(夢)陽が暮れかかっている。早く帰らなくてはならない。ぼくは自転車で、なだらかな斜面ををゆっくりと降りながら、洋梨を逆さにしたような形の、ちょうど熱気球を50cm大くらいにしたような白い風船を探している。
あきらかに、その子供達が風船を盗んだに違いない。彼らの仲間同士の会話が、それを裏付けている。ぼくは大人げも無く凄みながら、彼らに問いつめている。彼らのひとりが、風船を返してもいいという。ただ、その風船がなくした風船かどうかは、わからない。たくさんあるから。
彼らといっしょに斜面を自転車で降りていくと、下に行けば行くほど、たしかに風船がそこここにある。白いものばかりかと思っていたら、赤いものや、青いもの、さらに大きなものまで、たくさんある。子供達は、きっとこれがなくした風船だから、といって一つを差し出した。それを受け取る間もなく、風船はさらに坂を下ってしまった。
ぼくは風船を追いかけて、古い公民館のような建物の中まで来てしまった。建物の中には風船がたくさんあって、広い畳の部屋で女の子が風船遊びをしている。
この風船は、九州のある地方のお祭りに使うもので、ある日たくさんの女の子が手をつなぎ、無数の風船を隣の女の子に渡していくのだそうだ。そのたびに「林檎ぴいとお」と、メロディーを(夢の中で、しっかりミミドレーレーという旋律が鳴っていた)口ずさむので、まるでその日は、空全体が鈴が鳴るように声に満ちるのだという。
もうすっかり暗くなってきたので、早く帰らなくてはならない。まずは電話をかけよう。しかし、ぼくはなんとかこの建物の中から大人をみつけて、「林檎ぴいとお」の話の続きを聞き出そうと思っている。
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