rhizome: 親戚

必読書の樹

鮮やかな蜜柑色の皮膚をもつ子供を膝に乗せて、彼に絵本を読ませようとしている。彼は親戚たちの会話に退屈しきっていたので、部屋を埋め尽くす僕の本棚に目を見開いている。しかしそこにあるのは、インターネットにある表紙ばかりの本で、取り出しても中身がない。せめて彼の人生のために、ある本の表紙から次に読むべき数冊の表紙を次々と配置していき、ついにいま僕が読んでいる本にまで至る経路の樹形地図を作った。

(2013年3月16日)

口から蘇生

死んだばかりの僕の父が、僕の息子の口から蘇生するかもしれない。息子と秋葉原に行き、ジャンクのプリント基板と電流計を手に入れ、帰宅する。すると彼は突然、口から何かを吐き出す。その嘔吐のようなものを母といっしょに指で選り分けてみるが、そこに父は見当たらない。親戚のMが、蓑をまとって雨の中を走る男の話をしている。それが誰のことだかわからない。僕も母も、その話を上の空で聞きながら、もう父とは会えないのだという実感が込み上げてきて泣いた。

(1996年8月13日)

学校の鍵

みいちゃんは彼女の母親が死にそうなので病院に行き、帰ってきたところだ。死にそうなのに親戚がたくさん沸いてきて、母親の耳元でうるさいのだと言う。
僕は今日から新学期で、誰に会えるか楽しみにしている。どの服を着て学校に行こうか迷ったり、学校の鍵を探したり、そうこうしているうちにどんどん時間がたって始業時間をすぎてしまう。青いベストを探しているのだが、どうしても見つからない。母親が、それを裏返して物干しに干していて、これじゃ見つからないわけだ、と僕は怒っている。

(1996年2月24日その1)