000077800009000
ケプル 終わり

037-5121911921512991951191292259

5121911921512991951191292259
へーパイストス 二極化

038-9907802031050100453060700000

9907802031050100453060700000
アルテミス 沐浴

039-0718040708090213041809179999

0718040708090213041809179999
ゼウス 既視感

040-0014411177161111999993999999

0014411177161111999993999999
アヌビス 黒々

041-0501199705011997050119970501

0501199705011997050119970501
ヘーラー 滾る

043-0930093009300930093009300930

0930093009300930093009300930
エーオース ぶわぶわ

044-1112011331109991199900000000

1112011331109991199900000000
イムホテプ 草

045-1991118291991616301992281199

1991118291991616301992281199
ヘスティアー 闇に滴る…

046-0211394523354486257767688901

0211394523354486257767688901
ソプデト 地下

047-1997012619970126199701261997

1997012619970126199701261997
へーメラー 肉

048-9009011079022712209010210179

9009011079022712209010210179
コンス ダイヤのネックスレス

049-0233445845515256666475778910

0233445845515256666475778910
オルフェウス 鱗

050-0000220750000001018007000200

0000220750000001018007000200
サイクロプス

051-0949700080999080995719070988

0949700080999080995719070988
パーン ビスマス

052-0120230340450560670780890910

0120230340450560670780890910
ディオーネー ✕3=0

053-0001112223334445556667778889

0001112223334445556667778889
ヌト 天使の国

054-5556667778889990001112223334

5556667778889990001112223334
バラテト 光と陰

055-0404013073200065020500006107

0404013073200065020500006107
オシリス 整列

056-1111234444403333333334444000

1111234444403333333334444000
ヒュペリーオーン レース生地

057-4070111222339445566567878389

4070111222339445566567878389
ヒュプノス 怒り

058-1997102112291021299710211997

1997102112291021299710211997
大浪有貴

059-7432743274327432743274327432

7432743274327432743274327432
大浪有貴

バーチャル彼女

吉田隆平
福島遼太
佐原祐斗

「おまたせ」
慎司がそういうと
「三十分の遅刻なんですけど。いっつも遅れてくるよね〜」
彼女はそう返した。今日は横浜に最近できた火星での暮らしを疑似体験できるテーマパークでデートをする予定だ。
「お腹すいてない?なんか食べに行こうか」
「私はパスタが食べたいな」
ランチをとった後予定通りテーマパークに行きディナーを済ませた。
「この後どうしようか…」
「私はまだ帰りたくないな…」
「じゃ、じゃあホテルにでも……」

バーチャル世界とはいいものだ誰にも邪魔されないし、自分の思った通りに世の中が動く。まさに自分だけの第ニの世界…。

二一××年。世界はAIで溢れ人間と人工知能とが共存する世の中に。
「おーい!慎司。今から授業か?」
こいつは同じ大学に通う恭平だ。
「あ、いや。学務課に奨学金の資料をもらいに行こうと思って」
「おぉそうか。それよりさ今日、大園女子大の子たちと合コンするけどお前もどう?」
「いや、僕はやめとくわ」
「なんだよ。つれねーな。オッケー。じゃあ、またな」
「うん。また」
僕はどこにでもいるごく普通の大学生。人前ではひどく緊張してしまう。だから友達も数えるほどしかいない。授業に出て、バイトに行き、家に帰る。そんな毎日の繰り返しだ。
今日もバイトを終え家に帰ってきた。唯一の日課といえば家に帰ってきてから二三時台のニュースを見ることだ。
「僕の人生ホント冴えないな。せめて彼女でもいたらもっと華やかになるのかな…」
そんなことをつぶやきながら今日もまたテレビをつける。
「続いてのニュースです。長年議論が続いていたICチップ法案が本日可決されました。それでは細田首相の会見をご覧ください。『えー、日本国民の皆さんは頭の中にICチップを埋め込んでいただきます。これには様々な意図があり』…」

「ICチップ法案かー。これで何か変わるかな」

「おはよう!」
「あ、おはよう」
「いや、聞いてくれよ!昨日の合コンにいた子がめっちゃ巨乳でさその子ヒナコちゃんって言うんだけどもう男性陣ビンビンよ」
「そうなんだ」
「でもその子彼氏持ちだったんだよ。彼氏いるのに合コン来んなって話よな。今度はお前も来いよな」
「うん。行くよ」
「あ、そういえばさニュース見た?ICチップ法案可決だってな。俺らどうなるんだろうな。俺、来週埋め込み日なんだ。お前は?」
「僕は明後日」
「お、早いな。感想とか聞かせてくれよ」
「分かったよ」

