rhizome: 葉

ハワイの木村拓哉

木村拓哉の左右の眉がつながってココナツの葉に見える。そのうえ鼻筋が木の幹に見えるので、
「それじゃまるでハワイだな」と言うと、
「ちげぇーよ」と怒っている。

(2012年10月9日)

テラコッタの粉

自転車に身を任せると、羊水の中を漕ぐように気持良い。乗りながらだんだんうっとりと眠くなってくるのは、薄目をあけてひと漕ぎするだけでどこまでも進んでいくからだ。いつの間にかハンドルに絡んだ蔦は、茎がすっかり枯れているのに、葉だけはキャベツのように大きく青く瑞々しく、裸の太ももに触れると冷りとする。

団地わきの水溜りの中で、テラコッタの粉が自律的にハニカム構造になっていくのをうつらうつら見ているうちに、たくさんの人がみな同じところを目指して歩いている列からはぐれてしまう。さっきまで視界に入っていたRも見失う。

(2006年1月2日)

瓦礫の音楽

「音の風景を楽しむ旅」のパンフには、人の背丈ほどの低木に、ぎっしりとたかったヒグラシゼミの写真。低木の葉脈も、蝉の羽も、レースの下着のように黒く透けている。パンフを持ってきた泉は行きたい様子だが、僕は乗り気でない。こんなおしきせの観光地に行くより、壊滅した自分の家の周囲のほうがよほど珍しい音風景だから。
瓦礫の中からコイル状の円盤を見つける。青い鉄でできたコイルの一端を持ってヨーヨーのように上下運動すると、円盤はほどけたり絡まったりしながらシャーンと鳴る。崩れた建物の表面にぶつけると、コイルは彩度の高い虹色の音を放つ。このあたりの人々は夕刻になると、それぞれ見つけた楽器を手にして、錆びた瓦礫の町を鳴らしながら歩く。

(2001年9月25日)

葉脈状の樹

東武東上線の上板橋と常盤台の間に、教会がある。その教会の前に立って線路の方向を見ると、ポプラのように背の高い樹がある。その樹は葉脈の形をしていて、教会の方から見ると樹形だが、横から見ると薄くて樹には見えない。
その樹を見ようと、上板橋から常盤台に向かって歩くのだか、なぜか樹を発見する前に駅についてしまう。何度往復しても、樹が発見できない。ふと右の掌をみると、いままで黒子だと思っていたものが葉脈状に広がっている。ああここにあったのか、と納得する。

(1972年頃)