地球外生命《ぬ》との芸術交流は可能か
人間は、ヒト以外の生物の表現に共感できるのか、またそれはアートなのか。宇宙人に通じる「普遍芸術」という考え方は、なにをもたらすだろうか。いきさつは、2030年の新聞記事に記されている。
「ぬ」の心をとらえよ
地球外生命との芸術交流始まる
政府は22日、箱根山中に飛来し20年になる地球外由来物体「ぬ」に対し、芸術交流の実施を開始すると発表した。
2010年10月に飛来した物体「ぬ」は、国際調査チームによる非接触的内部探索により「地球外の知的生命ないしそれによるアーティフィシャル・インテリジェンス」であると結論づけられている。「ぬ」がハッキングしたとみられるインターネットを介するわずかな入出力の痕跡を除いて、飛来以来大きな変化のないまま20年が過ぎようとしている。
政府の諮問機関である「通称ぬとの接触に関する特別委員会」が一昨年まとめた意見書は、いかなる異文化も最初のコンタクトは芸術であるのが望ましいとの判断を示した。政府対策本部はこの答申を受け、今年度中に芸術交流を開始することを決めた。
それに先だち、全国から選出されたいくつかの大学にプランニングルームを開設し、「ぬ」に関するさまざまな仮説を前提にした作品プランを抽出する。たとえば、人間とは異なる記憶の仕組みや、感情の有無、個体集団構造の違いなどを考慮したうえで、「ぬ」に伝わる絵画や音楽を作る。
「ぬ」研究家を自称するシステムアーティストの安斎利洋氏は「身体、感情、言語を共有しない生命体と、はたして芸術が共有できるか。この問いは人間と表現の本質を逆照射するだろう」と語っている。(2030年10月23日朝刊より)
基礎デ《ぬ》プロジェクトの戦略
《ぬ》の感覚や知性の特徴を仮説として設定する。
仮説と、それに基づく作品のセットを作る。
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