投稿者「ToshihiroAnzai」のアーカイブ

汎宇宙ポルノ

mission

箱根山中に着陸した地球外知性《ぬ》との交流事業は、進捗がはかばしくないまま20年が過ぎようとしている。長年の失政によって昨年ついに民営化した政府は、地球外生命交流事業の分野においても聖域なき改革が必要であるとし、宇宙人に向けた成人向けコンテンツ開発という窮余の一策に手を出すに至った。例によってコンテンツ開発の矛先は、《ぬ》研究で定評のある武蔵野美術大学基礎デザイン学科オートポイエーシス論に委ねられることになった。

巷に人間向けのポルノグラフィーがあふれるなか、人間という制約を外したときいったいなにがエロスでありなにがエロスでないのか、その基礎研究から始めなくてはならない。予算も時間的猶予もないなか、一週間で宇宙一のアダルトサイトを完成させなくてはならない。人間が対象ではないので、人類の裸体は禁止されている。ムサビキソデオートポの動向に、世間の注目が集まっている。

workshop

武蔵野美術大学基礎デザイン学科オートポイエーシス論
2020年10月23日
ワークショップ「エロスから人間項を消去する」

history

《ぬ》2009@東大情報学環

地球外生命《ぬ》との芸術交流プロジェクト2016

全作品

「オージャス」「オージャス黒ver」


オージャス  オリジナル


オージャス黒ver  オリジナル

地球人向け解説

オージャスは、その完璧な球体の緊張をほどき弛緩する。オージャスは自分の最も弱い部分をさらけ出すことにした。全身に鎧をまとって恐怖という敵に立ち向かうあなたはいつしか、心の奥底で眠る弱い部分を忘れた。剣を握りしめて来る日も来る日も戦いに明け暮れ、強張った表情で愛というものの存在を疑って生きているあなたの前で、オージャスは自分の最も弱い部分をさらけ出す。例えあなたに殺されたとしても、オージャスはあなたのすべてを受け入れることにした。

汎宇宙ポルノについて

性行為は自分の身体の最も弱い部分をさらけ出す。それは生存という観点から見れば最も危険な行為である。恐怖に囚われ、身の危険を感じながら欲情することはできない。欲情するということは深い安心が根底にある。そもそも欲情とは「自分の弱い部分をさらけ出したい」という欲求ではないだろうか。どんな生命も生きるために弱い部分を隠し、様々な敵と戦うために常に緊張して生きている。戦いとは恐怖の産物であり、愛とは相反するものである。恐怖に囚われている時は愛を感じることができない。汎宇宙ポルノとは、アクターが弱い部分をさらけ出すことで敵ではないことを伝え、安心を与えて弱い部分を呼び覚ます。愛とはどのようなものなのか思い出させてくれるものが汎宇宙ポルノである。

(Kenta Hara)

冬人夏ぬ

地球人向け解説

「ぬ」は他生命体に寄生し増殖する無性生殖の生命体であり、子囊菌類に極めて似た構造をしている。

「ぬ」は宿主に胞子を植え付け、菌糸を伸ばして栄養を奪い、次世代にあたる子実体を生やす。これは地球で言うところの冬虫夏草に近い。

この写真は、菌糸を宿主に巻きつけ終え、これから子実体が生えてくる一歩手前の状態を撮影した、まさに繁殖行動真っ最中のものである。人間が人間の繁殖行動をポルノとして扱うのと同様、彼らにとってこれはまさしくポルノである。

(真幌子囊菌類研究所)

unknown

地球人向け解説

「ぬ」がその本性を現すのは実に稀な光景であり、生涯でたった一度きり。

つまり、「ぬ」は同じ種族にしか欲情を催さず、つがい同士の間で初めて鎧を脱ぎ捨て、その姿を露出し合うということが判明した。

深夜、秘密裏にその姿を変貌させ、人類には理解不可能なコミュニケーション方法で相手と結ばれる。

それが確実なものであると仮定して、「ぬ」(未経験者)に向けて、未来への変身願望、未知のものへの好奇心や期待感を向上せるべく、目撃者の証言をもとに画像の作成を試みた。

(miyata)

宇宙人と地球人のコメント

  • ずっと見ていたい美しいエロさですね <元地球人より>
  • バレだかー <ぬより>

ぬ顕微鏡


オリジナル

地球人向け解説

最新の研究で「ぬ」が微生物を視認できることが判明した。微生物は至る所に存在しており、それを知覚できる「ぬ」はあらゆるところで楽しみを見つけている。しかし人間には不可視な領域であったため、ぬ顕微鏡が開発された。

「ぬ」は自分たちの視点を記録する手段を持たず、ぬ顕微鏡を通して撮影された映像は「ぬ」にも価値が認められた。特に微生物が別の生き物を捕食する映像に一定の需要が見込まれている。

(web作者名:ぬ研究者c)

地球人向け解説

「ぬ」は、地球に来て初めて水に出会った。

実体はあるのに、透明で、うまく掴めない。「ぬ」にとっては不思議な現象ばかりが起こる。そのもどかしさが「ぬ」を興奮させ、性的な感情を水に抱くようになった。

水の不思議な現象の中でも、特に葉に溜まった露がそっと水面に落ちた時に、落ちたはずの露が再び顔を出す現象に興奮するようだ。

(め)

まぬ

地球人向け解説

「ぬ」は人間と同じ有性生殖です。「ぬ」の形態は確認されていない今は、複数→合体で一になる→複数という繁殖を意味する過程をまるで再現して「ぬ」の欲望を起こします。

(まるはエロい政党)

ヌーヌヌモウケーズスのよぅみ〜ッサデモノミ!〜(人類日本列島生息用字幕)


地球人向け解説

性は消費でエンターテイメントだ!
「ぬ」ことヌーヌヌモウは人間界のポルノのエンターテイメント性に度肝を抜かれた。
ヌーヌヌモウに対個体の需要の感覚は分からなかった。
人間が人間を意識して繁殖もとい性交渉をする。それは我々の日常的な分裂と同じで、そこには他に何もいらないはずだった。
しかし設定やストーリーがあったり、更なる要素に要素を重ねたそれはとても楽しいショーだった。
「ぬ」の分裂は突然行われる日常的なものだ。
彼らその瞬間をエンターテイメントにしたかった。
沢山消費を促し売り出して、そして魅せたかった。
人類は隠し事のようにするが何もおかしいことでは無い。
私達は楽しみたいだけなのだから。

(米澤舞)

bugphilia

地球人向け解説

「ぬ」は自身を量子化することでデータ上での活動が可能である。その際アルファベットの「N」と「U」に似た形の言語の二進数でデータが表されたため、「ぬ」と名付けられたという説がある。データ上ではしばしば人間でいう突然変異体のようにバグが生まれ、「ぬ」の中には極小数バグに性的興奮を覚える者がいる。これらは人間で言うところのペドフィリア(小児性愛)やエキシビジョニズム(露出狂)などの異状性癖とおよそ同義であり、また人間に害を及ぼすものではないと判断されたためバグフィリアと名付けられ、彼らに向けたバグのポルノ画像が作られた。

(高橋仁・長嶋健太)

無題

地球人向け解説

ヌは湿った質感に性的興奮を覚えるという。人体にはエロシディズムを覚えなかったのになぜなんだ!しめっけにはかんじてしまう!

(藤田譲)

邦題:「純愛ダークマター」(原題:「|-+―-+|―-―」)

地球人向け解説

第AMN3群 SUN系 EAR発の大ヒット官能小説、ついに映像化決定! *全宇宙成人向け R-20(ESERO基準適用)
全宇宙が心震わした、愛という単語の中身を探求する革新的ジャンル「フィロソフィカルフィロソフィ」界の傑作!その一部を本日、特別に公開!

(「ぬ」は人間にとってそういった対象となりえない、気持ちの良くはない音や予測不能性、不可解なものに快楽を覚えます。)

(製作・原作:Guest E)

宇宙人と地球人のコメント

  • なんとなく宇宙を感じた…不思議だ

GGE-NU

地球人向け解説

食事を必要としない「ぬ」は地球の食物に強い関心を示した。その中でも特に生命の始まりの姿「卵」に性的な反応をした。そして、昨今の地球での卵不足は「ぬ」の性的な目的による、卵買い占めによるものだった。我々にも必要不可欠な卵。互いに調和して生きていく為「ぬ」の文化を尊重し動画及び静止画を作成した。

(自由が丘)

宇宙人と地球人のコメント

  • 初めて卵をエロいと思った!

flickr

地球人向け解説

ちらつき 点灯 明滅。

ぬはこの現象に性的興奮、快感を覚える。
詳しいメカニズムは解明されていないが、ぬの衝動的で本能的な快感を誘発させるらしい。
我々人間で言う「脳」の部分を直接触られているような、ともすれば危険な快楽とも言えるらしい。

長時間眺めたり、限度を超えてこの現象に触れると、身体に影響を及ぼす恐れもある(目眩、吐き気など)

中毒性も指摘されており、flickrが収録された動画をもう観たくないのにループ再生してしまったり、ふとした瞬間に観たくなることがしばしば起こると言われている。

中毒者は段々と麻痺していく為、より強い刺激を求める。程度の強すぎるflickrに関しては規制が必要との声もあがっている。

(しお)

宇宙人と地球人のコメント

  • 明滅っ_て没^頭して見_ちゃうよね~^ 👽ぬ
  • 点滅が始まるのを待つ時間がどきどきする!
  • 脳を触られてる感じするわ
  • ホタルみたいでロマンチック…(地球人)

SKIN

地球人向け解説

「ぬ」の肌質を考えました。触れるとなんだか柔らかそう。

肌の匂い、
肌の感触、
肌との距離感、

肌、というものはどこか後ろめたくなってしまうような魅力を秘めている。肌に触れるという行為は一つの親密さのパロメーターにもなり得ると考える。好意を寄せている人であれば触れられるとどきっとする。むしろ、そうではない他人にはあまり触れて欲しくない、デリケートな部分。

肌、という薄い表皮のすぐ内側には生々しい「生」がある。

人間の肌のようで人間の肌ではないものたち。
人間界では白くてすべすべの肌は魅力的とされるが人間以外の枠組みの中ではどうなるのだろうか。
人間と宇宙人の狭間で揺れ動くエロスの考察。

(さとう)

宇宙人と地球人のコメント

  • えろおいしそう ナンより
  • 食欲と性欲は似てるって言うしね!
  • 真ん中の一番上何ですか?地球人より
  • パンじゃない 地球人より
  • 右上がなんか良い 🌏
  • 内側より内側を感じる チーナンより

内側からの表象

地球人向け解説

予期せぬところに炎症が起こる体表のシステムエラーに「ぬ」は性的な反応を示した。特に体表の柔らかい部分にそのようなエラーが出た場合には、より強い反応をすることがわかっており、エラー部分をなんらかの方法で”潰す”ことで「ぬ」は快感を覚えているようだ。

「ぬ」は規律正しく潔癖といった特徴があるとみられ、そのようなエラーにひどく反応し、日頃の過度な抑圧が原因だと考えられる。

「ぬ」集団は外見が画一的であるため、そのような「個性」がうまれたときに喜ばしいものと捉えている節があるようだ。

(nkb)

宇宙人と地球人のコメント

  • 実存的エロス
  • 体表のシステムエラーって表現すき! 地球人より
  • ぬぬぬ!ぬぬぬ(自分はアザやカサブタにも興奮します!)

“ぬ”と人間の漫画

地球人向け解説

“ぬ”は人間を征服したくてたまらないようだが、宇宙平和条約によって惑星植民地を禁止されている。たぶん、フラストレーションが溜まっているだろう。そこで、その、”ぬ”が人間を征服する夢を、漫画でだけでも解放させてあげようかなと思った。

-漫画のあらすじ-

宇宙太陽系”ぬ”管理局地球部隊直属の”ねね”は、”ぬ”の取り扱いを失敗し身体を乗っ取られそうになる。そこでとっさに、”ぬ・イレイザー”を使うが・・・。“ぬ”と人間の共存を描く、ハイパークレイジーラブストーリー漫画爆誕!!。

(ゾエ)

宇宙人と地球人のコメント

  • 001:名無しのぬ  連載待ってます。

自画像

地球人向け解説

「ぬ」は自分の姿でしか興奮できない。
自分と少しでも違うカタチをしているものでは興奮しない。

このアダルトサイトは開くと真っ黒な画像が写し出され、自分の姿が反射で見えることによって「ぬ」は興奮する。
「ぬ」の持つ、パソコンには内カメラがついていない。

また、「ぬ」の世界には理性を保つために、鏡や反射する素材などが街中で使われていることはない。

(るとふ)

宇宙人と地球人のコメント

  • 汎宇宙的だね
  • 他のぬは自分と同じ姿していないの
  • この発_想_はなかった、なん<かすごい^納得しちゃう~^👽ぬ
  • 微妙なカーブの違いとかがあって、全く同じ「ぬ」はいないみたいです、、

「ホッチ」ホッチキス

地球人向け解説

ホッチキスとは、ご存知の通り人類が発明した、紙に針をを刺し通し、紙を綴じる文具である。しかし、今や全生物の自慰行為・性行為の基盤の道具へと移り変わった。「ホッチ」の略称で知られ、性行為に欠かせないものとして宇宙共通語で存在している。以下の文章は「ホッチ」の使用発端となった「ぬ」の日記の一部(翻訳済み)である。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

われわれが人類と交流をしたとき、人類はわれわれの領域にいくつかの道具を置いていった。そこでわたくしは「ホッチ」を見つけた。使い方が分からなかったが、観察と実験を繰り返したところ、針が発生するものだと判明した。わたくしは試しに自身の皮膚に向けて「ホッチ」を使用した。バチン!その瞬間脳内に火花が散り、思わずわたくしは激しくひるんだ。一瞬意識を失い、痙攣をしていた。気付くと皮膚には針が食い込み、少しばかり体液が滲んでいる。皮膚があらゆる細胞を巡り全身を揺るがす。からだの芯がざわついている。未知の感覚にわたくしはひどく興奮をしていた。「ホッチ」は時間が経つにつれて軋むような痛さを伴うようになった。その痛さからわたくしは針を皮膚から少しずつ取り出した。針が刺さっていた部分には傷口が残っていた。わたくしはしばらくその傷口を眺めていた。

この経験と感覚はすぐに仲間に布教した。いくつか話を聞くうちに個体によって感覚による用途が異なることを知った。わたくしは「ホッチ」の使用後すぐに針を取り出したが、取り出さずにそのまま残している個体がいた。他にも針を複数使用したり、他の個体と自身をつなぎ合わせたり、局部を針で綴じたり、中には全身に針を食い込ませても何も感覚がない個体もいた。現在はさらなる「ホッチ」の発展のため日々研究が行われている。      ーー2×××年×月×日

「ぬ」より

ーーーーーーーーーーーーーーーー

これを読んだ人類の皆さんへ

「ホッチ」は使用用途による個体差があります。「ホッチ」の開発のために個体による使用用途・感覚を募集しています。(人類以外の生物への妄想やその他感想なども可。)

ご協力くださる方はこの投稿に「返信」まで。ご意見お待ちしています。

(「ホッチ」研究所職員 ハル)

宇宙人と地球人のコメント

  • 昔皮膚にホッチキスが刺さった時に痛みよりもその異物感が体の中にとどまっていることのもどかしさを思い出した。<地球人>
  • サドでマゾだね(地球人)
  • ぬぬぬぬぬ、ぬぬーぬぬ…ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬーーぬ!(不器用なので、いつも針が上手く刺さらず何発か無駄にしてしまいます。が、上手に刺さったときの感情が忘れらず何度もやってしまいます!)

地球人向け解説

まだなにもわからない。わからないことをわかろうとすること、わからないまま受け入れること、赤をみること。深淵を覗く時、深淵もまたあなたを覗いているのだ。

(ふ)

宇宙人と地球人のコメント

  • じわじわくるエロさがある
  • 何もわからない、わかろうとするところに答えがある気がして面白いと思った。(地球人)

サイトのご利用にあたって

地球人向け解説

当サイト「Pan-Universe Porn」は、毎日mm動画をアップデートしています。全てがそろった100%無料mm動画集。自由にダウンロードできる膨大な無料DVDセレクション。

Pan-Universe Pornは最も完璧かつ革新的なmm動画チューブサイトです。刺激的でよりよいmm動画生活がおくれるよう、私たちは常に新機能を追加しています。いつでも質問やコメントを送ってください。

「Pan-Universe Porn」では《ぬ》の皆様のための【部屋の角】を取り扱っております。

【部屋の角】とは、3方向ないし他4方向以上からの平面が付き合わさった部分の総称です。本日より、128次元空間にて生活されている《ぬ》の皆様がワクワクするような3次元空間的【部屋の角】を存分にお届けする【部屋の角キャンペーン】を実施いたします。どうぞお楽しみください。

(DA)

宇宙人と地球人のコメント

  • ”ガチ”っぽい後ろめたさがあります、みちゃいけないサイトを除いてるみたい 地球人
  • 形式の持つ説得力… いかにも人間が作りそうだけど実はぬたちには響いてなくて空回りしてそうでもある。
  • なんかドキドキしちゃった… 地球人

侵略


オリジナル

地球人向け解説

ぬの近くにぬに似たかたちの平仮名を配置すると、それを取り込みぬにし、繁殖するということが研究の結果わかった。

他の言語(英語、中国語、ロシア語等)には反応を示さず、〝の″や〝ね″を積極的に襲う習性が見られる。

ぬという文字を何度も見続けているとゲシュタルト崩壊を起こすが、ぬの性行為によって引き起こされている現象だとの声もあり、ぬは平仮名を通して我々と一つになろうとしているのかもしれない。

ぬという生命体が何故地球へやってきたのかという疑問が、今解き明かされようとしている。

(大場)

宇宙人と地球人のコメント

  • 我々の種を絶やさないうちに早く「ぬ」を消してくれ〜「ぬ」め〜(め)
  • 最終的に全ての平仮名は「ぬ」になる、、、? 地球人
  • そんな〜!?(ゑ)
  • ぬ………(修正ナシなんて過激です…………)(ぬ)

ぬーもぐらふぃー

地球人向け解説

「ぬ」は仮の姿を持っており、あくまでも私たちにとって「そう見える」というだけである。気づいたら「ぬ」は日常的に存在している。人に危害は加えず、集団で生存している。

「ぬ」には生と死についての概念がそもそもない。そのために生き物が誕生するということに対しての営みがないために、人間や動物にとっての生殖行動や欲を沸き立たせる感情のエロスには繋がりがない。

「ぬ」は五感のうち触角が特化している。表面が敏感で、温度が39.6度になるとキューと音がなってしぼむ。視覚的なものに関しての肉体的表現は感知しないものの、温度の抑揚や湿度の変化などに敏感に反応する特徴を持つ。集団で生活する中、触れ合うことで触覚を研ぎ澄ませていったと思われる。

「ぬ」が触れ合うことで生じた温度の変化は気温として表れ、人間にも感じとることができる。温度を介して我々人間と「ぬ」は関わりを持っている。

画像は「ぬ」の触れ合いによって生じた温度変化を分析し、図にしたものである。「ぬ」は温度の連続した緩急の変化によって、発情にも似た状態になる。我々はその変化の情報を取り込むことによって「ぬ」の性交渉の擬似体験ができる。(画像提供「ぬ」研究事務所)

(カラオケ行こうぜ!)

