湯治場の風習

温泉まで歩く行列について行くことになった。道端に列をなして並んだ椅子に、老いた湯治客が、おそらく背もたれのあたりから沸き出るスチームを浴びるため、肩をほぐす独特のしぐさをしながら座っている。そのしぐさを挨拶と間違えたのだろう、われわれの行列はいつのまにか道端の湯治客に、いちいち会釈しながら歩いている。よせばいいのに、と思いながら、なぜか自分もその人たちに軽く会釈している。

(2005年10月11日)