rhizome: 名刺

ポーンたちの現場

新井田さんが外国人に何かを訊ねられ、わからないので僕に「Where is pawn?」と訊く。いや、そこは日本語でいいんじゃないか。するとpawnと呼ばれている制服の男たちがやってくる。彼らはフジテレビの人だとばかり思っていた。名刺入れを覗くと、中には草の葉の屑など名刺の試作ばかりで、ともかく何かを手渡すとpawnは嬉しそうにしている。
体育館にPCやらディスプレイを並べ、イベントのさなかにコーディングしなくてはならない。PCと自分が離れているので長いマウスケーブルを使う。CRTディスプレイは舞台の近くにある。それぞれがあまりにばらばらで心もとないというと「サーバー上で開発する時代ですから」とpawnが生意気な口をきく。
体育館のバックヤードは、グニャグニャ波打つ木の床に青い仕切り壁でできている。倉庫やトイレの入り口に、大きな番号が振ってある。撮影隊が女子レポーターを撮っている。使いづらいがときどきこのグニャグニャは利用できるとカメラマンがいう。

(2016年9月29日)

機械仕掛けの写真展

高速道路沿いに建つ高い換気塔の内部に入り、吹き抜けの最上階まで登る螺旋階段に展示された、おそらく今まで誰一人鑑賞したことのない写真をひとつひとつ見ている。作品を収集した日焼けした服部桂さんに名刺を差し出そうとするが、財布の中から見つかる紙片はどれも名刺のようで名刺ではない。服部さんはすべて理解しているからその必要はないと言うが、彼の浮かべる表情から、彼が実は理解を模倣した機械であることがわかる。額の中のプリントに焼かれた宙を落ちる人間の像は、コントラストや彩度が画像処理ソフトのように刻々変化する。この写真も機械の一部であることを僕は見抜いている。

(2010年11月28日)