「こんな変わったところに建っている家があるなんて」
「みんなにそう言われます」
家は山岳地帯の急傾斜の中腹にある。家の出窓に彼女が座り、肩越しに外の景色をカメラでとらえようとし ていると、山肌や空がみるみる白いものに包まれていく。山岳地帯特有の濃霧かと思うと、霧の晴れ間のは るか下方に小さい火口があって、そこからもくもくと煙が出ている。赤い炎も見える。 外で、彼女の弟がキャッチボールをせがむので、部屋の窓からボールを投げると、彼はまるで平地のように 斜面を走り回っている。
「あんなことをしていて、いつか火口に落ちないんですか?」
「大丈夫なんです」
この人たちは、こういう特別な環境で育って本当によかったなぁ、と思う。
unxi