塔のバルコニーにたっぷり湯を溜めて、往年のIT業界のリーダーたちが浸かっている。IT誌の編集長だった男が「バルコニーごと落ちるかもな」と言って冷やかにそれを見ている。不自然に傾斜のある会場に椅子を並べ、パーティは始まろうとしている。サンドウィッチを作っているロシアのおばさんにあれこれ注文すると、面倒臭そうに「おまかせ、とだけ言えばいいの」と言われる。会場に設置されたディスプレイでは、ヴァルター・ベンヤミンの作った映画が始まり、バルコニーの風呂やサンドウィッチ屋のおばさんとのやりとりが、映画のイントロとして映っている。これどうやって作ってるんだ、どういう仕組みだ、と周囲に聞きまくっている自分が映画の中にもいる。
(2014年10月1日)