rhizome: 透明アクリル

ハブ鳴き

中2階のフロアいっぱいに、透明アクリルパイプで構成された広大な回路がある。どこかから母の声がするので探し当てると、パイプの中で止まっているただのローラースケート靴だ。いまイオンで買い物をしている、携帯電話をかけているわけじゃない、など靴と会話できる。技術者の浦野くんが、遠い声が共振してしまう「ハブ鳴き」現象だという。
エレベーターのボタンをタイミングを合わせてうまく押すと、地下中2階に止まることができる。ドアの向こうに海岸が広がっている。砂浜に斜めに立つ柱は、円錐状に広がる何本もの紐で支えられている。やわらかいほろほろ鳥が、先端に突進しては紐の間を無理やりすり抜ける遊びに興じている。

(2018年7月13日)

アクリル水着

大きなレジャーセンターの大食堂で、白い丸テーブルを囲む白い椅子に座っている。貸し出し用の水着は、透明アクリルの立体造型で、中に布製の水着を挟み込んでいる。他人が使っていてもこれなら気持ち悪くないね。傍らのSamとそう話してはいるものの、硬いアクリルが股にへばりついて気色悪い。Samは、ごわごわする胸のアクリルを外して、赤くなってしまった皮膚を見せてくれるのだが、ここで乳首を出したらみんな見るじゃないかと、僕はひとりで焦っている。

(2003年2月19日)