rhizome: 高速道路

白滝と巨人

警察署の周囲に張り巡らされた有刺鉄線が、ことごとく糸こんにゃくと化し、余った針金は「しらたき」として束ねて結んである。遠く崖線に沿って走る高速道路の上を、捕縛を逃れた巨大な白い人がゆっくり歩いていくのが見える。

(2012年10月16日)

機械仕掛けの写真展

高速道路沿いに建つ高い換気塔の内部に入り、吹き抜けの最上階まで登る螺旋階段に展示された、おそらく今まで誰一人鑑賞したことのない写真をひとつひとつ見ている。作品を収集した日焼けした服部桂さんに名刺を差し出そうとするが、財布の中から見つかる紙片はどれも名刺のようで名刺ではない。服部さんはすべて理解しているからその必要はないと言うが、彼の浮かべる表情から、彼が実は理解を模倣した機械であることがわかる。額の中のプリントに焼かれた宙を落ちる人間の像は、コントラストや彩度が画像処理ソフトのように刻々変化する。この写真も機械の一部であることを僕は見抜いている。

(2010年11月28日)

銀河の見える屑鉄屋

首都高を走っていると、トラックの荷台から「これに乗り換えろ」と木の台車を差し出す男がいる。言われるまま乗り換えて、片足で蹴りながら首都高の陸橋を走る。これはたぶん道路交通法違反だと気付くと、前方に警官も見えてきたので、陸橋の途中からなめらかに斜めに分岐する道を降り、ここまでやって来た。

日本中のレアメタルを集めている屑鉄屋の暗い倉庫の中で、そこの息子の家庭教師をしている。小太りの子供といっしょに屑鉄の隙間から夜空を覗くと、雲間からまるで鱗雲のような銀河が見える。

(2010年9月26日その1)