rhizome: 地震

水因説

実家の二階が光学迷彩の部屋になっているので、部屋の中から四方がすべて見渡せる。たかだか二階なのに地面との間に雲海が棚引いている。部屋の中から、言葉が通じない背の高い黒い人と、ジャンベルを使って意思疎通できるようになる。
地震が起きると水そのものが吸引する性質をもつようになり、地面から湧きだしている水が手に吸いついてくる。水が吸いつくので地震が起きる、という逆の因果関係かもしれない。この仮説はきっと新しい。

(2015年9月12日)

画素格子

絵を拡大していくと画素の中に絵がありその画素の中にも絵がありさらにその中にも絵がある映像を投影して、世界はこのように無限の細部があるのになんで単層のつまらない絵など描くのか、と口走ってしまう。講堂を歩き回りながら、こんなふうに煽るつもりはなかった、連画について話しているのに、このままでは収拾の見込みがない、と思い始めたところで高野明彦さんがマイクを取り、持参した試料にガイガーカウンターらしき装置をあてたので、僕はこの窮地を切り抜けることができた。装置はあちこち光りはじめるが、しかし装置がα線源に反応しないのを僕は知っている。

講堂の灯りが揺れはじめた。次第に振幅が大きくなる。僕は外に出て財布やノートを置いてきた山岳地帯のガレージをめざして走った。地すべりも始まり、ここで自分の命を優先するか荷物を優先するか、迷いながらも崖をくりぬいたガレージに来てしまう。崩落した画素の格子に閉じ込められた男がいるのを見て、荷物はもうあきらめるしかないことを悟る。

(2012年8月20日その2)

地震が見える

地震が来る前に、地震が遠くからきらきらと光って、津波のように迫ってくるのが見える。そのことを、友人に一所懸命説明している。

(1976年頃)