作品を作るのをやめ、プロセスを作る。
方法とその作動に生成をゆだねるオートポイエティックなデザイン手法を考えるこのワークショップでは、あらかじめ作品の内容を意図せず、作品が自律的に生まれる循環と、それを促す場を設計した。
武蔵野美術大学基礎デザイン学科 2022年12月16日実施
目次
地形のオートポイエティック・デザイン ~地形と関係性の循環
半永久創作自販機
字幕翻訳伝言ゲーム
ダウトすごろく
色は続くよ、どこまでも
無意識下のトレース
絵画万華鏡
likeRecycle +
無限すごろく 〜人生山あり谷あり〜
イメージングポエトリーリーディング
Autophagy 画像自食
騙絵閾下循環計画
ゲシュタルト崩壊のすゝめ
にぽいと
YMG
じゃんけんサークル
マスクのブラックホール
情報警察 すべての情報は私のレビューの対象です
全作品
●地形のオートポイエティック・デザイン ~地形と関係性の循環
ルール
・世界Aは1枚の平面と壁で成り立っていて、私たちはその壁を自由に動かすことができる。私たちが世界Aの人々に合わせて壁を変形させると、世界Aの人々の関係性もまた、変化する。
・世界Aの人々が地形を変えたい場合は、点在するスイッチを押すことで変形を要請することができる。ただし望むような形になるとは限らない。
・世界Aでは私たちがデザインする地形と、それによって生まれる世界Aの人々の結びつき、分断、対立といった関係性が、相互に作用する。
●半永久創作自販機
私が購入する焼きそばパンは、なんと自分の一個前の購入者が原材料比を書き換えた焼きそばパン!更に私は、自分のパンの材料比をいじくって次の購入者の焼きそばパンの開発者になる事ができるのです。。。参加することによるメリットは無く、むしろ普通の焼きそばパンを食べられないというデメリットの方が大きい自動販売機を開発いたしました!
ただ楽しい事がしたい人!匿名で誰かを笑わせたい人!普通に飽きちゃった人のための半永久創作自販機!!!
もしもの焼きそばパン(のようなもの)をいくつか作ってみましたよ~
コンセプト・方法
●字幕翻訳伝言ゲーム
ルール
1.画像を用意し、その画像について3人で議論する。
2.その議論をリアルタイム文字起こし機能で録音し文字起こしさせ、文章を記録する。
3.出来上がった文章を先ほどの画像を見ていないもう1人に見せ、元の画像を予想させながら絵を描かせる。
4.描いた絵と元の画像を照らし合わせ答え合わせをする。
その画像と描いた絵の差異を見比べ、文字起こしのランダム性について考える。
PDF 字幕翻訳伝言ゲーム
音声字幕
あーこれ夢これ有名なやつどっち骸骨のやつ願った何かあっ
たけど全然覚えてない妖怪ウォッチいる会社なんだぞどっち
これでかいよね恐竜どっち1 階上直金ない金の盾水野だって
勝手に乗り出して届いてない人間のこと乗り出した覗いてる
驚いてる米人間怖がってる能力ないがしゃどくろ名前多分違
う袋大好太子子間の終わり
●ダウトすごろく
PDF ダウトすごろく 解説+作品
●色は続くよ、どこまでも
制作プロセス
まず、前の人が撮った写真の色に似た色を探して撮るという色しりとりをした。そのようにして色を集めるうちに、色の繋がり方や循環性をもっとおもしろく表すことができないかと考えた。
次に、日体大の集団行動をモチーフにして、一つの色から広がるように画像を配置する動画を制作した。赤から+-x方向と-y方向、微妙な色から+-x方向と-y方向、白を中心にして放射状に、黒を起点に5列横隊の配置を4人でmiroを使用して行った。
どの色を基準点にしてもすべての色への繋がりを作れるのが制作を通して分かった。5列横隊の場合15分かかってしまったが、制限があっても大体繋がるような配置にできた。
●無意識下のトレース
制作プロセス
星空の写真を無作為に繋げた元画像をそれぞれがトレースし、そのトレースした画像を再びトレースする。10回繰り返したら画像を交換し、再びトレースする。この作業を複数回行いできた画像を繋げgifアニメーションを作成した。
●絵画万華鏡
解説
