rhizome: ゆったりした椅子

国道の机

竹箒のトゲが指にささってしまったので、ゆったり椅子に座って、机の上に置いてあるピンセットで抜いていると、自分の机だけすっかり国道の中央分離帯の一端に取り残されていることに気づく。車中の男が警官に「あそこは私有地じゃないよね。取り締まらないのか」と執拗に食い下がるのが見える。いやなやつだ。警官はとりあわないが、きっとあの男は、あとでこの机の上の文具を一式、盗みに来るつもりだろう。
机から離れて歩道に出ると、自分の机の背後に深い穴があり、地下鉄工事がすぐそこまで進行してきている。そろそろ潮時なのだろう。あの場所をどうにかしないと。

(2000年10月31日)

突然のプール

昼休みのサラリーマンは、光が溢れる地下のフロアで、ゆったりと椅子に体をしずめ午睡を楽しんでいる。ふと気づくと水が溢れ出し、フロア全体が水を貯え、昼休みのサラリーマンたちは仰向けのまま浮き始めた。その一瞬のとまどいがおさまると、今度はお互いの顔を見合いながら一様に照れ笑いを浮かべ、背面泳ぎで体を浮かべ、平静を装うゆとりの速度でゆるりゆるりと岸まで泳ぎ着いた。

(2000年9月26日その1)