マウの循環に学ぶ

アフリカ大陸マウ川流域に暮らすマウ族の実態はほとんど知られていない。2030年、現地調査に入った武蔵野美術大学オートポイエーシス研究チームにより、マウ人は階層的思考をしない一種の発達障害であることがわかってきた。

人間はだれしも種類の違う発達障害のどれかに属するという「発達障害相対論」の立場をとる同チームは、マウ族の独特の文化がこの非ヒエラルキー障害に由来するという仮説のもとに調査を進めている。

たとえばマウ人は、目的と手段を階層化しないため、何かを作ろうとはせず、作ってからそれが何かを考える。

マウ人にとって制作とは、作り手→作品→使い手 というヒエラルキーをとらず、作り手→作品→作り手→作品→作り手→作品→、と連鎖する触発の循環を形成する。そのためマウのプロダクトはきまぐれに定義を変え、昨日かなづちだったものが、今日は楽器になったりする。

文明国において生産者と消費者は異なる層に属し、たとえばある製品はデザイナー→プロダクト→ユーザーというアロポイエティックな階層をなしている。同研究チームは閉塞的な世界制作状況に活路を見出すため、マウになりきった制作実験を開始し、このたび発表するに至った。

この実験では、設計、プラン、役割、などを決めてから行為に移るという手順はとらず、まず行為がはじまる仕掛けだけ作り、行為が何かを生み出し、それに触発されてあたらに行為が生まれる。この循環がうまく成立することを、同チームは「マウいい」と呼んでいる。

(REMEME新聞 2030年12月6日号より)

という想定でワークショップを行う。