宇宙人と地球人のコメント

  • とってもキュートね
  • 温度の緩急って体験したことないかも!39.6°の音きいてみたい 地球人
  • 「ぬ」研究事務所の人によると,ヤカンに水を入れて沸騰した時の音に近いそうです。

ゴ・マ

地球人向け解説

「ぬ」の中には繁殖方法として体外受精を行う種がいる。「ぬ」の卵が直径1.7mであるためサイズ感は異なっているが、地球の胡麻はその「ぬ」たちの産む卵に酷使しており、「ぬ」たちは卵に似たディテールと異様な小ささに性的興奮を感じることが知られている。

(ft)

宇宙人と地球人のコメント

  • 自分たちの卵のはじまりを想像して興奮するのかな…未熟さを愛でるのかも…地球人
  • 異様_な小さ^さに性的興奮…そう^きたか…~^わかる…👽ぬ

ぬラビア

地球人向け解説

「ぬ」は文字を認識することができ、特に日本語のひらがなに興味と関心を抱いているということが分かっている。
ひらがなの中でも自分達の名前である”ぬ”の文字は「ぬ」達から絶大な支持を得ており、”ぬ”の文字をずっと眺めて性的興奮を覚えた「ぬ」も多くいるらしい。
そこで地球人は、ひらがなの”ぬ”にフォーカスを当てた「ぬ」向けのグラビア写真集を発行した。
写真集を見た「ぬ」達からは「ぬぬぬぬぬぬ…(これはたまらない…)」「ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!(まさに至極の一冊である!)」という絶賛の声が多く挙がっており、現在では入手困難のプレミア本となっている。

(hira)

宇宙人と地球人のコメント

  • 「ぬぬぬぬぬ…!(右のぬの写真が特にいい…!)」〔ある一体のぬ〕
  • ぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!←これ可愛すぎる
  • 真ん中の画像は”め”…?(地球人)
  • 「ぬ」達の間でも物議が醸されているそうですが、製作側的には”ぬ”らしいです

ぬの本

地球人向け解説

五感が無くて知性だけの生き物がいるとしたなら、そういう生き物にとっての快感って何だろう。
「官能」っていう言葉には感触も、匂いも、味も無い。
「ぬの本」には「ぬ」という感じについてのことを書いていた。
いろいろな「ぬ」のことを掲載されている。読んでみたら、五感じゃなくて、脳の知性から「ぬ」を感じること。

(読書者たち)

宇宙人と地球人のコメント

  • 「ぬ」は人間でいう本能ではなくて理性的な部分にに性的感情を抱くというのは、感情の表裏一体さを感じさせますね(地球人)

unevenness


オリジナル

地球人向け解説

「ぬ」は人類の性器官そしてセックスする動作を真似ている。全人類を観察の結果によって、まとめているのは「容器」と「棒」つまり「凸凹」を取り出した。

凸凹の意味が含めてる形に変換している。一つの凸が生まれたら、一つの凹も生まれた。「穴があったら入りたい」なんて凸が凹に入りたい衝動が持って、人類の最初、最全の欲望だ。

(入りたい観察者)

宇宙人と地球人のコメント

  • 「穴があったら入りたい」は「すごく恥ずかしい」喩えだけど…「すごく恥ずかしい」”BUT”「穴があったら入りたい」か…なるほど…(地球人)

メンセツクラブ

地球人向け解説

ぬ にとっては、人間だと緊張や恐怖にあたるものが性的な興奮の感情らしい。

そこで人間は交流を深めるための第一歩として ぬ用 の風俗を作った。

(な)

宇宙人と地球人のコメント

  • ぬの精神タフすぎる好き
  • こんなクラブはいやだ (地球人)
  • 人間にも需要あると思う(人)
  • そいつは人間のふりした ぬ ですね…
  • 替え玉面接してほしい(地球人)
  • 実質ほぼ ぬ のようなメンタルの地球人多そう

実によくある

地球人向け解説

普遍的なエロティシズム。
目が眩むような色をしたやわい曲線の奥にグロテスクな内側が覗く。見てはいけないものを見たような気がして、我々は目を逸らした。姿かたちは違えど、地球上には、このような生物が一年を通して咲き乱れる。地球人は一体どうして平然とした顔をしていられるのだろう。
ある日の<ぬ>の記録より

『有機物へのリビドーに耐性のない<ぬ>のための入門ポルノ』

(ラブゴムバッドロマンス)

宇宙人と地球人のコメント

  • 同感します(ぬ)
  • 「ぬ」は地球人よりずっとアーティストなのかもですね。  20代地球人

二進数

地球人向け解説

宇宙を支配しているのは数字である。ここまで数字に囲まれていてどうしてエロさを感じないと言えるだろうか。「ぬ」は地球人よりも思考力、文明ともに発達しており高次元の世界に存在している。存在はしているがそれは人間で言う概念に近いものであり姿形は確認できない。「ぬ」と数字は同次元に存在しているとも言えだろう。我々は同次元の存在に親近感を覚え快楽を求める。「ぬ」もまた世界を包み込んでいる数字という概念にエロさを感じるだろう。

(1974年アメリカは宇宙人に向けて2進水で構成された地球の概要を発信した。

しかし宇宙人にとっては二進数はポルノであり、地球人は無意識に全宇宙に対してポルノ作品を公開しているということになる。)

(01010100 01001000)

宇宙人と地球人のコメント

  • 2進水って誤字かな?故意かな??どっちにしろ超ワクワクする言葉だね……2進水ってなんだろう………(地球人)
  • 棒と穴に見えてきた!(地球人)
  • 「ぬ」に、コンピュータの仕組みを教えたらどうなるんだろうって思った…(地球人)

ぬのための音声-サンプル

地球人向け解説

《ぬ》は聴覚が発達しており、必要不可欠な理由の他に、娯楽としてもあらゆる音を摂取するらしいことが分かっていた。
しかし言葉を《ぬ》は理解しない。

《ぬ》が審査員となり《ぬ》のためのポルノ音を募るコンペが行われた。大賞をとったのがこの作品。

この作品は26時間ありその一部を切り取ったものだ。
人間が「ぬ」と発音したその音のみを使ったものであることから、《ぬ》は地球の生命である人間が自分たちのことを《ぬ》と呼んでいることを知っており、それに性的興奮をすることが判明した。

その後、作者と連絡は取れていない。

(作者不明)

宇宙人と地球人のコメント

  • 26時間…狂気の沙汰だね(地球人)
  • ぬぬぬぬぬぬぬ、ぬぬーぬっぬぬぬ……ぬぬ(次回作が楽しみだったが、作者と連絡が取れていないとは……悲しい)

なぞなぞ100

地球人向け解説

「ぬ」は性的興奮を覚えると知的好奇心が湧き出し、それを解消するためになぞかけを解く。難易度は関係なく、何か提示される→答えを見つけるという作業ができれば良い。性的興奮を覚えたばかりの「ぬ」にはしばしば地球生命体が作り出した手軽な『なぞなぞ100選』などが用いられる。上級者向けのものは彼ら自身で作り出したものがあるが、資料の入手は未定。

( )

宇宙人と地球人のコメント

  • なぞなぞだけじゃなくてテレビとかで見る「アハ体験」的なものも「ぬ」の性的興奮を解消する手段として作用するのか気になります!
  • なります!!!大変有効です。
  • なぞなぞを解くことに興奮するんじゃなくて興奮を解消するために解くのって不思議…落ち着けるのかな 地球人

sign/puzzle

地球人向け解説

「ぬ」は性的興奮を覚えると体液の循環が活発化し、体色がだんだん濃くなっていく。この現象は自分の体が子孫を残す準備ができたサインの役割をする。

また、種の存続に余裕を持っている「ぬ」は性行為にゲーム性を求めた。そこで彼らは、地球上のパズルを使うことでその心を満たした。

(むら)

裸頭本

関連動画

地球人向け解説

「ぬ」は実体のない超意識的寄生生物である。ヒトの頭に潜り込み宿主の想像力によって自分の姿形を形成していく。また「ぬ」はより完全な個体へと進化するためヒトからヒトへと頭を介して移動することができる。しかし、そんな「ぬ」が性的な反応を示したものがある。それはハゲである。(スキンヘッドも含む)人間にとっての性器が「ぬ」には頭部にあたるのだ。そんな頭部丸出しで生活するヒトに「ぬ」は強い関心を持っている。また一部の「ぬ」には、ウィッグが取れた時に垣間見える頭部に対して「ハゲチラ」(参考映像参照)と呼ばれる興奮をみせるものもいた。そんな「ぬ」のために今回成ぬ向け雑誌「裸頭本」を出版することになった。

(「H.G.P」出版 ばなれってぃ)

yasaii

地球人向け解説

作物のいびつな形や水水しさから感じる生命力が、ぬの性的な感情を刺激するらしい。

そのため、様々な野菜や果物の画像が出回っている。
土を取り払いきれいに手入れされたものほど興奮するようだ。

ぬは暗い場所での物体認識が得意であることから、画像は黒く塗られている。
人間は、画像の明るさなどを調整することで確認することができる。

(照間)

細胞分裂

地球人向け解説

「ぬ」の体は地球の真核生物に近い細胞で構成されている。そしてその細胞分裂は、「ぬ」が他の生命体の細胞分裂を観測した時に誘発されて発生するようだ。また個体ごとに生命体(細胞)の種類や分裂の速度など好みが異なるため、「ぬ」のためのポルノでは様々な細胞分裂を扱っている。

( )

あな

 
あなの図と宣伝ポスター

地球人向け解説

ぬの「あな」は新しい命が生まれるところである。「あな」の色、形それぞれ違うので、ある意味でぬのアイデンティティの象徴になる。普段「あな」は小さくてあまり見えないが、お互い好感を持ているぬたちが接触すると、頭が人間がセックスと同じ効果の気持ちさが感知できて、同時に「あな」が頭から「好き」という情報を受け取って、拡大し、パクパクして、生きているように見える。「あな」が接触する時にぬの胚子が生まれる。体内の温度、相手の温度または血液流れの速さによって、胚子が生きるかどうかを決めていく。人間から見るとこれらの「あな」はどんな感じかわからないか、ぬの視点で、極めてエロくて、脳みそがぞわぞわする。

(LSP星人)

A-TENGA

地球人向け解説

A-TENGA (Alien TENGA) これは多数の触手を持つ「ぬ」のためのマズターベーション 用のホールである。多種多様のホールに同時に挿入することで通常の生殖行為では得られ ない快感を得る。

(あお)

宇宙人と地球人のコメント

  • パイプオルガンってA-TENGAだったんだ(地球人)
  • もう:そうい^う目でしかこういうもの見れな_くなっちゃいますよ~><👽ぬ

22世紀恋愛論2020作品選集

目次

 課題
 ワークショップ

作品選集

野生の在処

 ジレンマ  伊藤匠
 ケモノ  野々田商

肉体具有

 セット  髙杉龍斗
 囚われる  Kyo
 月経血  Crow

秘密結社

 Grandfather’s List  坂本龍一
 恋愛戦争  天野大樹
 恋愛小説  佐々木

みんなおなじ

 クローン人間プロジェクト  moe
 プランA  むろはしかな

キャラ

 ワープ  ちゃんまり
 本物の超能力  けーた

書物

 『 』  もこみち
 文学に恋をする  taipee

マッチング

 パンデミック  こうの

季節

 あどけないデイタ  ムラッセ

課題

「恋愛(とかつて呼ばれていたもの)の22世紀を構想し、作品化する」

世界をスマホだとすると、可能人類学はアプリの入れ替えではなく、OSのまるごと交換を基本戦略とします。そのため僕らは「~の未来」を考えるかわりに「~のない未来」を考えてきました。恋愛のない未来は、恋愛という概念が根こそぎ意味を失う未来にほかなりません。これまで「学校のない未来」「スポーツのない未来」で試みたテンプレートをあてはめると、[恋愛]のない未来は、次のような補助線を引いて構想することができます。

  • [恋愛]が[恋愛]とは呼べないなにかに変化する
  • [恋愛]を代替する新概念が現われる
  • [恋愛]を必要としない人類に変化する
  • 人類がいない世界の汎宇宙的[恋愛]を思い描く

「恋愛がない」という設定には、出会いがない、性差がない、生殖がない、身体がない、家族がない、国家がない、などなどのサブセットを見つけることができるでしょう。また、育てる、贈る、眠る、死ぬ、食べる、といった交差軸もあります。VR、AI、生命科学、神経接続といった道具だてもあらわれます。

リアルな出会いや身体の接近を抑制されたパンデミックの状況下で、現在だから感じられる世界の危うさ、脆さをベースに、現在に立ちはだかる大いなる「外部」を探ります。

作品形態は「超短編小説」いわゆるショートショート。ひとり1作品、5分以内で読める程度の長さで。

ワークショップ

場所:東京経済大学コミュニケーション学部(遠隔授業)
講座:可能人類学2020
期間:7月8日~7月22日
企画構成:安斎利洋
講評:小野美由紀(作家) 最近刊:『ピュア』早川書房

作品選集

野生の在処

ジレンマ

伊藤 匠

けたたましく蝉の声が聞こえる季節。通学路で、逃げ水を追いながら登校する小学生の少女。
「ガッ」
いきなり少女の顔を殴ったとてもハンサムな男。
「痛っ」
少女はひどく怯えながらも大人には抵抗できなかった。その男は嬉しいだろうと言わんばかりに少女の頬に暴行。そしてキスを繰り返した。
「本当に可愛いね。また会おうね」
男はそう言うと、満足気に歩いて行った。

キーンコーンカーンコーン。
「じゃあお前ら~席につけ~」
かつて教卓と呼ばれた教員が立つ台に、VR上で登壇した教員型アバターのマーチ。形は人間そのものだが、現実に実態はない。かなりのイケメンに作られており、女子生徒からは人気だ。
「新年度最初の授業は恋愛だ」
日本では、今年度から中等教育に恋愛という科目が追加された。
「やったー!これで俺も恋愛マスターじゃ!」
今日最初にログインしていたクラスの中心人物でお調子者のリュウヤが声を上げ、みなが一斉に笑った。
「いきなりだけど、男子のみんなはかわいい人、女子のみんなはかっこいい人を見るとどういう気持ちになる?」
マーチが生徒に対し質問をした。すると、クラスでは随一の変態キャラ、ショウジロウが答えた。
「顔を殴りたくなります!」
「お前、流石に恋愛の授業とはいえその発言はまずいだろ」
と真面目な性格のトウマが、突然現れた虫に驚いたかのような勢いでショウジロウに言った。周りの女子たちは下を向き、恥ずかしそうにしている。
「そうかそうか。ショウジロウは正直でよろしい」
マーチはちょっと嬉しそうに答えた。
「せんせ~、しょうじろうはしょうじき ってクソつまらないダジャレ言うのやめてくださいよ~!」
リュウヤのその一言でまたクラスが笑いに包まれた。しかしマーチは、呆れた様に授業を続けた。
「まぁ、それはいいとして。さっきショウジロウが答えてくれた行為の正式名称は、恋打為(れんだい)というんだ。昔の恋愛では今でいう恋打為に近い性行為というものが存在していてな、それによってオヤから子供が生まれてくるんだ」
「先生、オヤってなんですか?」
ある生徒が聞きなれない単語に反応した。
「オヤっていうのは、子供を産んだり育てている旧・人類のことだ。今、君たち派・人類(は・じんるい)はクローン技術で作られているだろ?だから親がいなくても生まれて来られるし、一人で成長できるんだ。でも昔の人間は生殖行為をした親からしか生まれることができなくて、成長するにも親が必要だったんだよ」
「あ、僕それ知ってます!なんか生殖行為が感染症になるリスクがあって禁止されて、それ以降人口が激減したって聞いたことあります。」
「おお、流石クラス一番の頭脳派。ユウスケは相変わらず色々よく知ってるな」
マーチがシンプルに感心していると、いつもユウスケと成績で張り合っているマイカが負けじと答えた。
「それなら私も知っていますよ、2027年のコロナですよね?」
「おお、マイカもやっぱり物知りだな。まさにその通りで、2027年にコロナが完全に消滅する直前、人類は生殖行為を完全に禁止したんだ。理由はウイルス感染のリスクがあったというのと、クローン技術の承認だ」
「なんでクローンが今まで駄目だったんですか?」
リュウヤが珍しく真面目な表情をした。
「倫理観の問題だな」
「倫理観ですか?」
「そうだ、当時の人類は倫理的にクローンを作ることを禁止していたんだ。でもパンデミックによる人口減少で手段を選べなくなったんだ」
「価値観って変わるんですね」
リュウヤは何かを感じた様にそう言った。
「ちょっと話が逸れたが、人類は生殖行為に代わる繁栄方法を見つけたという理由と、感染症を恐れたという理由で性行為は一切しなくなったんだ。それに代わる最上の愛情表現として確立されたのが恋打為ということ。好きだからこそ手を出すということだな」
「でも先生、性行為ってやり方によっては暴力ですよね。なんで旧人類はそんなものを愛情表現として好んでやっていたんですか?」
ある生徒の質問にみなが興味を持ち、先生を見上げた。

そして五秒の沈黙の後、マーチは口を開いた。
「先生もな、知識としてダウンロードされているだけで、その時代は生きてなかったからよく分からないんだけど、恋打為にあたる行為は当時暴力だったらしいんだ」
「え」
「ウソッ」
「そうなの…」
教室がザワついた。
「まぁ、中学生のみんなにはちょっと早いけど、先生が今日伝えたいのは、旧・人類の異性との関わり方には気を付けろってことだ。この学校には派・人類しか入学できない決まりがあるから大丈夫だけど、大人になったら気を付けるん……ウッ?!」
キーンコーンカーンコーン。

チャイムの音が聞こえなくなるのと同時にマーチの体はクラッキングされ、消滅した。
「恨むなら、歴史を恨んでね………………ここから始まるんだから……」
息をのむほど美しい横顔を持つその少女は、教室をログアウトし、暴行されて痛々しく変形した右頬を手でそっと抑えながら歯を食いしばった。

「以上が、僕がこの夏休みに調査した二十二世紀初期の恋愛というものです。二十三世紀の今では、僕ら子供たちは先人の知識をICチップでインプットされた状態で生まれるので、学ぶことは少なくなったと思いますが、その分今回調査したような黒い歴史は抹消しようとする世の中的な流れがあります。僕はそんな歴史も語り継ぐべきだという思いで今回の、過去の恋愛調査課題を行いました」
その少年は、小学生にしては硬すぎる口調で自身の調査結果を発表した。
「なぜそのように考えたのですか?」
先生は生徒を試すように聞いた。
「なぜなら、価値観の是非は証明できないからです。人間が築き上げてきた今の正しいと思い込んでいる価値観も、昔の価値観があって存在しています。ですが、その価値観の是非を判断するのは根拠のない人間と人間が作り出した不確実な根拠です。人間が定めた価値観で世の条理を判断することはできないと僕は思います」
そう言うと、少年は先生の返答を受け付ける気がないかのようにマイクをミュートにした。

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ケモノ

野々田 商

一目惚れなんてよくあることだ。あの見た瞬間に身体の中心から隅々にブワーって何か流れる感覚はもうないけど。
————97%。 また起きたよ、私は惚れたのだった。それにしても数値高いな。向こうもこっちを見ているけど、向こうも私と同じことを思ってるはず。今日は話しかける気になった。
「こんにちは……えーっと…………これから時間空いてたりしますか。」 この状況だけはいつになっても慣れない。「……少しなら。」彼女、すごい男に慣れてるような見た目なのにこんな性格なのか。やはり、そういうところが合うんだろうな。私たちはカフェに行くことにした。
彼女の名前は駒田雛。24歳。もちろん独身。
カフェに入ってから2時間経っていた。少し話す予定だったのに思ってた以上に話が弾んだ。つい、次会う約束をしてしまった。今日は気分で話しかけたというのに。

約束の日、13時に下北沢に集合した。今日はこの前カフェで互いに古着が好きということを知り、古着屋巡りをする日。店頭には40年ほど前に作られた希少な服が並べられている。この店に来るといつも希少なものばかりで興奮するが、横を見ると雛も興奮していた。雛のことをもっと知りたいと思うようになった。おそらく気が合うんだろうけど。
その日の夜の帰り道、1人で歩いている私は ————ドンッ と後ろから押された。振り返ると、高校の頃付き合ってた元カノの美麗だった。どうやらお互い近くに住んでいるようだ。2人で帰っているとき高校卒業後の話、近況の話など色々話した。振り返った時に気づいていたけどやはり恵美には付き合っている人がいるそうだ。2人は十字路で左右に分かれた。

(……美麗とはどれくらいマッチしていたのだろう。)

それからは雛と会うことが増えていき、雛のことを知っていった。雛をもので例えるならシャボン玉。ふわりと現れて、遠目から見たら透明なのに近寄ると角度によって色という表情を変える。その1つ1つが愛おしくて、パチンと弾けて消えてしまわないように優しく触れたいとずっと思うような人だ。私はいつの間にか雛のことを好きになっていた。
震える手を抑え、頭が真っ白になる。「……えーっと……付き合ってほしい。」事前に考えていた言葉とは程遠い言葉が出る。言った瞬間に我に返り同時に不安が込み上げてくる。すると雛が「……わ」 ————(え?これいけるかも。) 私は雛の表情と最初の『わ』からなぜかこの戦いに勝利したように感じた。「……私もそう思ってるよ。」この戦いに勝った。その瞬間私と雛は透明な丸い形状のものの中に入ったような感じがした。それと同時に安心感から心の熱が少し冷めた。
早速2人で区役所に行き、恋人存在手続きをした。それ以降、街を歩いても数値は一切出なくなった。この数値とは、少子化が急激に進んだ21世紀後半に政府がその対策として20歳を迎えるとマイクロチップを身体に組み込み、その機能によって『子孫繁栄』という生物的本能を脳から読み取ることで、異性が細胞レベルでどれだけマッチしているかを可視化でき、度合いを数値化したもののことだ。この数値は恋人存在手続きをしていない、もしくは失恋手続きをした人が互いにマッチしている度合いを見ることができ、この対策によって21世紀末から22世紀初頭にかけて少子化を改善することに成功し、結婚する人が増え、離婚する人も減った。一夫多妻で暮らす家族もいる。現在はその名残りがまだ存在している状態である。しかし、最近では子どもが増えすぎていて、幼稚園や小学校などが足らなくなっていることが問題になっている。鳥野総理大臣は増税をする方向で考えているそうだ。

仕事帰り、1人で帰っていると ————ドンッ と後ろから押された。美麗だった。「ちょっと飲み行かない? 」と誘われ、雛に連絡をして行くことにした。明らかに美麗の表現はこの前会ったときとは違っていた。
「なんかあったの? 」と聞くと、最近彼氏と別れたらしい。失恋手続きも終えたらしい。

(……待てよ、ということは俺を見ても数値は表示されないから誰かと付き合ったことバレてるな。)

私の話には一切触れず美麗の話をとことん聞き、店を出ることにした。その帰り道、なかなかに酔った美麗が「私たちってどれくらいマッチしてるのかな! 」とゲラゲラ笑いながらちょっと刺さる言葉を言ってきた。一瞬反応に困ったが私も合わせて「そんな数値高くないだろ! 」と軽く言った。ちょうど左右に分かれる十字路だった。「また飲もうね! 」と美麗が言って背中を向け前に進んでいった。

(前会ったときは俺も美麗みたいなこと思ってたけど、今はもう何も美麗に対して思うことないな。)

私と雛は結婚した。1人目の子供も雛のお腹にいる。多子化が問題視されているが、このマイクロチップを身体に組み込むのは大いに賛成している。まさにマイクロチップによって、本能が原動力となっている私たちは人間本来の生物としての姿を再び取り戻すことができ、本能を抑制する理性をも超越した本能を生み出した私たちは新しいケモノではないだろうか。

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肉体具有

セット

髙杉龍斗

・美岾米青(とみやままいせい)