絵画から色を6色抽出し、その色を使って適当に色を乗せた画像を制作。複製し、回転させることで、万華鏡のような循環的な模様デザインを作る。
絵画の色だけを抽出することで、形にとらわれず作者の色使いの特徴が見えてくるのではないかと考えた。
感想
クリーム系のカラーが多い模様は親しみやすさや優しさを感じた。一方で補色が多く視覚的に奥行きを感じるような模様もできた。画家ごとの色の特徴やもたらす印象などを再認識できた。
PDF 絵画万華鏡
●likeRecycle +
PDF like Recycle +
●無限すごろく 〜人生山あり谷あり〜
ルール
①方眼用紙に2cm平方のマスを任意の順番で書く。途中からイレギュラーマスが生まれてきた。
②マスを書いていく内に飽きてきたのでワープ地点をランダムに設定し、らくがきを始める。
③サイコロを振って各自出たマス分、スタンプを押しながら好きな方向へ進み、進んだ足取りを可視化できるようにした。
④途中からワープ地点を増設。
感想
最終的に路線図のようになった。ワープ地点は移動が楽になるから足取りが混み合う。逆に交通機関の無い場所は過疎化していく。
●イメージングポエトリーリーディング
コンセプト
有名詩人の詩を段落ごとにDALL-Eに読ませ、画像イメージを生成する。連続したイメージは紙芝居のように詩世界を表現し得るだろうか。
実際に元の詩を読んだ際の印象と、AIが生成した詩世界を視覚的に味わうことによって、AIが拾いきれなかったイメージと逆にAIイメージによって詩の新しい解釈が生まれないかどうかを考察する。
< ホントはやりたかったこと… >
AIが生成した画像だけを見て、1人が新しい詩を書く。それをまた画像化することによって生まれる新しいイメージを次の人がまた新しい詩として生成していく。最終的に有名詩に対する複数人の解釈が統合されたイメージが生成される。
●Autophagy 画像自食
方法
PhotoshopのAI画像編集機能であるスマートフィルターを利用し、用意した任意の画像とその画像自身をソースに編集を行う。またこの自己をソースとした編集成果物を新たなソースとして、自己によって編集された画像をさらに編集する。こういった連続的な自己による編集によって生まれるイメージの変化を観察する。またある一定画像が変容した時点でその行程を逆行させることで原型へ戻ることが可能であるかを試行し、その原型との比較によってイメージの差を観察する。
PDF autophagy
●騙絵閾下循環計画
方法
騙し絵は見る人を画面の中に閉じ込める。卵が先か、鶏が先かというように、軽快に次元を行き来する方法ともいえる(ここではエッシャーのような緻密なものから、気軽な錯視のイラストまで広くを騙し絵と呼ぶこととする)。一度見ることが始まれば、見ること自体が騙し絵の中で循環を繰り返すと考えた。そんな代物を、人々の目に付くようなあらゆるところにしれっと掲示することで、サブリミナル的に人々の視線に刻み込まれ、いつしかそれぞれの視線が出力も入力もない画面の中だけの循環に迷い込むのではないかと考えた。これを一つ目の循環とする。
今回は例としてそのためのポスターと、ステッカーを制作した。検索して少し漁れば見つけられる、シンプルで広く知られている構造を3種類、イラストにして使用した。加えて、画面の中の循環に触発されて、新たな騙し絵が作られ、またその騙し絵に触発されて。。。といったような連鎖が発生すれば、それが二つ目の循環である。
解答用紙のような空欄のあるバージョンを制作したのは、二つ目の発生を期待したためである。欠席しづらい葉書の回答のように上手くはいかずとも、騙し絵に閉じ込められる、閉じ込める人が増えるかもしれない。だが、それ自体にはなんの目的のない。以上が、騙絵閾下循環計画 ダマシエイキカジュンカンケイカク である。
●ゲシュタルト崩壊のすゝめ
じっと線を見つめているとその文字に対して解釈があやふやになり、本来の意味や使い方が曖昧になることがある。そのうち今までなんてことなかった一文字に疑問を感じ、誇張して捉え始め、「ただの平仮名・カタカナ」が「初めて見る造形」へと変化する。知らないはずの文字を発音できてしまうことへの不安から、中途半端に考えを放棄し自らゲシュタルト崩壊は進んでいく。
