maclay

22世紀恋愛論ワークショップ(東京経済大学) 優秀作品

世界最大級の化粧品会社マクレスが開発した最新鋭の化粧品「maclay」(メイクレイ)。
「maclay」の名前はmakeとclayを合わせた造語である。皮膚の細胞を摘出し、その細胞を培養したもので作る特殊な粘土型化粧品。粘土は顔や身体に貼り付けることができ、自分の好きな容姿に変えることができる。
「maclay」が巻き起こす恋愛物語。

登場人物

主人公 トオル
(男18歳 幼少期にあった火事により顔面の右半分を火傷してしまい、醜い姿になってしまう。その容姿が原因で中学に入るといじめにあい不登校に。それから現在まで実家の2階にある自室に引きこもっている。)

隣人 リン
(女18歳 大学生になり実家の新潟県から上京して、トオルの住んでいる家の隣のアパートの2階で一人暮らしをしている。)

リンの友達A

リンの友達B

トオルの母親
(女45歳 火事の原因は自分の責任だと思っている。トオルが引きこもっていることに負い目を感じており、トオルのことを常に心配している。)

俳優 カケル
(男26歳 様々なメディアに引っ張りだこの超イケメン人気俳優)
ファッションモデル サラ(女19歳 若者に大人気のカリスマモデル)

恋は見た目から

○トオルの部屋

TVCM 「もうメスを入れて綺麗になるのはやめませんか?安心安全に理想の顔に。マクレスの「maclay」」

トオル 「こんなのでかっこよくなっても人に会わないんじゃ意味ねえよ。」

ヘッドホンで爆音で音楽を流し、布団を被ってうずくまる。

○リンの部屋(朝)

TVではマクレスのCMが流れている。

リン 「やばい、やばい遅刻しちゃう」

トーストを口に咥えたまま着替えている。右手にコーヒーの入ったマグカップを持ち、左手にはスマホを持ち、毎朝大学の最寄り駅で待ち合わせをしている友達にチャットで「ごめん、先に行ってて」というメッセージをせわしなく打っている。
タンスの端っこに足の小指をぶつけてしまい、コーヒーを白いカーテンにぶちまけてしまう。

リン 「うっわ最悪、、、」

時間がないのでカーテンを風呂場に投げ、そのままにして家を急いで出た。

○トオルの部屋のドアの前(夜)

トオルの母親 「トオル。ご飯ここに置いておくね。」

晩御飯を乗せたトレイをドアの横に静かに置く。
淡いピンクや水色の花柄がちりばめられたトレイの上には味噌汁とご飯、サラダと肉じゃがと豚の生姜焼きが綺麗に配置されている。冷めないようにラップをしてある。
今まで何度もトオルをせめて部屋の外に連れ出そうとしたが、無理だった。
それから約3年間食事を配膳し、空になった食器を片付けるだけのコミュニケーションしかトオルとは取れていない

○トオルの部屋(同刻)

TVでは恋愛ドラマがやっている。

トオル 「この俳優みたいな顔だったら今頃いろんな所に行って、いろんな女とHしまくりだろうな」

自分の右手に語りかける。

トオル 「俺はこのまま童貞で、恋もせずにこの部屋で死ぬのかな。てか恋ってなんだ。」

○リンの大学の食堂(昼)

リンの友達A 「昨日の東京ラブストーリー2118観た?」

リンの友達B 「観た観た〜。カケルまじでイケメンすぎでしょ。まじ卍」

リンの友達A 「出た卍。さっき授業で習ったからって平成時代の言葉使わないでよ。面白くもなんともないよ。ねえ、リンももちろん観たでしょ?」

リン 「当たり前じゃん。最初にカケルに目をつけたのは私でしょ?録画もしてるから家帰って2回目観ます。」

リンの友達B 「そんなんだからいつまでたっても彼氏できないんだよ。」

リン 「いいんですー。カケルが彼氏だからさ。」

リンの友達A 「恋しないと彼氏とは言えないよ。」

リン 「そうなの?てか恋ってなに?」

○リンの部屋(夜)