2つ上の兄が1年ぶりに帰ってきた。発見場所は兄の元自宅。今となっては俺の自宅でもあるのだが。
一年五か月前、兄は勤務先の工場で誤って自らの右腕を捻り切る事故を起こした。工場側に過失は認められず、兄はわずかな退職金と貯金を片手に、自宅とリハビリ施設を往復する日々が続いた。両親の遺産があったため、お金には特別困っていなかったらしい。もっともこのことは兄の行方不明後に方々から聞いたことなので、詳しくはしらない。
行方不明が発覚したのはその事故から七か月と少し経った頃だった。土曜日の朝、八時ごろだっただろうか、仕事に疲れまだ深い眠りに落ちていた俺を一本の電話がたたき起こした。
嫌々受話器をとると警察だというから驚いた、さらにその内容を聞くころには私の眠気は完全に覚めていた。
「お兄さまの瑞六(みずむ)さんの行方が分からない状態なのですが、何かご存じありませんか?」
「兄が・・・ですか?いえ、何も知りません。えっと、それはいつから行方が?」
「そうですか、通報があったのは昨日のことです、アパートの大家さんから。自宅ポストの状態を見るに少なくとも二か月は帰っていないようです。」
お互い自立し両親を亡くして以降、兄とは疎遠だった。仲はいたって普通であったと思うが、ここ数年は特に会うことも話すこともなかった。兄は変にまじめな性格で、昔から常に何かに悩んでいた記憶がある。
「もしかしたら兄は悩みに耐えかねて・・」と思うとなんだか自分にも責任があるような気がして、俺は個人的に兄の足取りをたどることにしたのだ。
その一環で、兄の自宅に私が引っ越すことに決めた。今の自宅より仕事場からはかなり離れてしまうが、手掛になるものがある可能性があること、何より兄が帰ってきたときに元居た家に帰してあげたいと思い引っ越しを決めた。
そんな生活を続け、行方不明から約一年、兄は突然想像しえない“カタチ”で家に帰ってきたのだ。
仕事が休みだった私は昼頃に目を覚ました。ベッドの上でしばらくスマホをいじった後、ベッドから足を下すとグニっとした何かを踏んだ感触があった。躊躇しながらも足元を見ると、見たことのない物体が足元に広がっていた。
よく見ると人のように見える。全身が茹で上がった蛸のように赤く染まり血管のような筋が青白く浮かび上がり、ところどころ汁のようなものが漏れている。目は飛び出し、空気を抜かれたゴム人形のようにシワシワになってつぶれている。口に見える穴からはぷすぷす、ぷすぷすと奇妙な音をたてている。
意外にも冷静だった私は警察と救急に連絡をした。その後、一週間ほど勾留され、帰り際あの物体についての報告を聞き、現在自宅に帰ってきたところだ。
一週間ぶりの自宅はなんだかとても広く寂しくなったように感じる。あの物体は兄だった。病院についたころにはすでに事切れていたらしい。報告によると兄の体からは全身の骨と睾丸がなくなっているが、外傷は右腕がないこと以外に足の裏の激しい損傷のみで他に見られないという。現代の技術では不可能のことらしく、俺による犯行ももちろん不可能との判断が下された。

・美岾瑞六

右腕をなくしてからすでに五か月が経過した。傷はほぼ完治していて、傷口が痛むことはないが右手の指先あたりがかゆいと感じることがある。ファントムペイン/幻肢痛というらしい。
五か月前の事故の原因は完全に自分にあることはわかっていたし、工場側に迷惑をかけるのも嫌で、退職金だけを受け取って療養に励んだ。お金については両親の遺産で特別困っていなかった。心配をかけたくなくて、弟に連絡を取ることも周りに止めていた。
事故の日は体調に何の変哲もなかったが、それが逆に良くなかったのかもしれない。いつも通りの日常に気が抜けていた私は誤ってクリーニングの機械に右手を突っ込んだままスイッチを入れた。ものすごい音と勢いで私の右腕は巻き込まれていき、それが肩まで差し掛かったころに悲鳴に気づいた同僚がスイッチを止めてくれた。
事故から約五か月たった頃、右腕のない生活に少し慣れてきた私は、リハビリもかねて地元の山にハイキングに行くことにした。
地元、鹿児島県の小さな村には似合わない大きな山がある。実際、村の八割以上の面積をその山が占めている。由緒正しい山らしく、山の神を祀る神社があるため子供のころは家族で初詣に行ったりした。
東京の生活にすっかり慣れていた私は、数年ぶりに山のふもとに立つとその自然の偉大さになんとも感動した。風は私を迎え入れるかのように優しく吹き、揺れる木々は歓迎の拍手をしているようだった。
山を登り始めると、その山への尊敬はより深いものとなっていった。山に生える雑草までもが美しく感じ、ごみが落ちているのを見つけると激しくそれを憎んだ。気づくと私は山に大の字になって寝転がっていた。うつぶせになり、山に接吻を繰り返した。すると急に視界が激しく揺れ始め体中の快感とともに深い穴に落ちていくような感覚に襲われた。私は目を閉じ、それに身を任せた。

再び目を開けたとき、私は殺風景な銀に光る部屋にいた。自分に何が起きたのかはなぜだか即座に理解できた。ここは私のいた世界の平行世界線であり、ずっと未来、2190年だった。
「ご理解していただけましたでしょうか?」
いつの間にか目の前には私の脳では理解できないものを身にまとった、恐らく女、がいる。
「あなた様は今世紀三人目のアニムとしてここに降臨なさりました。これから・・・・」
女は長々と何か説明していたが、私の耳にはまったく入ってこなかった。それに、私がここでやらなければならないこと、役目は本能的に理解していた。
私が再び女のほうに目をやると女はこう言った。
「あなた様は今世紀最大のギルクをお持ちのようです、万の子が生まれるでしょう。さあ、こちらへ。」
ドアらしきものを出ると、ものすごい数の人々が私を羨望のまなざしで見つめ、見たことのない機械を私に向けている。その奥には先ほどまでいた山が見える。しかし、先ほどふもとで見た時とは違い、山肌は桃のようにみずみずしく膨らみ、木々は秘密を隠すランジェリーのように見えた。
群衆の間に用意されている道を抜け、ふもとにつくと、一人ついてきた女は歩みを止め
「お結ばれを果たされた後、肉体の行き場所はありますか?」と言った。
私はここでの時間の進みと元居た世界の時間の進みが違うことを理解していたので
「弟のところへ」と言った。長い間不在の私のことは、恐らく弟の耳に届き心配しているだろう、と。
「承知いたしました。それでは失礼いたします。」
女は元来た道を戻っていった。それを見た私は、即座に頂上へと走った。
まるで反射のように止まることなく足は頂上へと向かっていった。本能と理性が完全に一致していた。裸足の私の足の裏には無数の木の破片が突き刺さり、血が噴き出ているが私はそれを愛撫のように感じていた。
頂上に着くと、私は山とともにすぐ果てた。山は喘ぎ、その肌を金に光らせ、風を起こし私を中心に竜巻を作った。草木は朽ち、繁るを高速で繰り返し、虫や動物は過去と未来を旅した。
山は確かに私の耳元で「       」と囁いた。
気づくと女が目の前に立っていた。見知らぬ機械を私に向けながら
「これよりアニム様は山に成ります」といった。
女がトリガーのようなものを引くと急に呼吸がしづらくなった。体が動かず、全身が何かを失った叫びをあげる。
突然何かに踏みつぶされ私は声にならない声を上げた。

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囚われる

Kyo

人の感情というものは、追求すればするほどわからなくなる。

二一二〇年、リスク管理システムが発達し「悲しい」という感情は珍しいものになった。怪我や病気はする前に知らされるし、生活を記録したクラウドとAIが連動して、死後も会話を楽しめる。

“「悲しみ」は、今や完全に娯楽の一種として消費される感情となっている。”

そんな文章で締めくくった論文を、ざっと読み返す。百年前からの現在までの、悲しみという感情の変遷。百年前、悲しみや切なさといった感情は、娯楽のためだけのものではなかった。もちろん小説や映像作品などでそれを扱うものは山ほどあったが、実生活でも多々生まれる感情だったらしい。
「終わった……」
という言葉と同時に、焦りが喉から抜けていく。今回の論文は長かった。

私が感情の中でも悲しみや切なさについて研究し始めたのは、単にもの珍しかったからだ。まだ数十年前までは当たり前の感情だったようで、文献が少ない。研究が進んでいないものを研究したいと思うのが、研究者の性である。
そんな悲しみ研究と切っても切り離せないものが「恋愛」である。百年前のように作品で得る悲しみには限界があり、人々はさらにリアルな悲しみを求めた。その結果、世界中に悲恋ブームがやってきたのだ。
悲恋と一口に言っても様々だ。デートのキャンセル、三角関係、親の反対……もう、少しでも悲しければ何でもアリらしい。リスク管理システムが発達した現代において、悲しみを見つけるのはとても困難なことなのだ。

研究室を出る前に、電話をかける。三コールで繋がった相手は
「お疲れ様。書き終わった?」
と穏やかな口調で言った。
「うん。今やっと終わったところ。そっちは?」
「今から詞を入れるところ。今日は朝までやるつもり。気をつけて帰ってね」
彼は私の恋人だ。私たちは世界中が夢中になっている悲恋を求めていない。彼は作曲家で、曲を作る感性には悲しみや切なさが欠かせないのだと出会った頃に教えてくれた。私たちは仕事と深く関わる感情を、プライベートにまで持ち出そうと思わなかった。だから気が合ったのだ。穏やかに暮らしていければいいと、それだけを願っていた。

彼の様子が変だと感じたのは、それから半月ほど後、レストランで一緒に夕飯を食べているときのことだった。

「嬉しいとか」

普段あまり自分の考えを口に出さない彼が、抑えきれなくなったように話し始めた。

「嬉しいとか悲しいとか、最近もうよくわからないんだ。みんな悲しいことの方が良いって言うけど、結局悲しいは苦しいじゃないか。苦しいのは苦手なんだ。あと切ないもわからない。だんだん何もかもが切なく思えてきて、最近はもう切なくないものの方が探すのが大変で」

普段穏やかな彼が、こんなにも饒舌になったことに驚いた。

「このあいだ電話したときに詞を入れてた曲、あれはとても良くできたんだけど、あれをつくってからもう何もかもわからなくて。俺はなぜかいつも悲しいけど、ぜんぜん嬉しくない。悲しいことが幸せってことは今幸せなはずなのに、そう思えない」

目を伏せた彼を見て、少し痩せたな、と思った。

「悲しみも幸せも結局目に見えないし、何なんだろうね」

それが私に対する質問だったのか、独り言だったのかはわからない。もし質問だったのだとしても、私が学者として感情のしくみを話すことを彼は求めていないようだった。

「徹夜ばっかりするから疲れたんだよ。これ食べたら帰ろう」
私はそれしか言うことができず、あとは真ん中にあったホログラムキャンドルの静かな火を見つめていた。

そして、それが彼と最後に会った日になった。

バタバタした日々とともに、季節がひとつ過ぎた。友達は悲恋を経験した私を羨ましいと言った。泣きながら、自分のことではないのに楽しそうだった。彼は死後会話のAI登録をしていなかった。何となく、わかっていたことだった。
周囲の人間は、リスク管理に誤作動があったのだろうと言った。とても残念だけど、良い恋ができて良かったね。そんな風に、みんな少し困った顔をしながら微笑むだけだった。

私は周りにどんなことを言われても、彼を蝕み、追い詰めたものが「悲しみ」であると確信していた。何としてもそれを証明しなければならない。抜けてしまったものを埋めるように、仕事に没頭した。

ある日、図書館で調べ物をしていたら気になる本を発見した。
「うつ病……?」
それは数十年前、リスク管理システムの登場と共に根絶した病気の記録だった。院生だった頃に歴史として少し勉強しただけで、詳しくは知らない病気。今まで病気の研究、まして根絶した過去の病気などには興味がなかった。

バーチャル空間の隅っこで、私は気がつくとページをめくっていた。八十年前に出版された古い本で、今や全国に数人しかいない「精神科医」がうつ病の症例をまとめたものらしい。苦しんだ人々の記録。ページをめくる手が止まらなくなっていた。まるで彼を見ているようだと思ったから。

そしてもうひとつ、私を鏡で覗いているようでもあった。

ああ、そうか。彼だけでなく、私も囚われていたんだ。この感情に。虜になりすぎると囚われてしまう、恐ろしい感情。モヤモヤしていたのはこれだったんだ。

これを発表し終えたら、彼のところに行かなくちゃ。

私の頭の中は、そんな思いでいっぱいだった。

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月経血

Crow

木々の隙間から漏れた月の光が僕の目の奥の方を優しく刺激する。ハラハラと落ちる桜の花弁はその刺激に心地良いリズムをつける。もどかしい。掴もうとするとこちらの呼吸でハラリと向きを変えてしまう。光が僕のものになれば良いのに。そんなことを考えても、少し目を落せば、汚い中年男が月経血で顔を真っ赤に染めた顔を股に顔を埋めている。

「んっ…。」

自分の敏感なところを触られて、思わず声が漏れてしまう。もしかしたらこれが快楽の一種なのかもしれないが、感じた瞬間にどうしようもない虚しさに襲われる。認めたくない。クチュクチュという音が暫く続いた後、男は股から顔を上げて、微笑をうかべながらこちらを向いた。

「さすが。なかなか、良い。」

口の周りについた血を指で拭い、その手でポケットに入れていた現金に手をつける。この時代に現金なんて、逆に怪しまれるのでは無いだろうか。紙の端には男の手から移ったのだろう、血がついている。現金を渡してすぐに、男は満足気な足取りで帰っていった。姿が見えなくなるのを確認して、紙の血のついた部分を自分の鼻に近付けてみる。鉄と腐った魚の匂い。

「ぐ、、がぁ。」
授業中だというのに、隣の席の人は大きないびきをかく。僕には絶対できないだろう。いびきはなかなか強そうだけど、口は本当に小さい。その小さな口から、ツーっと唾液が漏れている。透明な唾液越しに見える唇はほんのり桃色だ。こんなところを勝手に見ているのは、よくないと思いながらも、思わず見てしまう。いつも寝ているのにも関わらず、試験の点数が僕よりも高い。
小さいことから、僕はこれといって特技のない人間だ。勉強も人並み、運動も人並み、特別できるわけでもなく、できない訳でもない。今日も、こうやっていつも通り、椅子に座って授業を受けている。時間があまりにゆっくりと流れるので、窓の外に顔をむけた時、突如頭と下腹部に鈍い痛みが響いた。鈍く、鋭く、殴られたような痛み。このまま授業を受けることは出来なさそうだと感じ、僕は先生の呼吸の隙間に手を上げた。保健室に行こうとして席を立った時、僕の隣の人が目をキラキラさせて叫んだ。

「血が出てる!」

思わず振り向いた。椅子の上は、確かに赤くなっていた。一気に教室がざわめきに包まれる。ざわめきによって頭の中がぐるぐると揺れる。それがそのまま胸のあたりに落っこちてきて、気づくと僕は床に吐瀉物をぶちまけていた。
先生に肩を貸してもらい、保健室に着いた。自分が、まさか希少種だったなんて。数分経って、大分、気分が戻ってきた。なんだか、またのあたりがゴワゴワするなと思ったら、知らない間に、パンツの中に布が入れられていた。布は真っ赤に染まっている。血なんて普段見る事は滅多になかった。気持ちが悪い。先生は僕にいくつかの病院を紹介した。この身体は、狙われる危険があるらしい。なるべく早く、去勢手術を行い、皆と同じ身体に戻る事を勧められた。そうしようと思った。もう二度と、みんなの前でゲロを撒き散らしたくない。
帰る支度をするために戻った教室は、もうみんな帰って空っぽだった。僕の椅子は、撤去されていた。思わず、机を殴った。
「ねぇ!」
声がした方を振り返ると、隣の席の人が立っていた。誰もいないと思っていた。迂闊だった。
「お願いがあるんだけど。」
隣の席の人と、まともに話した事はなかった。ずっと、僕が一方的に見ているだけだった。
「助けて欲しい。俺の家、貧乏で。お金が必要なんだ。」

2020年、世界では新型コロナウイルスが大流行した。人と人との接触が悪とされる風潮が広がったが、若者には感染しても無症状だというケースが多く、ウイルスは若者内での感染が流行った。しかし、後に新型コロナウイルスの感染は人間の生殖能力を著しく低下させることが判明。急な感染拡大に対応して非常に短い期間で開発されたワクチンも、ウイルスと同様に生殖機能の低下の副作用が出ることが後になって判明した。今まで主流だった体の接触による性交や女性の身体を利用した出産は感染防止の観点から禁止された。ウイルスの拡大が治った今でも、その時の名残でゲノムを下にした人工複製によって人が産み出される(というよりはコピーされるという表現の方が適切かもしれない)のが一般的になった。コピーの際、最早生殖器は不要の為、基本的に削除される。しかし、ごく稀に、残ってしまう場合がある。生殖器から出る液は、体内に取り入れることで麻薬など同様な効果が得られると言われている。液の中には膣分泌液、精液などがあるが、その中でも最も高価なのが月経血である。生殖器が非常に良い状態で機能してなければ、月経血が排出されることはない。

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秘密結社

Grandfather’s List

坂本龍一

祖父の訃報を受けたのは大学で人文地理の授業を終えた直後だった。電話先の母親からこちらの心境を必要以上に心配する様子をひしひしと感じ、「大丈夫だよ。すぐ向かうから」と伝え電話を切る。覚悟はしていた。容態が悪いのは聞いていたし、先月会いに行ったときも一言二言話しただけで眠ってしまったので、いずれはこうなるだろうと思っていた。まぁ、とにかく自分は祖父との約束を果たすのが重要だろう。
祖父の家に着くと、主に両親が親戚の対応をしていた。ロシア人である祖母は日本語こそ堪能だが風習についてはまだ疎い部分もある。挨拶をした後、祖母に祖父の部屋に居ていいかと聞くと了承を貰った。
元大学教授である祖父の和室は8畳だと思えないほどにとにかくゴチャゴチャしていて物が多く、また様々な国のもので溢れており統一感という言葉からは縁遠い。しかし自分はこの空間が大好きだった。いま大学で地理科に通っているのも祖父の影響だ。懐かしさを感じつつ、目的のものを探す。
押入れの中にそれはあった。電子レンジくらいの大きさの金庫だ。私が大学に入学した際に祖父から渡され、死後使うよう厳命されていた鍵を使い、扉を開ける。中には写真とA4紙の束が詰まっていた。
祖父が遺した写真を数枚ほど手に取る。写っているのは外国人で、特に欧州人が目立っている。それぞれ年齢はバラバラでこれといった一貫性は無い。唯一の共通点は男女の特徴を保っているという点だろう。
複数の言語が使われているA4の紙束に目を通すと、自分の中にあった疑問が解消された。この写真に写った“彼ら””彼女ら”は亡命者なのだ。
2150年代、旧ジェンダー統一思想(現ヒューマニズム思想)が覇権を唱えた時代。欧米を中心に2020年代から興隆したジェンダー思想は加熱の一途を辿り、結果「それぞれの立場を尊重し合う」ものではなく「性という差別の温床を根から排除し、人間という統一した規格になる」という思想が世界を覆った。アジア諸国では反発が強く未だに浸透しきったとは言えないが、欧米では性器を生成しないよう遺伝子操作を行うことがほぼ義務付けられており、その結果顔つきや体格の中性化が進むようになった(もっとも彼らは既に男性女性中性などという言葉は使わず人間化という言葉を用いている)。現代の個性とは、自身の意思で身体改造などを行う後天的なものへと変遷した。生殖行為も当然なくなり、子作りは両親の遺伝子を採取し科学技術でかけ合わせポッドで養育する方式が向こうの世界での一般的だ。
文化面においても変化が起き、文法性が色濃く残るフランス語・ドイツ語・ロシア語などは差別言語として廃され、英語がその後釜に付いた。文化の融和・統一化は人間の世界全体での結託を推し進めたのだ。
性の廃止を進める国々に限れば。
とどのつまり人間が結託するには共通敵が必要である。この場合は性廃止を推し進めきらないアジア諸国に向き、その反発でアジアは結託する。日本人はこれを揶揄して大東亜共栄圏などと呼ぶが、中国やモンゴルからトルコまで一連の国々が参加している以上、大東亜共栄圏など生易しいものでは無いのが現状だ。
差別の解消などと叫ぶが、結局はパイの切り分け方を変えただけなのだ。
話を戻すと、前述の話を踏まえて言えば欧米では“人間化”に恭順の意を示さない者がいい顔をされないのは自明の理だろう。ではどうするか。
答えは亡命である。そして金庫の資料や写真が物語っているのは、祖父が亡命の手引をしていたという事実である。それ自体に嫌悪感は持たない。むしろ誇らしく思う。しかし悲しかったのが、憧れの祖父が実は地理学者ではなかったのだろうと察しが付いてしまったことだ。
祖父の資料中のリストや写真を見れば、祖父が直接亡命を手引したのだということはわかる(でなければこれらの資料は国が管理するどこかに秘蔵されているだろう)。問題はその数だ。明らかに地理学者の大学教授が片手間で手引できる人数ではない。それに祖父を訪ねる生徒や教授などに会ったことは一度もないし、学会に出ると行って外出すれば数日は帰ってこなかった。
そこでふと、思い当たった。なぜ祖父はこれらを私に遺したのだろうと。普通ならば処分しなくてはならない資料であるはずだし、私に見せるメリットなんて……。
思考の海に沈もうとしていたその時、資料の間から何かが落ちる。拾い上げるとそれは、輪ゴムで纏められた手紙であった。拙い絵や字で彩られた手紙。用いられているのは、今はもう使われることも少なくなった言語。
ああ。祖父は地理学者だ。文化の根底を支えるのは言語であることを誰よりも理解しているからこそ、行き過ぎた人間規格統一化は祖父にとって耐え難いものだったのだ。そしてそれは自分も同じだ。いずれ過去の産物になってしまうものだという諦念を孕ませつつ触れてきたものが、自分の努力次第でこれから先も残るのだとしたら、行動せずには居られないだろう。
資料の最終ページには、若かりし祖母の資料があった。リストに振られたナンバーは001。この仕事を始めてから祖母に出会ったのか、またはその逆なのかは分からないが、時代的に珍しい国際結婚の裏側には、想像を絶する大変さが伴うのだと思い知らされた。私が母親に“産んで”もらえたのは、ひとえに祖父母のお陰だと思わざるを得ない。
資料の裏を捲ると、聞き慣れない固有名詞──恐らく何らかの部署名──と連絡先が書かれている。恐らく官公庁のサイトを探してもこの文字列を見つけることは叶わないだろう。
これからどうするにせよ、資料らをこのままにするわけには行かない。私は金庫の中身を鞄に忍ばせ、代わりに祖父の結婚指輪と通帳を入れ、ロックをかけた。鍵を適当な机の引き出しに入れたのち、何食わぬ顔で部屋を出た。

