旅先の富山で、流れる雲の隙間から陽がこぼれる奇跡的な気象条件に誘われ、バスの仲間から離れて町をさまようと、剥げてめくれた塗装が躍る質屋や、バレーコートにだけ陽のあたる校庭の人影など、数えきれないほど不思議な写真を撮る夢を見ている。
富山カンブリアン撮影
(2017年5月15日)
旅先の富山で、流れる雲の隙間から陽がこぼれる奇跡的な気象条件に誘われ、バスの仲間から離れて町をさまようと、剥げてめくれた塗装が躍る質屋や、バレーコートにだけ陽のあたる校庭の人影など、数えきれないほど不思議な写真を撮る夢を見ている。
大スクリーンのあるレストランで中村さん郁恵さんと食事をしていると、不意にスクリーンが観音開きになり、吸いこまれようとする郁恵さんの両足首を手で握れば、郁恵さんは浮いたままタイムトンネルの中を泳ぐそぶりで、ほぼマンガの光景になる。突如、音をたてて建物全体が移動しはじめ、バスの車窓と化したスクリーンはトンネルを抜け、建設工事中のマンションの敷地内にたどり着く。レストラン自体が売り出しマンションの販促ステルス宣伝であったとは気づかなかった。他の客たちが扉をくぐってモデルルームに向かうなか、われわれ3人はむき出しのコンクリートや鉄筋や配管など、そこいら中に潜むカンブリアンゲームのネタを撮影しはじめる。
駅西口の坂を登りつめた行き止まりの正面に、教室ほどの大きな厨房がある。持ち帰り用の窓から真理子さんと店の中を覗くと、料理人が黒い膜のようなパンを中華鍋の裏面に貼り付け、次々と焼いている。火が通るとパンごとに違う模様が現われ、膜の表面に違う場所の風景が広がる。風景のすべてのバリエーションを収めようと思いカメラを構えるが、数枚焼き終わったところでパン種が切れてしまう。しかたなく店内の調理器具にカメラを向けると、みなカンブリアンの樹につながる奇妙な形をしている。
鮮やかな蜜柑色の皮膚をもつ子供を膝に乗せて、彼に絵本を読ませようとしている。彼は親戚たちの会話に退屈しきっていたので、部屋を埋め尽くす僕の本棚に目を見開いている。しかしそこにあるのは、インターネットにある表紙ばかりの本で、取り出しても中身がない。せめて彼の人生のために、ある本の表紙から次に読むべき数冊の表紙を次々と配置していき、ついにいま僕が読んでいる本にまで至る経路の樹形地図を作った。