rhizome: 岩場

カルデラに津波

カルデラの底を歩いていると、小学生の長谷川誠君が笑いながら近づいてきて「津波が来るのにまだここにいたの」と揶揄するように言う。僕は、そんなことは知っていたとばかり悠然と岩場を登り始める。馬の背まで登ぼりつめたところで振り返ると、火口壁の低い縁を乗り超えた津波がみるみるカルデラの平地を湖に変えていくのが見える。近づいてきた調査員がアンケート用紙を差し出し、Q.なぜ津波が来るのを知りましたか、A1.友人に聞いた、A2.ラジオで聞いた、などと読み上げる。いや、前から知っていたから1ではない。念のためこのあたりで一番高いところまで登ると、小屋の男がスコップで地面を削りながら、この土地は砂糖の干菓子だから水には弱いと言う。

(2015年2月11日)

目白台高原喫茶

内田洋平と瀬川辰馬が、それぞれ縄梯子の一段を補修パーツとしてビニール袋に入れて所持している。僕はこれから栃木の祖母に会いに行く。彼らはこれから日経ウーマンのプロジェクトが忙しくなるので、なかなか会えなくなると言う。それではどこかで茶でも飲もうということになる。
新宿から山手線に乗り、目白の坂を登るところで電車はロープウェイに切り替わる。目白の垂直に切り立った岩場には、蔦の密生する廃屋がめり込んでいて、彼ら二人はどうやら廃屋内部を梯子で登り始めたようだ。廃屋最上階にある崖っぷちの喫茶店に入り、箱と番号が一致しない下足札を渡され、濃厚すぎるウィンナコーヒーを立ち飲みしながら彼らの到着を待っている。

(2013年8月20日)