rhizome: トラックの荷台

デジャヴ・アパルトマン

ダミーの書物を売るために、友人と街角に立っている。本が目的ではなく、本に挟んだコピーを拡散するのが目的だ。しかしいっこうに売れない。若妻と友人と3人で、新しい住まいへ向かおうとする。方向もわからずにいると、軽トラックでやってきた赤ら顔の不動産屋のおやじが、僕が荷台に隠れて乗るなら現地まで乗せてやるという。谷に面する木造アパートは、構造も窓からの眺めもよく知っている。死んだ友人がかつて住んでいたからだ。ひとつ奥の不思議な間取りのメゾネットに、友人と訪れたこともある。若妻は家賃の書かれた壁のプレートを探している。僕は、友人の記憶が本当の記憶か、かつて見た夢の記憶なのか、夢にさえ根拠のないデジャヴなのか、それがだんだんわからなくなる。

(2018年6月19日)

銀河の見える屑鉄屋

首都高を走っていると、トラックの荷台から「これに乗り換えろ」と木の台車を差し出す男がいる。言われるまま乗り換えて、片足で蹴りながら首都高の陸橋を走る。これはたぶん道路交通法違反だと気付くと、前方に警官も見えてきたので、陸橋の途中からなめらかに斜めに分岐する道を降り、ここまでやって来た。

日本中のレアメタルを集めている屑鉄屋の暗い倉庫の中で、そこの息子の家庭教師をしている。小太りの子供といっしょに屑鉄の隙間から夜空を覗くと、雲間からまるで鱗雲のような銀河が見える。

(2010年9月26日その1)

ストリートチュードレン祭り

竹内郁雄氏一行を乗せたトラックの荷台に乗りそこねてしまったため、僕はひとり遅れてレストランにたどり着くと、彼らはすでにテーブルに直接拡げた食い物を手で掬い上げては頬張りはじめていた。ここは皿とテーブルが、まだ分節化していない。
外は海外のストリートチュードレンを日本に紹介する祭りの最中で、切り立った斜面に挟まれた道は、招待されたにしてはあまりに多すぎる家のない子供たちであふれている。足をぶらぶらさせながら土手に腰掛けている少年たちが、笑いながら手を振っている。

(2008年3月19日)