部屋ほどの広さのある暗い廊下に、割烹着を着たおたふく顔の老婆があらわれる。薄く開いた戸から光が差し、顔だけ露出オーバーで白く抜けている。僕はぞっとして、老婆から逃れるために「あきらさんはいますか」とでたらめの名前を言った。人違いを装ったはずなのに、白い老婆は「あきら、あきら」と奥の部屋の実在のあきらを呼びはじめる。
ここまでが「あまちゃんの実家は忍者だった」にはじまる縦書き一段組の最後で、縦書き四段組みの後半は、ここから四つの物語に分岐する。
(2013年12月17日その1)
部屋ほどの広さのある暗い廊下に、割烹着を着たおたふく顔の老婆があらわれる。薄く開いた戸から光が差し、顔だけ露出オーバーで白く抜けている。僕はぞっとして、老婆から逃れるために「あきらさんはいますか」とでたらめの名前を言った。人違いを装ったはずなのに、白い老婆は「あきら、あきら」と奥の部屋の実在のあきらを呼びはじめる。
ここまでが「あまちゃんの実家は忍者だった」にはじまる縦書き一段組の最後で、縦書き四段組みの後半は、ここから四つの物語に分岐する。
中華料理屋の二階に、粘土頭の侵略者たちが刻々と迫っている。僕は藍色の子供を抱いて、滑り台の浅い溝に身を隠している。仲間たちは京劇の楽器を鳴らして粘土頭たちを威嚇しはじめたが、しかしいずれは捕えられ、頭を粘土に挿げ替えられることを覚悟しはじめている。僕はその子供を連れて押入れの奥に逃げ込むが、粘土頭の王(わん)さんに見つかり、私はあなたがたをかくまうから声を出さないでそこにいるように、私はみんなからお父さんとよばれているから、と言われる。
数年の後、久しぶりに藍色の子供が声を出すと、遠くから「その声は民枝か」という夏ばっぱの声が返ってくる。中華料理屋のテラスでは、粘土頭と講和を結んだ首相を仲間たちが囲み、不平等条約を糾弾する声をあげる者もいる。