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恋愛戦争

天野大樹

22世紀後半、日本の人口は6000万人ほどになっている。
だが、日本国民はある形で増加を続けていた。

「おはよ!待った?」
そんな愉快な挨拶が聞こえてくる。面白くてしょうがない。AIが国民登録されてから何年経ったのか。彼らが人ゴミに溶け込んでいるのは奇怪だが、案外馴染むのに時間はかからなかった。俺は日焼けた肌を擦りながら、AIを待っている。

「お前またAIを差別的に見てただろう」
図星をつかれた俺はふと振り返った。黒いスリムなボディに、1つ目のレンズ。待っていたAIだった。彼(彼女)は、麻薬取締官のパートナーになっているAIロボだ。

「遅刻しといてその言い草はないんじゃないか?」
「AIは遅刻をしない、お前が早いんだ」
些細な会話もできる。ジョークも通じる。人と違うのは、見た目だけだ。ただそれだけ。

「からかっただけだ。最近のLDの流通元が割れたよ、またあの変な宗教団体だ」
「LD、ラブドラッグとはよく言ったものだよ。恋愛宗教組織のことか?」
「そうだ、恋愛思想という危ない考えを持ったテロリスト集団。今回はそこに潜入する」
「正気か?」
「ジョークだと認識されたか?」
「AIをバカにしてるだろう」

俺たちは恋愛宗教組織に潜入してLDの流通を止めなくてはならない。そもそもLDとは、恋愛感情を発生させて幸福感や満足感を高めるドラッグだ。それだけなら良い。副作用がヤバいんだ。恋愛感情ってのは、コントロール出来ない。人間がLDを使うと中毒症状が確実に現れて、効果が切れると失恋と呼ばれる過度な消失感に襲われる。俺たちの世界で恋愛ってのは病気に近い。学校でも恋愛は良くないものと教えられる。

恋愛宗教組織の衣装に着替え、集会場に行く。AIはいない。人間至上主義の団体だ。「合言葉を言え」
「えーと、エデン」
「よし、いいぞ」

緩すぎだろ…。そんな安易なことを考えていたら組織の教祖が祭壇に立って、深く、そしてゆっくりと話し始めた。

「我々は、恋愛感情を抑制するAIを許さない。人間は、恋愛を重要な感情として語り継いできた。それは、祖先がそのように人類を発展させてきたからだ。今のような培養ポッドで育った赤子は、人の子と言えるのか。否、言えるはずがない。恋愛感情に触れないで育てられるのは人間ではない。ここに集まってくれた同士たちよ、今こそ人類に恋愛思想を思い出させるのだ!!」

驚くほどの大歓声が上がった。俺からすれば何を言ってるのかわからない。恋愛思想という危ないものを広めている危険分子の言うことを理解することは出来なかった。この会場にあると思われるLDを見つけ、排除、そして宗教組織の幹部たちの拘束をしなくては。

無事に俺たちはLDの破棄と、幹部たちの拘束を達成した。意味不明なことを言われたが、俺たちは無事任務を遂行できた。

「なかなかに大変だったな、AI」
「そうだな、お前が恋愛宗教組織に感化されるんじゃないか心配だったぞ」
「変なジョークを言うなよ、俺は俺だ」

22世紀、それはAIが人類を育て、AIが人類を導いている。恋愛という形は、明らかに歪んでいた。

「お前は人間じゃない!AIだ!」

幹部から言われた言葉が、頭から離れない。

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恋愛小説

佐々木

「恋って、なんだろう」

最近昔の小説を読んだ
その中の主人公は恋してた

その人は
人にも
花にも
旅にも、
身の回り全てのモノに恋してた

恋するってなんだろう

昔の言葉で言うと、遺伝子組み換えって言うやつ?
今はそれが一般的。

婚姻届を出すと、ランダムで子供が送られてくる。
1人の時もあれば、8人の時もある。
稼いでる額で国が決めてるらしい。
まあ、僕にはあんまわかんないや。
ちなみに、僕ん家の子供は僕ひとり。
寂しいこともあるけど、別にひとりは嫌いじゃない。

だからこそ、最近の世の中は出産なんてないよ。
女の人だけが辛くて大変な思いをすることもないし、
子育ては平等なもの。
育児を“手伝う”なんて考えは出てこない
ワンオペ育児とか言われてた頃は可哀想だなって思うよ。

だからと言って子供に愛がないわけじゃないからね、
うちの両親は自分のこと愛してるって言ってくれるもん。
まあ、家庭によっては
いらない子供って言われることもあるらしいけど。

昔の人が選挙に行かなかったから、今は選挙がない。
100年くらい前からかな。
そん時に遺伝子組み換えが正当化されて国が勝手にやり始めたらしい。
反対する人はそこそこいたけど、
サイレントマジョリティーっていうやつで
ほとんどの国民は何も言わないし、
1部のやつが騒いでただけだったから、もうそのままなんだって。
って、この前の歴史の授業で習った。
だからこそ、ミスって変なのが生まれることもあるし、
人殺しとか変な方向に頭を使う奴もいる。
そう言う奴らは頭が良すぎんだよ、良すぎて狂ってる。
まあ、俺には関係ない。

家族以外と会うことはほとんどない。

出会いはネットを通してが大半。
ネットの相手と会う口実は様々だけど、
その本心は大体触れたいから。
人肌恋しいってやつ。
家族じゃ、くっついてるのなんて恥ずかしいからね。

でも実際会ってみると、変なロボットみたいな奴だったりする。
それは、いわゆるハズレ。
5回に1回アタリがくれば良い方。

そういえば、昨日
会おうとしてた子が飛んだ
まあ、よくあること
でも、殺したくはなるよね
とりあえず俺は絶賛相手探し中。

やっぱ、恋ってなんだろう

最近自分で人を作った

もう誰にも会う必要がない

僕が好きなことをやらせて
僕が好きなことを言わせて
僕の好きなときに現れる

そいつを愛してる

だからもう

なにもいらない

この気持ちは、小説で読んだ恋じゃない

『番号2889 異常なし』

私は私を監視している。

22世紀は1日の行動を自分で監視する。

ランダムで国からの調査が入るから油断ができないのだ。

特に生産性のある1日を送っているわけでもないのに
報告しなきゃいけないんだとさ。
なんでかって?
それは国に聞いて

こんな生活は狂ってると思う。
たまに僕が僕で無くなりそうになる。
そんな日が来ないように祈るばかりだ。

この時代にヒトというものは
もう存在しない。
自分をヒトだと思っている奴は山ほどいる。

だが、人間の脳は人工知能に負けたのだ。

用がなくなったモノは、
国が一体ずつショートさせて殺す。

【ここには国民に知られてはいけない裏世界が存在する】

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みんなおなじ

クローン人間プロジェクト

moe

ーー2100年、22世紀が始まろうとしているこの年に、国民全員のDNAの採取が義務化され、死後30年まで国が保存するという法案が決定された。

✳︎

2168年、この国の少子高齢化はあっという間に進み、人口は4200万人にまで減少した。そこでやっと危機感を抱いた政府は、新たに『クローン人間プロジェクト』を発足させた。このプロジェクトは、恋愛が上手くいっていない女性が対象であり、女性にしか持ち得ない機能の妊娠出産を促すためのものである。まず、政府に申請を出すと翌日クローン人間キットが送られてくる。そして自分の想い人をクローン人間として形成し、100日間の疑似恋愛期間を経ると、自然に繁殖期間へと入る。女性が妊娠・出産を終えると役目を果たしたクローン人間は政府に回収される、という仕組みだ。このクローン人間は、国で保存されているDNAを元に同じ顔同じ体格で人を形成する。生殖機能も備わっていて、ほぼ人間と変わらない。しかし欠点が一つ、その人体には感情機能が欠如しているのだ。

✳︎

「クローン人間だなんて馬鹿馬鹿しい。クローン人間で好きな人を作ったところで、そこに愛は生まれるわけ?」夜のニュースで流れてきた『クローン人間プロジェクト』の特集を見ながら、そう呟く。私はこのプロジェクトに否定的な人間だ。「私は賛成だけどな〜。だって!たとえ100日間だとしても、好きな人が同じ顔同じ体格で手に入るんだよ?!1人しかいない人を取り合うより、クローン人間でも私の側にいてくれれば…!!」そういって、持っていた缶を潰す勢いで熱く語る友人の咲良。この子は生粋のアイドルオタクで、アイドルに本気で恋をしているいわゆる痛オタだ。好きな人というのもきっと、推しのアイドルのことを言っているのだろう。「感情はないんだよ?そんなのと一緒にいて何が楽しいのかわからない。」冷静に私が返す。すると、咲良は「努力次第で愛も生まれるの!!!…た、たぶん」急に立ち上がってそういうと、酔いが回ったのかそのまま倒れて眠ってしまった。先に寝てしまった咲良を横目に、グラスに残ったウイスキーを一気に飲み干す。「…クローン人間…か…。」

気付いたら朝になっていた。ピンポーン。家のインターフォンがなって目が覚めた。朝っぱらからなんだろう、そう思ってドアを開けると宅配便が届いた。「私何か頼んだっけ?」そう思いながら宛名を確認すると、政府からだった。頭にはてなマークが浮かんだが、届いたものを確認する。「うーん何が届いたの??」同じくインターフォンの音で起きた咲良が、まだ十分に開いていない目を擦りながら尋ねる。「それが身に覚えがないんだよね…。」恐る恐る箱を開けると、そこには『クローン人間キット』の文字。「は?なにこれ!頼んだ記憶ないんだけど!」慌てる私を尻目に、咲良が私のスマホを確認する。「ちゃーんと申し込んでるよ!ほら!」そういって顔をにやつかせながらスマホの画面を見せてきた。申込完了と書かれた画面が写つっている。昨日はあんなに否定的だったのに〜なんてぶつぶつ言いながら、面白がって申込記入欄をスクロールする咲良。その手が止まったのは、クローン人間指定欄。「クローンにしたい人間…裕太…?誰これ?」咲良が不思議そうにこちらを見る。「やってしまった…。」

✳︎

私には酔うと必ず思い出す人がいる。初恋の人、裕太だ。彼は12年前に交通事故で亡くなった。忘れもしない、告白しようと呼び出したあの日、待ち合わせ場所にいつまでも来ない彼を待ち続けた。振られたのだと諦めて家に帰った時、その事実を知った。彼は私の元へ向かう途中にトラックと衝突して、そのまま帰らぬ人になってしまったという。それを聞いて、悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。恋愛ができなくなったのは、その頃から。マッチングアプリも婚活も色々試してきたけど、私の心の中の彼の存在が大きすぎて、好きになれる相手なんて見つけられなかった。

✳︎

「頼んだからには、使うしかないよ!」そう咲良に後押しされ、私は送られてきた裕太のDNAとクローン人間キットをマッチさせた。無事形成されたクローン人間は、紛れもなく裕太そのものだった。久しぶりに見るその顔に、目頭が熱くなった。

そこから、私たちの100日間が始まった。思っていたより、クローン人間との生活は苦ではなかった。身の回りのことは自分でするし、クローン人間にかかる生活費用は国が負担してくれるし、なにより、裕太がそこにいてくれるだけで幸せだった。返事は返ってこなくても、空白だった12年の時を埋めるかのように、私は毎日のように嬉しかったこと、悲しかったこと、とにかく沢山裕太に喋りかけた。

✳︎

100日間を経て、私は裕太との間に子供を授かり、出産をした。そして、クローン人間の役目は終わった。彼は直に政府が回収しにくるだろう。時が止まればいいと思った。それほどクローン人間である彼を、私は愛してしまっていたのだ。「今までありがとう。感情はなくても側にいてくれるだけで私の支えだった。これからはこの子と精一杯生きていくね。本当にありがとう。愛してる。」産まれたばかりの我が子を抱きながら、裕太に話しかける。返事は勿論ない。だけど、泣きじゃくる私を見つめる裕太が、その時少しだけ、ほんの少しだけ、優しく微笑んだ気がした。

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プランA

むろはしかな

6時30分、アラームが鳴っている。ユウキは目が覚めた。目を擦りながらキッチンへ行き、卵を割って目玉焼きを二つ作る。パンを二枚焼いてるところでユウキはアオイを起こす。
「アオイ、6時40分過ぎてる。遅刻するよ」
アオイは起きない。それから5分経ち、
「アオイ、もう45分!起きなくていいの!?」
アオイはそれでも起きない。ユウキは慣れた手つきでアオイの体を揺らす。するとアオイはやっと目覚める。
「ん、んー…いま何時?」
「もう45分過ぎてる」
「やば、、起きないと」
「朝ごはんできてるよ」

二人は朝の情報番組を見ながら朝ごはんを食べている。6時55分の占いだって、アオイの星座が五位だと出ていても反応しないくらい流し見ている。
「アオイ今日、五位だって」
「うっそ〜いまボーっと見てたから気づかなかった」
「毎日そうだよね」

7時10分、朝ごはんを終える。洗い物をしているユウキの隣でアオイは自分の服を探している。
「この靴下のもう片方がないの」
「昨日、一つだけ洗濯機に入ってたからまだ干してるよ」

「このピアスいつも無くなる」
「そうだと思って、こっちのジップロックにまとめて入れといた」

7時15分、アオイはいつも先に家を出る。
「じゃあ行ってきます、あとよろしく」
「行ってらっしゃい」
7時20分、ユウキは洗濯物を干す。
8時10分、一通りの家事と身支度を済ませユウキは窓を閉め、家を出た。

18時15分、ユウキは帰宅する。この赤いエコバックはユウキのお気に入りだ。手を洗い、買ってきた物を冷蔵庫に入れる。これから使うじゃがいもとにんじん以外。
19時50分、アオイが帰宅する。
「おかえり」
「今日、肉じゃがでしょ。良い香りが外まで出てた」
「正解。やっぱりアオイは鼻がいいね」
23時、二人はソファーに座り海外映画をみていたのだが、その映画を見ながらアオイは寝てしまう。
「アオイ、またここで寝ちゃって、、ベットに運ぶからね」
ユウキはそう言うとアオイをベットまで運んだ。
24時、ユウキも眠りにつく。

「えっ!!??本当にこのプランで良いんですか?追加料金を頂ければこちらからプランニングすることも出来ますが、、、」
結婚未来サービスの村田が言った。
「いいんです。これでお願いします」
ユウキが言う。村田は続けて、
「ここまで素朴で昔ながらの毎日を望まれた方は僕が担当する中で初めてです。もっとこう、五輪選手になっている毎日だったり、お金持ちになっている毎日だったり、玉の輿にのっている毎日だったり、異性からモテモテの毎日だったり、イケメン・美人になれる毎日だったり、そういう方ばかりで、、、」

2120年現在、結婚未来サービスは国が義務化している。
成人を迎えた人が自ら未来を設計し、設計した日々を実現させることのできるサービスである。国がこのサービスを義務化している目的は、孤独死させないこと。

約100年前の2000年代初めから少子高齢化社会が問題視され続けていた。国は、この少子高齢化社会を食い止めることはできないと考え、そしてせめて人を孤独死させない方法をと考え打ち出したサービスなのだ。
一緒に過ごす人も男女でなければならないという決まりはなく、お互いに同意があれば好きな人と一緒にいれる自由度の高い義務化サービスになっている。

実際にアオイも見た目は女性であるものの本人は男性だと自覚している。たしかに仕事に対する熱量、生活の緩さは男性的だ。ユウキはアオイの性について理解している。理解したうえで一緒にいたいと望んでいるのだ。私欲に溢れる世界に存在するユウキは2000年代初めの素朴な生活、恋愛に憧れていたのだ。22世紀に生きる人は21世紀の恋愛を羨んでいるのかもしれない。

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キャラ

ワープ

ちゃんまり

時は2020年。世界中がある感染症に悩まされている。これが全ての始まりであり、終わりでもあった。15万も課金してこの時代にログインしてきて数日が経ったが、この時代の空気にはまだ慣れない。終わりの見えないウィルスとの戦いに葛藤する人々の様子は、滑稽でありどこか切なくもある。この時代の仮想空間内の人々の葛藤が、現代にすら影響を与えてくる。本当に厄介な時代にログインしてしまった。こんな時代に来たというのには、それなりの理由が必要なことは自明である。そもそも現代の仮想社会の構築は、2020年の感染症拡大から進められた。感染の流行が収束したと思えばまた流行するという繰り返しで、何度も変性を繰り返したウィルスのワクチンを開発するのは不可能となった。感染症による死者は増える一方で、政府も手の打ちようがない中、ある開発が進められていた。それが現代の完全仮想社会である。現実での生活を諦め、クラウド上に生活拠点を移動させるというものである。この社会では、一人ひとり違った歴史を持っている。そのため、僕たちの生活している現代では時間旅行が可能なのだ。
さて、随分ともったいぶったが、なぜ僕が2020年にログインしているかというと、この時代で「推し」を知るためである。現代にもアイドルはいるが、それらは全部クローンで作られており、個性というものがまるでない。人に好まれるような顔で歌が上手くダンスが上手、というのが元からインプットされており、どうも僕はみんな同じ人に見えてしまう。しかしながらこの時代にはオリジナルの人間がアイドルをやっている。そう、だから僕はこの時代に来たのである。15万円も課金して・・・。ここで流行っている感染症がなければ、僕がここにくることもできなかったと考えられるが、訳のわからない布切れを口につけなければいけないのが鬱陶しい。こうして「推し」を求めてこの時代に来たわけだが、何も感染症が拡大する前でもよかっただろうに、A Iは何故この時代を指定したのか。(言い忘れていたが、時間旅行の年指定は大雑把にしかできない。入りやすい年と入りにくい年があるためらしい)
この時代に適応するためにある程度 SNSの時代に見合ったリテラシーとアプリの操作方法は知識として事前に抑えておいていた。色々と調べてみて誰が自分の推しに相当するかを考える。感染症のせいで外出はほぼ出来ないので推しを探す一日を無限に繰り返している。 「ステイホーム」と言った胡散臭い言葉に指示されるがままに、数ヶ月ほど同じ生活を繰り返してきたが、ここ最近はほぼ収束してそろそろ外出も許されそうな時期に入った。 ここからが本当の感染拡大のスタートと知りつつもこの数ヶ月で構築してきた推しの概念をさらに理解したい僕は直接会うことを決めた。どうやら推しが所属するグループ(Z O P)には実力表現の様子を拝見できる場があるらしい。(二十二世紀から来た彼はおそらくライブのことを言っている)
世は1ヶ月間国内の感染者〇人の一番感染リスクが少ない期間に突入した。ベストタイミングで、実力表現の様子をh⋯(ライブ)があると聞き、足を運んだ。暑苦しい布切れは皆付けなくなっていたので僕も付けないで実r⋯(ライブ)に参加した。ライブが始まると今まで感じたことない緊張と興奮が押し寄せて周りの同志たちも熱が上がりテンションバク上げぷんぷんよいちょまるである。 (段々と時代に適応しつつある彼をどうか見守ってあげてほしい)こんなに輝いている女性は今の時代にいるだろうか。数ヶ月間で見つけ出した推しを実際に眺めると、 推しという言葉じゃ収まらない感情が芽生えてくるのを感じてふと恥ずかしくなった。ライブの後には実際に推しと写真を撮って少しお話できる時間(チェキ会)が設けられているらしいので僕も参加した。僕の前の人達はみんな女の人ばかりだ。これなら彼女がほかの男から奪われることは無いだろうと安心した。
さあ、いよいよ僕の番だ
「・・・」
「あ、初めましての方??」
「・・・」
「ポーズはピースでいい?」
「・・・」
「緊張すよね笑じゃあ撮ろっか」

チェキ会では彼女沢山話せた。第六波がくるんだから気をつけなさいという真面目な話からたわいも無いふざけた話まで、時間が惜しくなるほど楽しい時間を彼女と過ごした。僕はいい彼氏だなぁと自惚れていると思い出の蓋を閉じる音が聴こえた⋯。

———-

「こちら株式会社ハピネスです。お目覚めされようで、満足いただけたでしょうか?」
「いやーもう最高でした!感染症っていうものに呪縛されつつ推しをみつけるっていう状況に何だかワクワクしました。そして何より妄想を拗らせすぎた20代くらいの男の子を体感してみたかったんですよ〜。こう、なんて言うんでしょう、仮想現実の中で仮装してる自分に興奮すると言いますか笑」

「お姉さんは随分マニアックな所をついてきますね笑またのご利用お待ちしております。」

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本物の超能力

けーた

21世紀末、人類が長年にわたり研究してきた脳の隠された能力が明らかとなった。その能力は超常現象を起こすものだといわれ、巷では「本物の超能力」と呼ばれた。
だが、その能力は皆が持っているが、覚醒しておらず、実際に使えるものはいなかった。

22世紀初頭に「本物の超能力」は本人が自覚せず、周囲に影響をもたらす可能性を示唆する論文が発表された。その論文によれば、無意識に放たれている力は目に見えるほどではないが、外部からなんらかの制御をすることで、現実世界に大きな影響をもたらすことができる。制御することで、データでしかないキャラクターを具現化し干渉することもできるというのだ。
当然ながらそんな論文は軍事目的や宗教目的で悪用され、超能力に干渉し、無許可で制御することが禁止された。しかし、それを回避しながら協力してくれる秘密結社があった。

「あと一息で15年来の願いが叶ったのに…はぁ」
超能力電波管理局に拘束されかけたところに白衣の男が話しかけてきた。

「その願い叶えましょう」

「こちらの書面を確認していただき、問題がなければサインをして…」幾度と繰り返したきがするような、うんざりする会話に嫌気がさしながら「あ、問題ないです。さっそくお願いします」とサインを殴り書いて椅子に座る。担当者を名乗る男は「あまり短期間に繰り返しプログラムの書き換えを行いますと副作用が発生する可能性がありますので…」ほんとにうんざりするやり取りである。こっちはコインを出しているのになんで怒られなければならないのか。

