rhizome: ガソリン

バイク炎上

アルミ製キューブをボルトで組み合わせたバイクが、自動車とガスを交換している。それは非常に危険な行為だからやめたほうがいい、と実家の二階の窓から乗り出して忠告するのだが、案の定バイクは玄関までふらふらと移動し炎上しはじめる。この番号を押すのは生まれて初めてだと思いながら119番に電話をかけるのだが、電話回線が燃えてしまったのか、音がしない。到着した警察官は、これは日常的な出来事だからと笑顔で帰ってしまう。巨大なクレーンをあやつる業者がバイクの撤去費用を請求してくるので、彼の頬を軽くたたいて「それはまるでこうやって殴られたうえに殴られ代をとられるようなものじゃないか」と言うのだか、この男には複雑すぎる比喩だったかと後悔する。母親はそんなごたごたのなか、黙々と一階の障子を張り替えている。

(2012年8月9日)

絣の車

青い外車に乗って年長の男がやってくるのをガソリンスタンドで待っている。どのガソリンにするのか、と店員に尋ねられ、僕は運転をしないのでよくわからないが、牛肉がレギュラーだとするとマトンのようなガソリンだと思う、と答える。
絣(かすり)の生地で車体が覆われた車に乗って、男がやってくる。彼の目当てが僕の従姉だということは、うすうす気づいている。しかし玄関を開けると、立っているのは見知らぬ女性で、初めて会うにしてはあまりに顔が近い。

(2008年4月15日)