rhizome: 下半身裸

潜在性器

下半身裸で動く歩道に乗っている。先に行くSamに続いて、自分も検査が始まる。腰の位置を動かして小さい鏡の枠の中央に性器の像が収まるように調整してください、と言われる。次は女性器の検査だと言われ、とまどいながら背後側を向けると、鏡の中に見たことのない自分の女性器が見える。腰を動かすと位置を合わせこめるので、これは確かに自分のものだ。

(2017年3月31日)

ずるいジョージ・クルーニー

大人たちが帰ってきたので、あわてて裸の下半身を炬燵の中に隠した。少女の柔らかい感触が足にからみつきながら炬燵の中でなんとかタイツを履くことができた。帰ろうとする少女を大人たちが引きとめている。こうやって長い時間置いておけば、動物とおなじで番(つがい)になるから、と大人たちが影でささやいているのが聞こえる。
階段を上って二階の自分の部屋へ上がると、初めてみる3階への階段がある。登ってみると薄い板がきしむ。安い木を使うとこういうことになる。カウンター席も同じ素材でニス仕上げも安っぽい。なんで大人は一割の差をケチるのか。
3階の奥から階段を降りると、ジョージ・クルーニーが製図器具を売っている。烏口のコンパスは3万円のところ千円に割引くという。仕上げの美しさに心が動くが、この先これに墨を入れて使うことはまずない。別の棚にある十字の溝を彫ったドライバーを見ていると、その間にジョージは製図器具一式を包んで合計7万円の請求書を書いている。冗談じゃないどいつもこいつもずるすぎると言ってその場を去る。
地下のスタジオは天井が背丈ほどしかない。地下を伝って別の建物に抜けることができるのを知っているので、警備員に不審がられないように平静を装い、つきあたりまでくると、たくさん子供たちが群らがり、ひとりの赤ん坊に卵ごはんを食べさせている。箸の先端は危ないので、反対側を使い上手に口に入れると、赤子はミンチマシンの入口のように滑らかに吸い込んでいく。

(2015年12月5日)

無言タイプの妹

検査のため病院のベッドに横たわっていると、下半身の衣服をまとめて引きずり下ろされる。先端に太いネジのついたゴムサックを性器に被せ「このまま少しつけていると、沁みだした液体を解読して全部の検査が終わるから」と看護婦さんが言う。
しばらく病院のあちこちを歩きながら、ゴムの先端ネジをカメラの底にねじ込むとぴったり嵌る。思った通り、雲台と同じネジ規格だ。看護婦さんがサックを外しに来る。もったりと他人のような性器が現われ、濡れた薬の匂いを放っている。
一人乗りの小さい車で水路沿いのバラック小屋に帰ると、玄関の前で声をあげて争うふたりの子供がいる。仲裁のために近づくと、子供の姿はなく、水の入った二つのペットボトルの間に赤い蟻が行列を作っている。玄関から覗くと、妹が帰ってきている。お医者さんから検査結果を聞くのを忘れてうっかり帰ってきちゃったよ、とおどけてみせるが、妹は終始無言だ。何か怒っているわけではない。これは声が欠落した種類の妹なのだ。

(2015年7月1日)