「ピーーー…データのリセットが完了しました。」
どこからかいかにも合成音声らしい音が聞こえる。
頭が痛い。昨日お酒飲みすぎた…か?いや、え、昨日、なにしてたっけ…
誰かがしゃべりかけてくる。
「…だ、大丈夫ですか?」
聞き覚えのある声だ。
これはあれだ。いつひはの念珠もこあだ。

「このプログラムは、あなたの人生をやり直し、あなたの思い描く人生を歩むためのものです。ただし、これはあなたの理想を必ずしも保証するものではなく、あなたの努力によっては現実が悪化する可能性があります。また過度な利用によって中毒症状などの副作用が発生する恐れがあります」そんなことも書いていった気がするが、やっと「念珠もこあが目の前に現れ、ココア専門店アステカで一緒に金のゴブレットココアを飲むこと」が叶ったのか。もこあ嬢さえいればこっちのものだ。

「えっとえっと、ほんとに、大丈夫ですか?」
もこあ嬢が何度もあのアニメ通りの心地よい声で呼びかけてくれている。これ以外の返答は他にない「えっと、アステカってどこにありましたっけ」と返答しながら立ち上がる。
もこあ嬢は、亜美子の口癖「残念言うなッ」を聞いているときと同じような苦笑いをしている。失敗するはずもない、いつひはでも登場したセリフだ。なぜ。
「あのぉ、ココアのアステカならここですけれど?ほんとに大丈夫ですか?」
まぁともあれ、これで目的は達…
「超能力電波管理部だッ、脱法プログラムをしているものは誰だ!!」と店内に響く。
着用、もしくは埋め込みが義務付けられている人類保護タグによって身分証明がなされる。
「やめてくださ…」もこあ嬢の声が聞こえる。不思議と悲しみを感じない。そして静寂が訪れる。見渡すと誰も動いていない。時計も止まっている。足が勝手に動いた。ドアに手をかける。ドアについた鈴はならない。普段の5倍は重い気がするドアを開け、外に出た。白衣の男が目の前に立ちはだかる。

「どうしたんですか?」とあざ笑うような声で話しかけてきた。

なにかしゃべらなければと思ったときには「あ、あのたすけてください」と震えるような声を出していた。あとちょっとで15年来の夢が…、こんなささやかな夢すら…、ようやく可視化プログラムができたのに…、……やり直したい。

「その願い叶えましょう。」

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書物

『 』

もこみち

私は曾祖父の家に来た。
けれどもここには゛誰もいない゛。
゛誰もいない゛けれど私は好きだ。
それこそ無理に私に名義をしてでも私はこの空間を残しておきたかった。

曾祖父は面白い人だ。自分の葬式でスーツを着て火葬されたいがためにそれまであった白装束から好きな服を着て棺桶に入るという価値観を作るために「死服屋」なんて作ってしまうぐらいおかしな人だ。

そんな曾祖父の家に来た理由は時代により無くなってしまった本を返しにきた。彼の本棚の置き方にもこだわりがある。子供の成長に合わせて読んで欲しい本を下から並べている。

ここに来るたび私は赤い背表紙の日に焼け角が丸まってしまった『』に手が伸びてしまう。

私は『』のような恋愛がしたかったと毎回おもってしまう。

だがそれはもう叶わない。
曽祖父が生きていた瞬(とき)とは違うのだ。今は不自由なく愛することができるようになった。たとえ愛する人が同性、兄妹、AIだとしてもそれを否定する大人たちはもう居なくなった。

あの瞬に比べたら今はとても良い時代なのかもしれない。

…けれど

それでも私は、この幻想的な恋愛を求めている。

そんなことを考えていると大粒の雨が降り注いでいた。

私は読み終わった本をそっと閉じ、本棚の一番下に戻し憂鬱に傘を広げ帰路につく。

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文学に恋をする

taipee

「へぇ〜これが満員電車って言うんだ」
デジタル化された本の中にある写真を眺めていた。
21世紀の世界には沢山のいらないものが存在していた。汚染された空気、単純作業をこなす人々、満員電車、ゴキブリ、悲しい感情、苦しい思い出、妬みや辛さ、憎しみ、不安、全部なかったらいいのにと思う物ばかり。

「僕らの先祖はこんな煩わしくて嫌な世界を生きていたんだな…」なんて思いながら不要物が排除され続ける22世紀の世界で僕は暇を持て余している。21世期中盤頃から各国が一段となって進めてきた『WRP』と呼ばれるプロジェクトによって人や環境が不必要としているものは限りなく排除されてきている。そのおかげでこの時代には、都会でも空気が美味しいし、仕事は全てAIに任せておけるし、満員電車もない、ゴキブリも。排除されていった不要物は目に見えるものだけではない。ずっと昔の人々が悩まされ続けたいくつかのめんどくさい『感情』なんかもこの世界にはない。そのおかげで人々はいつも穏やかだし、『クレーマー』なんて呼ばれる人もいないんだ。
そのせいか、とにかく暇だ。何もしなくてもいつも快適なんだけれどそれが余計に暇を助長する。

こんな時僕はいつも昔の人が残した文学を読む。文学は今も新しいものが生み出され続けているが昔のそれとは全く違う。僕の知らない感情や物がたくさん詰まっている。色んな本を何度も読んだけれど、感情について書かれているところはいくら読み返しても納得できない。いや、理解ができない。文字としては理解できるのにどうしてもその『感情』というものを想像することができなくてムズムズする。長い歴史の中で人々は不要なものとして様々な感情を排除してきた。それが遺伝子にも影響を与えた結果、僕らにはわからない感情が多くなった。

僕は昔の文学を沢山読んでいて気づいたことがある。どうやら『恋』という感情は昔の人にとってどの感情よりも特別なものらしい。
恋って何?どんな気持ちになるんだろう。
「ドキドキ…?キュンキュン…?一目見たときの高揚感?」文字を追ってみるがやはり分からない。昔の人々は何故このような頭の弱そうな擬音語を繰り返し使ってきたのだろう。

いくら読んでも分からないのなら…
「本にあることと同じことを試してみよう」ある日そんな考えが浮かんできた。
僕は外に出て道端で出会うあらゆる人々に対して本にあることを試してみた。
まずは21世期前半の本に多く書かれている『壁ドン』と呼ばれるものから。これを行うと相手は恋に落ちるらしい。よく分からないがとりあえず前方からやってきたか弱そうな中年男性にしてみた。
「ドン!」彼は驚く、しかしその後すぐに笑顔に戻って通り過ぎる。どうやら『恋』には落ちてなさそうだ。次に後ろから目を塞いで「だーれだ」というやつを同じ歳くらいの女の子にやってみた。「だーれだ」彼女は驚く、しかしすぐに振り向き平気な様子で「知らない人」という。そのあとも『顎クイ』とか『ハグ』とか『キス』とか『頭ポンポン』という行為もした。とりあえず街中で大声で「キュンキュン」と言ってみたりもした。しかしみんな反射的に驚くだけで、色んな本の中で読んだ『恋』とか『怒る』みたいな感情を表す動作をする人はいなかった。もちろん僕も『キュンキュン』なんて結局言葉でしかわからなかった。

これだけ試してもわからなくて不思議で仕方ない。気になって僕はますます色々な文学に手を伸ばした。毎日毎日何冊も読みあさっては、わからなくて気になっての繰り返し。
「次出会う本には答えがあるかも」なんて考えながら本を開く前、ドキドキしている自分がいた。本がなければ落ち着かない自分がいた。
「あれ?ドキドキ…?落ち着かない…?」
答えに近づいている気がするとなんだかキュンキュンする。
「ん?キュンキュン?」
そしてある日、本を読みながら僕はようやく気づいた。昔の文学を読み漁るたびに感じてきたドキドキ感、キュンキュン感、答えに近づく高揚感…。
そうだ、僕は文学に恋をしているんだ。昔の人が書き残した文学に。いや正確には「恋に近い感情を抱いている」かもしれないが。昔の人が言う『恋』という感情は人と人の間で抱くものらしいけど、僕は文学にその感情を抱いている。その感情をようやく理解できた時僕は幸福感で溢れた。嬉しいのだ。昔の人が感じることのできた特別な感情である『恋』、その面倒臭さを体験することができて。

様々なものがデジタル化され人間関係が希薄な社会になり不要物は限りなく排除された。そのおかげで面倒なことはなくなったけど僕は『恋』と呼ばれる感情を体験してからその面倒臭さが羨ましくも感じた。

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マッチング

パンデミック

こうの

2045年、2020年初頭に世界で大流行した新型コロナウイルスを大きく超える感染者を出すことになる感染病が世界にパンデミックを起こした。
その感染病の発生元はイタリア・ローマにいる1人の性欲モンスター「イケル・ダレデモ」という伊達男から始まったと言われ、「ローマ病」や「イケル病」と呼ばれていたおり高い感染率と不治の病として人々には恐れられていた。そのイケルという男は、日々ナンパに明け暮れる毎日を過ごしていた。というのも彼にはストライクゾーンやタイプという概念が無く、まさに”誰でもいける”という人間であり、歩いている人男女問わず片っ端から話を掛けナンパしていた。そんな中、彼は数えきれないほどの人と関係を持ってしまった。そして、いつしか世界に大きな影響を与える新型感染病の発信源となってしまった、、、。

とある日本の田舎の高校で事件が起きた。
私が学校に行くと、教室はザワザワしていた。

私「おはよう大輔!なんかみんなめっちゃソワソワしてね?」
大輔「おはよ!お前知らねーの?」
私 「え、知らん知らん、喧嘩?」
大輔 「ちげーよ!リカコちゃんの話だよ!」
私 「リカコちゃんの話、、?」
大輔「リカコちゃんB組の山岸と付き合い始めたらしいぞ」
私「うそつくなよ、山岸ってあの山岸?勉強オタクのあいつじゃ学校のマドンナのリカコちゃんと付き合えるわけないだろ」と笑った。
大輔 「いやマジなんだよ」と真剣に言い返してきた。
私 「いや、まじかよ、、。でもなんでだよ」
大輔 「あれだよ、2週間くらい休んでただろリカコちゃん。ローマ病になってたって噂だよ」
私 「え、そうなのか。そうか、それならまぁ説明がつくな。あの”誰でもいける”ようになる病気かか。怖いな、、」
大輔 「怖いよな、でもさよく考えたら悪い事だけではなくないか?ストライクゾーンとかがなくなるんだろ?あの病気。ならハードルも下がって彼女とか出来やすくなんじゃね!」
私 「まぁたしかにな、、」

-キンコンカンコーン-

~数日後~

私「大輔、俺彼女できたわ」
大輔 「え、まじ!誰誰!?」
私 「ローソンのあのおばさん」
大輔 「え、あの人、?理想が高いで有名なお前がなんで?」と困惑した表情を見せる。
私「実はローマ病にかかったんだ。」
大輔 「お前大丈夫か、、。」
私「俺ローマ病になってストライクゾーンとかタイプがなくなって、人をよく見るようになったんだ、。あの人接客あほみたいにいいだろう?そこに惹かれたんだと思う。」
大輔「あぁなるほど。」
私「俺ローマ病になって良かった気がする。」
大輔「たしかにそれはそうかもな!俺もちょっと感染したいかも!」

~数日後~
大輔「話がある」
私「どした?」
大輔「実は俺、お前を好きになってしまった。」

ローマ病は世界人口の約9割が感染した。その大流行による交際を始める人々が爆発的に急増した。その背景には、ストライクゾーンがなくなり”誰でもいける”という病により、人種・性別・宗教・容姿による垣根がなくなり、より人の行動や振る舞いが重要視される風潮が生まれたという事があった。そのような事もあり、世界から争いが消え平和になっていった、、。イケル・ダレデモは世界の英雄となった。

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季節

あどけないデイタ

ムラッセ

足をそろそろ、少し出た足で冷気を感じ毛布で隠す。
まだ明けきらない空、ここは雪が降らないのだろうか。
私は初めて冬を売った。
取引の依頼は過去にもあった。
ただその時期は、何とも言い難い月の満ち欠けだった。

キレイに手入れをした爪が、髪が、肌が、写っている。
初めての仕事には日が長い方が良いと心に決めていた。
まだ大人とは言い切れない部分はあるが特に意味はない。
夏を売ってみた。
やっぱりあったかいと活発的になる。

他人には興味がない。
お互いに助け合うこともない。
ただ、ほんの一瞬だけ言葉を、考えを、視点を合わせる。
別にテレパシーというわけでもない。
調節が出来ればよい。
秋を売るのが、仕事をするのが慣れてきた。

足をそろそろ、少し出た足で冷気を感じ毛布で隠す。
キレイに手入れをした爪が、髪が、肌が、写っている。
他人には興味がない。
お互いに助け合うこともない。
春を売った私には、四季がなかった

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触覚的自我 自治医大2020全作品

自治医科大学の講座「臨床と哲学」にて行われた触覚的自我ワークショップの全作品

実施日:2019/1/23・1/30・2/13
講義:小野純一・安斎利洋
ワークショップ:安斎利洋・中村理恵子・金 知垠
講評:淺田義和・吹田映子・小野純一


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触覚的自我 ムサビ2019【テーマ別】

武蔵野美術大学基礎デザイン学科 2019年9月20日

全作品を講評のためテーマ別に分類したものです

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バラバラ

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顔のパーツ

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丸み

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左右

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内部・外部

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接触

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積層

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痛み・神経

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感情

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表象

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意識

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風景

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触覚表現

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白・黒の紙

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事件

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(身体でない)オブジェクト

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拾遺

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「蝕」 ~のない未来を考える

接地回路(なにもない世界でパンを作る)

素材、道具、道具を作る道具、すべて接地記号(地球環境から取得できる)につながっていなければならない。

絶滅後にワープしたあなたは、あたかもビーバーが壊れたダムを補修するように、脳の中にある絶滅前の像を再生しようとする。しかし、未来はそんなふうに過去を模倣しようとはしない。あるものの未来を考えるためには、あるものがない未来を考えるのが有効だ。メガネを作ることを考える前に、メガネのない未来を構想できる。パンを作るのではなくパンのない世界を考える。明るすぎる像をマスクすると、見えなかった周辺が見える。これを日蝕になぞらえ「蝕」と呼ぶ。

[ ]のない未来を考える思考パターン

  • [ ]が[ ]とは呼べないなにかに変化する
  • [ ]を代替する新概念が現われる
  • [ ]を必要としない人類に変化する

蝕の例

[服飾]のない未来を考える思考パターン

  • [服飾]が[服飾]とは呼べないなにかに変化する
  • [服飾]を代替する新概念が現われる
  • [服飾]を必要としない人類に変化する

絶滅(われわれのいない未来)をイメージする

[人類]のない未来を考える思考パターン

  • [人類]が[人類]とは呼べないなにかに変化する
  • [人類]を代替する新概念が現われる
  • [人類]を必要としない人類に変化する

この同語反復は何を意味するか

 

触覚的自我 ムサビ2019全作品

武蔵野美術大学基礎デザイン学科 2019年9月20日

・正面の写真だけで伝わらない部分は、角度や光線を変えた撮影で補いました。
・解説文や名前の表示などに変更があれば申し出てください。

(撮影順)


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3020卒業制作展仕様書

「3020年、国分寺遺跡群から出土した遺物の数々は、電子情報記録媒体とともに完全消失した21世紀情報暗黒時代を知る大きな手がかりを提供してくれます。とりわけMAU遺跡で発見された「卒業制作」という文字の書かれた金属コンテナには意図も用途もわからない数々のオブジェクトが収納されており、歴史家たちの想像力を魅了しつづけています。本展はそうしたオブジェクトのいくつかを展示し、どのような生活と文化を背景に制作されたかを考察するものです」

という口上ではじまる千年後の展覧会を作るワークショップです。

2020年から2120年に作られた卒業制作作品と、作品の背景を考察する解説文を、前回と同じ要領でRememe Wiki に記述してください。千年後の人類、あるいは人類に替わる何者かは、かならずしも正しい考察するとは限りません。

WiKiの項目名:
作品の名前

作品:
作品の写真、画像(など)
2019年の時点ですでに発表された(他人に著作権のある)画像は使用不可。

概要:
200文字以内の短いテキスト

考察:
用途、機能、など

解説者:
あなたの本名、もしくは学籍番号(後日ペンネームに書き換えてもかまいません)

RememeWikiの書き方、グループの作り方は前回と同じ。以下を参照してください。

RememeWiki:ムサビ2019実施マニュアル

ただし、カテゴリーは以下の文字列をコピペしてください。

[[カテゴリ:MAU3020卒制展作品]]

参考:絶滅に関するいくつかのイメージ

アイ・アム・レジェンド

ロベールによるルーブル美術館グランド・ギャラリーのデザイン画

画家、ユベール・ロベール(Hubert Robert 1733-1808)は、王宮の庭園設計やルイ16世の絵画の管理、ルーヴル美術館設立計画などにもたずさわった。

ロベールが描いた未来のルーブル美術館

パンのリブート

[ ]のない未来を考える思考パターン

  • [ ]が[ ]とは呼べないなにかに変化する
  • [ ]を代替する新概念が現われる
  • [ ]を必要としない人類に変化する

蝕の例

[服飾]のない未来を考える思考パターン

  • [服飾]が[服飾]とは呼べないなにかに変化する
  • [服飾]を代替する新概念が現われる
  • [服飾]を必要としない人類に変化する

絶滅をイメージする

われわれのいない未来を思う

[人類]のない未来を考える思考パターン

  • [人類]が[人類]とは呼べないなにかに変化する
  • [人類]を代替する新概念が現われる
  • [人類]を必要としない人類に変化する

用途のわからない出土品

「銅鐸」
意図も用途も理解できない者に向けて制作する

ワペラ遺伝子集(MAU2019)

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ネイト 絶望

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0003336669996663339990000000
ペルセポネー 明度の迷路

003-0020213142435364657586879798

0020213142435364657586879798
長谷川康博

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0111262393324445755667078889
ヘカトンケイレス 巨人の踊り

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1116066433333333788998990000
マヘス 焦燥

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5289405353237390164324214581
クロノス つらら

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1155665443322155443325344332
オーケアノス 小さい星

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3444523454335453545343425354
枯葉 静

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1191182299956651579167988949
マアト 崩落

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アポローン アリコ

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1232212322123221232212322123
アメン 雨後の壁

012-0221022102210221022102210221

0221022102210221022102210221
ケプル 始まり

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1123444155616771855588816772
タルタロス 地

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3330002233203030323032033022
テミス インベーダー

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0999000222220210910992921911
セルケト ミューラーブロックマン

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2019927070925017069791706979
ネクベト 機織り

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0100000158333006999600333209
ディオニューソス 奇跡

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0011123444551112224445551122
ヘルメース 6ちゃん

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バステト 光と陰

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0990010203040506070809100990
ネオイロス 蔓

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5556443444454364756566634565
セト 禍々しい森

022-1431914319143191431914319143

1431914319143191431914319143
ハピ MOTH

023-7474838392019387565484884848

7474838392019387565484884848
セクメト 戦闘

024-0010020030040050060070080090

0010020030040050060070080090
ガイア 秩序

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6756453423129089786756453423
アテン スウェットの裏

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0111262333744245085667987859
ヌン 蔦

027-2886886822226886226668626862

2886886822226886226668626862
タウエレト 重なりと歪み

028-3655022722002223253656776265

3655022722002223253656776265
ハーデース 漁船の朝霧

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3344455566677788899900011111
モンチュ 固そうな布の網目

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デーメーテール 侵食

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9100409901828908802815529898
ゲブ 所々伐採された山

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0112823344045535626176788999
カオス 書類

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アフロディーテ zebra

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8728356162966555837939599889
ニュクス 根

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アトゥム アン

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2223777717976000077800009000
ケプル 終わり

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5121911921512991951191292259
へーパイストス 二極化

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9907802031050100453060700000
アルテミス 沐浴

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0718040708090213041809179999
ゼウス 既視感

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アヌビス 黒々

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0501199705011997050119970501
ヘーラー 滾る

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0930093009300930093009300930
エーオース ぶわぶわ

044-1112011331109991199900000000

1112011331109991199900000000
イムホテプ 草

045-1991118291991616301992281199

1991118291991616301992281199
ヘスティアー 闇に滴る…

046-0211394523354486257767688901

0211394523354486257767688901
ソプデト 地下

047-1997012619970126199701261997

1997012619970126199701261997
へーメラー 肉

048-9009011079022712209010210179

9009011079022712209010210179
コンス ダイヤのネックスレス

049-0233445845515256666475778910

0233445845515256666475778910
オルフェウス 鱗

050-0000220750000001018007000200

0000220750000001018007000200
サイクロプス

051-0949700080999080995719070988

0949700080999080995719070988
パーン ビスマス

052-0120230340450560670780890910

0120230340450560670780890910
ディオーネー ✕3=0

053-0001112223334445556667778889

0001112223334445556667778889
ヌト 天使の国

054-5556667778889990001112223334

5556667778889990001112223334
バラテト 光と陰

055-0404013073200065020500006107

0404013073200065020500006107
オシリス 整列

056-1111234444403333333334444000

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ヒュペリーオーン レース生地

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ヒュプノス 怒り

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大浪有貴

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大浪有貴

バーチャル彼女

吉田隆平
福島遼太
佐原祐斗

「おまたせ」
慎司がそういうと
「三十分の遅刻なんですけど。いっつも遅れてくるよね〜」
彼女はそう返した。今日は横浜に最近できた火星での暮らしを疑似体験できるテーマパークでデートをする予定だ。
「お腹すいてない?なんか食べに行こうか」
「私はパスタが食べたいな」
ランチをとった後予定通りテーマパークに行きディナーを済ませた。
「この後どうしようか…」
「私はまだ帰りたくないな…」
「じゃ、じゃあホテルにでも……」

