演じられた母親

猥雑な古本屋に布団を敷いて、赤い下着で女と寝ているところを母親に起こされた。気まずい空気のまま和装の母はどんどん老舗の料理屋にわれわれを導き、乱雑な卓のひとつに座らせると、そのまま自分は姿を消してしまった。客が入るたびに卓は隅に追いやられ、料理も来ないままほとんど座る空間もなくなってしまうので、これはどこがおかしいと席をたつ。料亭からの帰路、割烹着のまま歩き煙草を始める母を見て、この母を演じている女は女優としてどこか間違っていると思う。

(2012年12月25日)