会社のスタッフたちと鎌倉へ行った。あるお屋敷から招待されているのだ。 どうも方向が分からず、国道のような広い通りを迷いながら三々五々尋ね歩 く。お屋敷は地下街の中にあった。ぼく一人だけがたどり着けたらしい。座 敷に通され、奥様らしい老婦人が食事を出してくれた。どんぶりものとお吸 物だ。お吸物は陶器の浅いお皿の上に、目の細かい籐で編んだ器が継ぎ足し てある。それになみなみと入っているため、取り上げると籐の部分からこぼ れた汁がテーブルを濡らしている。
辞去して外へ出る。地下からいきなり地上へ出たので、方向が分からない 。適当に歩き始めると、「とろ」という名前の鎌倉では有名な観光名所に出 た。そこは地下街からさらに穴を下降していく胎内めぐりのような場所らし い。そこには寄らず、また地上に出ようとすると、さっきと同じ場所に出て しまった。きょろきょろする。あっちの出口の向こうには、海岸線が広がっ ているのが見える。ぼくは家へ帰ろうとしているのだから、そっちへ行って はいけないと思う。反対側の出口から地上に上がると、巨大な観音像のよう なものが立っていて、そこで結婚式が行われている。人でいっぱいだが、み んなおばさんばかりなのはどうしてだろう? 帰途につくおばさんたちの後 についていくと、一人のおばさんが煉瓦塀の狭い出口のところで、四つん這 いになって靴の紐を締めている。いつまでもそうしているので、じゃまにな って通れない。皆に注意されてやっと起きあがったおばさんの間をすり抜け 、ぼくは急いで駅へ向かおうとする。しかし、早く家に帰りたいのに、まっ たく方向が分からず、途方にくれる。