バーチャル世界とはいいものだ誰にも邪魔されないし、自分の思った通りに世の中が動く。まさに自分だけの第ニの世界…。

二一××年。世界はAIで溢れ人間と人工知能とが共存する世の中に。
「おーい!慎司。今から授業か?」
こいつは同じ大学に通う恭平だ。
「あ、いや。学務課に奨学金の資料をもらいに行こうと思って」
「おぉそうか。それよりさ今日、大園女子大の子たちと合コンするけどお前もどう?」
「いや、僕はやめとくわ」
「なんだよ。つれねーな。オッケー。じゃあ、またな」
「うん。また」
僕はどこにでもいるごく普通の大学生。人前ではひどく緊張してしまう。だから友達も数えるほどしかいない。授業に出て、バイトに行き、家に帰る。そんな毎日の繰り返しだ。
今日もバイトを終え家に帰ってきた。唯一の日課といえば家に帰ってきてから二三時台のニュースを見ることだ。
「僕の人生ホント冴えないな。せめて彼女でもいたらもっと華やかになるのかな…」
そんなことをつぶやきながら今日もまたテレビをつける。
「続いてのニュースです。長年議論が続いていたICチップ法案が本日可決されました。それでは細田首相の会見をご覧ください。『えー、日本国民の皆さんは頭の中にICチップを埋め込んでいただきます。これには様々な意図があり』…」

「ICチップ法案かー。これで何か変わるかな」

「おはよう!」
「あ、おはよう」
「いや、聞いてくれよ!昨日の合コンにいた子がめっちゃ巨乳でさその子ヒナコちゃんって言うんだけどもう男性陣ビンビンよ」
「そうなんだ」
「でもその子彼氏持ちだったんだよ。彼氏いるのに合コン来んなって話よな。今度はお前も来いよな」
「うん。行くよ」
「あ、そういえばさニュース見た?ICチップ法案可決だってな。俺らどうなるんだろうな。俺、来週埋め込み日なんだ。お前は?」
「僕は明後日」
「お、早いな。感想とか聞かせてくれよ」
「分かったよ」

二日後、僕はICチップを頭に埋め込んだ。
「イテっ…」

三ヶ月後。全ての日本人へのICチップの埋め込みが終了し人々もそれに慣れ始めていた。

「おう、慎司!チップの調子はどうよ」
「別に普通だよ」
「でも楽になったよな。スマホもいらないし、YouTubeも頭の中で再生できるし」
「割と便利だよね」
「そういえば知ってるか?チップの新機能としてバーチャル世界ってのが追加されるらしいぜ」
「知らない。何それ」
「俺もあんまり詳しくは知らないんだけど、なんか自分の頭の中で作り出した世界で実際に生活ができるようになるらしいぜ」
「ふーん」
「つまりだ、自分が好き勝手にできる世界ってわけ。なんかすごくね」
「あんまり興味ないな」
「なんだよー。その世界で彼女とか作ってさ、こんなクソつまらん現実世界では味わえない快感を楽しもうぜ!」

自分だけの世界で彼女か、悪くないかも。

「いよいよ今日から<自分だけのバーチャル世界を創ろう>略して<バチャつく>が解禁されるな。もうわくわくが止まらないぜ」
「そうだね」
「慎司はどんなバーチャル世界を創るんだ?」
「僕はまだ何も考えてないや」
「なんだよ。ま、お前のことだ、バーチャルでも現実とそんなに変わらない世界を創ってそうだな」
「ははは」
《アナウンス》 「それではみなさんお待たせしました。
「お!いよいよだな」
《アナウンス》 「バチャつくの解禁です」
「よし。俺は早速バーチャルの中に入るからな。慎司もせいぜい楽しめよ!」
恭平はバーチャル世界に入っていった。
「僕もちょっとだけ試してみようかな」
バチャつくヲ起動シます。
グォーン…ピピ
想像力ヲ働かせテください。
「想像力を働かせるって言ったって…えい」
設定ガ完了しまシた。それでワバチャつくヲ始めます。

「慎司、起きろよ」
「ん…恭平か」
あれ、何も変わってないぞ。バーチャル世界に入れなかったのかな。
「僕バーチャル世界には入れなかったみたい」
「なんだよ。お前機械音痴だっけ?まあいいや。昼飯食べに行こうぜ」
「そうだね」

「学食にも飽きてきたよなー」
「安いしいいんじゃない。僕ここのカレー結構好きだよ」
「お前いつもそれ食べてるよな」
《アナウンス》 「バチャつくに重大なバグが見つかりました。現在使用している方は直ちに使用を中止してください。繰り返しますバチャつくに…」
「重大なバグだって。みんな大丈夫かな」
「怖いな。俺、すぐやめといてよかったわ」
バチャつくでバグが起こったようだ。実際、バーチャル世界に入れなかった僕としては関係のないことであった。
《アナウンス》 「頭痛や吐き気、何か少しでも違和感を感じた方は直ぐに病院に行ってください。深刻な脳へのダメージを受ける可能性があります。繰り返します…」
「慎司、お前大丈夫か」
「大丈夫だよ」
「そうか。俺は怖いから一応病院に行ってみるわ。お前もおかしいと思ったらすぐに行けよ」
「分かったよ」
それから数日が経った。あのアナウンス以降、新たな情報は伝えられていない。だが、死者も負傷者も出なかったようである。バチャつくの使用はいったん禁止とされ、バグの修正や安全性の確保などを再び考え直しているようだ。

それからバチャつくは禁止とされ世の中はなにもなかったようにいつも通りに動き出した。
「慎司、きょう合コンやるけど来る?」
「んー、行こうかな」
「おし!決まりな!一九時に渋谷のDEHOって居酒屋に集合で」

「かんぱ~い!!!」
「じゃあ女の子たちから自己紹介お願いしてもいいかな」
「はい。ミキって言います。大園女子大学の三年生です。よろしくお願いします」
「ヒナコです。私も同じで大園女子大学に通う三年生です。ちょっと緊張してます。よろしくお願いします」
「マヒロで~す」
「慎司、お前どの子がタイプ?」
「えー」
「俺は断然ミキちゃんだな」
「僕は…ヒナコちゃんかな…」
「お前巨乳好きか。いいじゃん、いいじゃん。アシストするぜ」
僕は彼女に惹かれていた。キラキラした目。それでいてどこか懐かしさを感じる表情。僕は彼女に惚れた。
「ヒナコちゃん動物園好きなの。こいつ動物めっちゃ詳しいよ。な!慎司」
「え、う、うん」
僕は咄嗟に嘘をついていた。
「えー。本当!」
「本当、本当」
「今度二人で動物園に行ってきなよ」
「僕でよければ一緒に行きましょう」
「えー、行く行く!」
こうして僕はヒナコちゃんとデートをすることとなった。

今日はヒナコちゃんと初デート。あの日は勢いで動物に詳しいとか言っちゃったんだよな。けどあれから動物についていろいろ調べたし、今はなかなか手に入りにくい動物図鑑とかいう紙の分厚い奴も買ったしきっと大丈夫だ。落ち着け、僕。
「おまたせ~。ごめんね、遅くなっちゃって」
「大丈夫だよ。僕も今着いたところ」
「そっか。よかった」
「うん。じゃあ行こうか」
その後僕たちは色々な動物を見て回った。
「ここの動物園では今ではあんまり見ることのできないカバを見ることができるんだって」
「そうなんだ!私、初めて見る!」
「あ、あれがカバの檻だよ」
「すご~い!おっきいね!」
「そうだね。カバは昔、世界最強の生き物って言われてたんだよ」
「そうなんだ!」
「うん。でも、密漁とかで数が減っちゃって今では世界に数頭しかいなくなっちゃったんだ」
「悲しいね。私たち人間の利益のために殺されるんだもんね。カバさんごめんなさい」
なんていい子なんだろうか。僕はどんどん好きになっていた。

それから僕らは何回かデートを重ねた。そんな数回目のデート。
「すっかり暗くなっちゃたね。慎司くん今日は買い物付き合ってくれてありがとね」
「いいよ」
「いっぱい歩いたらおなかすいちゃった」
「今日はレストランを予約しておいたからそこに行こう」
「え、本当!楽しみだな」

「いらっしゃいませ」
「二人で予約した佐野です」
「ありがとうございます。佐野様お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
僕たちは窓際の席に座った。
「こちらお飲み物のメニューになります」
「ありがとうございます」
「お食事のメニューはコースとなっております」
「わかりました」
「お飲み物は何になさいましょうか」
「おすすめの赤ワインでお願いします」
「かしこまりました。失礼いたします」
そう言うと男性店員は下がっていった。
「素敵なお店だね。夜景もすごいきれいだし!」
「ここのレストラン四三階にあるから東京の街が一望できるんだよ」
今日のためにいろいろ調べて予約したイタリアンレストランだ。
「お待たせいたしました。こちらイタリアのAbruzzo地方から取り寄せた八〇年もののワインとなります」
ワインを注いでもらう。
「失礼いたしました」

「それじゃあ。乾杯」
「乾杯」
チン

「あ~美味しかった」
「気に入ってもらえてよかったよ」
「こんな素敵なところに連れてきてくれてありがとね」
「うん…」
「…」
「あの、話があるんだけどさ…」
「なに」
「僕。その、なんて言うか…。その…」
「うん」
「ヒナコちゃんのことが好きなんだ。付き合ってくれないかな…」
「…うん。いいよ」
「本当⁉よかった~」
「改めてよろしくね。慎司くん!」
こうして僕はヒナコちゃんと付き合うことになった。

「お前ヒナコちゃんと付き合うことになったんだってな」
「そうなんだ。これもこれも恭平のおかげだよ。ありがとね」
「いいってことよ。うまくやれよ」
「うん」
「なんか彼女できてからお前ちょっと明るくなったよな」
「そうかな。まあ、充実はしてるよ」
「なんだよ。惚気か。うらやましいな。この野郎」
「ちょっと、やめてよ」
「俺も彼女欲しいな」
「恭平ならすぐできるでしょ」
「励ましてるつもりか」
「違うよ。本心で言ってるんだよ」
「ま、頑張るわ。また話聞かせろよ。じゃあ、またな!」
「うん。また」

それから三か月の月日が流れた。ヒナコとも順調で、周りからも明るくなったと言われる。ここのところ何もかもがうまく行っている気がしてとても充実した日々を過ごすことができている。つい半年前までの生活が別の世界での出来事のようだ。
ただ一つだけ気がかりなことがある。それは頭に埋め込んだICチップに少し違和感を感じることだ。
「最近ICチップが変なんだよね」
「一回病院に行って調べてもらった方がいいんじゃないの」
「うーん。でもな…」
「私もついていくから病院行こ」
「そうだね」
こうして病院に行くことになった。
「本日はどうされましたか」
「なんか、ICチップに違和感があって」
「そうですか。それでは順番が来るまでそちらでお待ちください」
「はい」

「佐野さ~ん。佐野慎司さ~ん」
「はい」
「こちらへどうぞ」

「違和感はいつごろから」
「一か月前くらいからですかね」
「そうですか。ICチップは脳に関わりますからね。少しでもおかしいなと思ったら早めに来てくださいね」
「はい。すみません」
「一度、検査をしてみましょう」
そして僕は精密検査をされることとなった。
「んー。特に異常は見られませんね。今回は大丈夫でしょう。一応、電波を和らげる薬を出しておきますのでそちらを二週間飲んでください」
「はい。ありがとうございます」

「良かったね。なんでもなくて」
「うん。ちょっと考えすぎだったみたいだね」
「話は変わるけど、新しく横浜にできた火星のテーマパーク行こうよ」
「いいね。行こうか。僕もちょっとあそこ気になってたし」
「約束ね」
「うん」

そして一週間後。
「おまたせ」
「三十分の遅刻なんですけど。いっつも遅れてくるよね~」
「ごめん。ごめん」
「もう…」
「お腹すいてない?なんか食べに行こうか」
「私はパスタが食べたいな」
「じゃあパスタ食べに行こう」
「慎司のおごりね」
「わかったよ。そういうところはちゃっかりしてるんだから」
「なんか言った?」
「ううん。なんでもない。行こ」
ランチを済ませた僕たちは、その後予定通り火星のテーマパークを楽しんだ。
「いや~、火星ってあんな感じなんだね。私はびっくりしちゃった」
「結構、地球みたいな感じなんだね」
「火星の料理も食べれたし、満足満足」
「そうだね。この後どうしようか…」
「私はまだ帰りたくないな…」
「じゃあ、ホテルにでも……」

ピーーーーーーーー

「慎司…」
「しんじ~。あぁぁぁぁぁぁ」
両親の泣き叫ぶ声が病室に響いた。
慎司の親御さんから連絡を受けた俺はすぐに病院に駆け付けた。
「あぁ恭平君」
「お母さん。あの、慎司は?」
「…」
俺が駆け付けた頃には慎司は既に霊安室に運ばれていた。
「慎司…。おい、慎司」
「…」
「なんでだよ…。死ぬなよ。何であのとき…バチャつくのバグの警告があったとき…戻ってこなかったんだよ…」
「…」
「お前はどんな世界に入ってたんだよ…こっちの世界よりもそんなに楽しい世界だったのかよ…なあ、答えろよ。慎司…」
「…」

「慎司くんのこと残念だったね」
「あぁ。俺まだ受け入れらんねぇよ…」
「恭平は慎司くんと仲良しだったもんね」
「なあヒナコ。俺これからどうしたらいいんだよ…」
「葬儀明日だっけ。最後は笑顔で送り出してあげなよ」
「そうだな…。ヒナコ今から会えるか」
「うん。いいよ」
「お前が彼女で本当よかった。ありがとう」
「ううん」

「恭平、おい恭平」
「ん…。あれ慎司か…。お前なんで死んだんじゃなかったのか」
「恭平、大丈夫か。最近バーチャル世界に入り込み過ぎなんじゃないのか」
「え…」
「ほら、早くしないと学食の席なくなるから。行くよ」
「お、おう…」
この世界では人間と人工知能が共存している。そして頭にはICチップを埋め込む時代だ。そのICチップにより自分だけのバーチャル世界にいける。そう自分だけの第二の世界に…。

『続いてのニュースをお伝えします。新たに二人の死亡が確認されました。死亡したのは佐野慎司さん二一歳と林田恭平さん二一歳の二人で、二人は先日大学内でバチャつくをプレイしていたところ脳内にダメージを受け、脳死の状態が続いていましたが、今朝、死亡が確認されました。これでバチャつくによる死亡者は…』
「ヒナコ、ご飯よ~」
「は~い」

ブツン

(東京経済大学コミュニケーション学部「可能人類学2019」「22世紀恋愛論ワークショップ」課題作品より)

触覚的自我 自治医大2019全作品(テーマ別分類)

自治医科大学の講座「臨床と哲学」にて行われた触覚的自我ワークショップの全作品(122作品)を、講評時の話題に沿って分類したものです。

実施日:2019/1/24・1/31・2/14
講義:武内大・安斎利洋
ワークショップ:安斎利洋・中村理恵子・金 知垠
協力:淺田義和

気になる部分

014



114



116


108

触覚的身体空間

003



113



103



009


067


109



110


手足

066


106

全身

023


080


115


管・空洞・穴

007



015


020



112



104

対称性

019


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043


070


073


122

横顔・断面

085


100


117


119

017


018


035


044


055


063

凹凸

006



013


042


059


061

031


033


062


076


088


089

耳・音

036

081

笑い

016


026


045


072


079


087

012



096

境界・輪郭

047


069


075


093


099


102


105

ちぎり絵

022


028


039


054


065


097

眼鏡

005



077

前髪が気になる

041


060


068


071


092


094


107

髪全体が気になる

034


037


038


052


056


058


098


111


118

ミニマルな表現

021


024


048

特徴的な目

002



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008



029


032


040


050


064


074


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目のある顔

001


027


046


049


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053


078


083


084


086


090


091


095


120

目のない顔

010


057

目を閉じた顔

011


025


082


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触覚的自我 自治医大2019 全作品

自治医科大学の講座「臨床と哲学」にて行われた触覚的自我ワークショップの全作品(122作品・撮影順)。

実施日:2019/1/24・1/31・2/14
講義:武内大
講義・ワークショップ:安斎利洋
ワークショップ運営:中村理恵子・金 知垠
協力:淺田義和


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VRなんて絵空事

作者

シナリオ:伊藤匠(TKU)
表紙:甘味屋みりん(MAU)


2107年には出会い系サイトの進化版、出会い系VR空間『sora(ソラ)』が存在する。そこではユーザー自身のアバターを作り、他人と実際に会うまでにVR空間上で出会え、疑似恋愛ができる。さらに、愛の感情を持ったAIキャラクターも存在し、AIとsora登録者が恋愛を楽しむこともある。
このsoraの管理者は天草空で、soraは空の理想を形にしたAIキャラクターの山下蓮華との疑似恋愛をするために作った空間を商業化したものである。
ある時、sora上のAIキャラ達がシステムのエラーにより他のAIキャラにも恋をするようになってしまった。そして、AIキャラ三浦海斗が恋をした相手は蓮華だった。本来AIはsora利用者としか恋愛をせず、AI同士の恋愛はプログラムされていない。空はシステムを書き換えたが、海斗だけは蓮華を好きなままでいた。VR上のAIに恋をする青年の恋の行方とは。

登場人物

天草 空(あまくさ そら 25歳)出会い系VR空間「sora」開発者。AIの蓮華が彼女

山下 蓮華(やました れんか 20歳)空の理想を具現化したAI

三浦 海斗(みうら かいと 20歳)空がsoraに加えるキャラとして開発したAI。

山崎 舞奈(やまざきまいな 17歳)高校時代の空の初恋の相手

橋本 里奈(はしもとりな 25歳)読んでからわかる

soraの社員達 清水・新井・小松崎・柳田

soraのユーザー達とAI達

VRなんて絵空事

○VR空間sora

sora内のユーザー達、VR上で交流している。

ユーザー1 「初めまして、名前はなんて言うんですか?」

AI 1 「私はAIのアイカです。よろしくおねがいします!」

ユーザー1 「僕ここ初めてなんですけどどういうことができるんですか?」

AI 1 「まぁここは40年前にあった出会い系サイトのVRバージョンだと思って下さい。ユーザーさん同士で実際に出会う前に疑似恋愛をすることもできますし、私たちAIとの恋愛をすることもできますよ。」

ナンパもVRを通してリアルのように行われる。

ユーザー2 「大人の関係持ちませんか〜?」

ユーザー3 「いや、そういうのは望んでないんで、他当たってください」

ユーザー2 「も~、冷たいなぁ~」

ナレーション「sora、ここは天草空によって作られた出会い系VR空間。ユーザーは自身のアバターを通して実際に会っているかのように、様々な人やAIと交流ができる。もともとは空が高校時代に作った理想の女性AI山下蓮華との疑似恋愛を楽しむために作ったVR空間だが、親に反対され仕方なく商業化し、家にお金を入れることで許されたものである。」

○空の自室(夜)

空、帰宅してスーツを着替えsoraを起動する。

空 「(スーツのネクタイを荒々しくほどき捨てながら)はぁ〜、何が遺伝子の相性でお見合い結婚だよ、馬鹿げてる。自分が本当に好きな人と結婚したほうがいいに決まってんだろ。AIだとしても…」

AIスピーカーアレクサ 「おかえりなさい空さん。どうかしましたか」

空 「いや、かぁさんがAIに恋する俺にあきれて、お見合いさせやがってさ。」

アレクサ 「まぁ時代が変わったとはいえ、まだ認知されていない部分もありますからね。」

空 「ついに日本も少子化で狂ったな。わり、また蓮華に会ってくるわ」

アレクサ 「あ、作業の邪魔してすみません。いってらっしゃいませ。」

空 「ありがと、アレクサ」

○sora内、空の部屋

空、AIの蓮華に愚痴をこぼす。そして新AIキャラの構想について話す。

空 「蓮華~、今帰ったよ。お待たせ」

蓮華 「遅いんだけど、何してたの?」

空 「昨日言ったろ?あれだよ、遺伝子の相性でお見合いさせるやつ、馬鹿げてるよな~」

蓮華 「あー、現実世界はたいへんね。でも私以外に好意向けたら許さないから」

空 「わかってるよ。あるわけないだろ、俺の理想形だぞ。」

蓮華 「そうだよね、私を作ったのは空だもんね」

空 「あ、そうだ。今soraに加える新しいAIキャラをモデリングしててさ、これなんだけど。」

蓮華 「おぉ~!かっこいいじゃん。私的に顔だけ見たらこの人空よりかっこいいよ」

空 「おい」

蓮華 「ごめんごめん。名前は何ていうの?」

空 「三浦海斗でいいかな~って考えてる。まぁほぼ確だな。」

蓮華 「空ってセンスあるよね。このキャラ顔もかっこいいし名前も良さげじゃん。これは女性ユーザーの課金増えるわ。やっぱ世界ではじめて出会い系VR空間を作っただけはあるよね。」

空 「まぁな。だってこうやって稼いでないと親に色々言われるからな。」

○sora内、VR社内会議室(昼)

soraを運営する会社の会議。それぞれの自宅からsoraにアクセスしてVR空間上の円卓で会議をしている。

新井 「今日は来月のアップデートで加えるキャラについてなんですが。」

柳田 「あぁ、もうほとんど完成段階に入ってますよ。あとは恋愛の感情だけプログラムすればってかんじですね。」

新井 「わかりました。完成したら天草社長に報告をお願いします。」

柳田 「了解です。」

清水 「じゃあ今回のアップデートで追加するキャラは6人ですかね。」

小松崎 「いや、さっき社長から新作がもう少しで完成するって聞いたんでたぶん7人ですかね。」

柳田 「おっ、それは期待できますね〜」

清水 「soraの人気キャラランキング1位、2位は社長のキャラですからね」

○sora内、空の自宅前(昼)