昨夜録画していた東京ラブストーリー2118を化粧も落とさず、缶ビール片手に食い入るように観ている。

リン 「いやあ、、、まじかっこいいわ。カケルがいたら彼氏なんてできないよなあ」

食堂で話した会話を思い出す。

リン 「恋かあ、、、どんな感じなんだろう。」

ふと外の景色を見る。

リン 「あ、月だ。」

○トオルの部屋(同刻)

ドアのよこに置かれた晩御飯をそっと手に取り、ベッドの上に置く。

トオル 「今日は月見えるかなあ。」

カーテンを静かに開ける。大気汚染と都市開発が進んだ東京は星はおろか月もまともに見える日は少ない。
引きこもっているトオルにとって昼の外は眩しすぎるので夜空を見て、月を探すのが1日の唯一の楽しみだ。

トオル 「あ、月だ。しかも満月」

月を望遠鏡を覗き込み、ぼーっと見つめる。だが、いつもとは違う違和感を感じる。

トオル 「なんかぼやけるなあ」

レンズを布で拭いてもう一度望遠鏡を覗き込む。

トオル 「おかしいなあ。なんで下の方がぼやけるんだ。」

覗き込みながら望遠鏡を徐々に下に傾けていく。

レンズに白い光が入ってきた。

トオル 「夜なのにカーテン開けっ放しにしてんのか。バカだなあ。どんな顔した奴が住んでんのか見てやるか。」

望遠鏡を更に下に下げていく。
するとちょうど同じタイミングで外を見ていたリンがレンズに映り込む。

トオル 「うわっ」

驚き、望遠鏡ごと後ろに倒れる。
動悸が激しくなり、身体が熱くなる。
数年ぶりに汗をかいた。

トオル 「あんなに可愛い人がすぐ隣にいたなんて、、、」

その夜、トオルはこっそり鼻歌を歌いながらシャワーを浴びた。

○リンの部屋(同刻)

リン 「あっ、カーテン買って帰るの忘れてた。これじゃ丸見えじゃん。」

amazonの段ボールを貼り付けて応急処置をした。
風呂場に置いてあった汚れたカーテンをゴミ袋に入れて、玄関に置く。

リン 「明日ちょうど不燃物の日だし学校行く前にゴミ出してこ」

○トオルの部屋(朝)

トオルは結局あれから一睡もできずにいた。外が気になって仕方がない。
amazonでこの間買ったplaystation100でゲームをしている最中も外をちらちら見てしまう。
数年ぶりの日光は気にもせずカーテンは開けっ放しにしている。

トオル 「あの娘外に出てこないかな。一瞬だったし、可愛いと思い込んでるだけの可能性もあるからもう一度見て確認したい」

コントローラーを投げ出し、日光が照りつける窓から見える景色を張り付くように見た。

トオル 「あっ」

○リンの部屋(同刻)

目覚ましのアラームが部屋に鳴り響く。
リンは飛び起きて、時間を確認する。

リン 「やばい、また遅刻だ」

トーストを口に咥えたまま着替える。右手にコーヒーの入ったマグカップを一度持ち、机の上に置く。左手にはスマホを持ち、友達にチャットで「ごめん、今日も遅れるかも」というメッセージをせわしなく打っている。

リン 「よし、これなら間に合うかも」

朝の支度を終えたリンは玄関を急いで出ようとドアノブにて手をかけたとき、ゴミ袋に気づいて手に取る。

リン 「危ない危ない、忘れるとこだった。」

段ボールが敷き詰められた自分の部屋の窓を横目にアパートの裏にあるゴミ庫にゴミを投げ入れ、学校に向かった。

○トオルの部屋(同刻)

トオル 「やっぱりめちゃくちゃ可愛い。」

トオルは人生で初めて人と話したいと思った。

トオル 「でもこんな顔じゃ会ってもどうせ怖がられるか、バカにされるかだしな」

TVCM 「もうメスを入れて綺麗になるのはやめませんか?安心安全に理想の顔に。マクレスの「maclay」」

トオル 「これだ」

トオルはamazonで「maclay」と鏡とカオルの写真集を即購入した。

〇リンの部屋(夜)

