rhizome: 小便を助ける

料亭の地下工場

料亭の座敷で、友人は店の人の目を盗んでは壁を駆け上がり、天井を走りきる途中で落ちる遊びを繰り返している。落ちるたびに、友人は笑いながら眠ってしまう。
料亭の地下は工場のような広間で、コの字に並んだ卓の上に浴衣の少女たちが並び、なにか食材を踏んでいる。うちの料理の風味はここで作られているのだと女将が言う。この広間で食事ができるのは特別な客なのだそうだ。便所にいくと、目鼻のない石の頭の老人たちが待ち構えている。ここでは手を使わずに、彼らに任せて小便をするしきたりになっている。自分が特別な客でないことがばれないように、馴染みを装って長い小便をするが、石頭がペニスを持ち変えるたびに声が裏返ってしまう。

細い縦杭を伝って外に出ると、怪しいプラスチック職人たちが作業をしている。僕は保安官に彼らのことを告発する。保安官は白いパイプ状のプラスチックをチェックして、問題ないと言う。さらに透明な粘液を床に撒いて火をつけるが、この燃え方も正常だと言う。いやこれは二液混合なのだ、混ぜないと真相はわからないのだ。しかし、頭の悪い保安官はその意味を理解できない。

(2013年12月23日その1)

止まらない小便

中央線沿線のどこかの駅から、僕ら数名の仲間は、見知らぬ女のワゴンに乗って都心に戻ろうとしている。出発する前におしっこをしてくる、とナオコが席をたつ。まったくこんな時に、と、僕はいわれもなく腹を立てている。
戻ってきたナオコが、あなたも行っておいたほうがいい、絶対にそのほうがいい、としつこく言うので、僕はしぶしぶトイレに向かう。そこは、かつて病院か学校であったであろう廃屋で、不気味ながらなつかしい光線が差し込んでいる。奇妙な形の便器に向かって小便をはじめると、なかなか終わらない。遠くから「ほうら、あんなに溜まっていたのに」と、ナオコの非難がましい声がする。しかし、小便はなかなか止まらない。
いつのまにか背後に、車の女がぴったりと寄り添っていて「変なことをしたいわけじゃない」と言い訳しながら、僕の下腹を押しはじめる。「こうすると、おしっこが早く終わるから」
しかし、いっこうに小便は終わらない。女が「これは夢だから、本当はおしっこがしたいだけで、まだ本当には出ていないのよ。だからなかなか終わらないの」と説明してくれる。なるほどそういうことなら、早く目覚めてトイレに行かなくては、と思う。

(1997年1月6日)