擬似記憶

河川敷に沿って建つ建物を、ひとつひとつ覗き込みながら上流に向かって歩いている。どれもみな僕の記憶からここに移築された建物なので、忘れているのに見慣れたものばかりだ。廊下に積まれた古書は自分の蔵書の記憶だが、aoikikuさんの撮った写真の記憶だったかもしれない。
ガラス越しに見えるこのフロアでは、かつて展覧会をした。空白の床と壁に展示した絵のイメージを配置するが、こう並べてもああ並べてもどちらも正しく思えるのは、これが回想のふりをしている擬似的な記憶だからだ。

(2012年11月26日)