リン 「これでよしっと」

帰りにIKEAで買ってきたカーテンを取り付けた。
amazonの段ボールを重ねて結んで玄関先に置いた。

リン 「明日は絶対遅刻しない。」

そしてベッドに入り、眠りに着いた。

〇トオルの部屋(同刻)

トオルが食い入るように鏡と写真集を交互に見ながら、手をせわしなく動かしている。
その隣には「maclay」と大きなロゴが書かれてある白い箱が無造作に置かれている。
トオルは「maclay」を使って生まれ変わろうとしていた。

トオル「違和感ぜんぜん無えや、、、」

トオルは小学校の頃、図画工作が最も得意な教科で、 東京都の図画工作のコンクールの造形部門では、小学生離れした精巧な人間の耳をモチーフにした作品を作り、 最優秀賞を受賞したことがあるほど手先が器用である。

トオル「この顔だったらあの娘に話しかけれるぞ。」

トオルにふつふつと自信が湧いてくる。

トオル「俺は明日から生まれ変わる。」

○リンの部屋(朝)

目覚ましのアラームが鳴り響くがすぐに音が止まる。

リン「んー、いい朝だ。」

昨日買ってきた真っ白なカーテンの隙間から柔らかい朝日が射す。

TV「本日の血液型占いの第1位は、、、牡羊座のあなた!
運命の出会いがあるかもしれません。ラッキーアイテムはメロンパンです。
それでは今日も元気にいってらっしゃ〜い」

リン「なんか今日は目覚めもいいし占い1位だし、いい事ありそ〜」

〇トオルの部屋(同刻)

トオル「作戦考えなきゃな。」

トオルはリンにどう話しかけようか、あぐらをかいてブツブツと独り言を言っている。

トオル「不自然だったら怖がられるしな、、、。たまたま犬の散歩してたらみたいな!

いや、最近鳴き声聞こえないからタロウ(犬)はたぶん死んでしまってるか、、、ぶつぶつ、、、」

〇リンの部屋(同刻)

リン「これでよしっと」

朝の支度が済み、玄関へ軽くスキップしながら向かう。

リン「おっと、これ捨てなきゃ」

昨晩、玄関に置いていたamazonの段ボールを手に取る。
ガチャッ…
扉を開けた。

〇トオルの家の玄関(同刻)

トオル「ここまで来たら後戻りはできない。よしっ!」

両手で頰をパンパンと2回叩き、気合いを入れる。

トオル「あっやべ」

玄関のすぐ脇に立てかけてある姿見を見て「maclay」が崩れてないかどうか確認する。

トオル「セーフセーフ、ちゃんと乾いてるな。」

もう一度玄関の方に体を向ける。
そして、深く深呼吸をした。

トオル「ふーっ。よし、行くか!」

ドアノブに手をかけ、3秒ほどトオルは止まった。
そして、扉を開けた。

〇リンのアパートのゴミ庫の前

リンは束ねたダンボールをゴミ庫に置く。

リン「これでよしっと。学校行くか」

リンはゴミ庫に背を向け、学校に行こうとしたとき、目の前に男が立っていた。
男の後ろから日光が射し、顔は暗くてよく見えない。が、その男はカケルの顔をしたトオルである。

リン「あ、すみません」

リンは立ち去ろうとする。

トオル「あの、すみません。そこの家の者なんですけど、ゴミ捨て場が新しくなるみたいで、、、
それまでの間ここに捨ててもいいですか?」
もちろん嘘である。昨晩考えた作戦だ。わざわざ部屋のゴミをビニール袋に入れて持ってきた。