方法
step1 ひと文字を頭がおかしくなるまで見つめる
step2 その文字を見て感じたこと、新しい発見や人物像などを記す
step3 お互いに見せ合い、何の文字を見ていたのか当てる
後に、文字に形成された意味があるのか、
意味が文字のイメージの言語化なのか、
始まりも終わりも認知が低下する。
●にぽいと
日が傾いていくのとともに色味の変化が現れるのではないか。
方法
1. 絵の具で作りにくい微妙な色を設定し、画像で色味を覚える。(印刷をしても印刷された結果がカラーコードの色と同じであるとは限らないと考えたため、スマホの液晶にその色を映しながら作業をした。)
2. 黒、白、赤、青、黄色(色の三原色)のアクリル絵の具を使い、お題の色をケント紙に再現する。
3. 一枚作るごとに元の色を確認しながら、同じ色の絵の具を作り続ける。
PDF にぽいと
●YMG
⾃分が画⾯上で喋る上での癖や、機械が予測した単語が⼊り混じることで、普段⾃分が⽣み出すことのない⽂が⽣成される。
⼀⾒理解不能な⽂字列に⾒えても、そこには⾃⼰が潜んでいる。
そして予測変換による⽂を「英訳」「再翻訳」させることで⾃⼰がどれほど残るのか、個性とは何か。或いはAIはどのように解釈していくのかを探る。
また、直筆にする事でそのひとの予測変換に含まれる「個性」をより体感してもらいたいと考えた。
最後にモールス信号に翻訳する事でシニフィアンとしての変化を読み解く。
上記は全て「⾃分」だからこそ⽣まれる⽂であり、⼈により千差万別である。そしてこのサイクルは⽂字を打ち続ける限り随時更新されていく。
制作プロセス
ルール
・「原⽂」「英訳」「逆翻訳」で1セットとする
・1⼈10セット⽤意する
・共有ワードを⽤意する。以下共有ワード
「こんにちは」「了解」「ありがとう」「ムサビ」「じゃあ」「今」
・他の4種は⾃⾝のよく使う単語(⼝癖)を使⽤
・予測変換は10回まで(10回以内であれば途中で終わるのも可)
・付箋に⼿書きで「原⽂」「英訳」「逆翻訳」を書き模造紙に貼っていく
・付箋の⾊:原⽂→⻩⾊、英訳→⾚、逆翻訳→⻘
・モールス信号は、モールス信号の定義に沿って「原⽂」「逆翻訳」の⼆種類を翻訳
・全てを翻訳するのではなく気に⼊ったセットをいくつか抜粋して翻訳(プレゼン時に流す)
⼿順
①.ルールに則り原⽂を作成
②.①を英訳にかける
③.②を再翻訳(⽇本語)する
④.ルールに則り①.②.③を付箋に書き写し模造紙に貼る
⑤.①と③をモールス信号に変換する
●じゃんけんサークル
ルール
たくさんのグー·パー·チョキがランダムでサークルを並び、まず勝手で開始位置を選んで、そこから時計回りに(反時計回りでもいい)右のと勝負を決める。もし勝ったら右のを「食べる」、自分になせる。そして続けて、さらに右のと勝負を決める。もし同じだと、飛ばして進む。もし負けたら、自分が食べられて相手になって、方向を変えって勝負を続ける。こういうふうに繰り返し、最終は一緒になる。
●マスクのブラックホール
ルール
①生活の中にあるありふれたものを選びます。
②マスクで包み経過を記録します。
③写真で記録してアルバムにまとめるつもりです。
感想
感想→マスクで表情の半分しか窺えない、自閉的で重苦しい雰囲気が伝わってきます。私たちは大笑いしても誰も直接感じることができず、悲しみにも誰も気づかなかった。このような「顔のない」現象は生活環境を圧迫して見ないようにした。マスクが日常物に覆われていくと、日常物の特徴が隠されていき、白い見知らぬものが現れてきます。この新しいパッケージはそのものの雰囲気感を変え、単一の白はおいしい飲み物を医療機器のように冷たく見せる。
●情報警察 すべての情報は私のレビューの対象です
ルール
1.探したい情報のキーワードを入力
2.出た画面に、情報を分類し、黒い方形で広告や虚偽の情報をブロックする、正しい情報を示している。