青山一帯が更地になっている。こどものくにの恐竜が何匹か、更地の縁に張り付いている。8階の店の窓から見ると恐竜は虫ほどの大きさで、青虫が葉を喰い拡げていくように見える。上空から見る津波は偽物だから、早く地面に降りて写真を撮ったほうがいい、と女店主に促される。
(2016年10月26日)
青山一帯が更地になっている。こどものくにの恐竜が何匹か、更地の縁に張り付いている。8階の店の窓から見ると恐竜は虫ほどの大きさで、青虫が葉を喰い拡げていくように見える。上空から見る津波は偽物だから、早く地面に降りて写真を撮ったほうがいい、と女店主に促される。
カルデラの底を歩いていると、小学生の長谷川誠君が笑いながら近づいてきて「津波が来るのにまだここにいたの」と揶揄するように言う。僕は、そんなことは知っていたとばかり悠然と岩場を登り始める。馬の背まで登ぼりつめたところで振り返ると、火口壁の低い縁を乗り超えた津波がみるみるカルデラの平地を湖に変えていくのが見える。近づいてきた調査員がアンケート用紙を差し出し、Q.なぜ津波が来るのを知りましたか、A1.友人に聞いた、A2.ラジオで聞いた、などと読み上げる。いや、前から知っていたから1ではない。念のためこのあたりで一番高いところまで登ると、小屋の男がスコップで地面を削りながら、この土地は砂糖の干菓子だから水には弱いと言う。
地震が来る前に、地震が遠くからきらきらと光って、津波のように迫ってくるのが見える。そのことを、友人に一所懸命説明している。