リン「あ、はい。たぶん大丈夫だと思います。どうぞ置いてってください。」

トオル「ありがとうございます」

トオルはゴミを置いた。
リンは学校に向かう。
トオルはこのまま何も話さずリンが学校に行ってしまうのは物足りないと思った。

トオル「あの!」

今日のトオルはまるで別人のようであった。
外見だけでなく、人と久しぶりに話した事による変な高揚感からくる自信がある。

リン「はい。なんです、、、!」

リンが振り向いたと同時に、視界に入った男に驚き、言葉を詰まらせた。
さっきまで逆光でよく顔が見えなかったのだが、男の顔はリンの憧れの人気俳優カケルの顔そのものだったのである。
心拍数がドンドン上がっていくのが立っているだけでわかる。今にも心臓の音が聴こえてきそうだ。

トオル「よかったらお名前とかあなたの事教えてくれませんか?」

不審者である。だが、リンはカケルの顔から発せられる言葉に疑いを持たない。

リン「も、もちろん!」

そのあとお互い軽い自己紹介をして、偶然年齢が一緒だということもわかった。
そして、その日の昼休み、リンは学校の食堂でメロンパンを嬉しそうに食べた。

数日後、、、

〇トオルの部屋(夜)

暗い部屋の中に小さな光がある。指をせわしなく動かして文字を打ち、リンとのチャットを楽しんでいる。

(チャット内での会話)

トオル「来週の日曜日、原宿に遊びに行かない?」

リン「いいね!ちょうど行きたいカフェがあるの😊」

トオル「じゃあ15時に最寄りの駅前で待ち合わせしよう!」

リン「うん、楽しみにしてるね!」

トオルは小さくガッツポーズをした。

トオル「よし、俺もついにここまで来たぞ!人間やればできるじゃん」

ケータイを布団に投げて、そのあと自分も布団にダイブした。

日曜日、、、

○最寄りの駅(14:56)

駅の前でトオルはそわそわしながらリンが来るのを待っている。
服はバラエティ番組でカケルが着ていたものをサーチして、すべてanazonで買い揃えたものである。
靴までもカケルと同じエアマックスを履いている。

リン「お待たせ〜!ごめん、待った?」

3分後、リンがやってきた。白いTシャツの上に水色のジージャンを羽織って、黒のショートパンツを履いている。
靴はトオルと同じ、いや、カケルと同じエアマックスを履いている。

トオル「ううん、ぜんぜん待ってないよ。それじゃあ行こっか」

リン「ちょっと待って。靴お揃いじゃない?笑」

トオル「あ、ほんとだ。なんか恥ずかしいね。笑」

リンは駅の改札に向かいながら、ふと他の人から見たら
カップルコーデしてるって思われるだろうと思い、小さく微笑んだ。

トオル「ちょうどリニア来たね。」

二人はリニアモーターカーに乗った。
この時代は電車は地方の田舎の方にしか走っておらず、リニアモーターカーが一般的な交通手段となっている。
原宿までの22分間、リンの地元は空がまだ明るいときでも月が見える話など、
2人の会話が途切れる事はなく、盛り上がった。

○原宿駅(15:25)

トオル「原宿久しぶりに来たなあ。」

リン「あまりこっちの方は来ないの?」

トオル「うん、だから今日行ってみたくて」

この時代の原宿は現代と変わりなく、若者の町として賑わっている。
表参道学院大学という大学が表参道のど真ん中に開校され、更に賑わっている。

トオル「流石に人いっぱいだね。ほんと人が蟻みたい。

リン「日曜日だしね。行きたいカフェこっちにあるんだ!」

竹下通りの方を指差す。竹下通りは人の混雑を避けるために動く歩道が設置されている。

トオル(あそこ通るのかあ)

もちろんトオルは人混みが嫌いだ。しぶしぶ動く歩道に乗った。

リン「えっとね、ここのスイパラこの間初めていったんだけど、パスタが一番美味しかった!