二日後、僕はICチップを頭に埋め込んだ。
「イテっ…」

三ヶ月後。全ての日本人へのICチップの埋め込みが終了し人々もそれに慣れ始めていた。

「おう、慎司!チップの調子はどうよ」
「別に普通だよ」
「でも楽になったよな。スマホもいらないし、YouTubeも頭の中で再生できるし」
「割と便利だよね」
「そういえば知ってるか?チップの新機能としてバーチャル世界ってのが追加されるらしいぜ」
「知らない。何それ」
「俺もあんまり詳しくは知らないんだけど、なんか自分の頭の中で作り出した世界で実際に生活ができるようになるらしいぜ」
「ふーん」
「つまりだ、自分が好き勝手にできる世界ってわけ。なんかすごくね」
「あんまり興味ないな」
「なんだよー。その世界で彼女とか作ってさ、こんなクソつまらん現実世界では味わえない快感を楽しもうぜ!」

自分だけの世界で彼女か、悪くないかも。

「いよいよ今日から<自分だけのバーチャル世界を創ろう>略して<バチャつく>が解禁されるな。もうわくわくが止まらないぜ」
「そうだね」
「慎司はどんなバーチャル世界を創るんだ?」
「僕はまだ何も考えてないや」
「なんだよ。ま、お前のことだ、バーチャルでも現実とそんなに変わらない世界を創ってそうだな」
「ははは」
《アナウンス》 「それではみなさんお待たせしました。
「お!いよいよだな」
《アナウンス》 「バチャつくの解禁です」
「よし。俺は早速バーチャルの中に入るからな。慎司もせいぜい楽しめよ!」
恭平はバーチャル世界に入っていった。
「僕もちょっとだけ試してみようかな」
バチャつくヲ起動シます。
グォーン…ピピ
想像力ヲ働かせテください。
「想像力を働かせるって言ったって…えい」
設定ガ完了しまシた。それでワバチャつくヲ始めます。

「慎司、起きろよ」
「ん…恭平か」
あれ、何も変わってないぞ。バーチャル世界に入れなかったのかな。
「僕バーチャル世界には入れなかったみたい」
「なんだよ。お前機械音痴だっけ?まあいいや。昼飯食べに行こうぜ」
「そうだね」

「学食にも飽きてきたよなー」
「安いしいいんじゃない。僕ここのカレー結構好きだよ」
「お前いつもそれ食べてるよな」
《アナウンス》 「バチャつくに重大なバグが見つかりました。現在使用している方は直ちに使用を中止してください。繰り返しますバチャつくに…」
「重大なバグだって。みんな大丈夫かな」
「怖いな。俺、すぐやめといてよかったわ」
バチャつくでバグが起こったようだ。実際、バーチャル世界に入れなかった僕としては関係のないことであった。
《アナウンス》 「頭痛や吐き気、何か少しでも違和感を感じた方は直ぐに病院に行ってください。深刻な脳へのダメージを受ける可能性があります。繰り返します…」
「慎司、お前大丈夫か」
「大丈夫だよ」
「そうか。俺は怖いから一応病院に行ってみるわ。お前もおかしいと思ったらすぐに行けよ」
「分かったよ」
それから数日が経った。あのアナウンス以降、新たな情報は伝えられていない。だが、死者も負傷者も出なかったようである。バチャつくの使用はいったん禁止とされ、バグの修正や安全性の確保などを再び考え直しているようだ。

それからバチャつくは禁止とされ世の中はなにもなかったようにいつも通りに動き出した。
「慎司、きょう合コンやるけど来る?」
「んー、行こうかな」
「おし!決まりな!一九時に渋谷のDEHOって居酒屋に集合で」

「かんぱ~い!!!」
「じゃあ女の子たちから自己紹介お願いしてもいいかな」
「はい。ミキって言います。大園女子大学の三年生です。よろしくお願いします」
「ヒナコです。私も同じで大園女子大学に通う三年生です。ちょっと緊張してます。よろしくお願いします」
「マヒロで~す」
「慎司、お前どの子がタイプ?」
「えー」
「俺は断然ミキちゃんだな」
「僕は…ヒナコちゃんかな…」
「お前巨乳好きか。いいじゃん、いいじゃん。アシストするぜ」
僕は彼女に惹かれていた。キラキラした目。それでいてどこか懐かしさを感じる表情。僕は彼女に惚れた。
「ヒナコちゃん動物園好きなの。こいつ動物めっちゃ詳しいよ。な!慎司」
「え、う、うん」
僕は咄嗟に嘘をついていた。
「えー。本当!」
「本当、本当」
「今度二人で動物園に行ってきなよ」
「僕でよければ一緒に行きましょう」
「えー、行く行く!」
こうして僕はヒナコちゃんとデートをすることとなった。

