中央線沿線のどこかの駅から、僕ら数名の仲間は、見知らぬ女のワゴンに乗って都心に戻ろうとしている。出発する前におしっこをしてくる、とナオコが席をたつ。まったくこんな時に、と、僕はいわれもなく腹を立てている。
戻ってきたナオコが、あなたも行っておいたほうがいい、絶対にそのほうがいい、としつこく言うので、僕はしぶしぶトイレに向かう。そこは、かつて病院か学校であったであろう廃屋で、不気味ながらなつかしい光線が差し込んでいる。奇妙な形の便器に向かって小便をはじめると、なかなか終わらない。遠くから「ほうら、あんなに溜まっていたのに」と、ナオコの非難がましい声がする。しかし、小便はなかなか止まらない。
いつのまにか背後に、車の女がぴったりと寄り添っていて「変なことをしたいわけじゃない」と言い訳しながら、僕の下腹を押しはじめる。「こうすると、おしっこが早く終わるから」
しかし、いっこうに小便は終わらない。女が「これは夢だから、本当はおしっこがしたいだけで、まだ本当には出ていないのよ。だからなかなか終わらないの」と説明してくれる。なるほどそういうことなら、早く目覚めてトイレに行かなくては、と思う。
(1997年1月6日)