花火とトンボ

七世さんが歯の治療のためにあの世から帰ってきていると、歯医者の草間先生から伝え聞く。実家にやってきた七世さんを、晩御飯を食べていかないか、泊まっていけばいい、と母が引きとめている。神戸の家の地下でやった小さい芝居の話など、積もる話は尽きない。窓越しに垣間見える花火を見て、親戚の男の子と七世さんがはしゃぎながら坂を登って花火大会に駆けていく。先に帰ってきた男の子が、あの人は変だ、花火が上がるとトンボの目をして空に舞いあがろうとする、と言う。

(2016年8月1日)