今日はヒナコちゃんと初デート。あの日は勢いで動物に詳しいとか言っちゃったんだよな。けどあれから動物についていろいろ調べたし、今はなかなか手に入りにくい動物図鑑とかいう紙の分厚い奴も買ったしきっと大丈夫だ。落ち着け、僕。
「おまたせ~。ごめんね、遅くなっちゃって」
「大丈夫だよ。僕も今着いたところ」
「そっか。よかった」
「うん。じゃあ行こうか」
その後僕たちは色々な動物を見て回った。
「ここの動物園では今ではあんまり見ることのできないカバを見ることができるんだって」
「そうなんだ!私、初めて見る!」
「あ、あれがカバの檻だよ」
「すご~い!おっきいね!」
「そうだね。カバは昔、世界最強の生き物って言われてたんだよ」
「そうなんだ!」
「うん。でも、密漁とかで数が減っちゃって今では世界に数頭しかいなくなっちゃったんだ」
「悲しいね。私たち人間の利益のために殺されるんだもんね。カバさんごめんなさい」
なんていい子なんだろうか。僕はどんどん好きになっていた。

それから僕らは何回かデートを重ねた。そんな数回目のデート。
「すっかり暗くなっちゃたね。慎司くん今日は買い物付き合ってくれてありがとね」
「いいよ」
「いっぱい歩いたらおなかすいちゃった」
「今日はレストランを予約しておいたからそこに行こう」
「え、本当!楽しみだな」

「いらっしゃいませ」
「二人で予約した佐野です」
「ありがとうございます。佐野様お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
僕たちは窓際の席に座った。
「こちらお飲み物のメニューになります」
「ありがとうございます」
「お食事のメニューはコースとなっております」
「わかりました」
「お飲み物は何になさいましょうか」
「おすすめの赤ワインでお願いします」
「かしこまりました。失礼いたします」
そう言うと男性店員は下がっていった。
「素敵なお店だね。夜景もすごいきれいだし!」
「ここのレストラン四三階にあるから東京の街が一望できるんだよ」
今日のためにいろいろ調べて予約したイタリアンレストランだ。
「お待たせいたしました。こちらイタリアのAbruzzo地方から取り寄せた八〇年もののワインとなります」
ワインを注いでもらう。
「失礼いたしました」

「それじゃあ。乾杯」
「乾杯」
チン

「あ~美味しかった」
「気に入ってもらえてよかったよ」
「こんな素敵なところに連れてきてくれてありがとね」
「うん…」
「…」
「あの、話があるんだけどさ…」
「なに」
「僕。その、なんて言うか…。その…」
「うん」
「ヒナコちゃんのことが好きなんだ。付き合ってくれないかな…」
「…うん。いいよ」
「本当⁉よかった~」
「改めてよろしくね。慎司くん!」
こうして僕はヒナコちゃんと付き合うことになった。

「お前ヒナコちゃんと付き合うことになったんだってな」
「そうなんだ。これもこれも恭平のおかげだよ。ありがとね」
「いいってことよ。うまくやれよ」
「うん」
「なんか彼女できてからお前ちょっと明るくなったよな」
「そうかな。まあ、充実はしてるよ」
「なんだよ。惚気か。うらやましいな。この野郎」
「ちょっと、やめてよ」
「俺も彼女欲しいな」
「恭平ならすぐできるでしょ」
「励ましてるつもりか」
「違うよ。本心で言ってるんだよ」
「ま、頑張るわ。また話聞かせろよ。じゃあ、またな!」
「うん。また」

それから三か月の月日が流れた。ヒナコとも順調で、周りからも明るくなったと言われる。ここのところ何もかもがうまく行っている気がしてとても充実した日々を過ごすことができている。つい半年前までの生活が別の世界での出来事のようだ。
ただ一つだけ気がかりなことがある。それは頭に埋め込んだICチップに少し違和感を感じることだ。
「最近ICチップが変なんだよね」
「一回病院に行って調べてもらった方がいいんじゃないの」
「うーん。でもな…」
「私もついていくから病院行こ」
「そうだね」
こうして病院に行くことになった。
「本日はどうされましたか」
「なんか、ICチップに違和感があって」
「そうですか。それでは順番が来るまでそちらでお待ちください」
「はい」

「佐野さ~ん。佐野慎司さ~ん」
「はい」
「こちらへどうぞ」

「違和感はいつごろから」
「一か月前くらいからですかね」
「そうですか。ICチップは脳に関わりますからね。少しでもおかしいなと思ったら早めに来てくださいね」
「はい。すみません」
「一度、検査をしてみましょう」
そして僕は精密検査をされることとなった。
「んー。特に異常は見られませんね。今回は大丈夫でしょう。一応、電波を和らげる薬を出しておきますのでそちらを二週間飲んでください」
「はい。ありがとうございます」

