rhizome: 軽々ジャンプ

軽気球実験

一人乗り気球を使って、子供たちを遠足に連れて行く準備をしている。頭上にある直径1mほどの気球は、ぎりぎり地面から足が離れない浮力に調整されていて、軽く地面を蹴るだけで数メートルジャンプできる。海辺の宿から山の麓を経て山岳地帯まで、軽々と登ることができる。高い崖から飛び降りても、ふわりと着地する。
実験段階のこの乗り物を、いきなり子供たちに試すことになる。彼らは、気球を調整する手綱を手に結ぶことができるだろうか。綱を太ももにかける輪は、ステンレスワイヤをかしめて作ったほうが安全ではないか。崖に到着する前に日が暮れないように、時間を前倒しにしたほうがよくないか。
などなど、いくつも課題を書きだしている僕を見かねて、見学にきた母と妹は計画を練り直したほうがいいと言う。では車で宿まで送ってくれと妹に頼むと、その「軽気球」で帰ればいいじゃないかと言う。なるほどと思い、ふわふわ街の中を移動しはじめると、この乗り物にブレーキがないことに気づく。

(2013年11月2日その2)

火力船

不思議な動力で動く船を、図書館で手に入れた。甲板上に設置された生簀には海水がなみなみと蓄えられ、その水面に浮いた四角い木枠が、火のついた石油を囲い込んでいる。この火が、船を動かしているのだろう。
操舵に不慣れなうえ、ついぼうっと湖水を眺めてしまうので、船はあらぬ方角を目指してしまう。あわてて舵をとり、なんとか軌道修正するが、たくさんの釣り人の垂らす糸の中にあやうく突っ込みそうになる。大きく舵をきると、今度は砂浜に乗り上げてしまう。
横倒しになった船を見捨て、パルテノン多摩に続く傾斜を登っていく。重力の少ないこの地域では、軽いジャンプで数メートルの段差を登り降りできる。なんだ、船よりも格段に便利じゃないか。

(2004年5月13日)