キムさんが腕時計を巨鳥の腹にあてると、そのたびに鳥の性別が雄になったり雌になったりするので、キムさんが鳥の足につかまって飛び立つ瞬間、鳥が雌だったか雄だったかわからない。たまたま意地の悪い雌だったらどうしようと言うと、キムさんは鳥の仕事をしたことがあるので鳥の弱みを知っているから大丈夫ですよ、と、みづ樹さんは楽観している。
(2018年2月10日)
キムさんが腕時計を巨鳥の腹にあてると、そのたびに鳥の性別が雄になったり雌になったりするので、キムさんが鳥の足につかまって飛び立つ瞬間、鳥が雌だったか雄だったかわからない。たまたま意地の悪い雌だったらどうしようと言うと、キムさんは鳥の仕事をしたことがあるので鳥の弱みを知っているから大丈夫ですよ、と、みづ樹さんは楽観している。
Sの家にいる。Sが飼っている極彩色のツバメがなついて、僕の人差し指と中指の甲に両足をしっかりからませている。灯りを点けるのを忘れたまま、いつのまにか暗くなってしまった部屋に、Sの妹が帰ってくる。ツバメは自分の足を再生し、古い足を僕の指に残したまま飛び立った。抜け殻のように残った両足を削って飲むと体にいい、とSが言う。二階から老婆が降りてくる。
目の高さまで書類が堆積している見通しの悪い部屋で、カラスを捕えようとしている。書類を丸めてはカラスの上に投げるので、カラスはなかなか飛び立てない。いよいよ部屋の隅まで追い詰めると、うかつにもわずかに開いた扉の隙間から、次の部屋に逃げ込んでしまう。そこは一変して整然と机の並んだ病院の薬局で、カラスはもう一羽と合流して二羽になっている。
一羽は、白い羽にさまざまなブルー系の色が浮かび上がっている。もう一羽はオレンジ系の色に彩られている。カラスに異変が起きたのではなく、追いかけてきた僕の目の異変であるのに間違いないのは、彼らの映像それぞれにひらがな三文字の名前がオーバレイされていることでわかる。立て続けにその名を呼ぶと、僕は左手に一羽、右手に一羽、それぞれの足を握り、吹き抜けの広い空間を自在に飛び回ることができた。