rhizome: 消防署

未来火災予知

自分の家が火事になる未来が予知できたので、荷物をあらかじめまとめて外に出し終わったところだ。隣の駄菓子屋はヒノキの匂いのする木造で、かすがいのない構造のため、軽く押しただけで平行四辺形にひしゃげてしまう。これはあらかじめ畳んでしまったほうがいいかもしれない。119番に通報するが、未来の火事については受け付けないと言われ、憤慨するうちに遠方の自宅から火の手があがり、それみたことかと電話を切る。

(2018年5月12日)

バイク炎上

アルミ製キューブをボルトで組み合わせたバイクが、自動車とガスを交換している。それは非常に危険な行為だからやめたほうがいい、と実家の二階の窓から乗り出して忠告するのだが、案の定バイクは玄関までふらふらと移動し炎上しはじめる。この番号を押すのは生まれて初めてだと思いながら119番に電話をかけるのだが、電話回線が燃えてしまったのか、音がしない。到着した警察官は、これは日常的な出来事だからと笑顔で帰ってしまう。巨大なクレーンをあやつる業者がバイクの撤去費用を請求してくるので、彼の頬を軽くたたいて「それはまるでこうやって殴られたうえに殴られ代をとられるようなものじゃないか」と言うのだか、この男には複雑すぎる比喩だったかと後悔する。母親はそんなごたごたのなか、黙々と一階の障子を張り替えている。

(2012年8月9日)