rhizome: パイロット

3D印刷された競技場

空軍を退役しコックをしている私を、彼は二人乗りステルス機のパイロットとして雇い入れたいと申し出る。ホテルのフロントに、囚人服風のTシャツが届けられる。これを着ても、彼の思い通りになるつもりはない。その意思表示のため、私は三角形の小型機に彼を乗せ、ぎりぎり海面をかすめて飛び、ブロッコリーの内部を曲芸飛行で切り抜けた。ブロッコリーの森には、下草ブロッコリーの入れ子層があり、完成間近の国立競技場もそこに生えている。3Dプリンタによって不当に早く完成に近づく国立競技場を、私も彼も快く思っていない。その点で私と彼は、大いに意気投合している。
完成記念パーティーに出された酒のあとのご馳走は、陶器のオーブンで炊いた白いご飯だった。

(2013年10月25日)

ダチョウパイロット

広いグラウンドのフェンスの縁に体を押し付けて寝ている。突如、巨大な鳥の形をした飛行機の長い首が空に現れ、ゆっくりと倒れかかってくる。これは訓練かなにか通常のことなのだとわかっているのだが、逃げようかどうか体が迷っているうちに、その乗り物は思いきり頭を地面に叩きつけた。人は乗っているのか、これが訓練なら命がけだ。ダチョウの頭にある操縦席を見やると、ヘルメットをつけた二人のパイロットの片方が、一瞬こちらを見て合図を送ってきたような気がする。

(2011年1月24日)