仕事で分からないことができると、みんなが相談にいく女性がいる。ぼ くも困ったことができたので、その女性の家に行く。家は木造の二階建て アパートのような造り。階段を登って、二階の部屋 へ入ると、もう何人も の人が静かに順番待ちをしている。二階なのに縁側があって、その縁側に なんと能登さんが腰かけている。能登さんはぼくを見て会釈をするが、す ぐにまた地面に目を落として考えにふけっている様子。寡黙な表情がとて も印象的だ。ぼくも暫く待ってみるが、これでは時間の無駄になるような 気がする。ぼくは立ち上がり、能登さんに「じゃ、また」と言って、玄関 に戻る。だが、二階に置いてきたのだろうか。ぼくの靴がないのだ。ぼく は再びさっきの部屋にとって返す。縁側から見おろすと、今度はちゃんと 二階の高さになっていて、一階の玄関の簀の子のところで、みんなが靴を ありったけ引っぱり出してくれている。その中にぼくのものがないかどう かと尋ねられるが、残念ながらどの靴もぼくのではない。しかたなく、途 中でトイレなどに自分の靴が落ちていないか探しながら、再び玄関に戻る。 すると、ぼくが会いたいと思っていたあるじの女性が現れて、「これら の靴がどれもあなたの足に合わないというなら、靴ではなくズボンを取り 替えたらどう?」と言って、ぼくに新しいズボン にはきかえさせる。それ はぼくの好んではいている黒いズボンではなく、褐色をしていて、おまけ に足のすねに当たる側が透明な窓になっている。そこから足がむきだしに 見えるのは最新式のファッションであるらしい。しかし、こんなものを突 然はいて帰ったら、家族に不審がられるだろう。「やっぱり前のズボンの 方がいい」と、ぼくは彼女の申し出を断った。