1996/09/18 一色真理 横向きタクシー
(夢)
列車の終点はここからはもう山に登るしか道がないという寂しい駅だった。
ぼくは駅でタクシーを呼んだ。電話の向こうの係員は「ミシシッピーという
名前で来るから」と言う。少し行くと、一台のタクシーが止まっており、一
人の暗い顔をした青年が座席に腰かけている。あのタクシーはぼくのものの
はずだ。実際、ぼくが「ミシシッピー」と名前の書かれた紙巻きタバコを見
せると、運転手はうなずいてドアをあけた。だが、運転手は「席をつめてや
ってね」と言う。なんと、驚いたことに、これは乗合タクシーだったのだ。
しかも、座席は前向きではなく、横向きに座るのだ。ガバガバした人工皮革
というか、質の悪いゴムという感じの手触りの安物の座席である。連れの青
年は前にカナダへ行った夢で、両手に美女をかかえて威張っていたあのKく
んだ。こないだとは対照的に寡黙でうつむいた暗い男になっている。ぽつぽ
つと話を聞くと、ここらの氷河期の山々に住む山岳部族は特産品として花札
をつくっている。彼はその花札を買い取りにいく商人だなのだ。だが、どう
せ山に登るなら、手ぶらで登るだけではもったいないから、彼らにこちらか
らもいろいろな物資を売りに行くのだという。(〜夢)
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