テラコッタの粉

自転車に身を任せると、羊水の中を漕ぐように気持良い。乗りながらだんだんうっとりと眠くなってくるのは、薄目をあけてひと漕ぎするだけでどこまでも進んでいくからだ。いつの間にかハンドルに絡んだ蔦は、茎がすっかり枯れているのに、葉だけはキャベツのように大きく青く瑞々しく、裸の太ももに触れると冷りとする。

団地わきの水溜りの中で、テラコッタの粉が自律的にハニカム構造になっていくのをうつらうつら見ているうちに、たくさんの人がみな同じところを目指して歩いている列からはぐれてしまう。さっきまで視界に入っていたRも見失う。

(2006年1月2日)