「良かったね。なんでもなくて」
「うん。ちょっと考えすぎだったみたいだね」
「話は変わるけど、新しく横浜にできた火星のテーマパーク行こうよ」
「いいね。行こうか。僕もちょっとあそこ気になってたし」
「約束ね」
「うん」

そして一週間後。
「おまたせ」
「三十分の遅刻なんですけど。いっつも遅れてくるよね~」
「ごめん。ごめん」
「もう…」
「お腹すいてない?なんか食べに行こうか」
「私はパスタが食べたいな」
「じゃあパスタ食べに行こう」
「慎司のおごりね」
「わかったよ。そういうところはちゃっかりしてるんだから」
「なんか言った?」
「ううん。なんでもない。行こ」
ランチを済ませた僕たちは、その後予定通り火星のテーマパークを楽しんだ。
「いや~、火星ってあんな感じなんだね。私はびっくりしちゃった」
「結構、地球みたいな感じなんだね」
「火星の料理も食べれたし、満足満足」
「そうだね。この後どうしようか…」
「私はまだ帰りたくないな…」
「じゃあ、ホテルにでも……」

ピーーーーーーーー

「慎司…」
「しんじ~。あぁぁぁぁぁぁ」
両親の泣き叫ぶ声が病室に響いた。
慎司の親御さんから連絡を受けた俺はすぐに病院に駆け付けた。
「あぁ恭平君」
「お母さん。あの、慎司は?」
「…」
俺が駆け付けた頃には慎司は既に霊安室に運ばれていた。
「慎司…。おい、慎司」
「…」
「なんでだよ…。死ぬなよ。何であのとき…バチャつくのバグの警告があったとき…戻ってこなかったんだよ…」
「…」
「お前はどんな世界に入ってたんだよ…こっちの世界よりもそんなに楽しい世界だったのかよ…なあ、答えろよ。慎司…」
「…」

「慎司くんのこと残念だったね」
「あぁ。俺まだ受け入れらんねぇよ…」
「恭平は慎司くんと仲良しだったもんね」
「なあヒナコ。俺これからどうしたらいいんだよ…」
「葬儀明日だっけ。最後は笑顔で送り出してあげなよ」
「そうだな…。ヒナコ今から会えるか」
「うん。いいよ」
「お前が彼女で本当よかった。ありがとう」
「ううん」

「恭平、おい恭平」
「ん…。あれ慎司か…。お前なんで死んだんじゃなかったのか」
「恭平、大丈夫か。最近バーチャル世界に入り込み過ぎなんじゃないのか」
「え…」
「ほら、早くしないと学食の席なくなるから。行くよ」
「お、おう…」
この世界では人間と人工知能が共存している。そして頭にはICチップを埋め込む時代だ。そのICチップにより自分だけのバーチャル世界にいける。そう自分だけの第二の世界に…。

『続いてのニュースをお伝えします。新たに二人の死亡が確認されました。死亡したのは佐野慎司さん二一歳と林田恭平さん二一歳の二人で、二人は先日大学内でバチャつくをプレイしていたところ脳内にダメージを受け、脳死の状態が続いていましたが、今朝、死亡が確認されました。これでバチャつくによる死亡者は…』
「ヒナコ、ご飯よ~」
「は~い」

ブツン

(東京経済大学コミュニケーション学部「可能人類学2019」「22世紀恋愛論ワークショップ」課題作品より)

触覚的自我 自治医大2019全作品(テーマ別分類)

自治医科大学の講座「臨床と哲学」にて行われた触覚的自我ワークショップの全作品(122作品)を、講評時の話題に沿って分類したものです。

実施日:2019/1/24・1/31・2/14
講義:武内大・安斎利洋
ワークショップ:安斎利洋・中村理恵子・金 知垠
協力:淺田義和

気になる部分

014



114



116


108

触覚的身体空間

003



113



103



009


067


109



110


手足

066


106

全身

023


080


115


管・空洞・穴

007



015


020



112



104

対称性

019


030


043


070


073


122

横顔・断面

085


100


117


119

017


018


035


044


055


063

凹凸

006



013


042


059


061

031


033


062


076


088


089

耳・音

036

081

笑い

016


026


045


072


079


087

012



096

境界・輪郭

047


069


075


093


099


102


105

ちぎり絵

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眼鏡

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077

前髪が気になる

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092


094


107

髪全体が気になる

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ミニマルな表現

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特徴的な目

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目のある顔

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目のない顔

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目を閉じた顔

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触覚的自我 自治医大2019 全作品

自治医科大学の講座「臨床と哲学」にて行われた触覚的自我ワークショップの全作品(122作品・撮影順)。

実施日:2019/1/24・1/31・2/14
講義:武内大
講義・ワークショップ:安斎利洋
ワークショップ運営:中村理恵子・金 知垠
協力:淺田義和


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