MIB社
神経接続サービスを提供か
早大過去ゼミと連携
MIB社は9日、神経接続技術を用いた新サービスを8月に開始すると発表した。
MIB開発部による「TABURE(タブレ)」は、AR(拡張現実)技術、神経接続技術を組み合わせた新技術で、一部の識者による強い反対運動のなか、製品化に踏み切った形になる。神経接続は情報だけでなく情動や既視感を直接伝達できる。通信インフラは、同社傘下のクラウドネットワーク「ええもばいる」を用いる。
MIB社は2011年、早稲田大学草原ゼミを卒業した仲間数名が起業し、意表をつくアイデアで急成長した。近年は米グーグル社買収の噂も流れている。
MIBによれば「TABURE」応用技術開発は、早稲田大学文化構想学部安斎ゼミ(2009年)に依頼した。未来の企業が過去の大学に研究を依頼する時間差産学連携は、全国でも始めて。なぜ過去の大学機関と連携が可能になったかについて、MIB会長は「彼らは来てもいない注文に応えるくらい、わけありません」と語った。
MIB会長はまた「彼らには社会的に有益な技術だけでなく、反社会的な製品企画も含め、思考実験とブリコラ手法によって可能性を抽出してもらった。反社会的なアイデアを募ったのは、われわれ自身が技術に飼いならされないための予防的対抗措置である」とも語り、暗に競合他社をけん制した。
新製品とサービスの詳細は明らかにされていないが、MIB会長は「すべて準備はできている。なにしろ、2009年7月末に仕上がっている」と成功への自信を見せた。
2015年(平成27年)7月9日 木曜日 朝刊一面
夕刊に、タブレについての解説記事が掲載されました。
【解説】タブレのもたらすものとは
MIB社のタブレ(TABURE)は、近年実用化があいついでいるBMI(Brain-machine Interface)の一種。これまでのBMI技術は、遠隔ロボットや装着可能ロボットなどを拡張された身体とする運動系BMIが主流であったのに対し、タブレは情動を対象とする。つまり、喜びや悲しみを脳から読み、脳に送ることができる。MIB社から公開されているタブレの仕様は、現在のところ以下のみ。
・脳の情動系から電子信号を引き出すことができる。
・脳の情動系に電子信号を与えることができる。
・装着離脱が容易である。
MBI社広報の談話によれば、タブレは「ほぼ非侵襲的(ひしんしゅうてき)」で「ヘッドフォンのように着脱ができる」。情動の種類や範囲について明らかにされていないが、「快、不快、安心、怒りといった基本的な感情を高速に読み取り・書き込むことが可能」だという。ただし「記憶、認知、意欲といった領域にも作用が及び、既視感、共感覚、幽体離脱、臨死体験などに作用が及ぶ場合がある」という。
タブレは、ケータイネットワークの標準入出力デバイスとして登録できるため、既存のARディスプレイや感覚アクチュエータと連携、あるいは置き換えが可能になる。
情動に作用するBMIの研究は、これまで「被るドラッグ」として忌避されてきた。一方で、これを熱烈に支持する業界もあり議論を呼んできた。あるメディア論者は「これまで人間が安定的に築いてきた人と記号との関係を、根本から揺るがすことになるだろう。それは、破壊的であると同時に構想的で、哲学の実験になることは間違いない」と語っている。
MIB社会長より MIB社インターンのみなさんへ
マネの「草上の昼食」も、デュシャンの「泉」も、ウォーホールの「キャンベルスープ」も、それが世にあらわされたとき「こんなものアートじゃねぇ」と言われてきました。今からみると、どれもみなカッコいいアート表現に見えますが、もしみなさんがその時代に生きていたら、おそらく「こんなものを認めたら人間はだめになる」と思ったことでしょう。
タブレも現在(2015年)、「これは人間をダメにする」といわれています。私自身ふとそんな気がするくらい、この危惧にはリアリティがあります。一方で私は、タブレが人間の表現の歴史を塗り替えるのではないか、という期待に胸をふくらませてもいます。
もしかするとタブレは、ただのデジタルドラッグとして葬られるのかもしれません。ドラッグが社会で機能するためには、きわめて自制的かつ放逸な文化システムが必要です。いわゆる未開文化の多くは、ドラッグを使いこなす物語を保持しました。現代社会はそれほど優れていないので、タブレを使う神話的な地盤がありません。
お願いした今回の企画は、タブレにとっても、私にとっても、みなさんにとっても、新しい神話を作る力を試される、試練であります。2015年の私は、今回の企画書をすでに読んでいて、それがきわめて優れていることを知っているにもかかわらず、時間の流れの礼儀に従って、みなさんの仕事に大いに期待し、楽しみにしています。
安斎ゼミ議事録 (2009年7月)
●恋愛から考える
自分を相手にほれさせる。相手にドーパミンを出させる。
でも、みんながそれをしたら、同じじゃん。
ドリーム小説は、自分の恋愛を傍観する。
配役に自分の名前を入れて置き換える。なりきった私。
没入と傍観の関係は? どっちが本当? 自分がふたり?
