1996/09/25  Yoshiko Sekiguchi マサイ族の夢



(夢) 私は洞窟の前にたっている。洞窟は入り口が沼になっていて、泥の壁に囲 まれている。中にはマサイ族が住んでいて、私はそのマサイ族に逢いにい くのだ。
けれども、マサイ族というのはとても気むずかしい部族で、ちょっとでも 彼らの気に入らない言動があると、不思議な力によって カミナリを呼び、 もしかしたら私は黒こげになってしまうかもしれないのである。 たとえば、すぐそこの潅木地帯のあちこちには、マサイ族の怒りに触れて 黒こげになったサルやゾウが、カミナリに 打たれたときそのままの姿で直 立しているのである。私は潅木地帯をいま歩いてきたばかりなので、その 黒こげ姿の記憶もなまなましく残っている。 とくに恐ろしかったのは、まだ湯気が立っているオランウータンの上半身 だった。あのオランウータンは何をしたのだろうか。そしてまた、いった いマサイ族の気に入らない言動とはどんなことなのだろうか。 それにしても、どうして社員旅行でマサイ族に逢 いに行かなければならな いのだろうか。私より前に洞窟に入っていった同僚達は、どうしているだ ろう。そして私もそろそろ洞窟に入らなければならないのだろうか。 と思ったとき、ちょうど私は書きかけの報告書がデスクの上におきっぱな しだったのを思い出した。
それから私は、デスクでうんうんいいながら報告書の残りを仕上げた。(〜夢)

マサイ族、という部族が実在することは確かなのですが、特に何かで彼ら の写真を見たとか、テレビ番組でレポートされていた、とかいう記憶があ るわけではありません。しかし、この夢の中で洞窟の中にいるのは間違い なくマサイ族だったのです。マサイ族、という言葉と、オランウータンが 黒こげで直立している姿、社員旅行の雰囲気、仕上がらない仕事のプレッ シャー、どれをとっても大変に生々しい印象が残っています。


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