rhizome: 水没

水没バス

乗合バスを使って引っ越しをしている。右半分が荷物で、左半分を乗客がしめている。八階のベランダに出てみると、東京全景見渡す限り水に沈み、眼下の森は海藻のようにゆらめいている。この水のどこかに、バスと荷物が移動している。ベランダづたいにやってきた佐和子さんに、水苔ですべると危ないからと手をさしのべる。佐和子さんは笑いながら、ここはもう渚だから落ちることはないと言う。

(2015年3月6日)

水没避難民

ふだんは住民だけが行き来する八階の廊下が、見かけない人で溢れている。非常階段の踊り場から覗きこむと、地上は一面緑色の海に水没している。死んだ佐々木の奥さんが、見惚れるように水平線を見ている。

(2014年8月23日その1)