1996/7/7 落下する本 安斎利洋
高いビルディング。わずかなスロープがある。その地上階からガラス越しに外を眺めていると、ばらばらと音をたてて無数の本の箱のようなものが落ちてくる。
ビルの高層階の壁面にびっしりと敷き詰められた本の箱のようなものが、朝方、ある時刻になるといっせいに落ちる仕組だ。こんな早朝にこんなイベントをやって、誰が見るんだろう、と怪訝に思いながら、ガラス窓の外にうずたかく堆積した本の山の近くまで行こうとビルの外に出るが、なぜかその場所に行き着けない。
堆積した本は、かならず誰かが夜までに回収しているに違いないというのに。
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