1996/1/8 安斎利洋 代筆女
いよいよ更衣室に入ると、風呂場のように「男」「女」と書いてある。木の床が黒光している。誰もいない。
着替えたあとで、小便をしようと、立ち寄ったトイレの傍で、真面目そうな女が宛て名書きの代筆をやっている。文字に曲線がない。機械のように直線を組み合わせて文字を書いている。ぼくは
「いつかお願いするかもしれない」という。
「文字の中心がずれないように薄く鉛筆で線を書いてしまいますけど、いいですか?」と彼女。ぼくは迷いながら、
「今度是非お願いする」と言う。
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