まるで幽体離脱。意識と身体が離れている。
恋愛小説を読ませるような入り口を作る(タブレの販売戦略として)
自分の想いが見えちゃう、信号になっちゃうのは面白い。
自分の妄想を見たい。
恋愛している錯覚を人工的に起こさせることは可能、という研究がある。
ときめき、つり橋効果。
むずかしいなまえの成分(あとで調べる) フェ見るエチルアミン(調べた)
「どきどき」を神経接続で送ると、恋愛が起こる。
誰とでも恋愛する。恋愛をたくさんする。
多婚OK。浮気ってなによ、みたいな。
彼氏と別に2D世界の彼氏と結婚して、自分の名前を変える、というFJ系の話。
需要はある!
社会が受容可能である=アクセプタビリティを考える。
BMIが普通になると、結婚はどうなるか。生物としての。
運命の人という概念は、どうなる。びびびをエンハンスするのか。
人間が残っていく必要はない。(これは新しい)
子はつくらなくていい。
いっぱつブレイクで終わり、もあり。
持続可能性=サステイナビリティを考える。
「人間」概念は発明。「人間2.0」もあり。
人間ってなに? 人間はどう定義する? 宗教まで行くよね。
●タブレアプリのテーマ
・恋愛はどうなる
・広告はどうなる
・芸術は可能?
・教育はどうなる。
・スポーツって可能?
・ビジネスは
・国家、戦争とか
●タブレで広告はどうなる
コントロールの問題。
主体ってなに?
主従とは?
他人の欲望と、自分の欲望の関係を問い直す。(ラカンのように)
神経接続の広告って可能?
商品のよさを疑似体験させる。
「椿」資生堂は、商品の良さを広告しているのか。
芸能人いっぱい並べれば、数うちゃあたる、という戦略。
この芸能人のようになりたい、か。
広告は、だましてるのか、正直なのか。
「だましだまされる」の共犯関係なのか。
よろこんでだまされます。
だまされていたら、ファイアウォールが働くというタブレはどう?
CMカット、邪心をカット?物欲カット?
広告ってそもそも、モノを売るものじゃない。
選ぶときの無意識にちょっと作用。認知度をあげているだけ。
ブランドを認知させる。無意識を作る。
MIBを広告に使ってほしくない。
消費者の自由はあるか? そもそも自由意志とは?
「商品の価値を良心的に宣伝」という基本が一応あって、
そこをいまのところはずしてない。
BMIを使うと、この基本が危うくなる。
●芸術 音楽 小説
神経接続はすでに行われている。BGMつきのニュースなど。
どんなコード進行でも、気持いい和音、として送ることができちゃう。
そんなのあり?
気持よけりゃ同じじゃん。(私は倫理観なし)
倫理=ロッカータブレットにすぎないんじゃない?
持続可能性。サステイナビリティを考えると?
気持良いより上位の層。
気持いいだけじゃない。
たとえば社会批判はBMIじゃ無理。
サブリミナル効果 刷り込み 記憶を作る。
協和音、不協和音、記号列
気持いいを送り続けていたら、気持いいが麻痺しちゃう。
拒否がはじまる。インフレ。
ひたすらに気持良くないものを作る。
結局いまとかわらない。つけても同じじゃん。
脳は慣れるから。
●恋愛テーマをもういちど
恋愛には休眠期間が必要。飽きないように。
BMIが自然になったら、引けない。
自分でコントロールできない。
時限装置を作る。離脱するための。
つけてる派とつけない派が出てくる。
別な情緒系が混在。
人間は、他人の脳とつながると活性化する。
脳の情動の部位を切除したサルは、外から見てあまり変化ない。
しかし、まわりのサルがパニックに陥る。情動は社会的。
作者の気持を伝えることができる。
作者の気持、ってなに?
夢を作れる
他人のつくった夢をもらう、夢マーケット(悪夢つき)
自分の見たい夢を作る。意外性は?
●教育+BMI
活性化、自己啓発、治療 うつからなおる、妄想をしずめる。
明示的洗脳
いじめられている子が、しあわせになる。
外出可能な引き込もり。外部にかかわる。「そとこもり」
王様体験
情緒を繰り返して、記憶を刷り込む。インプリンティング