いままで聞いたことのない轟音が空に満ちている。小学校の坂を登って高畑君の部屋を訪ねると、50年間ずっとこの日を待っていたのだと言う。二人で僕の実家まで戻ると、近所の家は根こそぎなくなっていて、土台がむき出しになっている。かろうじて残った両隣のおかげで、実家は形をとどめている。玄関から入り、骨組みを登って二階にたどり着くと、夕焼け空一面に鱗雲が浮いている。鱗雲の一片がゆっくり降りてくるのを掴まえようとすると、それはあちこち擦れて磨滅した発泡スチロールで、白い粉を落としながら逃げてしまう。
(2015年9月28日)