rhizome: 屑鉄

屑鉄回収AR

成城学園の大戸屋を探して、森の中で二人の女子大生に尋ねるが、彼女たちの言う通り歩いてもたどりつけない。駅前の路地に見つけた廃屋を画角いっぱい撮影しようと後ずさりすると、屑鉄回収業者の敷地に入ってしまう。地面に敷いた鉄板が油で滑る。業者のおじさんに写真を撮ってもよいかたずねると「いくらでも撮りな、写らないから」と言う。カメラの液晶を覗くと、確かにおじさんの姿がない。「そのかわり」と言っておじさんが指を鳴らすと、ファインダーの中のあちこちに化け物が現われるが、被写体のほうに実体はなにもない。

(2015年10月15日)

ガラス回路

屑鉄広場が続く地区の片隅に古民家があり、増井さんが古いカンナや板金を切る道具などを集め、古い技術のカタログをつくろうとしている。Archaicさんが、ガラス管で作った流体素子の帽子を差し出し、被れと言う。これは何かと尋ねると、「何か」を補完する回路だと言う。僕は二階に取り付けたロボットアームで一階の半田ごてを操ろうとするが、どうしても精度が出ず、熱収縮チューブの入った缶をまるごと焦がしてしまう。

(2015年2月22日)

銀河の見える屑鉄屋

首都高を走っていると、トラックの荷台から「これに乗り換えろ」と木の台車を差し出す男がいる。言われるまま乗り換えて、片足で蹴りながら首都高の陸橋を走る。これはたぶん道路交通法違反だと気付くと、前方に警官も見えてきたので、陸橋の途中からなめらかに斜めに分岐する道を降り、ここまでやって来た。

日本中のレアメタルを集めている屑鉄屋の暗い倉庫の中で、そこの息子の家庭教師をしている。小太りの子供といっしょに屑鉄の隙間から夜空を覗くと、雲間からまるで鱗雲のような銀河が見える。

(2010年9月26日その1)