rhizome: 煙草

娘喪失

科学館の受付で入場券を買い、再入場に関する複雑な規則について聞かされているうちに、連れてきた自分の娘らしき少女を見失ってしまった。ケータイから「なな」という名前を選択して電話をかけると、いつの間にか手渡された彼女のバッグの中で着信音が聞こえる。これで合流する術はすべて断たれた。乱雑なバッグの中には、ノートやケータイに紛れて煙草の箱なども見える。見失った娘への思いが募りつつ、自分に娘がいたという確信さえ見失いかける。草原真知子さんに娘の行方を尋ねるが、海に消えた父親を目で追い続ける娘を描いたアニメーション作品について解説している最中で、その冷静な語り口とはうらはらに、彼女の目から一筋涙が流れ落ちる。

(2013年1月24日)

演じられた母親

猥雑な古本屋に布団を敷いて、赤い下着で女と寝ているところを母親に起こされた。気まずい空気のまま和装の母はどんどん老舗の料理屋にわれわれを導き、乱雑な卓のひとつに座らせると、そのまま自分は姿を消してしまった。客が入るたびに卓は隅に追いやられ、料理も来ないままほとんど座る空間もなくなってしまうので、これはどこがおかしいと席をたつ。料亭からの帰路、割烹着のまま歩き煙草を始める母を見て、この母を演じている女は女優としてどこか間違っていると思う。

(2012年12月25日)