土でできたスタジアムのカルデラ外縁を歩きながら、すり鉢の中で遊んでいる子供たちが投げ上げたボールを拾う。投げ返すつもりが、外側の壁と道路の隙間に落としてしまう。狭い隙間に降りると、管理のおじさんたちから「安斎さん」という付箋をつけた袋を渡される。そこにはかつて自分が隙間に落としてしまった五百円玉などがたくさんつまっている。
(2016年5月15日)
土でできたスタジアムのカルデラ外縁を歩きながら、すり鉢の中で遊んでいる子供たちが投げ上げたボールを拾う。投げ返すつもりが、外側の壁と道路の隙間に落としてしまう。狭い隙間に降りると、管理のおじさんたちから「安斎さん」という付箋をつけた袋を渡される。そこにはかつて自分が隙間に落としてしまった五百円玉などがたくさんつまっている。
管理人のじいさんの名前が思い出せないので、とりあえずジンジャーと呼ぶと振り向いた。彼と話しながら、中庭にあった巨木のことを懐かしく思い出した。白いコンクリートの擁壁に登って巨木を見たことがある、と僕が言うと、切り倒してしまった巨木を中庭の見取り図に丁寧に書き加えれば、木が再生するかもしれない、と彼が言う。「樹皮も丁寧に描く必要があるだろう」そう言って、ジンジャーは鉛筆を丁寧に削ってくれた。