ヲノサトル／Satoru WONO

作曲家、ミュージシャン、ＤＪ。これまでにソロＣＤ『甘い科学』『ビキニムーン』『SAUVAGE』を発表。『キリン一番絞り』などのＣＭ音楽にも携わり、音楽プロデユーサーとしては、明和電機、小川範子、千葉麗子など多くのアーティストを手がける。

現代音楽の作曲家としても、第11回神奈川芸術祭合唱曲作曲コンクール入賞、'88年度日本現代音楽協会作曲新人賞、第2回奏楽堂日本歌曲作曲コンクール入選ほか受賞・委嘱作品多数。

■今回のイベントについて
絵もＣＧも経験なしの全くの素人が、文明の利器を手に入れた事で「進化」をとげる…そんな、映画「2001年宇宙の旅」における猿とモノリスの出会いのような天啓への期待は、見事に裏切られた。やっぱり自分のセンス以上の事はできないし、その「センス」は構成力や色彩感覚などいわゆる美術的素養に比例すると、隣で作業していたプロ美術家の方たちを眺めていて、今回つくづく実感した。

それよりも、今回このツールをさわり始めたら面白くて面白くて、延々手を動かしながら「この感じ、既にどこかで味わっていないか…？」とぼんやり考えていて、はたと気づいた。ポップ・ミュージックの世界では、たとえば作曲や音楽理論の知識も何もない若者がサンプリング・マシンで他人の創った「音」を切り貼りして斬新で魅力的な作品を作ってしまう、そんな現象が普通に起こっている。音楽理論を知ってしまっている僕にはもうない「あれっ！触ってたら作品ができちゃったよ？」という幼児のような驚きと喜び。マウスから手を離せなくなってしまったのは、この快感ゆえか。

この「絵ことば」ソフトにはもちろん、コミュニケーション・ツールとして、あるいは作家個々のデータ・アーカイヴとしてなど、様々な利用価値があるだろう。しかし僕は、とにかくこいつを世に放ってみなよ、と言いたい。いつの時代もストリートにウロチョロしている、センスもなく美術理論も知らない若い連中。彼らの手にこれが渡った時にいったい何が始まるのか。こいつはちょっと見ものだぜ。

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