1996/11/16  Yoshiko Sekiguchi 蛾と椎茸とプロムナード掃除



(夢)大きな露天風呂のある温泉宿にきている。その小屋がけの露天風呂には、 庭の紅葉が映っていてきれいだった。しかし、なんだかお風呂の表面にさ ざ波がたっていて、ただならぬ気配がしてくる。そうだ、ここは、巨大な 蛾がときどき羽を休めにやってくるので有名な露天風呂だったのだ。 大きなお風呂の上空に、お風呂いっぱいになってしまいそうな蛾の羽がみ える。それが、私の上におおいかぶさってきそうになり、あわてて私はそ こから逃げ出す。
ここのお風呂にやってくる蛾は2種類いて、あれは大きい方の蛾なのだ。 しかし、小さい方の蛾でも、お風呂の半分くらいの大きさになるらしい。 いつになったら落ち着いてお風呂に入れるのだろうと思いながら、温泉宿 の裏庭の、海に面したデッキに出てみる。海は台風で荒れ模様だ。浜辺に は、テレビの女性レポーターが出ていて、まもなく打ち上げられる巨大な 椎茸のレポートをしている。それは、直径8メートルの椎茸なのだそうだ。 突然彼女の後ろで波が砕け、見事な丸い椎茸が打ちあがってきた。 灰色の空と海を背景に、巨大な丸い椎茸は、石突のほうを上に向けて、砂 浜をするるるるっと私のいるデッキのほうに滑ってくる。(石突きは食べ やすいように具合良く切り取られている) しかし、その8メートルくらいの大きな丸い椎茸は、突然私の目の前で溶 けるように崩壊してしまう。
私はなにか自分が悪いことをして美しいものを壊してしまったような気が しはじめる。そして、こんどは中庭のプロムナードを掃除しなくては、と 思う。草津温泉の湯畑の周辺のように、源泉を中心にした煉瓦敷きの美し いプロムナードなのだが、いまの椎茸の崩壊によって、あそこは犬の毛で いっぱいになってしまったに違いないのだ。
フローリング用のおそうじペーパーでよいのだろうか、と思いながら、私 は煉瓦の敷き詰められたプロムナードを掃除する。おそうじペーパーには、 犬の毛がおもしろいようにとれる。時々、クッキーの食べ滓も混じってい る。子どもが汚したのだろうか。おそうじペーパーでクッキー片をとると き、煉瓦の上を固形物が引きずられる感触が指に残る。
宿の人がいうには、以前に子どもが残していったなにか汚いもののことで 損害賠償問題になったことがあるほかは、このプロムナードはとても平和 なのだそうだ。犬の毛くらいで訴訟にはならないので、心配しなくていい そうだ。
しかし、満潮になった海からしだいに水が上がってきており、プロムナー ドは沈みつつある。早く掃除をおわらないと、犬の毛とクッキーの食べ滓 が濡れて混ざって大変汚いことになってしまう。だんだん水がくるぶしま で上がってきてしまって、気持ち悪くてお掃除どころではなくなってしま う。
そんなことばかり発生するので、すっかり疲れてしまい、気分を切り替え てもっとゆったりした夢をみたい、と考えた途端に目が覚めてしまってし ばらく悔しかった。


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