rhizome: テレビ電話

ケータイ旅行

FOMAのテレビ電話でパリの徳井naoさんと話していたら、ボタン操作を間違えて、パリへ自分を転送してしまった。突然入り込んでしまったアパートの部屋で、彼は女性と別れ話の最中で、こういうプライベートな空気にずかずか割り込んでしまうのはケータイの悪いところだなどと間抜けな弁解をしているのが情けない。途方に暮れて歩くパリの町並みは、ところどころ「常盤台行」などといった漢字もあり、なにしろケータイで来たために完全に来きっていないのだなと思う。しかし、パスポートなしでどうやって飛行機に乗って日本に帰ればいいのやら、暗澹たる気分のなか、ひらめくように、そうだFOMAで帰ればよいのだと気づく。電話帳の「中村理恵子」に電話すると、画面がカラーになったり白黒になったりしながらなんとかつながり、こんな状態で転送すると死んでしまうのではないかという不安をいだきつつボタンを押すと、中村理恵子と梅村高志さんが無数に穴のあいた植木鉢を逆さまにして香炉を作る相談をしている庭にたどりついた。

(2004年12月2日)

うねり坂

激しい急勾配を含んだ波型の坂道が遠方に見える。造山運動の名残なのか、地面が小腸の断面図になっていて、部分的に上下が逆転している。このあたりに詳しくない僕は、目前に現れるランドマークをPHSのテレビ電話ごしのRに問い合わせ、それぞれの名称を答えてもらいながら自転車を走らせているのだが、しかしRは「そんな変な坂、知らない」と言う。

(2000年9月25日その1)

飛行機事故

着陸したばかりの飛行機の中。どうやら飛行機事故に会ってしまったので、外に脱出しなくてはならない。この緊急事態に、なぜこんな呑気な雰囲気なのか不思議でならない。僕は女の手を引いてすんなりと外に脱出する。僕はその女に気があるのだ。
いきなり背後で爆発音がする。女は、僕が命の恩人だと言って感謝している。こんなことでありがたがられるならいつでもどうぞ。
原っぱのバラックの二階にある自分の部屋。僕は女と炬燵に入っている。炬燵の上のパソコンに突然テレビ電話が接続する。航空会社の担当が、ご無事でなによりでした、というようなことを言っている。こっちは今それどころではない、うるさい連中だ。
しかし、いったいいつテレビ電話のプラグインを入れたのだろう。こんななめらかな動画を再生できるはずないのに。これはActiveXだろうか。

(1997年1月2日)