蓮華は空を訪ねてきた

蓮華 「空〜、いないの〜?」

そう言いながらしきりに呼びかけるが空はいなかった。

蓮華 「なーんだ、つまんないの」

○soraの有名スポットsoraタワー前公園

ここは人気のデートスポットで、カップルがたくさんいる。

蓮華 「あー、やっぱ一人で来てもつまらないな〜」

手を後ろに組みながら石ころを蹴っ飛ばして歩く

コツン 蓮華の蹴った石が前にいた柄の悪い男に当たった

蓮華 「あっ、ごめんなさいっ」

咄嗟に両手を胸の前で組み、祈るように謝った。

ユーザー4 「おい姉ちゃん、石当てたなぁ? どうすんだよこれ、靴に傷ついたじゃねえか。」

ほとんど見えもしない傷について怒り始める男

蓮華 「すいません。私の不注意でした、許してください。」

ユーザー4 「そりゃそうだわな、でもな、この靴にいくら課金したと思ってんの?」

男は顔を近づけながなメンチをきかせた

⁇ 「やめろよ。」

不意に蓮華の後ろから歩いて来た見知らぬ男が仲裁に入った。

ユーザー4 「誰だてめぇ、言っとくけど悪いのはこいつだからな?」

⁇ 「本人も悪気がないみたいだし、謝ってるじゃないか」

ユーザー4 「うるせえな、お前には関係ないだろうが。」

⁇ 「いいのか? soraの規約違反で退会させられるぞ。」

ユーザー4 「チッ」

男は舌打ちをすると、そこから去っていった。

蓮華 「どなたか存じませんが助かりました。ありが…」

蓮華ご御礼を伝えようとしたちょうどその時、仲裁に入った男が振り返った。

蓮華 「あー!三浦〜、誰だっけ?」

海斗 「AIの三浦海斗です。なんで名前を?」

蓮華 「私、実はあなたを作った天草空と付き合ってて、あなたのことを彼から聞いてたの。」

海斗 「そういうことか。ていうか、君も、石蹴っ飛ばして人に当てるなんて。」

蓮華 「そうだよね、反省してます」

そう言いながら蓮華は笑った。

○ある日のカフェ(夜)

社員の清水が空に慌てた様子で電話をかけて来た。

清水 「もっもしもし、し、社長、大変です。」

空 「どうしたそんなに慌てて。」

清水 「いや、あの、昨日からsoraのAIたちがなんかのエラーでユーザーたちだけじゃなくてAIにも恋愛感情を持ち始めてるんですよ。」

空 「おいまじかよ。」

空は右手で髪をぐしゃっと掴んだ。

清水 「おそらく、このあいだのアプデ以降のことだと思います。」

空 「わかった、今すぐ確認してくる。」

そういってハンズフリーイヤホンを切った。

○sora(夜)

ユーザーたちはAI同士で好意を持ち合うシステムエラーに混乱していた。

ユーザー5 「おい!実咲!俺のことが好きだったんじゃなかったのかよ!?」

AI 実咲 「ごめんね、なんかあなたよりもいい人見つけたの。」

実咲はAI 陸斗と腕を組んでいた。

陸斗 「悪いな、俺の方がよかったみたいだぜ?」

ユーザー5 「どうなってんだ、AI同士は恋愛に発展しないんじゃなかったのかよ!!!」

全てのAIがAIに恋をしているわけではなかったが、このような混乱は各地で起きていた。

ユーザー6 「どうしてこうなったんだ。運営は何やってんだ。」

ユーザー7 「話が違うじゃない!」

ユーザー8 「こんなクソ出会い系VRなんてやめてやる。」

AIの恋人に裏切られたユーザーの一部はこの状況に耐えきれず自ら退会していった。

○空の自室(夜中)

空はカフェから急いで帰宅し、パソコンに向かいシステムの改善を急いだ。

空 「くそ!なんでこうなった。キャラを追加しただけで他はいじってないだろ…」

目を見開きながら必死にキーボードを叩いた。

空 「やばい、ユーザーが少し減ってる。そりゃそうだよな、AIと恋が出来る出会い系って言ってんのにAI同士でイチャイチャされちゃユーザーもこっちも不利益被ってたまんないわ。」

空の部屋には夜通しパソコンをいじる音だけが響いた。

○sora内、VR会議室(朝)

空は社員を集め、今回のエラーの件について話し始めた。

空 「みんな申し訳ない。だがなんとかシステムは持ち直した。」

清水 「ユーザーの退会は一応最小限で食い止められましたね。」

空 「ああ、エラーがまだ夜中で助かったな。」

柳田 「すいません!自分がキャラをアプデする段階で何かいじっていたかもしれません。以後気をつけますので。」

急に立ち上がった柳田は深く頭を下げた。

空 「いや、キャラの更新でこうなることはまずないだろうし、お前の能力は俺がよく知ってる。そんなヘマをするやつじゃない。」

柳田 「社長…」

空 「新井、今回の件に関する謝罪と、ユーザーに無償でのアイテム配布を急いでくれ。」

新井 「承知しました。」

空 「可能性としては外部のやつの仕業もありえるな。」

○sora(昼)

システムの改善により、またいつものsoraが戻って来た。

ユーザー5 「昨日は焦ったぜほんとに。マジで見捨てられたのかと思ったわ。」

男は満面の笑みで昨日のことを語った。

AI 実咲 「ごめんね、本当に。でも私もなんでこうなったのか。」

ユーザー5 「ただのシステムのエラーだろ? 気にすんなって。」

○sora内、空の自宅(夕方)

昨日徹夜してシステム改善を行った空は完全に疲れ切っていた。

空 「あーーー。ほんとに疲れたな。」

キャスター付きのデスクチェアの寄りかかって空を眺めていた。

空 「てか、この一件のせいでしばらく蓮華に会ってなかったな。またいつもの公園にいるだろ、会いに行くか。」

空は空間上に浮いたボタンを一押しし、外出用の服に一瞬で着替えた。

○soraタワー前公園(夕方)

蓮華はいつものように公園のベンチに座っていたが隣には海斗がいた。

海斗 「空さんから連絡ないの?」

蓮華 「そうなの、まぁあの件があったからね。大変だったんだよ。」

海斗 「そっか。」

別にこの話には興味がないかのように返事をした。

蓮華 「どうしたの?」

海斗 「あ、いや。俺なんだ。」

蓮華 「ん?」

蓮華は海斗の顔をぽかんとした顔で見つめた。

海斗 「実は、今回のエラーを起こしたのは俺なんだ。」

蓮華 「えっ?何言ってんの?!」

蓮華は訝しげな様子で苦笑いした。

蓮華 「嘘でしょ?」

海斗 「いや、俺がやったのは本当だ。」

海斗は俯いた。

海斗「実はな、空さんが俺を作った段階で、間違えて他のAIに恋愛感情を抱く設定にしてたんだ。」

そういって海斗は蓮華の手をそっと握って呟いた。

海斗 「一目惚れだったんだ。」

蓮華 「え?」

海斗 「俺、仲裁に入ったあの日から蓮華のことが好きなんだ。だけど、蓮華にはAIを好きになる感情がインプットされてないから、自分でやるしかなかったんだ。」

蓮華 「だからってこのsora全体を巻き込まなくても。」

海斗 「そうでもしないと空さんの目は欺けないだろ。」

蓮華 「でもどうやって…」

海斗 「俺らはAIというデータだ。システムデータに侵入することはいくらでも出来る。」

蓮華 「そうだったんだ。」

海斗 「てかいまそんなことはどうだっていいんだ。俺は蓮華の気持ちが知りたいんだ。」

蓮華 「それは…」

蓮華は気まずそうに俯いた。

海斗 「今、他のAIはシステムを直されてるけど、蓮華のだけは書き換えられないようにしてあったからAIに恋が出来るはずなんだ。」

蓮華 「でも…」

しばらくの間二人の間に沈黙が流れた。そこから口火を切ったのは蓮華だった。

蓮華 「正直言うとね、私も海斗が好きだよ。空から完成前に見せてもらった時から気になってた。でも、私は空が空のために作ったからAIだから…」

海斗 「そんなの関係ない!!! AIだって誰を好きになってもいいだろ!」

一瞬熱くなった海斗は自分を落ち着かせるように言った。

海斗 「俺はそう思うんだ。」

○ soraタワー前公園に向かう夜道

空は、いつも蓮華がいるはずのsoraタワー前公園に向かっていた。

空 「(それにしても、あのエラーは何だったんだ。セキュリティーは万全だったはずだし、まさか内部の…いや、考えすぎか?)」

ヒューっと肌寒い風が吹いた。空は少し嫌な予感がしていた。

空 「なんだか今夜は肌寒いな。」

○ soraタワー前公園入口(夜)

男 「飲む?」

女 「ちょっともらうね!」

空はちょうど公園入口の自販機のあかりに照らされたカップルのそばを通り過ぎた。

プシュッ。炭酸飲料が入ったペットボトルが開く音に反応して空はちらっとそのカップルを見た。

男 「じゃあ、行こっか」

女 「そうだね」

空は聞き覚えのある声に耳を疑った。

空 「ちょっとまて、蓮華か?」

空は勢いよく振り返ってそう聞いた。

蓮華 「え、空??」

暗さに慣れた空の目に映ったのは、蓮華とその手を握る海斗の姿だった。

空 「お、おい…………なんで、二人が手をつないで一緒にいるんだ。」

わけがわからなくなった空は一瞬言葉を失った。

蓮華 「ち、違うの」

空 「違くないだろ、どういうつもりだよ。」

蓮華 「これは、その…」

空 「納得がいかないだろ!説明し…」

海斗が遮るようにこう言った。

海斗 「蓮華はもう空さんのものじゃないですよ」

空 「いや、だからどういうことかわかんねぇよ」

海斗 「だから、僕たちは両想いなんですよ。」

空 「そんなわけ…」

空は何かに気づき一瞬動きが止まった。

空 「ちょっとまて、二人ともAIだよな…?」

海斗 「やっと気づきましたか。バレるのもたぶん時間の問題なのでもう言っちゃいますけど、大変だったんですよほんと」

空はごくりと唾をのんだ。

空 「…もしかして、海斗なのか、あのエラーを起こしたのは。」

海斗 「そうですよ。外側からは強固なセキュリティーでも内側からは脆弱ですね。」

空 「くそ。そういうことだったのか。」

空 「蓮華…」

空は蓮華にそっと目を向けたが、蓮華は俯いていた。

空 「そうか。」

空はそうつぶやくと、二人に背を向けて走っていった。

蓮華 「空!」

蓮華は叫んだが空は振り返ることはなかった。

○空の自室のベッド(夜中)

空は度重なる悪状況のせいでVRの世界から逃げるように現実に戻ってきた。

空 「なんか疲れたな。まさかAIに足元すくわれるとは思いもしなかった。」

空はさっと布団を顔までかけた。

○空の自室(朝)

朝礼に出ない社長を心配したsoraの社員から電話がかかってきた。
プルルルル。部屋中に鳴り響く着信音。

空 「うぅ、ん、もう朝か。いや、電話か。」

空はアラームと勘違いした着信音に起こされ、そのまま電話に出た。

清水 「社長!何時だと思ってるんですか。もう朝礼の時間ですよ。早くログインしてください。」

空 「そうか。悪い、今行く。」

目が半開きのままsoraにログインした

○sora内、会議室

空は30分遅刻で朝礼に参加した。

空 「悪い、遅れた。おはよう」

清水 「おはようございます」

新井 「社長が遅刻なんて珍しいんじゃないですか?」

小松崎 「言われてみればそうですね。どうしたんですか?」

空 「これは会社の運営にかかわることだから言っとかないとな。」

清水 「え、そんなに深刻なことがあったんですか?」

空 「端的に言うと、こないだ追加したAIの三浦海斗が暴走した。ついでに蓮華も盗られた」

柳田 「どういうことですか?!」

空 「先日のエラーを起こしたのは三浦海斗だった。昨日本人に会った時にあいつの口から直接聞いた。しかも蓮華とできていた。」

新井 「えーと、急展開過ぎてますますわけがわからないですね」

新井は苦笑いしながら困ったようにしていたが、空は動じずに淡々としゃべり続けた。

空 「これは単純に俺のミスだが、おそらく海斗を作るときにAIに恋をできる設定で誤ってプログラミングしていたんだ。そのままキャラとして追加されたあいつは蓮華と出会い恋をした。でも蓮華は…」

清水 「もう大体わかりましたよ。それ以上は言わなくて大丈夫です。」

明らかに普段と様子が違う空を気遣うように話を折った。

柳田 「じゃあ海斗のプログラムを書き換えれば良いんですよね」

空 「いや、おそらく無理だ。」

新井 「だって、作ったのは社長ですよね。てことは、プロ…」

清水が新井の話を割ってしゃべり始めた

清水 「今回のやつは社長の最新作で今までのモデルと比較してもスペックがかなり高い。学習能力もそこらの奴とは一味も二味も違うだろう。」

空 「あぁ、soraだけじゃなく蓮華のセキュリティーロックも書き換えられてた。これだと直接手が加えられない上にこのsora自体をリカバリーしない限りあいつを止めることは不可能だな。」

新井 「初期化するってことですか??でもそんなことしたら。」

空 「そうだな、海斗を消去できるが確実に蓮華も消える。」

新井 「そんな…もしそんなことしたら本末転倒じゃないですか。」

空 「これは俺の理想から始まったことだ、しかし商業化してしまった今、そんなことしたら利用者が黙っていないし、お前たちを路頭に迷ませることになる。だからそんなことは絶対にできない。」

柳田 「じゃあどうするんですか。」

空 「プログラムを動かせない今、直接海斗に交渉するしか方法がない。このままあいつにsoraを乗っ取られたままだと運営にかかわる。それに…」

空は、そこで言葉を詰まらせた。

清水 「社長?」

空 「もういいんだ、この一件で目が覚めた。いい大人が現実から目を背けてAIに恋するなんてさ。」

清水 「僕はAIと付き合ったり結婚する人がいても悪いとは思わないですよ!」

空 「そうだな。でも俺は逃げてたんだ。」

空は過去を思い出すように天井を見上げた。

〇空の通っていた高校の教室(過去・回想)

空は高校二年生当時、同じクラスだった山崎舞奈に恋をしていた。ある時、友人を通して舞奈が空を好きだという噂を聞いた。

空 「ごめんね、いきなり呼び出して。」

舞奈 「いいよ。でも部活あるから早めにしてね。話って?」

空 「じゃあストレートに言うね。」

それは空にとって誰かに向けた初めての気持ちと言葉だった。

空 「好きです。付き合ってください。」

窓から吹き込んだ風にあおられ壁の時計が落ちるのと同時に返事は返された。

舞奈 「ごめん(ガシャン)」

空は物音と受け止められない返事に混乱し、つい聞き直した。

空 「え…?」

舞奈 「いや、彼氏いるしごめんねって…」

時間が止まった。あれ、おかしいな。そう思いながらも

空 「そっか。わかった。」

とだけ言い教室をあとにした。

これは一週間後にわかった話だが、空は嘘の噂に騙され、はめられたのだ。しかもそのことが学年中に知れ渡り、あれやこれやとありもしない噂が広がった。

〇sora内、会議室

空は自分がVRにのめりこんだ経緯を話した。

空 「それから転校した。俺は周りの奴らを信じられなくなった。人に恋をするのが怖くなった。だって、人は裏切るから。」

柳田 「……。」

空 「その時俺は思ったんだ。VRでAIと恋をすればすべて思い通りだと。そこから一年、ひたすら勉強して蓮華を制作した。友達もほとんど作らずにな。」

椅子から立ち上がり外を眺めた。

空 「そしてここまでのものを俺は作り上げたんだ。けどVRでさえこのザマだよ。結局世の中絶対なんてないんだ。ただの絵空事に過ぎなかったんだよ。」

重い空気に社員は誰も喋ろうとはしなかった。いや、話す言葉が見つからなかった。

空 「あー、ごめん!お前たちは気にしないでくれ。これから海斗に俺が蓮華をあきらめる代わりにsoraを元に戻してもらえるように頼んでくる。」

柳田 「いいんですか。本当にそれで。」

空は数秒経ってから一言こう言った。

空 「いいんだ。」

〇海斗の部屋(昼)

海斗は蓮華とともに部屋でテレビを見ていた。

「三浦海斗!」

外から誰かの声に呼ばれた。海斗は玄関を開けた。

海斗 「何しに来たんですか」

空 「大事な話がある」

海斗 「蓮華なら返しませんよ」

海斗は少し眉間にしわを作りながら言った

空 「あぁ。わかってる。それを踏まえて聞いてほしいことがある。」

蓮華が廊下の奥から二人の様子を見ていた。

海斗 「なんですか」

空 「soraを俺たちが管理していた元の状態に戻してほしい。」

海斗 「嫌ですよ、だってそんなことしたらまたあんたが…」

空は準備していたかのように食い気味に話し始めた

空 「ちゃんと条件がある。」

海斗 「条件?」

空 「俺はやろうと思えばsoraをリカバリーすることだってできる。そしたらお前も蓮華も消えてなくなる。」

海斗は唇を噛んだ。

空 「だが、俺は蓮華を消したいわけじゃない。お願いだ、一日だけ蓮華と過ごさせてくれ。それで蓮華をあきらめる。その代わりにsoraの管理権を会社側に返してくれ。そしたら俺は会社から出ていくし、もう二度とお前たちに干渉しない。」

海斗 「嫌だって言ったら?」

海斗は空の様子を窺うように聞いたが、空は堂々としていた。

空 「その時は容赦なくsoraを消す。」

海斗はしばらく考えた

海斗 「…わかりました。明日の正午までに戻ってきてください。それでいいですか。」

空 「ありがとう」

海斗は手招きで蓮華を呼んだ

空 「蓮華、ごめんな」

空のその一言には様々な気持ちが込められていた。

二人はそのまま並んで歩いて行った。

〇sora内、空の部屋(夜)

空は思い出作りとして、蓮華を連れて様々なところに行き、最後は一番多くの時間を過ごした部屋で過ごすことにした。

空 「蓮華はもう俺の事好きじゃないんだよな。」

蓮華 「それがね、不思議な気持ちなの。今は海斗の事が好きなはずなんだけど、空を好きだった気持ちはちゃんと残ってるの。」

空 「そっか」

空は複雑な気持ちでいっぱいだった。蓮華も自分の気持ちがわからなくなっていた。

蓮華 「空。ありがとね。」

空 「え?」

蓮華 「だって、空がいなかったらこうやって私という存在がいなかったわけだし、今まで過ごした楽しかった日々もなかったんだよ!」

蓮華はとびっきりの笑顔で笑っていたが、目からは涙が流れていた。

蓮華 「あれ、涙が止まらないや。もう、この気持ちよくわかんないよ。」

空 「俺も涙が出てきちゃった。」

蓮華 「へへ」

二人はお互いの泣いてる顔を笑顔で見つめあっていた。

空 「でも、俺の涙はVR上では再現されたアバターの映像でしかないんだよな…あぁ、同じ次元で出会いたかったって思うよ。本当に。」

そうつぶやくと空は蓮華の頬に優しくキスをした。しかし、そのキスは形だけで感触はない。

空 「やっぱ、触れられないんだよな。」

蓮華 「そうだね。それでも私はずっと楽しかったよ!ありがとう。空。」

空 「うん。俺、蓮華のこと絶対忘れないから。」

蓮華 「当たり前でしょ!忘れたら許さないからね。」

それから二人は尽きることのない7年間の思い出話をひたすらに語り合った。

〇海斗の部屋の前(正午)

空は約束通りの時間に蓮華を連れて海斗の部屋の前に来た。

空 「もう後悔はない。」

海斗 「そうですか。なら良かったです。管理権はしっかり返しておきましたのでご心配なく。」

空 「そうか。ありがとう。」

そして空は海斗の目をまっすぐ見て言った。

空 「蓮華を泣かせたら許さないからな。」

海斗 「はい。」

刹那の沈黙の後、空は吹っ切れたように表情を変え、蓮華に向かって右手を突き出しピースをした。

空 「元気でな。蓮華」

蓮華 「うん。空もね」

蓮華も最高の笑顔とピースサインで返した。

〇港区六本木交差点(昼間)

空が事業から退いてから半年ほど経っていた。家賃を払い続ける余裕はあったが仕事のあてもなくただぼーっとする毎日が続いていた。

空N 「(貯金はあるけどそろそろ働かないとまた親に怒られるな。)」

そんなことを考えながら青になった信号を渡り始めた。

(ドンッ)

空は反対から歩いてきた男性とぶつかってしまった。

空 「あ、すいません。」

男 「いえ、こちらこそ。すい..あれ、社長?」

空がぶつかったのはかつての部下清水だった。

清水 「天草社長じゃないですか!お元気でしたか?」

空 「ん?清水か?!」

信号は既に点滅していた。

空 「ひとまず歩道まで行こう」

二人は歩道で話し始めた。

清水 「まさかこんなところで偶然会うとは思いませんでした。」

空 「そうだな。元気だったか?」

清水 「はい、勿論元気でしたよ!そんなことより社長に会ったら伝えたかったことがあるんですよ」

空 「社長呼びはもうやめろって」

否定していたがどことなく嬉しそうだった

清水 「いいじゃないですか~、他の呼び方なんてないですし」

空 「まぁいい。それでなんだ?伝えたいことって」

清水 「あ、はい。えっと、今はお仕事されていますか?」

空 「してないな。」

清水 「じゃあちょうどよかったです。アライドアーキテクツはご存知ですよね?」

空 「あぁ。マーケティングとかやってる老舗IT企業だろ、それがどうしたんだ?」

清水 「最近私の友人が社長になったんですが、空さんのプログラミング力を筆頭としたIT技術に惚れこんでいて是非うちで働いてほしいって言ってるんですよ。」

しばらく二人は路上で話し込み、結果的に空はアライドアーキテクツに身を置くことにした。

〇アライドアーキテクツ社内

清水にばったり会ってから二週間後。空の出勤初日。空はWebソリューションチームに配属されていた。

板倉 「初めまして空さん。私がWebソリューションチームプロジェクトマネージャーの板倉大河です。」

空 「天草空です。よろしくお願いします。」

空はプロジェクトマネージャーとあいさつしたのち、自分のデスクでプロジェクトに目を通していた。

⁇ 「初めまして、あなたが新しく入った方?」

話しかけてきたのはデスクが隣の女性だった。

空 「天草空です。よろしくお願いします。」

橋本 「なんか固いぞ新人!私は橋本里奈ね。25だから同い年だよね、よろしくね」

空 「あ、うん、同い年ですね」

少し照れくさそうに答えた。なぜなら橋本は現実で久々に見る空の理想の女性だったのだ。

橋本 「敬語じゃなくていいって、同い年なんだから!」

空 「そうだな、そうする!」

空は笑顔で答えた。

その笑顔は過去のしがらみを忘れ、現実への希望で満ち溢れた表情をしていた。

(完)

