rhizome: 分かれ道

五叉路

旅の帰路、集団からはぐれてしまい、幾本も放射する道の中心に立っている。ひとつの道には緑生す谷がある。ひとつの道は深い堀に沿って階段で降り階段で上がるが、どちらの階段も踏み込んだとたん段が動き始める。ひとつの道は白い綿のクッションを積み上げた山で、頂上を踏むと山が崩れ、バザーに出す女ものの下着が山裾に散乱する。ひとつの道にはNHKの7時のラジオニューススタジオがあり、アナウンサーのまわりを怒号が飛び交っているが、怒号だけマイクが拾わない回路が働いている。

(2016年8月3日)

外食街道

パサージュのガラス屋根直下でごろごろしている家族を招集し、外食に出かける。広い街道が分岐するあたりで、いくつかの中央分離帯にわかれて食事を始めると、幅広の冷凍車が停車し、向こうの卓のおかずに手がのばせない。そこで停まられてはとても迷惑だ。

(2013年9月10日その1)

銀河の見える屑鉄屋

首都高を走っていると、トラックの荷台から「これに乗り換えろ」と木の台車を差し出す男がいる。言われるまま乗り換えて、片足で蹴りながら首都高の陸橋を走る。これはたぶん道路交通法違反だと気付くと、前方に警官も見えてきたので、陸橋の途中からなめらかに斜めに分岐する道を降り、ここまでやって来た。

日本中のレアメタルを集めている屑鉄屋の暗い倉庫の中で、そこの息子の家庭教師をしている。小太りの子供といっしょに屑鉄の隙間から夜空を覗くと、雲間からまるで鱗雲のような銀河が見える。

(2010年9月26日その1)