rhizome: バベルの塔

バベルカフェ

ブリューゲルのバベルの塔は中が吹き抜けになっていて、それぞれの区画から内側にせり出したデッキは、オープンカフェなどになっている。デッキからデッキへと螺旋を下って地上階まで来ると、父がいないことに気付く。川の中州を探しまわっても見当たらない。塔の地下にある大浴場で溺れている可能性もある。しかし水中の死体を見るのが恐ろしくて、足がそちらに向かない。

(2014年8月3日)

ネジ山の北朝鮮

険しい崖から削り出された山道を、佐々木俊尚さんと歩いている。神田川沿いを歩きはじめたのに、真下の断崖は深くえぐれてそこはもう北朝鮮だ。ブリューゲルのバベルの塔の構造を模しているので、こういう立体空間では平面上の国境は意味ないね、などと話しながら歩いている。しかも、ねじ山をひとつ間違えると簡単に北朝鮮に紛れ込み、いつのまにか夏の学生服を着て国家に服従する自分に幸福を感じる。問題は国家でも思想でもなく自分自身とねじの関係なんだ、と潜めたはずの声が、意外なほど長く洞窟に響いて消えない。

(2004年8月15日)