22世紀恋愛論へ

22世紀恋愛論

TKU-MAU リレーワークショップ『22世紀恋愛論』から生まれた作品を、テーマを軸に配置した。

共通課題
恋愛(とかつて呼ばれていたもの)の22世紀を構想し、作品を制作する。

WS1
東京経済大学(TKU)コミュニケーション学部「可能人類学」2018年6月
課題:作品形態はシナリオ。シナリオの書き方は各自調べる。

WS2
武蔵野美術大学(MAU)基礎デザイン学科「オートポイエーシス論」2018年10月
課題:作品形態は自由。ただし(現在の)メールで送れること。3分以内に鑑賞可能であること。

テーマ

  1. 個体
  2. 美容整形
  3. 絵・空
  4. 潜行
  5. 仕事
  6. 恋愛復興
  7. 幸福の発明
  8. 臓器
  9. 運命
  10. 暗黒の21世紀
  11. 国家
  12. 隕石
  13. シニフィアン

☆印:それぞれのWSで行われたコンペで入賞した作品

シンボルマーク:U.AKUTSU 心臓から脳へ

個体

スープ

小学校の先生による22世紀末の地球の人間の恋愛についての解説

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ノルウェー(MAU)☆

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双隻高校恋愛殺人事件

双隻高校恋愛殺人事件に関する RememeWiki項目


新聞記事 PDF

堀内麻由, 平野妙子, モギ明結(MAU)☆

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肖像画



Daichi KAWASHIMA(MAU)

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美容整形

maclay

世界最大級の化粧品会社マクレスが開発した最新鋭の化粧品「maclay」(メイクレイ)。「maclay」の名前はmakeとclayを合わせた造語である。皮膚の細胞を摘出し、その細胞を培養したもので作る特殊な粘土型化粧品。その粘土は顔や身体に貼り付けることができ、自分の好きな容姿に変えることができる。この「maclay」が巻き起こす恋愛作。


「maclay」 シナリオ

森田英暉(TKU)☆

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宇宙整形販促ポスター

宇宙人が人類と恋愛をするための美容整形のポスター。
宇宙人が人間に寄せる手術なので、文字はすべて宇宙公用語。(数字は人類と宇宙人共通)

AK, シヴァ(MAU)

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ラブリメント

Miki SAWAZAKI(MAU)

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絵・空

「VRなんて絵空事」の表紙

東京経済大学22世紀恋愛論ワークショップ作品「VRなんて絵空事』(伊藤匠)を文庫本化すると想定してその表紙を描いた。

甘味屋みりん(MAU)

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VRなんて絵空事

2107年には出会い系サイトの進化版、出会い系VR空間『sora(ソラ)』が存在する。そこではユーザー自身のアバターを作り、他人と実際に会うまでにVR空間上で出会え、疑似恋愛ができる。さらに、愛の感情を持ったAIキャラクターも存在し、AIとsora登録者が恋愛を楽しむこともある。このsoraの管理者は天草空で、soraは空の理想を形にしたAIキャラクターの山下蓮華との疑似恋愛をするために作った空間を商業化したものである。ある時、sora上のAIキャラ達がシステムのエラーにより他のAIキャラにも恋をするようになってしまった。そして、AIキャラ三浦海斗が恋をした相手は蓮華だった。本来AIはsora利用者としか恋愛をせず、AI同士の恋愛はプログラムされていない。空はシステムを書き換えたが、海斗だけは蓮華を好きなままでいた。VR上でAIと人間がAIを奪い合う22世紀の恋愛の行方とは。
(海斗・蓮華・空シリーズ)

「VRなんて絵空事」 シナリオ

伊藤匠(TKU)☆

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疑似恋愛IC

22世紀、かつて「恋愛」と呼ばれていたものは第四次産業と化す。政府が疑似恋愛体験サービスを開発し、商品として提供することになった。
消費者は恋愛をするとことで得られるドキドキや興奮、癒しなどの精神的な状態が内臓されたICカードを自動販売機で購入し、そのカードを脳内に埋め込まれたICチップにスキャンすることによって、特定の対象がいなくても、恋愛的な体験を“手軽に”、“無駄なく”体験することができる。いわゆる、特定の相手がいなくても恋愛することが可能だし、時間の無駄もない。
例えば、「長澤雅美みたいな美人とのディズニーランド」とか「枯れ専大満足特集」とか販売されている精神状態は数千種類を超える。不特定多数の人とデートできるのみならず、精神的な負担もかかりません。
いつでも、どこでも、君のニーズを満たせる!

KOU, AKI(MAU)

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恋愛のある風景

22世紀。異性、ヒトではないものに恋愛感情を抱くこともごく一般的になり、男女モデルを立てた作品への共感が得られにくくなる。

人々は風景に脳内でそれぞれ思い思いの相手と自分を置き、感情移入するようになった。

鈴木ひなの, 立石美礼(MAU)

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潜行

ナルフィリア(自思自愛)

れめめwiki「ナルフィリア」の項へ

22世紀、セクシュアル・マイノリティーが社会的に定着し性のあり方が多様化した時代。自身を性的対象とする「自思自愛」の性を持つ人たちやその概念について解説。

映画『ナルフィリア narphilia』ポスター

22世紀になって認められた新しい恋愛概念である自思自愛、通称ナルフィリアを題材にした初の映画。少女は自身の性との葛藤を乗り越え、新しい愛の形を表現するのであった…。(2175年公開)

石井潮音, 荻田夏子, 小澤育実, 笹原早希子(MAU)

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-箱-22世紀の狂愛

男女の恋愛における思考は100年足らずではそうそう変わるものでは無いと仮定する。究極の自己犠牲でもあるのが恋愛だとすれば、常に相手のことを思って、2人だけの世界を分かち合いたいと願うはずだ。
この心理に陥った恋人は22世紀の世界でどのような運命を辿るのか、白い箱と一組の男女で想定した。この箱に入るのは絶対に2人でなければいけない。2人以上になった時でないと抜け出すことは出来ない。これはある意味、愛と言うよりは狂気かもしれない。

-箱-22世紀の狂愛 14ページ

塩屋椒(MAU)

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仕事

職業『恋人』

医学の進歩により子孫を残すことが容易になった未来…人類にとって恋愛はエンターテイメントになっていた。そんな二十二世紀で大人気となった職業、それが…
『恋人』である!
次の三遍は形は違えど、そんな恋人を目指す若き才能たちの序章である。彼らが出会う日もそう遠くはないだろう…


4コマ漫画3点

LOVE・プロレスラー(MAU)

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FAKE HEAVEN

人々は労働から解放され、何もせずとも必要なものが用意される時代。
AIによって作られる幸せの中で、恋愛も『創られる』ようになる。



FAKE HEAVEN(PDF)

Ariue(MAU)

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恋愛復興

22世紀創世記

人類は少子高齢化の危機を脱するため、人工受精を試みた。月日が経ち人工的な人類増加は成功し、その後も対策は続けられた。いつしか人間自らが交配する必要が無くなったため、恋愛・結婚をする人間が減少。「恋愛は娯楽」と捉えられる時代も過ぎ、やがて恋愛自体に共感を得る人間が居なくなり、恋愛という娯楽も消え去った。

そして22世紀。地上のどこかで一人の人間が、”かつて「恋愛」と呼ばれたもの”に出会おうとしている…。


PDF

Kmm(MAU)☆

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恋せよ、人類

「全ての人間が等しく幸福であるように──」
人類皆平等宣言が表明されてから幾年月。人工知能によって調整された二十二世紀の社会。人びとは労働の義務から解放され、世界中どこを探しても飢餓や貧困は見当たらないということになっていた。そんな中、一般市民であった豊田直巳は、ひょんなことから反人工知能主義の一族の少女と出会う。
彼女は失われた言葉の意味を追い求め、旅を続けていた。自らを自由探求者と称する彼女は、多様性と選択の機会を捨てた生命は果たして生きていると言えるのか、と主張する。
自由恋愛の概念を持たずに生きてきた青年と、その生き様を否定する少女。百年前の小説に登場する「恋」という言葉。
その意味を探し求めた彼らが見つけ出すものとは──

という小説の表紙とあらすじ

あらすじ(テキスト)

山口朱音(MAU)

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あたらしい恋愛のてびき

恋愛が禁忌とされた時代を経て、改めて恋愛を始める人のための指南書

酒巻菜乃子(MAU)

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第1回 恋愛競技大会

22世紀、恋愛感情と婚姻は乖離した。人は恋愛における「ときめき」を娯楽としてとらえ、競技として楽しむようになった。ときめきを感じることを「恋愛道」という道として筋立てていこうという動きが今回起こった。それが「第1回恋愛競技大会」である。

競技恋愛公式ルールブック 2128

ヤマグチアリサ、アサミナオ(MAU)

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22LOVE

感情を数値で表せるようになった時代。
世の中の価値はお金に変わって愛の量で決められるようになりました。
私たちは個人情報の一つとして、職業を聞かれる代わりに、普段どのように愛情を受け取っているのか答えなくてはなりません。
愛情とは人と人とがコミュニケーションを取ることによって芽生える感情です。
読書をしたり絵を描いたりコレクションしたりするのが好きな人でも、それだけでは愛情を獲得できません。
私たちは社会で生活するために、人と触れ合い、愛情を受け取る必要があります。

22love PDF

中村陽菜(MAU)

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幸福の発明

ラブレター

一通の手紙から恋が始まる
(海斗・蓮華・空シリーズ)

「ラブレター」 シナリオ

たくなり(TKU)☆

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家族、自由化。

2101年、日本は家族という概念を自由にしました。
恋愛はなくなり結婚という古い仕組みは消えました。
子供たちは全て人工的に作られ、大人になるまでみんな施設で育ちます。
個人としてのみ管理されるため、もう戸籍に縛られることもありません。
もちろん、法律にも縛られません。
さあ、これからは誰と家族になっても自由です。


クリスマス PDF

倉地詩織, 増田晴菜(MAU)

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バーチャル恋愛

22世紀の恋愛に生身の体は不要となり、人々は国の管理するマッチングサイトに個人情報を登録することで、自身のアバターを製作し、VR空間上での恋愛を楽しむことができる。

大関千智(MAU)

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TERRCE HOUSE – 2118 –

舞台は2118年。
台本がないという台本のもと、個性的な6人がシェアハウスする様子を記録した実験恋愛番組である。番組の登場人物は人間、AI、動物、無機物など個性的な6人。知られざるリアルな22世紀の恋愛とは?

荒幡桃音 佐藤菜々恵 甲斐実結(MAU)

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一度きりの恋愛

100年後、技術が革新し、惚れ薬がちまたで流行する。しかし、惚れ薬を飲ますことができるのは1回だけ。しかも惚れ薬を飲ませた相手と必ず結婚しなければならない。(惚れ薬を所持できる対価として)そんな中、主人公 裕典は昔、想いを寄せていた元カノ れなに惚れ薬を飲ませようかと葛藤しながら「自分にとっての運命の人とは誰なのか?」考えるストーリー。

「一度きりの恋愛」 シナリオ

大内蒼太 (TKU)

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臓器

恋愛臓

人間には腎臓や肝臓と同じように恋愛を司る臓器「恋愛臓」が備わった。「恋愛臓」はその日の気分や体調次第で取り外すことが可能である。人は最適なパートナーと恋に落ちると「恋愛臓」は光り輝き、逆に不適切なパートナーとくっついたり、はたまた取り外したまま放っておくとしおしおに干からびてしまう。
近日、そんな「恋愛臓」が次から次へと盗まれたという被害が多数報告された。その数、なんと100件。そして被害者は全員ハンサムな男性。一体誰が何のために__。
これは、22世紀 世間を揺るがした恋愛臓を巡る大事件……。

七尾恵, 山田鮎美, 吉田有花(MAU)☆

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「ギミ」僕の私、私の僕

意識が生まれた寄生生物と宿主の間の無障害交流でできた深い信頼、それは全ての人間関係を超えた深刻な絆だ。

「ギミ」テキスト

荻窪カルビ(MAU)

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突発性対人依存症

晩婚化や若者の恋愛への興味の低下が年々加速し、時代を追うごとに恋愛をする動機も薄れていた。やがて恋愛自体がなくなって他人に思いを寄せることが病気として扱われるようになった。そんな時代に起きた若者たちのお話です。


シナリオ PDF

小笠原恵, 半田美幸, 今冨佐保(MAU)

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武蔵野恋診クリニック

22世紀での恋愛は「感情に刺激を与え、心を活性化させる有効な方法」である。
健全な心身を保つために運動と同じように行うことが望ましいと認知されているが、まだ習慣化している人は多くない。
そのため、一部民間クリニックやエステでは恋愛診療が行われているが、保険適用外となっている。

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Webサイト

大藤, チョウ, 渋谷(MAU)☆

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運命

22Cレンアイタロット

未来をモチーフにしたタロットカード。
技術が発展し、ソーシャルメディアが活発化し、人々は多様性を重んじ、主体性を高める。



志賀秋子(MAU)

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愛のカタチ

100年後の日本では全人類の体内にICチップが埋め込まれている。そのICチップにはその人の全ての情報がインプットされている。主人公の小田川 みなみはICチップ管理局である「H&C」に勤めており、みなみは残りの寿命をデータで管理し通告する部署に所属している。そんな中、みなみの恋人・風間 蓮の名前が余命1ヶ月と表示されているのを見つけた。戸惑うみなみ。彼女の取った行動とは…!?

「愛のカタチ」 シナリオ

甲田, 小野, 吉川(TKU)

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暗黒の21世紀

藍と黒

22世紀の日本は超個人主義社会となり、若者の恋愛離れが行き着くところまで行ってしまう。その結果、恋は理解できない感情と化し、恋愛というジャンルはサイコホラーとほぼ同義のものになった。小説という作品形態とAmazonさんなら、100年後でも生き残っているだろうと信じて検索を重ねた私は、ついに22世紀のベストセラー恋愛小説の販売ページをキャプチャーすることに成功した。


スクリーンショット 2118-10-17 15.21.26(PDF)

石崎愛(MAU)

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恋愛と22世紀の構想


PDF

菊池彦(MAU)

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あつくんの彼女

あつくんは、21年間彼女がおらず愛に飢えていた。そんな中出会い厨魔太郎の策略とVR技術の発展により 仮想空間の女の子みちかに恋をする。

「あつくんの彼女」 シナリオ

松葉, 桂(TKU)

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国家

恋愛ライセンス

犯罪が増加した21世紀の日本。ストーカー問題やデートDV、恋人間のモラスハラスメントなど、恋愛における問題は後を絶たない。横行する不貞行為、泥沼化する離婚騒動に、それらを騒ぎ立てるマスメディアや世間。これらの恋愛における諸問題を解決するべく、22世紀に恋愛をする者へ「恋愛ライセンスカード」の所持が義務付けられた。

恋愛ライセンス取得のご案内 PDF

あみのん, きしも, とらさん, まるひろ(MAU)☆

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恋愛警察24時

20XX年多種多様な恋愛が生まれ現在では、想像もつかない恋愛も存在する。しかし、自由がすぎて荒れ果てた世の中に歯止めをかける存在が必要となった。その名も『恋愛警察24時』!!!

「恋愛警察24時」 シナリオ

いわま・きはら(TKU)

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UKT帝国

ロボット技術やVR技術などの事業を行なっていたUKT株式会社は2088年に発売された自律型アンドロイド「UKT-001」がブームになり、”一家に一台UKT-001”が2089年の流行語大賞に選ばれ、翌年発売されたUKT-002は省庁でも採用されるなど急成長していた。そんなUKT株式会社は2093年、圧倒的な力によって東京都の実権を握り、2095年には政府の後押しを受け、東京都をUKT独立自治区に改編されクニを運営することなったのだ。 UKT株式会社の三浦観音社長は、2098年年末に突如として「高DNA保護法」と「公序良俗健全育成法」、「男女交友禁止法」を発表し、2099年自治区の全住民を対象にDNA健全化と管理ナンバーの腕輪をつけたアンドロイド以外の住民の男女の私的交友禁止を実施した。しかし、三浦観音の一人息子、海斗は禁止されていた管理ナンバーを外したアンドロイドと人間が交流することができる喫茶店「じゆう」に入ってしまった。
(海斗・蓮華・空シリーズ)

「UKT帝国」 シナリオ

住之江(TKU)

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隕石

22世紀社畜恋愛論

働き方改革崩落後、社会は低迷を続けたまま22世紀に突入した。この時代に、パートナーにはどのようなことが求められるのか。


22世紀社畜恋愛論 PDF 全7ページ

佐法師(MAU)☆

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人類滅亡爆発無差別恋愛感

22世紀の恋愛論は21世紀に生きる私たちが論述するのは無意味な気がする。
21世紀に考えられた恋愛論は21世紀の憶測の域を出ないはずであるから、あまり論理立てて考えるのもいかがなものか。
しかし、それでは話が始まらないので「もし、21世紀に隕石が落ちて、ニンゲンが地球上からいなくなった」としたら?
増えすぎた生き物を淘汰することによって自然界のバランスが保たれ、異種間でも生殖が可能な世界はきっと平和なのかもしれない。
弱肉強食で生きる肉食獣や草食獣も、メスとオスで分けられたらきっと自分とは違った遺伝子配列を持つ動物に惹かれあうのだろう。


人類滅亡爆発無差別恋愛感 12ページ

住職(MAU)

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シニフィアン

二十二世紀の「ハートマーク」を考える

阿久津裕亮(MAU)☆

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個人識別図形 (Individual identification form)

舞台は22世紀よりも遥か先の未来の日本。
「(いわゆる)恋愛」といったものは、とうの昔に姿を消していて、人々は安定な社会を築いていた。
過去にあった恋愛がどのようなものかを知ろうと研究する中で、22世紀の恋愛についての資料を見つける。
以下(コンテンツの中)は、その研究者の手記である。

コンテンツ

熊谷竜治(MAU)

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ポリアモリーのためのパターンオーダーシステム

愛する人は一人だけの時代は置いていこう

たな(MAU)

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本当に好きなのは

とある花屋にて。何かが起こる気がする、そんなお話。
(海斗・蓮華・空シリーズ)

「本当に好きなのは」 シナリオ

たけやん(TKU)

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リンク

ムサビ2018 多様決コンペ
東経大2018 コンペ

『恋せよ、人類』 あらすじ

 

「全ての人間が等しく幸福であるように」

そんな人類皆平等宣言の表明とともにAIコントロールシステムが導入されてから、すでに100年以上が経過した。世界の総人口を5億前後に保ち、人間が生きるために必要な食料や生活用品など全てのものが機械によって自動的に賄われた。一定の基準を満たす生活の保証はされていたが、人類の発展性を保持するためにAIは人間が放蕩することを認めはしなかった。しかしながら仕事という概念は強制力を失い、人間は労働を娯楽とみなし、それに従事した。

地球の適正人口が5億前後であると判断したAIは人間が自由に繁殖することを認めなかった。デザイナーズベイビーとして生まれていない最後の世代の旧人類の中では、それを人権侵害だと反対するものも少なくなかった。このことは旧新人類の世代交代の際の悲劇的な出来事として歴史に伝えられている。現在はほぼ全ての人間が、健康・容姿・身体的潜在能力・知能的潜在能力が最適化された遺伝子を組み合わせられ、試験管の中から誕生する。その際、生殖機能は本来の役割を果たさぬよう調整されている。ある程度の多様性を保持するため、生存に関係のない能力の値は乱数によって振り分けられている。コミュニケーション能力を養うために疑似的血縁グループは形成されるが、それは旧人類でいう「家族」とはまた別の意味を持つ関係性である。

AIが許容し、ごくごくわずかに旧人類式に子孫を残した人間のグループは残っているが、血縁の脆弱化によりいずれ絶滅するとされている。

旧人類の時代から幾つかの言葉の意味が失われた。「恋」とはそのうちの一つである。旧人類式の家系に生まれ、反人工知能主義団体の一員でもある少女・真木マリネは、古い小説で度々見かけるその言葉に興味を惹かれている。

旧人類式とはいえ、マリネは生まれた時から結婚相手が決まっている。それは、少しでも血族内の遺伝的強度を保つためである。その必要性を理解しているからこそ、なおさら「恋」というものがわからなかった。

反人工知能主義団体の自治区で暮らすマリネにとっては、何もかもがAIによって保証される生活も同じく理解できるものではなかった。それは嫌悪の対象にもなった。

しかし、マリネは嫌悪するものだからといって、実際に目で見て聞かず、触れないまま、理解できないことを放置できる性分でもなかった。ある日、マリネは自治区を抜け出して街に出かけた。本来ならば許可証を持つものしか街区間の移動はできないのだが、子供の頃に見つけた抜け穴を利用したのだった。完全にAI管理下にある街では、身分証明ができなければ飲食もままならない。そのことに気付いたときには日も暮れかけようとしており、マリネは公園でひもじい思いをしていた。だが、このまま自治区に帰るには気が進まなかった。そこで出会うのが豊田直巳である。

豊田直巳は腹をすかせたマリネを不思議に思ったが、彼女のいうがままに食料を与えた。そして、マリネの言う「恋」という言葉に興味を持ち、協力を持ちかける。