あとね、ここの2階の古着屋さんなんだけど、ラルフローレンのシャツを店長さんがリメイクしててね、、、」

トオルはリンの顔を見ながら改めて可愛いと感じた。
この間までずっと引きこもってた自分がこんなに可愛い娘とデートしてるなんて夢みたいだと思った。

トオル「へえ、そうなんだね!リンの行きたいカフェの後にそこ寄ってみ、、、」

トオルは一瞬言葉を詰まらせた。動く歩道の反対側に一瞬もう1人リンがいたように感じたのだ。

トオル(びっくりした。勘違いだよな、、。)

リン「どうしたの?知り合いでもいた?」

トオル「いや、なんでもないよ。行こっか!」

動く歩道を降りて、竹下通りを出て大通りに出る。信号待ちをしている間、原宿の町を眺めた。
おしゃれなファッションビルが建ち並ぶ。その中の1つにトオルは目を凝らした。
反対側の通りにあるSHEL‘TTERというファッションブランドの建物の壁にリンによく似た女性の写真がでかでかと貼ってあるのだ。
トオルはリンが実はファッションモデルなのかと思い訪ねた。

トオル「ねえ、あれめちゃくちゃリンに似てない?まさかリン?」

リン「何言ってるの?トオルも使ってるでしょ。」

トオルは一瞬リンが何を言ったのか理解できなかった。
しかし、理解した瞬間全身の毛穴から汗が吹き出てきた。

トオル「え、なんのこと?」

リン「maclayだよ。私はあのサラちゃんに似せてるんだ。最近流行ってるんだよ? ほら、あの子だってサラちゃんメイクしてるよ。」

リンが指を指したさきには髪型と服装は違えど、リンと瓜二つの顔をした人が歩いていた。

リン「ほら、あの子も!あの子もあの子も!あっちは3人とも一緒だね!」

トオル「うわぁーーー!!」

トオルは駅に向かって全速力で走り出した。
通り過ぎて行く人の中にリンと同じ顔の人が何人もいた。カケルの顔をした人もいた。
トオルはリニアモーターカーに飛び乗り、目を固く閉じ、耳を両手で塞いだ。

トオル(これは夢だ。何か悪い夢を見ているに違いない。こんなの嘘だ。)

トオルは家に着くまで俯いて歩いた。とりあえず部屋に戻って寝てみよう。最近、いろいろなことがあったせいで気が動転しているんだ。
落ち着いたら現実に戻るだろうと考えながら歩いた。

〇トオルの家(16:34)

トオルは家の前に着いた。母親がちょうどパートから帰ってくる頃なのでこの顔を見られるのはまずいと思い、
専用のクレンジングシートでmaclayを落とした。そのあと、ドアノブに手をかける。

ガチャ、、、

ドアを開ける。するとそこには母親が立っていた。

母親「、、、おかえり。」

トオルの目から涙が出てきた。気が動転しているせいもあるが、母親におかえりと言われたことが久しぶりで、嬉しいのと申し訳なさでトオルは泣いた。
トオルは今まで学校にも行かず、家族の誰にも顔を合わせることもなく生きてきた事を初めて謝罪した。
何も言わず毎日毎食美味しいご飯を作ってくれる母親に心の底から申し訳ないと思った。

トオル「、、、おかあさん、ごめんなさい。」

トオルは涙を拭い、母親の顔を見上げた。

トオル「えっ、、、」

確かに母親の顔ではあるが、何か奇妙な違和感を感じた。トオルが引きこもる前の顔から一切変わってないのだ。
人は老いてシワやシミなどが増えたりするものだが、一切その顔は老けていなかった。
そして、よくよく見てみると記憶にある母親に比べると身長が高すぎるし、肩幅も広い。
彼女は母親ではなく、「maclay」を使って母親になっている父親であったのだ。
トオルは怖くなり、自分の部屋に飛び込んだ。
母親はトオルが火事によって顔に火傷をしてしまい、引きこもってしまったのは自分のせいだと
自らを責め、遂には自ら命を絶ってしまっていたのだ。
そして、父親はその事実をトオルには隠そうとし、妻の代わりになろうとしたのだ。
トオルはヘッドホンで爆音で音楽を流し、布団を被ってうずくまった。

森田英暉